動画:キリスト教/ウクライナ正教会(モスクワ総主教庁系)首座/キエフ府主教オヌフリー座下を支持する各独立正教会の主教らと、コンスタンティノープル系ウクライナ正教会の“内紛”などの話(2019年7月)

 2019年6月25日におこなわれた、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会(モスクワ総主教庁)の管轄下で高度な自治的権限を有するウクライナ正教会の首座/キエフ・全ウクライナ府主教オヌフリー座下(His Beatitude Metropolitan Onufriy of Kiev and All Ukraine)らの礼拝と、コンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】と“ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】”の“内紛”などの映像です。 

 

UOJ I Union of Orthodox Journalists:
Triumph of UOC and disgrace of schismatics: whose prayers are heard by God – YouTube

 

 ぶっちゃけていいますと、モスクワ寄りの映像です。

 冒頭などに登場する、モスクワ総主教庁系ウクライナ正教会およびオヌフリー府主教座下を支持するコメントをしている各独立正教会の主教ら(登場順)は、
 セルビア正教会 …… モラヴィツァ主教アントニイェ座下(His Grace vicar Bishop AnthonyAntonije】 of Moravica : ビデオ内表記【Bishop Anthony of Moravia】)、
 ブルガリア正教会 …… ロヴェチ府主教ガヴリール座下(His Eminence Metropolitan GabrielGavriil】 of Lovech : ビデオ内表記【Metropolitan Gabriel of Lovech】)、
 キプロス正教会 …… タマソス・オレイニ府主教イサイアス座下(His Eminence Metropolitan Isaias of Tamassos and Oreini : ビデオ内表記【Metropolitan Isaiah of Tamassos】)、
 ポーランド正教会 …… ハイノフカ主教パーヴェル座下(His Grace Bishop Paweł of Hajnówka : ビデオ内表記【Bishop Paul of Hainowka】)、
 エルサレム総主教庁 …… ボスラ府主教ティモセオス座下(The Most Reverend【His Emienence】 Metropolitan Timotheos of Bostra)、
 アレクサンドリア総主教庁 …… カルタゴ府主教メレティオス座下(His Eminence Metropolitan Meletios of Carthage)。

 

 “内紛”の話題ですが、すでに今まで取り上げたことが含まれます。
 “フィラレート総主教”の主張、彼自身への破門(Anathema)はもともと成立していないというものも出ています(これは今後一番問題になってくるポイントでしょう)。コンスタンティノープルによる破門の撤回がそもそも不要であったということです。
 キリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下(ヒラリオン府主教 : His Eminence Metropolitan Hilarion of Volokolamsk, chairman of the Moscow Patriarchate’s Department for External Church Relations (DECR))は、コンスタンティノープルが、ウクライナの教会法上合法でない主教らを“合法化”してくるという予想をしていました。しかし現時点において、そしておそらく今後も、おこなわれていません。これは、コンスタンティノープルが独立正教会として認めたウクライナ正教会【OCU】には、(フィラレート総主教を除いて)教会法上合法な聖職者が存在しないことを示しています(ただしフィラレート総主教への破門がそもそも成立していないとすれば教会法上合法です)。
 コンスタンティノープルを支持する聖職者・論者の中には、「そもそも独立正教会というのは、コンスタンティノープルから独立しているというわけではない」などという今となってはどーでもいーことをだらだらと述べている方もいますが、教会法上合法な聖職者や使徒継承性について語ってほしいところです。「教会法も使徒継承性もどうでもいい。すべてコンスタンティノープルのその時の気分で決まる。それが東方正教会の教え、古代より伝わる正しい教え、キリスト教だ」とそういうことなんでしょうか? いや、そうなんでしょう。それは過去において東方正教会が主張してきたこととはちと違うと思うので、今年の OCU へのトモス授与に伴い、東方正教会は崩壊し、今は組織を継承していると称する変な集団がいるだけだ、とそう結論付けるしかないのです。
 もちろん、コンスタンティノープルがどうなろうが、他にも教会集団は存在しますし、彼らは OCU を承認していないので、東方正教会が崩壊したなどというのは大袈裟だということは言えるかもしれませんが、その各教会はコンスタンティノープルと縁を切ろうとする気がないどころか(ロシア正教会ですら今より進む気はないでしょう)、「コンスタンティノープルを失ったら我々はプロテスタントと同レベルになってしまう!」と絶叫している有様。

 ウクライナ国内の、教会無法地帯、キリスト教の墓場ぶりは失笑モノであることは確かですが、これは東方正教会の姿そのもの、伝統的なキリスト教の姿そのものであり、キリスト教どころか、キリスト教の聖堂をパクった妙な建物で聖職者なのかなんなのかわからない白人男性(宗教的理由もないのにインド人のおばちゃんとかではいけないというなら、人種差別・性差別の疑いのある行為)に結婚式を執り行ってもらって感動している日本人もまたこの茶番劇から逃げられない状況にあります。キリスト教的伝統を適当に消化して作られている漫画・アニメ・ゲームの類もまた同じですが……。

 結論は特にありませんが、現在の世界は、伝統的なキリスト教の崩壊に伴う巨大な茶番がずっと続いているのではないか、という気がしてきました。
 我々が生きている間にこの茶番は終わらないでしょう。もしや世界はウクライナ化していくのか……。

 

関連:
 キリスト教/ウクライナ正教会(モスクワ総主教庁系)による、エルサレム総主教庁ボスラ府主教ティモセオス座下へのインタビュー映像(2019年6月)

 

キリスト教/ウクライナ正教会(モスクワ総主教庁系)首座/キエフ府主教オヌフリー座下が、前首座であるボロジミル座下の永眠から5周年の礼拝をおこなう(2019年7月)

 2019年7月5日、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会の管轄権下で高度に自治的な権限を保有するウクライナ正教会の首座/キエフ・全ウクライナ府主教オヌフリー座下(His Beatitude Metropolitan Onufriy of Kiev and All Ukraine)は、同教会の前首座であるキエフ・全ウクライナ府主教ボロジミル座下(ヴォロディーミル府主教 : ウラジーミル府主教 : His Beatitude Metropolitan VolodymyrVladimir】 of Kiev and All Ukraine)の永眠5周年の礼拝をおこないました。

関連:
 訃報(2014年7月5日):キリスト教/キエフ・全ウクライナ府主教ボロジミル座下、永眠(1935~2014)

 

Українська Православна Церква(ウクライナ正教会公式チャンネル):
5-та річниця смерті Блаженнішого Митрополита Володимира – YouTube

 

キリスト教/コンスタンティノープル系のウクライナ正教会【OCU】に合流していた“ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】”の“フィラレート総主教”が、独自に招集した会合で OCU 成立時の会合やコンスタンティノープルのトモスを拒否し UOC-KP の再興(?)を宣言(2019年6月)

 2019年6月20日、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルが独立正教会として認めた“ウクライナ正教会【OCU】”に合流し“名誉総主教”と(ウクライナ国内では)称されていた“ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】”の“フィラレート総主教”は独自に会合を招集、 OCU 成立のために催された昨年【2018年】12月の会合及び今年【2019年】1月にコンスタンティノープルから授与された独立正教会として認めるトモスを否定し、 UOC-KP の再興(?)を宣言した模様です。

 会合に集まった主教以上の聖職者は、(今のところの報道を見る限りでは)ウクライナ国外(ロシアとモルドバの教区)の計三人のみであり、実質的な影響がどの程度あるかはわかりませんが(そもそもコンスタンティノープルは OCU に対しウクライナ国外の管轄権を認めていないので、この三人が現在どこの何に属していることになっている聖職者なのかすらさっぱりわかりません)、声明では教会の財産(預金・聖堂・修道院など)について触れられており、 UOC-KP 側がこれらを確保している、または確保していなくても取り戻せるのであれば、影響が出ないわけにもいかないでしょう。
 ただ、 OCU の支持者が、モスクワ総主教庁系ウクライナ正教会の聖堂などを強制的に接収している現状では、ただの無法行為が増えるだけかもしれません。

 また、建物があっても聖職者はどうするのかという問題については、大量に叙聖すれば済む話ですので、たいしたことではないでしょう。

 

 あと、フィラレート総主教が、ポロシェンコ(前)大統領について「彼は選挙目当てだった」と批判したという情報もあります。

 

ТСН Live:
Брифінг Філарета за підсумками «собору» – YouTube
https://www.youtube.com/watch?v=ymqAMGMp_QU

 

追記:
 会合の決定内容に関する下記記事(ロシアの正教会系メディア)によれば、新しく二人の主教を選出した模様。

 (英語)Results of Philaret’s council: unification council and tomos rejected, KP is restored, 2 new bishops elected, claims jurisdiction over monastery where Epiphany Dumenko serves / OrthoChristian.Com

 

追記2:
 同じくロシア系の正教会系メディアですが、今のところ英語でツッコミを含めて記事を出しているのがほかに見当たらないのでリンクしておきます。
 注目は、フィラレート総主教の「ウクライナには今、三つの正教会がある。モスクワ総主教庁系ウクライナ正教会、コンスタンティノープル系ウクライナ正教会、そして“ウクライナ正教会キエフ総主教庁”」というコメント。

 (英語)Filaret at “Local Council of UOC KP”: We will ordain a lot of new hierarchs – UOJ – the Union of Orthodox Journalists
 (英語)Filaret: At the “Local Council” we revoked our renunciation of UOC KP – UOJ – the Union of Orthodox Journalists
 (英語)Filaret: There are now three Churches in Ukraine: UOC, OCU and UOC KP – UOJ – the Union of Orthodox Journalists
 (英語)Resolution of the "Local Council" of UOC KP published on the Net – UOJ – the Union of Orthodox Journalists

 

追記3:
 ギリシャの正教会系メディア Romfea.gr の記事。
 もはやギリシャ系の正教会は、コンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】が崩れれば権威失墜なので、運命共同体と化しています。 OCU が教会法を無視して“モンテネグロ正教会”の“司祭”をコンスタンティノープルのエマニュエル府主教とともに礼拝させたことを注意すらしない状況なのは唖然とするばかりで、どちらが主なのか……。
 この有様では、東方正教会は今年崩壊するだろうと思いますが、崩壊したらどうなるかというと、別にたいして変わらない状況があるだけ(今までよりやる気の数段階ない教会と称する集団が政治的・経済的利権を維持するだけ)になるのが見えているので、がんばって維持する必要も感じないのだろうなあと、意地悪にいえばそうなります。

 (ギリシャ語)Το ''Πατριαρχείο'' του Κιέβου κατήργησε τον Τόμο και δεν αναγνωρίζει τον Επιφάνιο
 (英語)The “Patriarchate” of Kiev has annulled the Tomos and does not recognize Epiphanius – Romfea News

Romfea.newsさんのツイート: ""The Tomos granted by #Constantinople to the Autonomous #Church of #Ukraine does not comply with the Statute of other Autocephalous Churches and makes the Church of Ukraine dependent on the #Patriarchate of Constantinople" #romfeanews https://t.co/CEVMG4krXV"

 

追記4:
 フィラレート総主教が、エピファニー府主教は UOC-KP の主教(故人?)の“隠し子”と発言するなど、個人攻撃(というかヤケクソの八つ当たりというか、それ以下というか)を強めています(なお、フィラレート総主教にも子供と孫がいるという疑惑というか事実というかがあるみたいですが、興味ないです)。
 こういうことになると思ってましたよ。フィラレート総主教がどういう人間か知っている人たちは、ムチャクチャになると予測済みですよ。

 

関連:
 キリスト教/コンスタンティノープル系のウクライナ正教会【OCU】首座“エピファニー府主教”が、 OCU を否定した“フィラレート総主教”の OCU での役割を剥奪するも「これまでの功績があるからこれからも主教」(2019年6月)
 キリスト教/“ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】”の“フィラレート総主教”が、ロシア系メディアのインタビューに答える(2019年7月)
 キリスト教/“ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】”の公式サイトが復旧(?)した模様(2019年7月)

 

キリスト教/キプロス大主教クリソストモス2世座下が、ロシア正教会ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下と会見(2019年6月)ロシア大使が同行

 2019年6月8日、キリスト教/東方正教会/キプロス正教会の首座/ノヴァ・ユスティニアナと全キプロスの大主教クリソストモス2世座下(His Beatitude Archbishop Chrysostomos II of Nova Justiniana and all Cyprus)は、同地を訪問したキリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下(ヒラリオン府主教 : His Eminence Metropolitan Hilarion of Volokolamsk, chairman of the Moscow Patriarchate’s Department for External Church Relations (DECR))と会見しました。
 キプロス共和国駐箚ロシア連邦特命全権大使スタニスラフ・ヴィリオロヴィチ・オサドチー閣下(His Excellency Mr Stanislav Viliorovich Osadchiy)が同行。

 

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Metropolitan Hilarion of Volokolamsk meets with Archbishop Chrysostomos of Cyprus | The Russian Orthodox Church
 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Metropolitan Hilarion of Volokolamsk meets with Archbishop Chrysostomos of Cyprus / News / Patriarchate.ru
 (ギリシャ語:キプロス正教会公式サイト)Ο Μητροπολίτης Βολοκολάμσκ κ. Ιλαρίων στον Μακαριώτατο Προκαθήμενο της Αποστολικής Εκκλησίας Κύπρου – Εκκλησία της Κύπρου
 (英語)Metropolitan Hilarion to Archbishop Chrysostomos of Cyprus – Romfea News

 

 ウクライナ問題が討議され、クリソストモス2世座下から、いくつかの提案がなされたようです。
 提案の一つは、前々からいわれているロシア正教会が(モスクワ総主教庁系の)ウクライナ正教会の独立を承認するというものとみられていますが、いったいこれが今の段階でなんの解決策になるのか、それをまず説明して欲しいものです。
 ほかにも提案はあったようなのですが、いずれにせよ、実効性や、時間切れ(ギリシャ正教会によるコンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】の承認が近いという観測)の問題など、そろそろもうダメだねという共通理解を作る時期に思えます。

 一連の問題の根本は、コンスタンティノープルが一方的に問題だらけの何かを決定して撤回しない場合にそれに従わなければならないのか・コンスタンティノープルにコミュニオンを解除された場合には東方正教会の教会法上合法な教会でなくなってしまうのかということにあり、コンスタンティノープルと完全に縁を切る選択肢がロシア正教会からすら出ていない以上、答えはもう出ているとしか判断できません。
 したがって、「従いたくねえなあ」とグズグズするだけの状態が続いていますが、外側は冷酷な判断を下しています。
 カトリック系の英語メディアでは、日本語で「独立正教会」とされているものを、「Autocephalyというランクの自治権を認められている集団」 として説明しているところもあり、東方正教会というものは要するにコンスタンティノープル総主教とそれに属する集団であると(ローマ教皇と東方典礼カトリック教会の相似として)理解されてきています。
 プーチン大統領とローマ教皇の会談がおこなわれる観測の一つとして、ロシア側がロシア国内のカトリックに対してもう少し待遇を良くする代わりにローマ教皇にモスクワを訪問(ローマ側も希望していること)してもらってロシア正教会とモスクワ総主教のプレゼンスを高めるような発言をしてもらうという交換条件が提示されるのではないかというものがあります。モスクワ総主教庁はローマ教皇のモスクワ訪問について時期尚早としていますが、プーチン大統領が問題をちっとも解決できそうにないロシア正教会に苛立ちを感じていても不思議ではないため、強引にことを運んでローマ教皇の「お言葉」によりロシア正教会の格をあげてコンスタンティノープルに方針転換を迫るということです。事の真偽はともかくとして、もはやローマ教皇の介入を持ち出さなければコンスタンティノープルに押し切られるというのはあながち間違いとも思えません。しかし、モスクワ総主教庁系のウクライナ正教会【UOC】は、ローマこそが今回の問題の根本として声明を出しており、さらに問題をややこしくする可能性もあります。また、正教会系のメディアには、ローマ教皇のモスクワ訪問が起これば正教会の終わりだと意見表明しているところもあり、妙な波紋が広がる可能性もあります。

 

(注意:失礼なツッコミ多々あります)キリスト教/東方正教会のウクライナ問題をめぐる名言・珍言【その後の展開を含む】(2019年5月あたりまで)

 最近の情勢を補足しつつ、ざーっと書いていきます。


 

 コンスタンティノープル支持派の某聖職者:
「コンスタンティノープルと縁を切ったら、我々はプロテスタントと同レベルになってしまう!」

 この方は、凄まじく適切に東方正教会の現況を言い表しました。
 かねがね東方正教会の主教らは、「我々の聖なるコミュニオンは、寄り集まっているだけのルター派とは違う」などと発言していましたが、最近の体たらくを見るにつけ、あなた方、そろそろ贖罪の時期が来たのではないですか?

 


 

 コンスタンティノープルが独立を認めたほうのウクライナ正教会(OCU)で、影からすべてを操る予定だったにも関わらず名誉職に追いやられた“フィラレート名誉総主教”:
「ポロシェンコ大統領と“エピファニー府主教”に騙された」

 エピファニー府主教は、フィラレート名誉総主教が操り人形にする予定だった人物ですが、OCUの首座に選出されて地位を得た後は、フィラレート名誉総主教を排除する方向に動いています(排除というかそもそも別に名誉総主教にはルール上なんの実権もないので当然のことをしているだけというか)。
 これについて、フィラレート名誉総主教は、「彼は私に、彼自身は対外的な役割だけをこなし、実権はすべて私に預けると約束した」とエピファニー府主教が操り人形になることに同意していたと発言し、波紋を呼んでいます。
 そして、

「コンスタンティノープルからの独立が必要」

 とも発言。
 あなたがコンスタンティノープルの介入を要求したのでは……いやポロシェンコ大統領に騙されたのでしたな!

 それにしてもモスクワに破門されてもウクライナ国内に影響力を確保していた人間が、その破門をコンスタンティノープルに撤回されたら影響力を喪失していくというのは、なんともいえない悲哀……悲哀?、まあ悲哀でいいですか、悲哀を感じます。
 ポロシェンコ大統領と共に大喜び(ぬか喜び)している映像が世界に流れてから半年と少ししか経過していません。二人とも今年中には話題から完全にフェードアウトするのではないかと思いますが、しかしフィラレート名誉総主教はチキンレースの果てに OCU とコンスタンティノープルを崩壊に追いやる可能性もあります。

 なお、 OCU の前身となった、ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】及びウクライナ独立正教会【UAOC】は、団体としてはまだ登録されているらしく(当局者は否定?)、聖堂などの所有権を含めて、なにがどうなっているのかははっきりしません。
 もちろん所有権が残っていても、現在のウクライナでは強制的に暴力で奪うことが許されている(?)ので、あまり意味はないかもしれません。

 


 

 エルサレム総主教セオフィロス3世聖下:
「(モスクワ総主教庁系ウクライナ正教会首座の)オヌフリー府主教は、神がこの難局を乗り越えるために選んだ人物」

 これは、コンスタンティノープルが吹っ切れて暴走し始める少し前の発言です。
 その後事態が展開してから、ロシア正教会側の聖職者の一人が「エルサレムがコンスタンティノープルを支持するなら、エルサレムともフル・コミュニオンを解除する」という発言をしていました。つまり、少なくともロシア正教会の一部聖職者は、セオフィロス総主教は「神が~選んだ人物」と発言した少し後にはその彼を見捨てるような人物と考えていたわけであり、エルサレム総主教に対してなんと無礼な、と思ったりしますが、みんな興奮していたのか咎める声もありませんでした。
 とはいうものの、これはセオフィロス3世聖下がいい加減な人物と思われている傍証にはなるでしょう。

 現在までエルサレム総主教庁は、モスクワ寄りというか、コンスタンティノープルから距離を置くというか、そのような立ち位置を取っています。
 ポロシェンコ大統領が、約束を破って OCU の聖職者を同行して訪問してきたときには、仮病を使ってスルー(公式発表は体調不良による入院ですが、前後にモスクワ総主教庁系のウクライナ正教会の聖職者らと会見)するなど、ロシア系正教会メディアもそのふんばりを評価していますが、一方、アメリカにも近いといわれる総主教がなぜそんなにがんばっているのかわからない状況でもあります。
 なにか陰謀を企んでいるのか、スリルを楽しんでいるのか……。

 


 

 教会法上非合法なマケドニア正教会-オフリド大主教庁の主教:
「我々は近いうちにコンスタンティノープルに独立を承認されるだろう。しかし、各独立正教会がウクライナの独立正教会(OCU)を承認していないので、我々も彼らを承認するかどうかはわからない」

「コンスタンティノープルの顔に泥を塗る予定ですが、コンスタンティノープルから独立正教会として承認されると思ってます」というこれまた凄い発言。
 今、東方正教会は歴史上もっとも言論の自由を謳歌する時代。

 とはいうものの、マケドニア(北マケドニア共和国)を管轄権に持つセルビア正教会の聖シノドが、マケドニアについてなんらかの検討をおこなっているという情報が出てきています。
 そして、同教会のアメリカの主教が一人、コンスタンティノープル支持を表明しているらしく、またもや混沌の予感。
 セルビア正教会の海外の教会組織については、オーストラリアとニュージーランドの新グラディシュカ府主教庁の件が解決して以来、特に問題は残っていないのではないかと思いますが、親コンスタンティノープル・反ロシアがこの主教一人ということも考えにくいので、にわかにセルビア正教会の海外の組織が気になってくるところです。

 


 

 キリスト教/ローマ・カトリック教会/ウクライナ東方典礼カトリック教会【UGCC】の首座/キエフ=ハリチ首位大司教スヴャトスラフ・シェウチューク大司教座下:
「唯一の Patriarchate (総主教庁 or 総大司教庁)を設立し、ローマ及びコンスタンティノープルとデュアル=コミュニオンを結ぼう」

 要するにローマからもコンスタンティノープルからも認められる教会を設立しようということをですが、ローマもコンスタンティノープルもそんなつもりはないのに、なにをいうとるのか、とまったくもって相手にされていませんでした。でもあきらめていない様子

 なお、前述の OCU の首座エピファニー府主教は、「 OCU と UGCC はともに愛国的な教会組織」というような発言をしています。
 おっしゃりたい欲はわからなくもないですが、えーと、あなた方のことは、ウクライナ天主教愛国会ズとお呼びすればいいですか?

 


 

 在外ロシア正教会:
「もはやコンスタンティノープル自体が教会法上非合法な存在」

 昨年の話ですが、コンスタンティノープルの管轄権下にある西欧ロシア正教会大主教区のイタリア司祭長区のひとつの聖堂と信徒たちが、在外ロシア正教会に現在の情勢について尋ねたところ、上記の回答をえたため、同大主教区を離脱して在外ロシア正教会の管轄権下に入るということがありました。
 ここまでは「そうですか」という話ですが、これについて大主教区の首座ジャン大主教が、在外ロシア正教会側に抗議する(そりゃするでしょう)などをしていたところ、一月も経たないうちにコンスタンティノープルが西欧ロシア正教会大主教区の総主教代理区としての地位を剥奪、集団としての解体を要求し始めるという摩訶不思議な事態に。「うちの子分がロシアに嫌がらせを受けているぞ。よし、その子分をつぶそう」ということです。
 現在、同大主教区は、議論を重ねつつ、教会法上合法かつ自治的な権限を持つ集団であり続ける方向を模索していますが、コンスタンティノープルとのコミュニオンにあることを教会法上合法とする限り難しいでしょう。
 フィラレート名誉総主教と違い、何の罪もない、じゃなかった騙されたわけでもないのに、崩壊していく大主教区に同情してもいいところですが、もはや「教会法上合法」とかいわれるだけで失笑気味なので同情できません

 ところで、この項目の発言を読んでから、ページトップの悲痛な叫びを読んでいただくと、より一層事態がわかりやすいのではないかと思います。