シスマ2018:キリスト教/アレクサンドリア総主教セオドロス2世聖下とポーランド正教会首座サワ府主教座下が共同声明(2018年9月)

【シスマ2018~】 ウクライナへの独立正教会設置を巡るコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立とそれに端を発した出来事の記事一覧

 

 2018年9月21日付で、ポーランド共和国訪問中のキリスト教/東方正教会/アレクサンドリア・全アフリカ総主教セオドロス2世聖下(His Beatitude Theodoros II, Pope and Patriarch of Alexandria and All Africa)とキリスト教/東方正教会/ポーランド正教会の首座/ワルシャワ・全ポーランド府主教サワ座下(His Beatitude Metropolitan Sawa of Warsaw and All Poland)は、コンスタンティノープルが独立正教会を設置しようとしていることにともなうウクライナの東方正教会の現状に関する共同声明を発表しました。

 

 (ギリシャ語:東方正教会アレクサンドリア総主教庁公式サイト)— [ Greek Orthodox ] — | EKΚΛΗΣΗ ΤΩΝ ΔΥΟ ΠΡΟΚΑΘΗΜΕΝΩΝ

 (ポーランド語:ポーランド正教会公式サイト)ORTHODOX | Komunikat Kancelarii Metropolity
 (PDFファイル直接リンクApel-Ukraina.pdf

 

 両方とも画像ファイル(片方はPDFですがスキャンしただけみたいで、しかも文字がかすれています)です。
 内容自体も遠回しなものですが(どうしたらいいか良い智慧がないからでしょうが)、全地総主教庁によるウクライナへの独立正教会設置は、東方正教会全体にとっていかがなものかというような意味合いになるでしょうか。

 

 (英語)Alexandrian and Polish primates call for peace in Ukraine over autocephaly issue / OrthoChristian.Com

 

 (ウクライナ語:ウクライナ正教会公式サイト)Предстоятелі Олександрійскої та Польської Церков звернулися із закликом допомогти спільно вирішити «церковні непорозуміння, пов’язані з наданням автокефалії Українській Церкві» – Українська Православна Церква

 

 (ルーマニア語:ルーマニア正教会通信)Declarație comună privind situația Ucrainei semnată de Patriarhul Alexandriei și Mitropolitul Poloniei – Basilica.ro
 (英語:ルーマニア正教会通信)Joint declaration of Patriarch Theodoros of Alexandria and Metropolitan Sawa of Warsaw regarding the situation of Ukraine – Basilica.ro

Declarația comună a fost semnată la… – Agenția de știri Basilica | Facebook

Basilica.roさんのツイート: "Declarația comună a fost semnată la finalul Sfintei Liturghii concelebrate vineri la Biserica Nașterea Maicii Domnului din Bielsko Podlaski. https://t.co/p5wbmbTfvW"

 

 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Предстоятели Александрийской и Польской Православных Церквей выступили с призывом в связи с событиями, касающимися положения Православия на Украине / Новости / Патриархия.ru
 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Предстоятели Александрийской и Польской Православных Церквей выступили с призывом в связи с событиями, касающимися положения Православия на Украине | Русская Православная Церковь
 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Primates of the Church of Alexandria and Polish Orthodox Church issue appeal concerning the situation of Orthodoxy in Ukraine | The Russian Orthodox Church

 

追記:
 なお、曖昧な内容なため、例によってウクライナ系メディアが自分に都合のいいように(二人は独立正教会設置支持だと)報道しているようです。
 はっきりいって現時点でこんな曖昧な声明を出す両首座も無責任で、ニュートラルでいられるということはもはやありえないと思います。

 

キリスト教/東方正教会/エルサレム総主教セオフィロス3世聖下がロシア正教会のサンクトペテルブルク・ラドガ府主教ヴァルソノフィー座下と会見、勲章を授与(2018年9月)

【シスマ2018~】 ウクライナへの独立正教会設置を巡るコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立とそれに端を発した出来事の記事一覧

 

 2018年9月17日、キリスト教/東方正教会/エルサレム・全パレスチナ総主教セオフィロス3世聖下(His Beatitude Theophilos III, Patriarch of Jerusalem and All Palestine)は、エルサレム巡礼中のキリスト教/東方正教会/ロシア正教会/サンクトペテルブルク・ラドガ府主教ヴァルソノフィー座下(His Eminence Metropolitan Varsonofy of St. Petersburg and Ladoga)と会見しました。
 エルサレム総主教庁から、コンスタンティナ大主教アリスタルコス座下(Geronda Secretary-General Most Reverend Archbishop Aristarchos of Constantina)らが同席。

 セオフィロス3世聖下は、ヴァルソノフィー府主教座下に聖十字勲章【聖墳墓十字勲章?】第一等を授与。
 府主教座下は、モスクワ総主教キリル聖下からの挨拶を伝え、また、セオフィロス3世聖下が、モスクワ総主教庁系のウクライナ正教会の首座/キエフ・全ウクライナ府主教オヌフリー座下(His Beatitude Metropolitan Onufriy of Kiev and All Ukraine)を支持していることに感謝しました。

※セオフィロス3世聖下は、まだコンスタンティノープル全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の間がここまで悪化する前に、オヌフリー座下について「神がウクライナの難局を乗り越えるために選んだ人物」という発言をしています。今では「しまった」と思っているかもしれません。

 

Jerusalem Patriarchate(東方正教会エルサレム総主教庁公式チャンネル):
O ΜΑΚΑΡΙΩΤΑΤΟΣ ΠΑΡΑΣΗΜΟΦΟΡΕΙ ΤΟΝ ΣΕΒΑΣΜΙΩΤΑΤΟ ΜΗΤΡΟΠΟΛΙΤΗ ΑΓΙΑΣ ΠΕΤΡΟΥΠΟΛΕΩΣ Κ. ΒΑΡΣΑΝΟΥΦΙΟ – YouTube

 

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Chancellor of the Moscow Patriarchate meets with Primate of the Orthodox Church of Jerusalem | The Russian Orthodox Church

 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Управляющий делами Московской Патриархии встретился с Предстоятелем Иерусалимской Православной Церкви / Новости / Патриархия.ru
 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Управляющий делами Московской Патриархии встретился с Предстоятелем Иерусалимской Православной Церкви | Русская Православная Церковь

 

O ΜΑΚΑΡΙΩΤΑΤΟΣ ΠΑΡΑΣΗΜΟΦΟΡΕΙ ΤΟΝ… – Jerusalem-Patriarchate | Facebook

 

 このほか、ヴァルソノフィー座下は、エルサレム総主教庁のエレノポレオス府主教イオアキム座下(His Eminence Metropolitan Ioachim of Helenoupolis)と共同礼拝をおこないました。

 

シスマ2018~:キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教庁からウクライナに送られた「キエフにおける総主教代理」二名がウクライナ大統領を訪問(2018年9月)

【シスマ2018~】 ウクライナへの独立正教会設置を巡るコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立とそれに端を発した出来事の記事一覧

 

 2018年9月17日、キリスト教/東方正教会/全地総主教庁から、「キエフにおける総主教代理」に叙任された二名、
 アメリカ合衆国ウクライナ正教会(Ukrainian Orthodox Church of the USA)のパンフィロン大主教ダニエル座下(His Eminence Archbishop Daniel, Archbishop of Pamphilon)、
 カナダ・ウクライナ正教会(Ukrainian Orthodox Church of Canada)のエドモントン・西部教区主教イラリオン座下(His Grace, the Right Reverend Bishop Ilarion, Bishop of Edmonton and the Western Eparchy)、
 は、
 ウクライナ大統領ペトロ・ポロシェンコ閣下(His Excellency Mr Petro Poroshenko)を訪問しました。

 

Адміністрація Президента України(ウクライナ大統領府公式チャンネル):
Зустріч Президента з Екзархами Вселенського патріархату в Україні – YouTube

 

 (英語:ウクライナ大統領府公式サイト)We came to work on the fait accompli – meeting of the President with the Exarchs of the Ecumenical Patriarchate in Ukraine — Official website of the President of Ukraine
 (英語)We are on an “extraordinary mission” Constantinople exarchs tell Poroshenko / OrthoChristian.Com

 

 両座下は、「キエフ総主教庁」および「ウクライナ独立正教会」以外にも、ロシア正教会系のウクライナ正教会の首座/キエフ・全ウクライナ府主教オヌフリー座下(His Beatitude Metropolitan Onufriy of Kiev and All Ukraine)を含む他の団体(といってもこの三つ以外は少数団体もいいところでしょうが)にも会う用意があるとしています。
 これは、全地総主教庁はウクライナに複数の独立正教会を容認する用意はないとみてもいいのではないでしょうか(合流させた一つの教会を独立正教会と認めると)。

 さて、オヌフリー座下は、座下の許諾なしに管轄権内に入った総主教代理二名とは会わないと声明を出しています。
 しかし、歴史上何人もの高位聖職者が前言を翻し、新たな立場に身を置いてきました。
 また、オヌフリー座下が会わないとしても、同教会から裏切り者が出る可能性もあります。

 

この記事を書いている時点で、会見のライブ動画の再生数は 19万回 となっています:
Петро Порошенко – Зустріч з Екзархами Вселенського Патріархату | Facebook

 

Петро Порошенкоさんのツイート: "Початок місії Екзархів Вселенського патріархату в Україні Архієпископа Даниїла та Єпископа Іларіона є надзвичайно важливою подією для усіх православних в Україні.… https://t.co/049VVeE4VQ"

 

Петро Порошенкоさんのツイート: "Дякую за великий особистий внесок Архієпископа Памфільського і Західної Єпархії УПЦ в США Даніїла і Єпископа Едмонтону і Захiдної Єпархії УПЦ в Канаді Іларіона, щоб Єдина Помісна Православна Церква наблизилася. Ми віримо, що вона точно стане можливою.… https://t.co/s6mEL99Uyp"

 

シスマ2018~:キリスト教/ロシア正教会ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下が「コンスタンティノープルが総主教代理を二名送ってきたのは主教叙聖には二名必要だから」(2018年9月)「教会法上合法でない教会の主教たちを“合法化”できる」

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 (英語)Constantinople exarchs in Ukraine could be planning to reconsecrate schismatic bishops—Met. Hilarion (Alfeyev) / OrthoChristian.Com

 

 キリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下(ヒラリオン府主教 : His Eminence Metropolitan Hilarion of Volokolamsk, chairman of the Moscow Patriarchate’s Department for External Church Relations (DECR))は、インタビューに答え、コンスタンティノープルの全地総主教庁が二名の総主教代理を送ってきたことについて、

 「通常、同じ地への総主教代理は一名」

 「主教叙聖には最低でも二名の主教が必要」

 「教会法上合法でない教会(“キエフ総主教庁”と“ウクライナ独立正教会”)の“主教”を合法な主教とするため二名来ているのだろう」

 と述べているようです。

 

 「二名」が送られてきたことから全地総主教庁側が本気であることを想定しているようです。両者のコミュニオンの完全な解除は間違いないと思ってもいいでしょう。

 とはいうものの、そうなってもまた結びなおすことはできるわけで、これはまだ割とよくある段階です。大きなものでも歴史上何回かはあるものです。

 しかし、これからの動きの中で、コンスタンティノープルの全地総主教庁の権威が完全に失墜した場合、東方正教会という枠組みはどうなるのか、これはわかりません。

 

シスマ2018~:キリスト教/ベラルーシ独立正教会【BAOC】(ロシア正教会系のベラルーシ正教会とは無関係)の首座が、自分たちも独立正教会と認められるべき存在と述べる(2018年9月)

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 キリスト教/東方正教会の教会法上合法とみなされていないベラルーシ独立正教会【BAOC】の首座/ナヴァフルダク大主教スヴャタスラウ座下(His Eminence Archbishop Sviataslaŭ of Novogrudok)が、ウクライナのニュースサイトのインタビューに答え、ベラルーシ独立正教会もまた独立正教会と認められるべき存在と述べたようです。

 

 (ウクライナ語)Церква Білорусі має канонічні підстави для оголошення автокефалії – архієпископ Святослав Логін
 (英語)Belarusian schismatics emboldened by Constantinople’s actions in Ukraine, hope for autocephaly too / OrthoChristian.Com

 

 この教会は、教会法上合法やらうんぬん以前に組織の体をなしていないという報道もされていたりします(とはいえその報道もあてになるかどうかわかりませんが)。
 スヴャタスラウ座下はウクライナ独立正教会【UAOC】と関わりを持っていた人物です。
 インタビューは理屈やきれいごとが多くて、実情がつかめないところがありますが、ベラルーシ独立正教会の独立を承認できるのはコンスタンティノープル全地総主教庁か“キエフ府主教庁”と述べており、必ずしも全地総主教庁ではなく、自らがすでに関わりを持っているウクライナ独立正教会から独立正教会として承認されるという選択もありうるということでしょう。これは全地総主教庁も想定しない状況(彼らが独立を認めたウクライナの正教会が、反ロシアのためにポンポンと他の独立正教会を認める)に入ってくる可能性が出てきました。
 エストニアも例示(同じように独立正教会として認められるべき)として出ていますが、全地総主教庁はそのつもりがない上に、大統領がモスクワ総主教直轄の女子修道院を訪問して友好を示そうとしている時期にこんなことを勝手にいわれても、エストニア共和国の政治家もうれしくもなんともないでしょう。数年前の反ロシアバブル時代ならともかく、バルト三国とフィンランドの政治家は、ウクライナの対ロシア政治情勢に巻き込まれることを望んでいません。

 ともあれ、状況はどんどん混沌へと向かうか、あるいはロシアのプーチン大統領をはじめとする政治家たちの手打ちによって押さえつけられるか、どちらかになりそうです。
 しかし、統一は失われる可能性が高いのではないでしょうか。
 ロシア正教会は、全地総主教庁とのフル・コミュニオンが必要ない理由をひねり出すでしょうし、Eastern Orthodox Church は終わり、Eastern Orthodox Churchesの時代になる、そんな気がします。
 もちろん数十年かかる気もしますが。