キリスト教/キプロス大主教クリソストモス2世座下が、ロシア正教会ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下と会見(2019年6月)ロシア大使が同行

 2019年6月8日、キリスト教/東方正教会/キプロス正教会の首座/ノヴァ・ユスティニアナと全キプロスの大主教クリソストモス2世座下(His Beatitude Archbishop Chrysostomos II of Nova Justiniana and all Cyprus)は、同地を訪問したキリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下(ヒラリオン府主教 : His Eminence Metropolitan Hilarion of Volokolamsk, chairman of the Moscow Patriarchate’s Department for External Church Relations (DECR))と会見しました。
 キプロス共和国駐箚ロシア連邦特命全権大使スタニスラフ・ヴィリオロヴィチ・オサドチー閣下(His Excellency Mr Stanislav Viliorovich Osadchiy)が同行。

 

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Metropolitan Hilarion of Volokolamsk meets with Archbishop Chrysostomos of Cyprus | The Russian Orthodox Church
 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Metropolitan Hilarion of Volokolamsk meets with Archbishop Chrysostomos of Cyprus / News / Patriarchate.ru
 (ギリシャ語:キプロス正教会公式サイト)Ο Μητροπολίτης Βολοκολάμσκ κ. Ιλαρίων στον Μακαριώτατο Προκαθήμενο της Αποστολικής Εκκλησίας Κύπρου – Εκκλησία της Κύπρου
 (英語)Metropolitan Hilarion to Archbishop Chrysostomos of Cyprus – Romfea News

 

 ウクライナ問題が討議され、クリソストモス2世座下から、いくつかの提案がなされたようです。
 提案の一つは、前々からいわれているロシア正教会が(モスクワ総主教庁系の)ウクライナ正教会の独立を承認するというものとみられていますが、いったいこれが今の段階でなんの解決策になるのか、それをまず説明して欲しいものです。
 ほかにも提案はあったようなのですが、いずれにせよ、実効性や、時間切れ(ギリシャ正教会によるコンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】の承認が近いという観測)の問題など、そろそろもうダメだねという共通理解を作る時期に思えます。

 一連の問題の根本は、コンスタンティノープルが一方的に問題だらけの何かを決定して撤回しない場合にそれに従わなければならないのか・コンスタンティノープルにコミュニオンを解除された場合には東方正教会の教会法上合法な教会でなくなってしまうのかということにあり、コンスタンティノープルと完全に縁を切る選択肢がロシア正教会からすら出ていない以上、答えはもう出ているとしか判断できません。
 したがって、「従いたくねえなあ」とグズグズするだけの状態が続いていますが、外側は冷酷な判断を下しています。
 カトリック系の英語メディアでは、日本語で「独立正教会」とされているものを、「Autocephalyというランクの自治権を認められている集団」 として説明しているところもあり、東方正教会というものは要するにコンスタンティノープル総主教とそれに属する集団であると(ローマ教皇と東方典礼カトリック教会の相似として)理解されてきています。
 プーチン大統領とローマ教皇の会談がおこなわれる観測の一つとして、ロシア側がロシア国内のカトリックに対してもう少し待遇を良くする代わりにローマ教皇にモスクワを訪問(ローマ側も希望していること)してもらってロシア正教会とモスクワ総主教のプレゼンスを高めるような発言をしてもらうという交換条件が提示されるのではないかというものがあります。モスクワ総主教庁はローマ教皇のモスクワ訪問について時期尚早としていますが、プーチン大統領が問題をちっとも解決できそうにないロシア正教会に苛立ちを感じていても不思議ではないため、強引にことを運んでローマ教皇の「お言葉」によりロシア正教会の格をあげてコンスタンティノープルに方針転換を迫るということです。事の真偽はともかくとして、もはやローマ教皇の介入を持ち出さなければコンスタンティノープルに押し切られるというのはあながち間違いとも思えません。しかし、モスクワ総主教庁系のウクライナ正教会【UOC】は、ローマこそが今回の問題の根本として声明を出しており、さらに問題をややこしくする可能性もあります。また、正教会系のメディアには、ローマ教皇のモスクワ訪問が起これば正教会の終わりだと意見表明しているところもあり、妙な波紋が広がる可能性もあります。