キリスト教/コンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】首座“エピファニー府主教”が、元ジョージア【グルジア】大統領サーカシヴィリ氏と会見(2019年6月)ジョージア正教会【グルジア正教会】による OCU 承認を目指す方針ですが、逆効果では……

 2019年6月4日、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】首座“エピファニー府主教”は、ミヘイル・サーカシヴィリMikheil Saakashvili)元ジョージア大統領・元ウクライナのオデッサ州知事と会見しました。

ゼレンスキー新大統領により、サーカシヴィリ氏のウクライナ市民権は回復された模様。

 

 (英語)Former President of Georgia Mikheil Saakashvili visited Metropolitan Epiphanius – Romfea News

Romfea.newsさんのツイート: "Former President of Georgia @SaakashviliM met Metropolitan @Epifaniy of the Autocephalous Church of Ukraine on June 4 #romfeanews https://t.co/ea3aKm60de"

 

 両者は、ジョージア正教会【グルジア正教会】など、他の独立正教会による OCU 承認に向けて話し合ったようです。

 ウクライナ問題で、ウクライナ本国を除いて二番目に被害を受けているのはジョージア【グルジア】。
 ロシアの支援を受けてジョージアより事実上分離しているアブハジア共和国では、ロシア正教会モスクワ総主教庁の事実上の管轄下にある「アブハジア正教会」と、ロシア正教会より離れた聖職者らが結成し独立正教会となる(=コンスタンティノープルの承認を受ける)ことを目指している「アブハジア府主教庁」が存在します。
 ジョージア正教会がコンスタンティノープルにつけば、アブハジアは「アブハジア府主教庁」を弾圧し完全な親ロシア姿勢を見せなければならないでしょう。「アブハジア正教会」はロシア正教会の一部となります。そして、ロシアとジョージアの関係は悪化するでしょう。
 ジョージア正教会がモスクワにつけば、コンスタンティノープルは「アブハジア府主教庁」を独立正教会として認定し、アブハジアを「ウクライナ化」するでしょう。また、「ロシアの犬」と化したジョージア正教会はナショナリストに襲撃を受け、ジョージアは内乱状態に陥るかもしれません。
 こうやってみると、どちらもろくなことになりません。ついでにサーカシヴィリ元大統領が OCU にからんできたことにより、ジョージアの現政権は対応が面倒くさくなっています。

 いずれにせよジョージアの未来は暗いです。

 

キリスト教/ロシア正教会モスクワ総主教キリル聖下が、韓国の例の国会議長(文喜相:ムン・ヒサン)と会見(2019年5月)

 2019年5月29日、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会の首座/モスクワ・全ロシア【全ルーシ】総主教キリル聖下(キリール総主教 : His Holiness Kirill, Patriarch of Moscow and all Russia【Rus’】)は、ロシア連邦を訪問した例の韓国の国会議長(文喜相ムン・ヒサンMoon Hee-sang)と会見しました。

 ロシア正教会側から、
 東南アジアにおける総主教代理/シンガポール・東南アジア府主教セルギイ座下(His Eminence Metropolitan Sergiy of Singapore and South-East Asia, Patriarchal Exarch in South-East Asia)、
 同総主教代理区の朝鮮大主教フェオファン座下(His Eminence Archbishop TheophanFeofan】 of Korea)、
 が同席。

 ウクライナに続く、コンスタンティノープルとモスクワの管轄権争いの場になっている朝鮮半島ですが、北朝鮮にはコンスタンティノープルの影響はないので、なにか起こるなら韓国でしょう(すでにモスクワ側が主教区設置と大主教叙任をしていますが)。
 韓国の現政権は、モスクワとコンスタンティノープルの争いにうといらしいということを昨年さらけ出しましたが、今回の議長によるモスクワ総主教訪問はロシア側への謝罪行脚かもしれません。

 

russianchurch(ロシア正教会モスクワ総主教庁公式チャンネル):
Святейший Патриарх Кирилл встретился с Председателем Национального собрания Республики Корея – YouTube

 

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Patriarch Kirill meets with Speaker of the National Assembly of the Republic of Korea | The Russian Orthodox Church

 

キリスト教/コンスタンティノープル管轄権下で一方的に総主教代理区の地位を廃止(2018年11月)された西欧ロシア正教会大主教区。ロシア正教会に“移籍”した場合に関するモスクワ側の提案はこれ以上譲歩の可能性はなさそうな内容だが快諾はない模様(2019年5月)「なにもしない」ことになるのでは

 キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルの管轄権下にあったものの2018年11月にコンスタンティノープルから一方的に総主教代理区としては廃止され、大主教区という集団としても解体されそうな、西欧ロシア正教会大主教区ですが、ロシア正教会に“移籍”した場合に関するモスクワ総主教庁側の回答内容や、聖職者らのコメントなどが散見されます。

 モスクワ総主教庁側の回答内容で目立つのは、“移籍”が成立すれば、同大主教区に(補佐的な職務をおこなう)主教を二名叙聖する用意があるという項目です。
 ジャン大主教座下は、自らが高齢なのにコンスタンティノープルが後継候補の主教を叙聖しようとしないことについて、主教不在による大主教区の消滅を狙ったものだとコメントしていました。
 二名の主教が追加されることにより、(ジャン大主教座下に万が一のことがあっても二名の主教が残っているので)東方の教会の伝統(新たな主教はすでに主教となっているもの二名によって叙聖される)を守ることが可能になります。
※余談ですが、この「自然消滅を狙って新規の主教叙聖をおこなわない」というのは、キリスト教/英国正教会【イギリス正教会】がキリスト教/オリエント正教会/コプト正教会より離脱(2015年10月)したときにも観測(コプト正教会は英国正教会の自然消滅)としてあったものです。素性の違う連中が寄り集まっている自治的な集団を解消しようという発想はどこにでもあるということでしょうか。

 また、大主教区そのものについては、ロシア正教会の西欧における総主教代理区に属するものではないとも明言された模様。
 自治的な内容については、詳細ははっきりしませんが……。

 これらの内容からすれば、ロシア正教会側の提案は、これ以上の譲歩の可能性はほぼない(詳細がはっきりしない自治的な内容に関してはともかく)ものですが、大主教区側はこの内容について積極的に受け入れようとする空気は、そこまで広がっていないようにみえます。
 この原因ですが、いろいろ理屈はいってますが、結局のところ、彼らのいう「教会法上合法」というのが、コンスタンティノープルまたはコンスタンティノープルとフル・コミュニオンの状態にある教会に属することであるため、コンスタンティノープルの指示に逆らって行動を起こすということがおかしいということにあるのでないかと思います。
 ロシア正教会側は、この大主教区を受け入れる(自らに戻す)ことは悲願で、達成したいはずですが、一方、現在出している条件ではいつまたコンスタンティノープル側に裏切るかわからない連中が裏切るのを止める方法がないわけで、ここまで出したならここが限界でしょう。本音を言えば、教会財産をすべてモスクワに戻して、大主教区をつぶしたいはずです。
 また、大主教区側には、21世紀に入ってから“裏切った”人々が含まれており、彼らの教会財産や聖職者の地位に対しては、どれだけ保証されるかはわかりません。というか、たぶん財産をすべてモスクワが接収して、聖職者は僻地の修道院かどこかに押し込めると思います(こうなるかはわかりませんが、報復処置がおこなわれそうなほのめかしはあるようです)。

 いずれにせよ、この条件で受け入れられないならば、可能性はもうないわけで、9月7日に臨時総会としたのも、その頃までになにか奇跡が起こってすべてうまくいくといいねみたいななげやりな日程設定だったのでしょう。

 それにしても、あきれるのは、「コンスタンティノープルとモスクワの争いの被害者にはなりたくない!」という発言で、まるで彼らが両者の争いに無関係であるかのような責任感のなさ。
 21世紀にもなって、モスクワから離脱した人々を受け入れた大主教区の連中がなにをいうか、とあぜんとしました。
 あなた方の存在そのものがコンスタンティノープルとモスクワの争いであり、ウクライナ問題の前哨戦です。

 

ハプスブルク家のエドゥアルト大公殿下(ローマ教皇聖座駐箚ハンガリー大使)が、キリスト教/ローマ教皇フランシスコ聖下のルーマニア訪問への喜びを語る(2019年5月)ハンガリー系コミュニティなどの訪問予定が組まれている模様

 ローマ教皇聖座駐箚ハンガリー特命全権大使の、オーストリア大公エドゥアルト殿下(オーストリア皇子 : ハンガリー王子 : ベーメン王子 : His Imperial and Royal Highness Archduke Eduard of Austria, Prince Imperial of Austria, Prince Royal of Hungary and Bohemia : エドゥアルト・フォン・ハプスブルクEduard von Habsburgエドゥアルト・ハプスブルク=ロートリンゲンEduard Habsburg-Lothringen)が、2019年5月末~6月頭に予定されているキリスト教/ローマ・カトリック教会の首座/ローマ教皇聖座およびバチカン市国の絶対君主/ローマ教皇フランシスコ聖下(His Holiness Pope Francis)のルーマニア訪問への喜びを語っています。
 ハンガリー系コミュニティなどへの訪問予定があるようです。

 エドゥアルト殿下は、いわゆるハンガリー副王系の人物です。

 

 (英語)Hungarian Ambassador to Vatican on pope's trip to Romania: “for us it has a special meaning” | ROME REPORTS

ROME REPORTS in English:
Hungarian Ambassador to Vatican on pope's trip to Romania: “for us it has a special meaning” – YouTube

 

追記:
 聖ヨハネ・パウロ2世のルーマニア訪問時に、これらのハンガリー系コミュニティや教会関係の場への訪問がおこなわれなかったことを考えると(おそらくルーマニア正教会への遠慮でしょうから)、カトリックは、ルーマニア正教会を、そして東方正教会を“格下げ”したのでしょう(融和への努力が実ったと表現しても同じですが)。
 ウクライナをめぐる一連のいざこざというか醜態で東方正教会の敗北は決まりましたが、後は、これからどれくらいカトリック側が東方正教会のメンツを立ててさしあげるのかというところでしょう。
 今回も、おそらく教皇からは、ルーマニア側へのお世辞の数々が出るとは思いますが、もう勝ったと思えば、安いものです。

 

マクシム主教発言問題収束せず:ウクライナ問題を巡ってキリスト教/セルビア正教会の米国西部主教マクシム座下がコンスタンティノープル支持(ウクライナへの独立正教会設置は800年前のセルビア正教会設置と同様)の発言をしたと報道された件 → 教会側が本人の釈明・否定の発言を発表 → その発表内容が捏造だと報道 → 教会側がその報道を否定する声明を発表(2019年5月)

 2019年1月に、キリスト教/東方正教会/セルビア正教会の米国西部主教マクシム座下(His Grace Bishop Maxim【Maksim】 of Western America)が、インタビューを受けるという出来事がありました。
 これはシスマに関連するもの以外も含むものです(ものらしいです)。
 その内容なのですが、ウクライナ問題に関連してコンスタンティノープルを支持といいますか、コンスタンティノープルがウクライナに独立正教会を設置したのはセルビア正教会が独立正教会となったのと同じという内容が含まれており、教会法上非合法な集団をルールを完全に無視して独立正教会としたことをセルビア正教会の設立と同様に言及したことでセルビア正教会の800年の歴史の中でかかる暴言を受けたことはないという怒りの声が報道されたりしていたのですが、今月の同教会の聖シノドにおいて本人が釈明・否定をしたという内容の発表がされていました。
 ところが、5月22日付の報道で、この発表の内容がバチュカ主教イリネイ座下による捏造だというものが出たらしく、またまた教会側が報道を否定する声明を発表する騒ぎになっています。

 

 (セルビア語:セルビア正教会公式サイト)Саопштење за јавност | Српскa Православнa Црквa [Званични сајт]

 

 もしやロシア正教会より統制が取れなくなってきているのでは……。
 もうなにが崩れても驚きません。