キリスト教/東方正教会/アンティオキア総主教ヨウハンナ10世聖下が、エルサレム総主教の呼びかけによる東方正教会首座会合に関するメッセージを届けに来たフリストフォロス大主教座下と会見(2019年12月)

 2019年12月28日、キリスト教/東方正教会/アンティオキア・東方全土総主教ヨウハンナ10世聖下(His Beatitude Patriarch John X of Antioch and All the East)は、キリスト教/東方正教会/エルサレム総主教庁のキリアクーポリ大主教フリストフォロス座下(His Eminence【The Most Reverend】 Archbishop Christophoros of Kyriakoupolis)と会見しました。

※なお、アンティオキア総主教庁公式サイトなどでは、アンマン府主教【Metropolitan of Amman】となっていますが、ヨルダンのアンマンでの役割もありますが、キリアクーポリ大主教なのではないかと思います(当方が人違いをしていなければ)。

 

 フリストフォロス座下は、キリスト教/東方正教会/エルサレム・全パレスチナ総主教セオフィロス3世聖下(His Beatitude Theophilos III, Patriarch of Jerusalem and All Palestine)が呼びかけた東方正教会首座全体会合に関するメッセージを届けたようで、ヨウハンナ10世聖下はおそらく参加するでしょう。

 

 (英語:東方正教会アンティオキア総主教庁公式サイト)His Beatitude Patriarch John X received His Eminence Christophoros, the Metropolitan of Amman delegated by His Beatitude Patriarch Theophilus III, – Greek Orthodox Patriarchate of Antioch and All the East

(English translation below – Traduction… – Antioch Patriarchate | Facebook

 

 一方で、エルサレム総主教庁とアンティオキア総主教庁は、エルサレム側のカタール大主教庁設置の結果、相互にフル・コミュニオンを解除したままです。

 今回のニュースを報じているロシアの正教会系メディア「ORTHODOX CHRISTIANITY(OrthoChristian.Com)」によりますと、

 (英語)Patriarch of Jerusalem invites Patriarch of Antioch to Synaxis of Primates in Jordan / OrthoChristian.Com

At present, Pat. John does not commemorate Pat. Theophilos in the Divine services, though Pat. Theophilos commemorates Pat. John.

 現在、ヨウハンナ10世聖下はセオフィロス3世聖下の名前を礼拝で挙げていませんが、セオフィロス3世聖下はヨウハンナ10世聖下の名を挙げているようです。エルサレム側が歩み寄るつもりなのか、あるいはそう見せかけているだけなのか。
 セオフィロス3世聖下の首座全体会合開催の呼びかけの目的も、表面上は「ウクライナ問題」の解決ですが解決するわけがないのであって、いったい何が目的なのか。
 無理に予想しようとして出てくるのは、「これだけやってもダメでした」という言い訳作りか、コンスタンティノープルを引きずりおろして自らが首位に立つことくらいですが、どちらも現実味を感じさせないところです。
 とりあえず集まったけれど、何も良い知恵は出ず、問題は先送りというオチになるのでは……。

 

東方正教会大分裂:キリスト教/ロシア正教会が、アレクサンドリア総主教庁の駐モスクワ・メトヒオン【ポドヴォリエ】(正教会の大使館的聖堂)の権能を停止する予定との報道(2019年11月)

 ロシアの Interfax によりますと、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会は、キリスト教/東方正教会/アレクサンドリア総主教庁の、駐モスクワ・メトヒオン【ポドヴォリエ】(正教会の大使館的聖堂)の権能を停止する予定のようです。

 

 (英語)Interfax-Religion: Patriarch Kirill suspends operation of Alexandria Patriarchate’s Moscow mission
 (英語)Representation church of Patriarchate of Alexandria in Moscow temporarily suspended / OrthoChristian.Com

 

 これは、キリスト教/東方正教会/アレクサンドリア・全アフリカ総主教セオドロス2世聖下(His Beatitude Theodoros II, Pope and Patriarch of Alexandria and All Africa)が、ロシア正教会というかモスクワ総主教庁の管轄権下で高度な自治的権限を有するウクライナ正教会の首座/キエフ・全ウクライナ府主教オヌフリー座下(His Beatitude Metropolitan Onufry of Kiev and All Ukraine)を裏切り(ユダとまでする抗議活動もあったようですが)コンスタンティノープル系ウクライナ正教会を承認したことによるものです。

 一方ですが、アレクサンドリア総主教庁とのフル・コミュニオン解除も見込まれていた先週のロシア正教会聖シノドでは、キリスト教/東方正教会/エルサレム・全パレスチナ総主教セオフィロス3世聖下(His Beatitude Theophilos III, Patriarch of Jerusalem and All Palestine)がヨルダンでの東方正教会の首座の会合を招集したことにより、アレクサンドリアへの対応は延期されています。
 これは矛盾するようではありますが、現時点でなんらかの処置をする意思を示さないわけにもいかないとも思えます。

 また、キリスト教/東方正教会/ギリシャ正教会首座/アテネ・全ギリシャ大主教イエロニモス2世座下(His Beatitude Hieronymos II, Archbishop of Athens and All Greece and Primate of the Autocephalous Orthodox Church of Greece)は、エルサレム総主教の招集に対し、「そのような権限はコンスタンティノープルの全地総主教にのみある」と発言し、参加を事実上拒否しました。
 さらにこの、アテネ大主教による他の首座とのなんの相談もなしのままのエルサレム総主教庁の権威を否定する発言に対し、東方正教会から離脱した保守的な勢力から「ついに古代五大総主教座(Pentarchy)の権威までもが否定された」と驚きの声までも上がっています。

 加えて、エルサレムとアテネが割れる事態に、キリスト教/東方正教会/アルバニア正教会の首座/ティラナ・ドゥラス大主教アナスタシオス座下(His Beatitude Archbishop Anastasios of Tirana and Durres, Primate of Albania)が強い危機感を表明しています。

 エルサレム総主教庁の行動の目的が、ロシアとの政治的対立を避けざるを得ないためか、あるいはこの事態を利用して自らが東方正教会の首位に立とうとするものなのか、まったくわかりませんが(本当にわかりません)、東方正教会の崩壊が現実味を帯びてきた感はあります。

 

キリスト教/東方正教会/エルサレム総主教セオフィロス3世聖下が、ベラルーシ正教会のパーヴェル府主教座下と会見(2019年9月)

 2019年9月4日、キリスト教/東方正教会/エルサレム・全パレスチナ総主教セオフィロス3世聖下(His Beatitude Theophilos III, Patriarch of Jerusalem and All Palestine)は、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁からある程度自治的な権限を与えられているベラルーシ正教会【全ベラルーシにおける総主教代理区】の首座/ミンスク・ザスラーヴリ府主教パーヴェル座下(His Eminence Metropolitan PaulPavel】of Minsk and Zaslavl, the Patriarchal Exarch of All Belarus)と会見しました。

 会談中、セオフィロス総主教は、ウクライナにおいては、ロシア正教会モスクワ総主教庁の管轄権下で高度な自治的権限を有するウクライナ正教会の首座/キエフ・全ウクライナ府主教オヌフリー座下(His Beatitude Metropolitan Onufry of Kiev and All Ukraine)を支持する立場を重ねて表明したようです。

 

 (ロシア語:ベラルーシ正教会公式サイト)Состоялась встреча Предстоятеля Иерусалимской Православной Церкви и Патриаршего Экзарха всея Беларуси | Митрополит | Белорусская Православная Церковь | Новости | Официальный портал Белорусской Православной Церкви
 (写真:ロシア語:ベラルーシ正教会公式サイト)Состоялась встреча Предстоятеля Иерусалимской Православной Церкви и Патриаршего Экзарха всея Беларуси | Фоторепортажи | Новости | Официальный портал Белорусской Православной Церкви

 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Состоялась встреча Предстоятеля Иерусалимской Православной Церкви и Патриаршего экзарха всея Беларуси / Новости / Патриархия.ru
 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Primate of Orthodox Church of Jerusalem meets with Patriarchal Exarch of All Belarus / News / Patriarchate.ru
 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Состоялась встреча Предстоятеля Иерусалимской Православной Церкви и Патриаршего экзарха всея Беларуси | Русская Православная Церковь
 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Primate of Orthodox Church of Jerusalem meets with Patriarchal Exarch of All Belarus | The Russian Orthodox Church
 (ウクライナ語:ウクライナ正教会公式サイト)Єрусалимський Патріарх Феофіл ІІІ: Визнаю тільки Православну Церкву в Україні, яку очолює Митрополит Онуфрій – Українська Православна Церква
 (英語:ウクライナ正教会公式サイト)Patriarch Theophilos III of Jerusalem: The only Orthodox Church in Ukraine that I recognise is the one headed by His Beatitude Metropolitan Onufriy – Українська Православна Церква

 (英語)“I recognize only one Church in Ukraine, headed by Met. Onuphry,” Pat. of Jerusalem tells Met. of Belarus / OrthoChristian.Com
 (英語)Patriarch Theophilos: I recognize only the Church of Met Onuphry in Ukraine – UOJ – the Union of Orthodox Journalists
 (英語)Interfax-Religion: Jerusalem Patriarch takes the side of Russian Church in the “Ukrainian question”

 

Його Блаженство відзначив, що одним з… – Українська Православна Церква | Facebook

 

キリスト教/東方正教会/エルサレム総主教庁のイリネオス前総主教がギリシャのアテネで治療を受けることに合意(2019年8月)

 ギリシャの正教会系メディア Romfea 英語版が別のメディアからの情報として記事にしているところによりますと、先月に修道士への降格撤回と“前総主教”の称号の承認がおこなわれたイリネオス元エルサレム総主教(Eirinaios, Former Patriarch of Jerusalem)ですが、治療のためのギリシャ行きに同意したようです。

 

 (英語)Former Patriarch of Jerusalem finally comes to Athens – Romfea News

 

 経緯がいまいちはっきりしないのですが、

  • イリオネス修道士の健康状態悪化
  • 同修道士の姉か妹が、エルサレム総主教庁系の医療機関からひどい扱いを受けている(床に転がされているとか)と発言、ギリシャの総領事館に助けを求める
  • ギリシャ正教会のアテネ大主教が、新設した関連医療機関での受け入れ準備が出来ていると発言
  • ギリシャ総領事館「パスポートが“イリネオス総主教”になっているので無効。なんとかしてもらいたい」
  • エルサレム総主教庁が“前総主教”の称号を承認(いくつかのメディアによるとこれでパスポートが有効になったことになるらしいです)。そして適切なケアがおこなわれていると抗議声明
  • イリオネス前総主教がギリシャに行きたくない(エルサレムにとどまりたい)という意思を示す
  • 今回 → イリオネス前総主教がギリシャ行きに同意(記事からはパスポートの発効を申請する書類にサインしたように読めますが……)

 ということになりますが、今回申請したとすると、パスポートがどうたらという話は結局申請しなおさないといけないという当たり前の結論になったということなんでしょうか。よくわかりません。

 

 まだこの問題は引きずるかもしれません。
 イリネオス前総主教は、教会法上合法でない教会の中に「解任は無効で今も正当な総主教」とする勢力もあります。
 エルサレム総主教庁や報道からは、もう教会指導者としての職務をやるなど不可能な体調であるという前提が感じられますが、世の中なにが起こるかわかりません。

 

キリスト教/セルビア正教会の重鎮モンテネグロ・プリモルスカ府主教アンフィロヒイェ座下が、「ローマでもコンスタンティノープルでもなく、エルサレムがすべての教会の母」(2019年7月)

 ロシアのタス通信【ТАСС / TASS】が、キリスト教/セルビア正教会/モンテネグロ・プリモルスカ府主教アンフィロヒイェ座下(His Eminence Metropolitan Amfilohije of Montenegro and the Littoral)へのインタビューを複数回記事にしています。
 その内容に関してのほとんどは、今まで主張されてきたものですが(モンテネグロのジュカノヴィッチ大統領はチトー主義者で無神論者なのに教会を作ろうとしている、など)、一部に注目すべき内容があります。

 

 (ロシア語:ほかにも記事があります)Митрополит: попытка повторить украинский раскол на Балканах станет объявлением войны СПЦ – Общество – ТАСС

 (英語)SOC hierarch: Jerusalem's mother of all Churches not Rome or Constantinople – UOJ – the Union of Orthodox Journalists

 

 タス通信の記事が複数で長いのですべて読めていないのですが、その一分を引用している UOJ の英語記事によりますと(訳が少しあやしいですが)、アンフィロヒイェ座下は、ローマ皇帝コンスタンティヌス1世より前の時代に戻るべきであり、すべての問題は公会議によって解決されるべきと主張しているようです。

 

 また、ローマでもコンスタンティノープルでもなく、東方正教会のすべての教会の母はエルサレムであるとしています。

 最近、エルサレム総主教庁の聖職者から、「エルサレムはすべての教会の母」という文言が挨拶に盛られることが多いのですが、今回のアンフィロヒイェ座下のコメントはそれを支持するかのようにも見えます。

 ただ、エルサレム総主教庁およびアンフィロヒイェ座下のコメントにどのような意味が込められているのかは、いまだはっきりとしない段階です。
 比喩的に用いられるならさして問題とならないものですが、「だからコンスタンティノープルではなくエルサレムが首位となるべき」というのであればこれはまた一つ大問題の発生でしょう。
 しかし、繰り返しますが、現状ではエルサレム総主教庁およびアンフィロヒイェ座下のコメントにどのような意味が込められているのかははっきりしません。