キリスト教/コンスタンティノープル系のウクライナ正教会【OCU】に合流していた“ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】”の“フィラレート総主教”が、独自に招集した会合で OCU 成立時の会合やコンスタンティノープルのトモスを拒否し UOC-KP の再興(?)を宣言(2019年6月)

 2019年6月20日、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルが独立正教会として認めた“ウクライナ正教会【OCU】”に合流し“名誉総主教”と(ウクライナ国内では)称されていた“ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】”の“フィラレート総主教”は独自に会合を招集、 OCU 成立のために催された昨年【2018年】12月の会合及び今年【2019年】1月にコンスタンティノープルから授与された独立正教会として認めるトモスを否定し、 UOC-KP の再興(?)を宣言した模様です。

 会合に集まった主教以上の聖職者は、(今のところの報道を見る限りでは)ウクライナ国外(ロシアとモルドバの教区)の計三人のみであり、実質的な影響がどの程度あるかはわかりませんが(そもそもコンスタンティノープルは OCU に対しウクライナ国外の管轄権を認めていないので、この三人が現在どこの何に属していることになっている聖職者なのかすらさっぱりわかりません)、声明では教会の財産(預金・聖堂・修道院など)について触れられており、 UOC-KP 側がこれらを確保している、または確保していなくても取り戻せるのであれば、影響が出ないわけにもいかないでしょう。
 ただ、 OCU の支持者が、モスクワ総主教庁系ウクライナ正教会の聖堂などを強制的に接収している現状では、ただの無法行為が増えるだけかもしれません。

 また、建物があっても聖職者はどうするのかという問題については、大量に叙聖すれば済む話ですので、たいしたことではないでしょう。

 

 あと、フィラレート総主教が、ポロシェンコ(前)大統領について「彼は選挙目当てだった」と批判したという情報もあります。

 

ТСН Live:
Брифінг Філарета за підсумками «собору» – YouTube

 

追記:
 会合の決定内容に関する下記記事(ロシアの正教会系メディア)によれば、新しく二人の主教を選出した模様。

 (英語)Results of Philaret’s council: unification council and tomos rejected, KP is restored, 2 new bishops elected, claims jurisdiction over monastery where Epiphany Dumenko serves / OrthoChristian.Com

 

追記2:
 同じくロシア系の正教会系メディアですが、今のところ英語でツッコミを含めて記事を出しているのがほかに見当たらないのでリンクしておきます。
 注目は、フィラレート総主教の「ウクライナには今、三つの正教会がある。モスクワ総主教庁系ウクライナ正教会、コンスタンティノープル系ウクライナ正教会、そして“ウクライナ正教会キエフ総主教庁”」というコメント。

 (英語)Filaret at “Local Council of UOC KP”: We will ordain a lot of new hierarchs – UOJ – the Union of Orthodox Journalists
 (英語)Filaret: At the “Local Council” we revoked our renunciation of UOC KP – UOJ – the Union of Orthodox Journalists
 (英語)Filaret: There are now three Churches in Ukraine: UOC, OCU and UOC KP – UOJ – the Union of Orthodox Journalists
 (英語)Resolution of the "Local Council" of UOC KP published on the Net – UOJ – the Union of Orthodox Journalists

 

追記3:
 ギリシャの正教会系メディア Romfea.gr の記事。
 もはやギリシャ系の正教会は、コンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】が崩れれば権威失墜なので、運命共同体と化しています。 OCU が教会法を無視して“モンテネグロ正教会”の“司祭”をコンスタンティノープルのエマニュエル府主教とともに礼拝させたことを注意すらしない状況なのは唖然とするばかりで、どちらが主なのか……。
 この有様では、東方正教会は今年崩壊するだろうと思いますが、崩壊したらどうなるかというと、別にたいして変わらない状況があるだけ(今までよりやる気の数段階ない教会と称する集団が政治的・経済的利権を維持するだけ)になるのが見えているので、がんばって維持する必要も感じないのだろうなあと、意地悪にいえばそうなります。

 (ギリシャ語)Το ''Πατριαρχείο'' του Κιέβου κατήργησε τον Τόμο και δεν αναγνωρίζει τον Επιφάνιο
 (英語)The “Patriarchate” of Kiev has annulled the Tomos and does not recognize Epiphanius – Romfea News

Romfea.newsさんのツイート: ""The Tomos granted by #Constantinople to the Autonomous #Church of #Ukraine does not comply with the Statute of other Autocephalous Churches and makes the Church of Ukraine dependent on the #Patriarchate of Constantinople" #romfeanews https://t.co/CEVMG4krXV"

 

追記4:
 フィラレート総主教が、エピファニー府主教は UOC-KP の主教(故人?)の“隠し子”と発言するなど、個人攻撃(というかヤケクソの八つ当たりというか、それ以下というか)を強めています(なお、フィラレート総主教にも子供と孫がいるという疑惑というか事実というかがあるみたいですが、興味ないです)。
 こういうことになると思ってましたよ。フィラレート総主教がどういう人間か知っている人たちは、ムチャクチャになると予測済みですよ。

 

関連:
 キリスト教/コンスタンティノープル系のウクライナ正教会【OCU】首座“エピファニー府主教”が、 OCU を否定した“フィラレート総主教”の OCU での役割を剥奪するも「これまでの功績があるからこれからも主教」(2019年6月)
 キリスト教/“ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】”の“フィラレート総主教”が、ロシア系メディアのインタビューに答える(2019年7月)
 キリスト教/“ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】”の公式サイトが復旧(?)した模様(2019年7月)

 

キリスト教/コンスタンティノープル系のウクライナ正教会【OCU】に合流していたはずの“ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】”の“フィラレート総主教”が、コンスタンティノープルからの(独立正教会として承認する)トモスを拒否すると表明したと報道(2019年6月)

 2019年6月11日、報道によりますと、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルが独立正教会として認めた“ウクライナ正教会【OCU】”に合流し“名誉総主教”と(ウクライナ国内では)称されていた“ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】”の“フィラレート総主教”が、独立正教会として認めるトモスの内容を事前に承知していなかったとしてこれを拒否すると表明したようです。
 表明したのは、フィラレート総主教が主催(?)したフォーラムかなにかで、下記記事の写真を見る限りでは、盛況とも思えませんが(開催前か開催後なのかもしれません)、 OCU に合流した二組織の一つのトップだった人物が拒否を表明するというのは、なんともバカバカしいというか、どうせ面倒なことが起こることはわかっていたというか、論評のしようがないほどアホらしい事態ではあります。
 フィラレート総主教の建前は、モスクワ及びコンスタンティノープルからの独立です。しかし、コンスタンティノープルからトップに認められていればこんなことは言い出してなかったことは明らかで、真面目に受け取る必要はまったくありません。はたしてどのような影響があるのか、あるいはないのか。
  OCU 首座の“エピファニー府主教”が、キリスト教/東方正教会首席/コンスタンティノープル=新ローマ大主教・全地総主教バルソロメオス聖下(バーソロミュー1世世界総主教バルトロマイ1世ヴァルソロメオス1世 : His All-Holiness Bartholomew, Archbishop of Constantinople-New Rome and Ecumenical Patriarch)の聖名日を祝うためにトルコ共和国イスタンブールを訪問しているときにこんな意見を表明したということで、 OCU が分裂するか、あるいはフィラレート総主教が幽囚されるか、どちらかになるのではないかと思います。

 

 (ウクライナ語)Філарет: Томос ми не приймаємо, бо ми не знали його змісту | Громадське телебачення

 

追記:
 フィラレート総主教は、2019年6月20日に、昨年【2018年】12月15日の統合を決めた会合(”Unification Council”)の否定と、今年授与されたトモスの拒否を決定する、新たな会合を招集するとしています。
 また、“エピファニー府主教”らは、“ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】”を離れコンスタンティノープルに依存する教会を作っただけであり、 UOC-KP は解散しておらずこれからも存在し続けると主張。
 そして、“エピファニー府主教”がギリシャ正教会の司祭を主教に叙したのは、主教を通じてコンスタンティノープルの指示を受けるためであり、そんな教会は独立正教会ではないとも宣言したようです。

 (ウクライナ語)Філарет скликає собор для збереження Київського патріархату: на коли і які будуть наслідки – BBC News Україна

 (英語)Filaret summons a Synod to cancel decisions of the United Synod on December 15 – Romfea News
 (ギリシャ語)Ο Φιλάρετος συγκαλεί Τοπική Σύνοδο για να ακυρώσει αποφάσεις της Ενωτικής Συνόδου

 (ロシア語)Интерфакс-Религия: Филарет не признает решение о самоликвидации УПЦ-КП и планирует его отменить

 

キリスト教/ギリシャ正教会首座アテネ大主教イエロニモス2世座下が、イスタンブールでコンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】首座と会見(2019年6月)共同礼拝の予定はないとなっていますが……

 キリスト教/東方正教会/ギリシャ正教会首座/アテネ・全ギリシャ大主教イエロニモス2世座下(His Beatitude Hieronymos II, Archbishop of Athens and All Greece and Primate of the Autocephalous Orthodox Church of Greece)は、キリスト教/東方正教会首席/コンスタンティノープル=新ローマ大主教・全地総主教バルソロメオス聖下(バーソロミュー1世世界総主教バルトロマイ1世ヴァルソロメオス1世 : His All-Holiness Bartholomew, Archbishop of Constantinople-New Rome and Ecumenical Patriarch)の聖名日を祝うためにトルコ共和国イスタンブールを訪問しました。
 コンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】首座“エピファニー府主教”と会見し、晩課をともにした模様。

 翌日の礼拝を共同でおこなう予定はないようですが……。
 ギリシャ正教会の司祭が OCU の主教に叙されましたが、ギリシャの府主教(公式サイトに該当する名前が載ってない人)が会見したという報道が、ギリシャ・ロシア双方のメディアから出ています(ただしロシア側メディアの情報はギリシャのメディアの内容を踏まえたもの)。
 また、ギリシャの正教会系メディア「ΒΗΜΑ ΟΡΘΟΔΟΞΙΑΣ」が、キリスト教/ギリシャ正教会がコンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】を承認する見込みと報道するなど、そろそろという状況が整いつつあります。
 コンスタンティノープルが強く押せばあっさり共同で礼拝をおこなうのではないかとも思われます。ギリシャ正教会は OCU を承認していないため、現段階で共同で礼拝をおこなえば教会法もヘッタクレもないですが、そんなものよりもコンスタンティノープルの意思のほうが上だというのが東方正教会だということになったようなので、やるかもしれません。

 

 (英語)Archbishop of Greece meets Ukrainian schismatic primate in Istanbul / OrthoChristian.Com
 (英語)The Vespers of the Ecumenical Patriarch’s name day with the Archbishop of Athens and the Metropolitan of Kiev – Romfea News

 

ギリシャの正教会系メディア「ΒΗΜΑ ΟΡΘΟΔΟΞΙΑΣ」が、キリスト教/ギリシャ正教会がコンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】を承認する見込みと報道(2019年5月~6月)

 ギリシャの正教会系メディア「ΒΗΜΑ ΟΡΘΟΔΟΞΙΑΣ」によりますと、キリスト教/東方正教会/ギリシャ正教会の聖シノドに属する委員会(コンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】を承認するかどうかを検討)が、高位聖職者らに承認するよう提案すると決めたと報じています。
 もちろん、これは承認することが決まったことを示しているわけではありませんが、最近のキリスト教/東方正教会首席/コンスタンティノープル=新ローマ大主教・全地総主教バルソロメオス聖下(バーソロミュー1世世界総主教バルトロマイ1世ヴァルソロメオス1世 : His All-Holiness Bartholomew, Archbishop of Constantinople-New Rome and Ecumenical Patriarch)とキリスト教/東方正教会/ギリシャ正教会首座/アテネ・全ギリシャ大主教イエロニモス2世座下(His Beatitude Hieronymos II, Archbishop of Athens and All Greece and Primate of the Autocephalous Orthodox Church of Greece)の会談で承認することが同意されたという報道や、委員会では承認に否定的なキリスト教/東方正教会/アルバニア正教会の首座/ティラナ・ドゥラス大主教アナスタシオス座下(His Beatitude Archbishop Anastasios of Tirana and Durres, Primate of Albania)の文書がスルーされたり、その他ギリシャ正教会がコンスタンティノープルの奴隷にすぎない説が聖職者らから出されたり(ギリシャの憲法上コンスタンティノープルに逆らえないそうです)、他教会は中立を守るべきだとしていたキリスト教/東方正教会/キプロス正教会の首座/ノヴァ・ユスティニアナと全キプロスの大主教クリソストモス2世座下(His Beatitude Archbishop Chrysostomos II of Nova Justiniana and all Cyprus)はもはやなにも行動せず(ロシア正教会のイラリオン府主教との会談予定はどうなったのか……)、全般的にみると、ギリシャ人系各教会はコンスタンティノープルに従って動くことになるという当初からの各方面の見立て通りに落ち着きそうです。
 もっとも、ロシアと絶縁するとすさまじく政治的な問題が発生するアレクサンドリア総主教庁(エジプト大統領からどんな冷遇が起こるか)とエルサレム総主教庁(イスラエル政府が対ロシア政策の一環として利用しまくることはいうまでもない)がどうするかはまだわかりませんが……。アラブ化しているアンティオキア総主教庁は、親ロシアであり動かないでしょう。

 しかし、この21世紀、いよいよ「『ギリシャ正教』と『ロシア正教』は違うもの」ということになってきたように思えます。

 

 (ギリシャ語)Ουκρανικό – "Φωτιές" άναψε η απόφαση στην Ελλαδική Εκκλησία – ΒΗΜΑ ΟΡΘΟΔΟΞΙΑΣ

 

 なお、ギリシャ正教会が OCU を承認した場合、その後の展開として、ロシア正教会側からコミュニオンの解除を検討する聖シノドの開催があるでしょうが、ギリシャ正教会内部から離脱者が出てくる可能性もあります。

 

キリスト教/ローマ教皇庁キリスト教一致推進評議会次官ブライアン・ファレル司教座下が、ウクライナ問題によりカトリックと東方正教会の対話が手詰まりになっていることを語る(2019年5月)1054年以来最も重大な教会分裂

 キリスト教/ローマ・カトリック教会の、ローマ教皇庁キリスト教一致推進評議会次官ブライアン・ファレル司教座下(アビティナエ名義司教 : Bishop Brian Farrell, L.C., Secretary of the Pontifical Council for Promoting Christian Unity, Titular Bishop of Abitinae)が、東方正教会の分裂に伴い、カトリックと東方正教会全体の対話が停止していると語ったようです。

 

 (英語)New Orthodox schism stalls ecumenical dialogue, Vatican official says

 

 座下によれば、コンスタンティノープルが一方的にウクライナに独立正教会を設置したことにより、モスクワとコンスタンティノープルの間で、1054年以来最も重大な教会分裂が起こっているとのことです。
 また、カトリックと東方正教会全体の対話はロシア正教会なしで継続するのは可能だが、ロシア抜きでのものにどれだけの影響があるのか極めて懐疑的なようです。

 とはいえ、記事の末尾では(よくある構成ですが)座下は東方正教会内の問題が解決することを期待する前向きなコメントをしています。
 そんなすぐに解決するかもしれない問題が1054年以来最も重大であるというのは、キリスト教を知る者にとっては驚きを隠せないところでしょう。 いやまあ、立場上、後ろ向きなこともいえないのでしょう。

 

 それにしても、このままで事態が推移すれば、東西の対話が不可能、というか“東”というものの意味がなくなってしまいますね。
 ウクライナのポロシェンコ大統領は、東方正教会をつぶし、それに伴い東方正教会圏内の王政復古の可能性を完全につぶしただけでなく(教会が動くのに慎重になっているのに王政復古なんぞできるわけがない)、東西教会の再統合の道も完全につぶしたことになるわけですが……。いや、いずれこうなるものだったのでしょう。

 東方正教会信徒のうちインテリ層には、自分たちが信じていた正しい教えが、新興宗教コンスタンティノープル真理教に一夜にして変わったことへのバカバカしさを隠せない人もいます(「heresy」という言葉をよく見かけますが、「異端」とかじゃなくて「クソが!」みたいな意味合いにしか思えない)。
 また、世俗化やローマ接近、暦の変更などに反発して、教会法上合法な教会(というよりもはや第一派閥ロシアと第二派閥コンスタンティノープル、そしてかつて多数派でいまや立場不明瞭な人たちの仲間)をかなり前に抜けていた方々のうち、これまで自分たちの意見を表明していた人々も、最初のうちはコンスタンティノープルもモスクワも変わらぬなどとおちょくっていましたが、だんだん元気がなくなっていっています。コンスタンティノープルが使徒継承すら雑に扱う現状では、なにを語るのも無力感が募るということなのでしょうか。