シスマ2018:ギリシャの正教会系メディア「ΒΗΜΑ ΟΡΘΟΔΟΞΙΑΣ」が、ロシア大統領ウラジーミル・プーチン閣下の第6回在外同胞世界会議でのコメントを「ウクライナにおけるコンスタンティノープルの全地総主教庁の行動を批判」「シスマに関する初の意見表明」と報道(2018年10月)ロシア系メディアはこの件について特に報道せず

 ロシア連邦では、第6回在外同胞世界会議(6th World Congress of Compatriots Living Abroad)というものが開催されています。海外に在住するロシア人との絆を維持していくための行事のようです。
 2018年10月31日、ロシア連邦大統領ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・プーチン閣下(His Excellency Mr Vladimir Vladimirovich Putin)が、スピーチをおこなった模様です。
 ギリシャの正教会系メディア「ΒΗΜΑ ΟΡΘΟΔΟΞΙΑΣ」は、プーチン大統領が「ウクライナにおけるコンスタンティノープルの全地総主教庁の行動を批判」「シスマに関する初の意見表明」と報道しています。

 

 (ギリシャ語)Ο Πούτιν προς Οικουμενικό Πατριαρχείο: Οποιος πολιτικοποιεί τη θρησκεία θα έχει συνέπειες – ΒΗΜΑ ΟΡΘΟΔΟΞΙΑΣ

 

 一方で、ロシア系メディアは、第6回在外同胞世界会議が始まったことと、プーチン大統領がスピーチをおこなったことは記事にしているものの、教会に関する発言を重要視していない、というか教会に関する部分の発言を報道しているものを見かけません
 スピーチ内容がクレムリンの公式サイトにあったので(とりあえず英語版を)チェックしてみましたが……

 

 (英語:ロシア大統領府【クレムリン】公式サイト)World Congress of Compatriots Living Abroad • President of Russia

I must also say a few more words about the efforts of the Russian Orthodox Church and other traditional national confessions, including Islam, Judaism and Buddhism. I can see many representatives of these religions in this hall, and I would like to welcome them. I want to thank them for their efforts to strengthen cultural and humanitarian ties between our compatriots abroad and Russia. Unfortunately, some are now trying to sever these ties, one way or another, and to force these people to stay in their respective countries. I would like to note one thing: political intrigues in this sensitive sphere have always spelled dire consequences, primarily for those who are doing this. It is our shared duty (to the people, in the first place) to do everything possible to preserve spiritual and historical unity.

 該当部分はおそらくここでしょう。
 確かに「ロシア正教会」という単語はあり、「私は一つのことを指摘したい:この慎重に扱うべき領域における政治的策謀は、それをおこなったものたちをはじめとして、常に深刻な結果を招いてきた」という部分はシスマに関するコメントに思えます。
 一方、イスラム教、ユダヤ教、仏教の名も並んでおり、コンスタンティノープルの全地総主教庁の名称を出しているわけでもないので、現今の世界情勢(反ロシア)と歴史について一般論を語っただけのように取ることもできます。

 すでにロシア大統領報道官ペスコフ氏が「クレムリンはロシア正教会の懸念を共有」と述べており、ロシア系メディアがスルーしているところをみると、今回の発言は気にするものではないのでしょう。

 

 とはいえ、東方正教会の信徒の中で最大の影響力を持つ政治家の発言なので、宗教に関して発言した場合に東方正教会系メディアが報道するのは、過敏とまでいうのかはわかりませんが。

 

President of Russiaさんのツイート: "At the World Congress of Compatriots, the President announced the approval of the 2019–2025 State Migration Policy Concept https://t.co/8Q36dHPwBg… https://t.co/jK4gfkG9AA"

 

追記:
 ΡΟΜΦΑΙΑ(Romfea.gr)(の引用元記事)は、プーチン大統領が批判している対象を第一にアメリカ合衆国としています。
 また、ロシア外交筋がギリシャ政府に対して、ロシア寄りの姿勢を示すよう要求しているとしています。

 (ギリシャ語)Πούτιν για αυτοκεφαλία στην Ουκρανία: ''Θα υπάρξουν σοβαρότατες συνέπειες''

 

 【シスマ2018 – The Schism of 2018】<東方正教会大分裂>: ウクライナへの独立正教会設置から始まったコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立とそれに端を発した出来事及びその他のシスマ的な出来事の記事一覧など<東方正教会内戦、大分裂、そして崩壊?>

 

キリスト教/ベラルーシ正教会首座パーヴェル府主教座下が、ベラルーシ駐箚のアルメニア大使と会見(2018年10月)

 2018年10月26日、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁下でわずかな自治的な権限を保有するベラルーシ正教会【全ベラルーシにおける総主教代理区】首座/ミンスク・ザスラーヴリ府主教パーヴェル座下(His Eminence Metropolitan PaulPavel】of Minsk and Zaslavl, The Patriarchal Exarch of All Belarus)は、新任のベラルーシ共和国駐箚アルメニア共和国大使アルメン・ゲヴォンジャン閣下(His Excellency Mr Armen Ghevondyan)と会見しました。

 

 (ロシア語:ベラルーシ正教会公式サイト)Состоялась встреча митрополита Павла с Послом Армении в Беларуси | Межрелигиозный диалог | Белорусская Православная Церковь | Новости | Официальный портал Белорусской Православной Церкви

 

 大使からパーヴェル座下に、キリスト教/オリエント正教会/アルメニア使徒教会/全アルメニア人のカトリコス・最高総主教ガレギン2世聖下(His Holiness Karekin IIGaregin II】, Supreme Patriarch and Catholicos of All Armenians)からの書籍の贈り物が手渡され、パーヴェル座下からガレギン2世聖下へ返礼のイコンが贈られたようです。

 

Белорусская Православная… – Белорусская Православная Церковь | Facebook

 

キリスト教/カンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビー座下が、コンスタンティノープルの全地総主教バルソロメオス聖下を訪問(2018年10月)

 2018年10月19日、キリスト教/アングリカン・コミュニオン/英国国教会/カンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビー座下(全イングランド首座 : The Most Reverend and Right Honourable Justin Welby : His Grace The Lord Archbishop of Canterbury : Primate of All England)は、キリスト教/東方正教会首席/コンスタンティノープル=新ローマ大主教・全地総主教バルソロメオス聖下(バーソロミュー1世世界総主教バルトロマイ1世ヴァルソロメオス1世 : His All-Holiness Bartholomew, Archbishop of Constantinople-New Rome and Ecumenical Patriarch)を訪問しました。

 

 (英語:カンタベリー大主教公式サイト)Archbishop of Canterbury visits Ecumenical Patriarch in Istanbul | The Archbishop Of Canterbury

 

Lambeth Palace نさんのツイート: "Archbishop @JustinWelby visited the Ecumenical Patriarch in Istanbul today. Find out more: https://t.co/hA2rYgMOAV… "

 

 会談中、バルソロメオス聖下は、ジャスティン・ウェルビー座下に、ウクライナ及びマケドニア共和国(マケドニア旧ユーゴスラビア共和国 : FYROM)における全地総主教庁の立場を伝えた模様。
※ジャスティン・ウェルビー座下は、昨年【2017年】11月にロシア正教会モスクワ総主教キリル聖下よりロシア正教会側の立場を説明されている模様。

 上記リンクのカンタベリー大主教公式サイトの記事末尾には、ジャスティン・ウェルビー座下のコメントとして「ウクライナで持ち上がっている(東方正教会の)教会法上の問題は東方正教会が対処する問題」という主旨から始まる、外部の教会の人がコメントしそうな短いコメントが末尾に掲載されています。

 

関連:
 【シスマ2018 – The Schism of 2018】<東方正教会大分裂>: ウクライナへの独立正教会設置から始まったコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立とそれに端を発した出来事及びその他のシスマ的な出来事の記事一覧など<大分裂、または崩壊?>

 

キリスト教/ロシア正教会とアッシリア東方教会の第三回教会間対話がおこなわれる(2018年10月)

 ロシア連邦サンクトペテルブルクで、2018年10月23日~27日の期間でキリスト教/東方正教会/ロシア正教会とキリスト教/アッシリア東方教会の第三回教会間対話(年次)がおこなわれている模様です。

 出席者は、
 ロシア正教会側から、クラスノスロボツク・テムニコフ主教クリメント座下(His Grace Bishop Kliment of Krasnoslobodsk and Temnikov)ら、
 アッシリア東方教会側から、
 カリフォルニア主教“マル”・アワ・ロイェル座下(His Grace Mar Awa Royel, Bishop of California)、
 ジョージ・カノン・トマ補佐主教(Cor-Bishop George Kanon Toma)、らが出席。

 両教会間の関係の進展や、中東のキリスト者の現状、東方正教会のウクライナにおける教会分裂への懸念などが話し合われたようです。

 

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Commission for Dialogue between the Russian Orthodox Church and the Assyrian Church of the East holds its third meeting | The Russian Orthodox Church
 (英語:アッシリア東方教会ニュース)Commission for Dialogue between the Assyrian Church of the East and the Russian Orthodox Church holds its third meeting | Assyrian Church News

 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Состоялось третье заседание Комиссии по диалогу между Русской Православной Церковью и Ассирийской Церковью Востока / Новости / Патриархия.ru
 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Состоялось третье заседание Комиссии по диалогу между Русской Православной Церковью и Ассирийской Церковью Востока | Русская Православная Церковь

 (英語)Third Annual Bilateral Dialogue between the Russian Orthodox Church & the Assyrian Church of the East – 2018 – News | Orthodoxy Cognate PAGE

 

Members of the Commission for Bilateral… – Holy Apostolic Catholic Assyrian Church of the East | Facebook

 

映像(アラビア語・英語字幕):キリスト教/コプト正教会の修道士がイスラエル警察に“暴力”を受けた件でアレクサンドリア教皇タワドロス2世聖下がそもそもの問題を説明する動画(2018年10月)イスラエル政府とエチオピア正教会を批判

 エルサレムのスルタン修道院問題で、イスラエル警察の対応に抗議していたコプト正教会の修道士が手錠をかけられ地べたに押しつけられひきずられた件で、キリスト教/オリエント正教会/コプト正教会の首座/アレクサンドリア教皇タワドロス2世聖下(His Holiness Pope Tawadros II of Alexandria)による状況を説明する動画がアップロードされています。

 

アラビア語・英語字幕(なお、ざっと聞いただけですが、字幕の字句は多少単語が削られている気がします)/
Christian Youth Channel:
H H Pope Tawadros II Word regarding the Incident of attacking the Coptic Monks in Al Sultan Monaste – YouTube

 

 タワドロス2世教皇聖下によりますと、そもそもの問題は、1970年にエチオピア正教会側がスルタン修道院を“占拠”したことにあるとのこと。

 その後、イスラエル最高裁判所が、コプト正教会の所有であると判決を出したものの、イスラエル政府がそれを実行せず、という状況が延々と続いてきた模様。

 そして、(なぜかはよくわかりませんが)キリスト教/東方正教会/エルサレム・全パレスチナ総主教セオフィロス3世聖下(His Beatitude Theophilos III, Patriarch of Jerusalem and All Palestine)が話し合いをお膳立てして、すべてはまるくおさまったと思っていた(教皇・談)が、2016年にコプト正教会側が修道院の修復作業をおこなおうとしたところ、イスラエル当局が拒否。
(注意:2016年において、どちらが修道院を占有していたのかいまいちわからないところですが……)

 そして、その後、キリスト教/オリエント正教会/エチオピア正教会の首座/エチオピア総主教・カトリコス“アブネ”・マティアス1世聖下(His Holiness Abune Mathias I, Patriarch and Catholicos of Ethiopia)との対話もおこなわれたようです。

 が、今年【2018年】10月に修道院の修復作業はイスラエル政府がおこなうとの通知が来て、23日にイスラエル警察が修道院に入るようになり、そして修道士は(平和的に抗議活動をしていたにもかかわらず)警察に過剰な制圧を受けた……というのがコプト正教会側の主張のようです。

 

制圧の様子:
CopticMediaUKさんのツイート: "Video footage emerging online/on twitter re excessive violence by Israeli police against #Coptic monks in #Jerusalem latest tweet @BishopAngaelos for related news @SkyNews @CNN @Reuters @BBCNews @FrankRGardner @Telegraph @camanpour @ChristianToday @theipaper @PremierNewsDesk… https://t.co/IMuX1xxI39"

 

Christian Youth Channel:
CYC Breaking News 26 Oct 2018 – YouTube

 

 このスルタン修道院の経緯については、いまいちはっきりしないこともあるのですが、上記に加えていくつかのことは指摘できると思います。

 エチオピア正教会はその活動については、きわめて古くからのものとされますが、いっぽうで管轄権としては、コプト正教会の一部であり、1959年にいたるまで独立した教会ではありません。
 このスルタン修道院は、エチオピア系聖職者が関わってきたという情報もありますが、正直このことについては正否はこちらではわかりません。
 しかし、上記のアレクサンドリア教皇によるスルタン修道院がコプト正教会のものだとする根拠として、「イスラエル最高裁判所の判断」などを挙げているのみで、「そもそもエチオピア人は関係ないじゃないか」などとは発言していないところから、少なくともかなりの程度エチオピア人が関わってきたのではないか、と思えます。

 また、イスラエル政府が裁判所の判断を無視してまでなぜエチオピア正教会に肩入れするかですが、一つの可能性として、コプト正教会はエジプトでは少数派にすぎず、彼らのためにエジプト政府が本気でイスラエルと争う可能性はあまりないのに対して、エチオピアではエチオピア正教会は多数派であり(オリエント正教会で最大の信徒数の教会)、エチオピア政府はそのためにイスラエルと争う可能性は十分にあるからではないか、ということが考えられます。

 

 なお、コプト正教会の英国での代表者であるキリスト教/オリエント正教会/コプト正教会/ロンドン大主教【ロンドン大司教】アンゲロス座下(His Eminence Archbishop Angaelos of London)も声明を出しています。

 (英語)The Coptic Orthodox Church UK | Statement from His Eminence Archbishop Angaelos, Coptic Orthodox Archbishop of London on alarming images and videos emerging from Jerusalem of the treatment of Coptic clergy
 (英語)Statement from Archbishop Angaelos on alarming images and videos emerging from Jerusalem of the treatment of Coptic clergy | Bishop Angaelos.org

 

関連:
 キリスト教/コプト正教会の修道士がイスラエル警察に手錠をかけられるなどした件について、エチオピア正教会の聖シノドはコプト正教会を全面的に批判する声明を発表した模様(2018年10月)

 

 以下、余談です。

 東方正教会のエルサレム総主教が調停をおこなったということですが、なぜそれをおこなったおのか、なぜそれを受けたのか、というところがよくわからないところです。もちろんエルサレムのキリスト教関係者で有力、ということはありますが。
 エルサレム総主教自体が、ルーマニア正教会とフル・コミュニオンを解除し(修復済み)、アンティオキア総主教庁からフル・コミュニオンを解除されています(現在も継続)。そして現在のシスマに突入。よその世話をしている暇などなかったのでは……。
 また、東方正教会のシスマに関連していえば、この件もそれと近い構図があるように思えます。伝統的立場は強いものの信徒数では負けており国家の支援も少ないコプト正教会やコンスタンティノープルの全地総主教庁に対し、信徒数と国家の強力な支援を受けているエチオピア正教会やロシア正教会。ただ、東方正教会の因習(ギリシャ系人種が偉い)はまだかなり強いのに対し、コプト正教会の信者については何人と呼べばよいのかもよくわかりません