キリスト教/ラトビア正教会“独立”問題:ラトビア政府議会による“独立”強制について、ラトビア正教会は(ロシア正教会から分離しての)教会分裂には陥っていないとのロシア正教会側の文書(2022年9月~10月)

 2022年9月5日、ラトビア共和国大統領エギルス・レヴィッツ閣下(His Excellency Egils Levits)は、ラトビア正教会の“独立”のための法改正を議会に求めました。
 この問題は、キリスト教の東方正教会の中で、ラトビア正教会は、ロシア正教会モスクワ総主教庁の管轄権下で自治的な権限を持っている教会であることが問題視されていることによります。
 つまり(政治的な文脈で言えば)大統領は、教会経由でのロシアの影響があるとの判断で、その影響を排除したい、ということです。

 

05.09.2022. Valsts prezidents paraksta grozījumus Latvijas Pareizticīgās Baznīcas likumā – YouTube

 

 (英語:ラトビア大統領府 公式サイト)Announcement by President of Latvia Egils Levits on Amendments to the Law on the Latvian Orthodox Church | Valsts prezidenta kanceleja

These amendments provide for the full recognition of the self-contained and independent (autocephalous) status of the Latvian Orthodox Church.

This is the status that was historically de facto established for our orthodox church by the 6(19) July 1921 Tomos issued by Patriarch of Moscow and all Russia Tikhon to Archbishop Jānis Pommers and the Cabinet of Ministers Regulation of 8 October 1926 on the Status of the Orthodox Church.

I can confirm that the Latvian Orthodox Church and Metropolitan Alexander can count on full support from the state of Latvia as an autocephalous church henceforth also recognised in law.

 

 大統領府 公式サイトによりますと、同大統領は、ラトビア正教会に、独立= independent (独立正教会= autocephalous )を求めています。
 またその根拠の一つを、1921年にロシア正教会の(聖)ティーホン総主教からヤーニス大主教に渡されたトモス(何かを許可する文書だと思ってください)に由来するとしています。

 

 ここで疑問が浮かびます。
 東方正教会の独立正教会= autocephalous についてです。
 これは現在、コンスタンティノープルおよびギリシャ系の諸教会は承認についてはコンスタンティノープルに全権があるかのように主張している状況です。
 一方で他の教会の多くはそれぞれの独立正教会が承認するものである、とみていると大雑把に言えばそうなります。
 いずれにせよ、ロシア正教会の一部にすぎないラトビア正教会について、国が認めたら独立正教会になるというのはムチャですが、現在のロシア・ウクライナの状況でその判断がムチャクチャといえるかは結果次第でしょう。
 この結果次第というのは、前述のコンスタンティノープルとポロシェンコ元大統領が2018年にウクライナで強引なことをやらかした結果、ウクライナの正教会は混乱の極みにあるからです。
 ラトビア政府がコンスタンティノープルとこの後からむかどうかはわかりませんが、上記リンクのアナウンスからは特に読み取れません。
 コンスタンティノープルと関わると混乱が増すだけのような気もしますが、今のままでは正統性がないことはラトビア側もわかっているでしょう。大統領府の文章でも de facto の単語を使用していることからもわかるように、1921年のトモスは決して独立を認めたものではないということです(そもそも1921年のトモス自体になにが書かれていたかはっきりわかりませんが……)。

 

 続いて、
 (英語:ラトビア議会【サエイマ】公式サイト)Saeima affirms independence of Latvian Orthodox Church from any ecclesiastical authority outside Latvia – Latvijas Republikas Saeima

On Thursday, 8 September, the Saeima adopted urgent amendments to the Law on the Latvian Orthodox Church affirming the full independence of the Latvian Orthodox Church with all its dioceses, parishes, and institutions from any church authority outside Latvia (autocephalous church).

According to the explanatory note to the Draft Law, the definition of the scope of legal status in the Law does not affect or interfere with the Church’s doctrine of faith and canon law.

 レヴィッツ大統領が議会に送ったラトビア正教会の“独立”のための法改正案をラトビア議会【サエイマ】は承認しました。
 上記の文章からわかる通り、彼らはこの法が、教義や信仰・教会法に影響や介入するものではないとしています。
 が、その教会が独立正教会 = autocephalous church かどうかというのは、まさに教会法に属する事柄です。
 ロシア正教会モスクワ総主教庁は、ラトビアのこの対応を中世以下と酷評しています。

 (英語)Interfax-Religion: Russian Orthodox Church on declaration of Latvian Church’s autocephaly by parliament: they surpassed Middle Ages

 ドイツの16世紀より悪い、という意です。
 もっとも16世紀のドイツを持ち出すのが良い反論とは感じませんが。

 

 さらに、
 (ロシア語:ラトビア正教会 公式サイト)Официальный сайт Латвийской Православной Церкви | О изменениях в Законе о Латвийской Православной Церкви

 上記を受けて(当初は)否定的な見解を出していたラトビア正教会は法律に従い独立正教会 = autocephalous church となる/を称することを受け入れたようです。

 もちろんのこと、東方正教会の他の独立正教会がどこも認めない限りは、独立正教会として他の教会から扱われることはありませんが……。

 

 さて、その後、具体的にどうなっていたかですが、
 (英語)ROC to Latvians: Patriarch Kirill still commemorated, state-declared autocephaly is purely legal, not canonical / OrthoChristian.Com

 上記の報道によれば、ロシア正教会のクルチツィ・コロムナ府主教パーヴェル座下(His Eminence Metropolitan Pavel of Krutitsa and Kolomna)が、ラトビア正教会は、ロシア正教会の首座/モスクワ総主教キリル聖下を自分たちの教会の首座として名を挙げて礼拝をおこなっており、教会分裂の状態にはないとの文書をラトビアの信徒らに対して出した、ということです。
 これはつまり、ラトビア政府議会がいう独立正教会という単語は、教会法上の独立正教会とはなんの関係もないので気にせずに活動がおこなわれている、といっていいのかもしれません。
 もちろん、議会自体が「教会法には影響しない」といっているので、同じ単語を使っていても教会法には関係ないということになるともいえます。
 しかしこれでは、ラトビア政府議会のおこなったことは、何の意味もなかったということになります。
 大統領がキリル総主教にあらためて独立正教会の承認を求めているという話もありますが、たしかにこれでは他に手はないといえるかもしれません。

追記:
 10月31日までにラトビア正教会の憲章の改定が要求されており、その内容次第になるとは思われます。

 

続報:
 キリスト教/ロシア正教会から、分離して独立正教会であることを宣言したラトビア正教会が独自に主教を叙聖(2023年8月)ロシア正教会の聖シノドは反発

キリスト教/西欧ロシア正教会大主教区の公式サイトで、反ジャン大主教派(コンスタンティノープル派)とジャン大主教座下が反目する声明を発表し合う不可思議な展開続く(2019年9月)

 キリスト教/東方正教会の愚かしさを世界に知らしめている西欧ロシア正教会大主教区の騒動はまだまだ続きそうです。

 元々はロシア正教会に起源をもち、名称は「西欧ロシア正教会大主教区」というものの、ごちゃ混ぜの集団となっていた同大主教区。
 昨年(2018年)11月ににコンスタンティノープルから一方的に総主教代理区としては廃止され、またその後、大主教区という集団としても存在を否定されました。
 9月14日にジャン大主教座下はコンスタンティノープルを見限りロシア正教会モスクワ総主教庁へ移動することを発表、これに対し反ジャン大主教派というかコンスタンティノープル原理主義者たちが「大主教区のルールによりジャン大主教は首座の資格を失ったのでコンスタンティノープルに首座代行の指名を求めた」という内容を含む声明を公式サイトに掲載(削除済み)、ジャン大主教座下がこれに反論する声明を出す、という展開となっていました。
 今日【9月28日】、同大主教区では会合が予定されており、これで残る人々と離れる人々がだいたい決まって事態は終息に向かうかと思われましたが、なんと反ジャン大主教派がまたも公式サイトに声明を発表、しかもその声明(今回は今のところ削除されないまま。ただしトップページからのリンクははずされている状況)に対しジャン大主教座下が反論する声明を公式サイトでまたも出す、という公式サイトを共有したまま反目を続けるという不可思議な事態が続いています(このサイトの主旨からは外れますが、セキュリティリスクや公共の団体として登録していることも含め極めてよろしくない状況です。またこんな有様では大主教区の財産に関する裁判が将来始まる可能性も高いでしょう)。
 その反ジャン大主教派の声明ですが、コンスタンティノープルは首座代行にフランス府主教エマニュエル座下を指名したので、9月30日に会合を開催するという内容のものです。コンスタンティノープル側は大主教区は「解体された」「存在しない」などと発言してきましたが、(これが反ジャン大主教派のフェイクニュースでないならば存在しないと宣言したものに首座代行を設置してきたということで失笑ものです。さすが、「彼らの脳内にしかない永遠のビザンチウムに暮らしている」と皮肉を言われる集団ですが、なに、東方正教会の他の主流の教会もその脳内ビザンツ帝国で暮らす連中と結局は縁が切れない人々で、コンスタンティノープルを批判する資格などあるのかどうか。
 ジャン大主教座下側の声明は、上で書いたような内容(コンスタンティノープル側の立場のいい加減さ)や、反ジャン大主教派の理屈のおかしい部分を指摘していますが、この不毛なやり取りだけでも伝統的なキリスト教とやらに価値があるのかどうか疑問に思えます(本当のところは誰も何も信じてないんでしょうかね)。ジャン大主教座下は以前の発言(インタビュー記事(ロシア語):キリスト教/コンスタンティノープル管轄権下からの事実上の離脱を決めた西欧ロシア正教会大主教区のジャン【イオアン】大主教座下「理想的な教会は無い。ローマ・カトリック教会の現状を見るがいい」(2019年2月))で理想的な教会は存在しないと主張していましたが、シスマ2018から将来の東方正教会の滅亡まで続くげんなりする展開への言い訳を先にしていたと評価されるのではないかという気がしてきました。

 

※反ジャン大主教派の声明。削除される可能性があるので画面キャプチャもしておきます。追記:削除されました
掲載時URL:http://www.archeveche.eu/spip.php?article2422

En réponse à cette demande, le Secrétariat général du Saint-Synode du Patriarcat œcuménique de Constantinople a notifié au Métropolite Emmanuel de France sa désignation comme Locum Tenens.

En cette qualité, le Métropolite Emmanuel réunira le Conseil de l’Archevêché, le lundi 30 septembre à 17 heures, à la date qui avait été arrêtée par le Conseil lors de sa dernière réunion du 30 août 2019.

Tous les membres élus du Conseil, les six membres clercs et les six laïcs, sont invités à cette importante réunion.

Pour le Conseil :

Prêtre Christophe D’Aloisio

Archiprêtre Alexandre Fostiropoulos

Alexis Obolensky

Elisabeth von Schlippe

Archiprêtre Serge Sollogoub

Alexandre Victoroff

Didier Vilanova

 

※ジャン大主教座下による反論の声明
 (フランス語:西欧ロシア正教会大主教区公式サイト)Archevêché des églises russes en Europe occidentale – Annonce

 

キリスト教/セルビア正教会の重鎮モンテネグロ・プリモルスカ府主教アンフィロヒイェ座下が、「ローマでもコンスタンティノープルでもなく、エルサレムがすべての教会の母」(2019年7月)

 ロシアのタス通信【ТАСС / TASS】が、キリスト教/セルビア正教会/モンテネグロ・プリモルスカ府主教アンフィロヒイェ座下(His Eminence Metropolitan Amfilohije of Montenegro and the Littoral)へのインタビューを複数回記事にしています。
 その内容に関してのほとんどは、今まで主張されてきたものですが(モンテネグロのジュカノヴィッチ大統領はチトー主義者で無神論者なのに教会を作ろうとしている、など)、一部に注目すべき内容があります。

 

 (ロシア語:ほかにも記事があります)Митрополит: попытка повторить украинский раскол на Балканах станет объявлением войны СПЦ – Общество – ТАСС

 (英語)SOC hierarch: Jerusalem's mother of all Churches not Rome or Constantinople – UOJ – the Union of Orthodox Journalists

 

 タス通信の記事が複数で長いのですべて読めていないのですが、その一分を引用している UOJ の英語記事によりますと(訳が少しあやしいですが)、アンフィロヒイェ座下は、ローマ皇帝コンスタンティヌス1世より前の時代に戻るべきであり、すべての問題は公会議によって解決されるべきと主張しているようです。

 

 また、ローマでもコンスタンティノープルでもなく、東方正教会のすべての教会の母はエルサレムであるとしています。

 最近、エルサレム総主教庁の聖職者から、「エルサレムはすべての教会の母」という文言が挨拶に盛られることが多いのですが、今回のアンフィロヒイェ座下のコメントはそれを支持するかのようにも見えます。

 ただ、エルサレム総主教庁およびアンフィロヒイェ座下のコメントにどのような意味が込められているのかは、いまだはっきりとしない段階です。
 比喩的に用いられるならさして問題とならないものですが、「だからコンスタンティノープルではなくエルサレムが首位となるべき」というのであればこれはまた一つ大問題の発生でしょう。
 しかし、繰り返しますが、現状ではエルサレム総主教庁およびアンフィロヒイェ座下のコメントにどのような意味が込められているのかははっきりしません。

 

キリスト教/ウクライナ正教会(モスクワ総主教庁系)の渉外局副局長が、「コンスタンティノープルは教会に“政治ウィルス”を持ち込んだ」「彼はすでに滅んだ帝国(ビザンツ帝国)の総主教」(2019年7月)

 キリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁の管轄権下で高度な自治的権限を保有するウクライナ正教会の渉外局副局長ミコライ・ダニレヴィチ長司祭(Mykolay Danylevychニコライ・ダニレヴィチNikolay Danilevich)が、インタビューに答えています。

 

Перший Козацький:
Абсурд патр. Варфоломея на 1+1: ложь от отчаяния? Быстрое Погружение с Катей Жарких – YouTube

 

 (ウクライナ語:ウクライナ正教会公式サイト)Протоієрей Миколай Данилевич: У Тіло Церкви прагнуть внести політичний вірус, та Церква бореться (відео) – Українська Православна Церква

 (英語)UOC Spokesman: Head of Constantinople is a patriarch of non-existent empire – UOJ – the Union of Orthodox Journalists

 

 「コンスタンティノープルのバルソロメオス総主教は教会に“政治ウィルス”を持ち込んだ」
 「コンスタンティノープルの総主教は、すでに存在しない帝国【ビザンツ帝国or東ローマ帝国】の総主教。全地総主教の“全地”はビザンツ帝国内の全地のこと世界全体ではない。ギリシャ人が“全地”といった場合、彼ら以外のバルバロイ【野蛮人】の住む土地は含まない」
 「コンスタンティノープルは、海外の教区がなければ、トルコ内の小集団」
 「ローマ教皇は、コンスタンティノープルの総主教に書を送るとき、宛先を“コンスタンティノープル=新ローマ大主教”として送る」
 といったようなコメントをしているようです。
 率直に指摘しますと、最後の項目は間違いだと思います。確かにローマ教皇は宛先をコンスタンティノープル=新ローマ大主教としますが、続けて全地総主教と書いた文書がローマ教皇聖座の公式サイトに掲載されています(少なくとも現在のローマ教皇フランシスコ聖下はそうだということです)。

 その前の項目について、“ikumeni”の解釈については、判断する知識がありませんが、なによりもいっておかねばならないことが一つあります。
 それは、コンスタンティノープルには東方正教会全体への権威はないとするならば、そこが愚かで政治的で教会法や使徒継承性をまるで無視した行為をおこなったことに対し、とっとと破門(Anathema)を宣言しない理由はなぜなのか、ということです。

 もちろん、ウクライナ正教会には昨年当時そういう意見がありましたが、ロシア正教会モスクワ総主教庁にはそのような意見がないことは明白です。
 結局のところ、コンスタンティノープルと縁を切ることを決断できないのであれば、それはコンスタンティノープルを“並ぶもののない第一人者”として認めているわけであり、「なんとかコンスタンティノープル様に考えをあらためていただきとうございます」と言っているだけのこと。

 

 コンスタンティノープルが、同教会系ウクライナ正教会【OCU】を独立正教会として承認してから半年以上が経ちました。
 コンスタンティノープルは、 OCU の首座“エピファニー府主教”が教会法上合法な聖職者であるとすら述べていない状況で、しかし首座として独立正教会として承認するトモスを渡しました。
 “フィラレート総主教”に関しては、破門(Anathema)を撤回する理由も説明されず(政治的パフォーマンスであることは明らかなので)、しかもその後フィラレート総主教が OCU と対立を始めると、遺憾の意を表明して終わり。そもそもその後の展開を見れば、フィラレート総主教の破門を撤回する理由がまったくなかったという現実もあります(モスクワへの嫌がらせと、他の独立正教会の警戒心を高めただけ)。ウクライナのシスマを終わらせるとほたえていたのは大ボラもいいところで、遺憾の意を表明して「わしゃ知らんよ」で終わり無能かつ無責任なバルソロメオス総主教
 フィラレート総主教は、そもそも自分への破門はもとから有効ではなかったと主張しています。そうでないと OCU には教会法上合法な聖職者【神品】が存在しないことになるからです。これに対し、コンスタンティノープルは沈黙するのみで、話題を誤魔化してひたすら「独立正教会はウクライナの人々が望んだこと」と繰り返すばかり。もちろん(彼の想定する)ウクライナ人はイエスより偉いと彼が信じているなら何も矛盾はありませんが、それはウクライナ真理教でありキリスト教ではありません。

 

インタビュー記事:ロシア帝室ロマノフ家当主/ロシア女大公マリヤ殿下がウクライナに独立正教会を設置しようとしているキリスト教/コンスタンティノープル全地総主教庁を批判「首位性は儀礼的なもの」「あそこはアンティオキア総主教庁から独立したが今は指示を受けたりしない」「自らが独立を認めた教会へ介入する権利はない」(2018年9月)

2018年~ ウクライナへの独立正教会設置を巡るコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立関連の記事一覧

 

 ロシア帝室ロマノフ家当主/ロシア女大公マリヤ殿下(Head of the Russian Imperial House : Her Imperial Highness The Grand Duchess Maria Wladimirovna of Russia)が、Interfax のインタビューを受けた模様です。
 元が英語なのか、そのロシア語版の翻訳なのかわかりませんが、英語記事がロシア帝室公式サイトに掲載されています。

 

 (英語:ロシア帝室公式サイト)Russian Imperial House – Grand Duchess Maria of Russia: Constantinople’s position will lead to the splintering of the very foundations of Orthodoxy

 

 キリスト教/東方正教会/全地総主教庁(コンスタンティノープル)が、ウクライナの管轄権を持つロシア正教会モスクワ総主教庁の許諾なしに一方的に「ウクライナへの独立正教会設置準備」を始めたことについて聞かれ、それを批判している内容です(「非常に悲しんでいる」というような言葉もありますが)。

 自らは、聖職者でも歴史家でもないため専門家ではないと前置きしつつも、全地総主教庁(コンスタンティノープル)の首位性は儀礼的なものであり実質はないとし、コンスタンティノープルはもともとはアンティオキア総主教庁から独立したが(大昔ですが)その後に指示を受けたりしていないことを例示し(これは微妙です。少なくとも初期の総主教らはアンティオキアに叙任されていたという話もあります。とはいえ現在はもちろんそうではありません)どの教会であれ独立正教会と認めた教会へは介入する権利は持っていないと述べています。

 また、東方正教会の理論としてどうなのかはわかりませんが、「母なる教会」(Mother Church)と「娘である教会」(Daughter Church)は、母が娘の独立を認めたら「姉妹教会」(Sister Church)になる、という表現を用いています(あくまで表現です。この表現は初めて見ましたが……通常は独立を認めても「母なる教会」は「母なる教会」と表現されます)。

 結論として、コンスタンティノープル全地総主教庁の行動は、東方正教会を分裂させるものだ、としています。

 

 全体の話の流れはロシア正教会側の主張とほぼ同じですが、「母なる教会」関連の表現ではさらに踏み込んでおり、これはあるいはロシア正教会モスクワ総主教庁とは立場が違うかもしれません(この理屈であれば、ロシア正教会モスクワ総主教庁が独立を認めた教会側はロシア正教会を「母なる教会」と呼ぶ必要はないことになりますので)。