キリスト教/アレクサンドリア・全アフリカ総主教セオドロス2世聖下がジンバブエを訪問、ジンバブエ大統領ムナンガグワ閣下と会見(2018年10月)

 キリスト教/東方正教会/アレクサンドリア・全アフリカ総主教セオドロス2世聖下(His Beatitude Theodoros II, Pope and Patriarch of Alexandria and All Africa)は、ジンバブエ共和国を訪問しました。

 聖下は総主教選出までジンバブエ府主教を務めていました。
 セオドロス2世聖下の選出は2004年10月9日ですが(着座は10月24日)、ちょうど14周年となる2018年10月9日にジンバブエ共和国大統領エマソン・ダンブゾ・ムナンガグワ閣下(His Excellency Emmerson Dambudzo Mnangagwa)と会見しました。
 なお、一般的にカメルーン府主教時代に続きジンバブエ教区長時代も府主教と表記されていますが、下記リンクの動画中や記事で「ジンバブエ大主教【Archbishop of Zimbabwe】」となっています。おそらくは(少なくとも最終的には)ジンバブエ大主教だったのでしょう。

※英語通訳が同行していて、聖下が英語を話せないらしいことを初めて知りました。

 

Zimpapers Digital:
His Beatitude, the Pope and Patriarch of Alexandria and All Africa Theodoros II – YouTube

 

 (英語)Pope Theodoros II pledges to market Zim | The Herald
 (英語)Zim future bright, Greek church leader | ZBC News Online

 (ギリシャ語:東方正教会アレクサンドリア総主教庁公式サイト)— [ Greek Orthodox ] — | ΕΟΡΤΑΣΜΟΙ ΣΤΟ ΧΑΡΑΡΕ ΓΙΑ ΤΗ 14Η ΕΠΕΤΕΙΟ ΤΗΣ ΕΚΛΟΓΗΣ ΤΟΥ ΑΛΕΞΑΝΔΡΙΝΟΥ ΠΡΟΚΑΘΗΜΕΝΟΥ
 (ギリシャ語:東方正教会アレクサンドリア総主教庁公式サイト)— [ Greek Orthodox ] — | ΣΥΝΑΝΤΗΣΗ ΠΑΤΡΙΑΡΧΟΥ ΑΛΕΞΑΝΔΡΕΙΑΣ ΜΕΤΑ ΤΟΥ ΠΡΟΕΔΡΟΥ ΤΗΣ ΖΙΜΠΑΜΠΟΥΕ

 (ギリシャ語)Συνάντηση Πατριάρχη Αλεξανδρείας με τον Πρόεδρο της Ζιμπάμπουε

 

The Herald Zimbabweさんのツイート: "CURRENT SITUATION: HE, President ED Mnangagwa meets His Divine Beatitude, the Pope and Patriarch of the Great City of Alexandria of Egypt and All Africa, Theodoros II. @Michellehakata @TafadzwaMugwadi @HChikwanha @manoc9 @caesarzvayi 📸 by Justin Mutenda… https://t.co/wWfOc8HbbD"

 

The Herald Zimbabweさんのツイート: "The meeting is taking place at President Mnangagwa's Munhumutapa Offices, Harare. His Divine, Theodoros II has met global leaders before and those include President of the Russian federation, HE Mr Vladimir Putin before. @Michellehakata @TafadzwaMugwadi @_cosatu @HChikwanha… https://t.co/K9bCUJunlr"

President of the Russian federation, HE Mr Vladimir Putin

 セオドロス2世聖下が会見した世界の指導者として、あえてロシア連邦大統領ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・プーチン閣下(His Excellency Mr Vladimir Vladimirovich Putin)の名前をツイートに含めています。
 深い意味はないのかもしれませんが、ジンバブエでのプーチン大統領の重要性を示しているか、あるいはセオドロス2世聖下が親ロシアであると認知されているかの、いずれかであるかもしれません。

 

TOP STORIES: The Pope and Patriarch of… – The Herald-Zimbabwe | Facebook

 

ZBC News Onlineさんのツイート: "Zim future bright, Greek church leader: https://t.co/p2VlbjZogE… "

 

シスマ2018:ウクライナのメディアが、キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教庁で木曜日まで非公開のシノドが始まったと報道。議題は発表されず(2018年10月)

【シスマ2018】東方正教会大分裂: ウクライナへの独立正教会設置を巡るコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立とそれに端を発した出来事及びその他のシスマ的な出来事の記事一覧

 

 ウクライナからの報道によりますと、2018年10月9日、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルの全地総主教庁で木曜日まで非公開のシノドが始まったようです。

※ギリシャ系のメディアの報道が見当たらないので、万が一のフェイクニュースの可能性もありますが……。

 ともあれ、議題は発表されていませんが、ウクライナへの独立正教会設置の認定とみられています。

 

 (ウクライナ語)Розпочався Синод, який може вирішити долю української автокефалії – BBC News Україна

 

 早ければ10月11日にウクライナ正教会に独立正教会が設置されると発表されます。

 さて、ロシア正教会側は不思議なほど打てる手がありません。
 ユーカリスト・コミュニオンは解除するでしょうが、それにどれだけ意味があるかは不明で、そもそも今よりも厳しい状況ではない時期に解除がおこなわれたこともあり、これに留まるだけであるのなら敗北でしょう。
 かといって、 excommunication や anathema のような破門は他教会の理解は(ここまできてもなお)得られないでしょう。もちろんそれを覚悟で宣言する可能性はあります。

 ほかに打てる手としては、アンティオキア総主教庁になにか動いてもらうことですが、同庁自体がエルサレム総主教庁との問題が解決できておらず、シスマを加速するだけになるかもしれません(いっそ加速させようということでモスクワと合意するかもしれませんが……)。

 アレクサンドリア総主教庁の行動が極めて重要になってきています。
 もし同庁が最期までロシア正教会の味方をしてくれるならば、モスクワ総主教庁はアレクサンドリア総主教庁を新しい“first among equals”に推すだけです。
 アレクサンドリア総主教の“Pope”称号も、これまで「教皇」とするのは例外的でしたが、転換点となるかもしれません。
 エルサレム総主教庁がコンスタンティノープルの全地総主教庁と縁を切ることは極めて考えにくいため、エルサレムと対立してきたアンティオキア総主教庁の合意も得られる可能性はあり、ある程度綺麗な分裂に向かっていくかもしれません。
 とはいえ、アレクサンドリアがそこまで踏み切れるかというと、難しいかとも思われます。
「ここは耐えよう」と説得されるかもしれません。

 とはいえ、なにもしないことはモスクワの敗北を意味します。「モスクワは第三のローマ」ではなく「モスクワはモスクワ」ということになれば、ロシア連邦という国家の権威も落ちる可能性もあります。

 古代四総主教庁が現在位置する国家は、
 コンスタンティノープル = トルコ、
 アンティオキア = シリア
 エルサレム = イスラエル(実効支配)、パレスチナ
 アレクサンドリア = エジプト
 です。
 シリアはロシアとの関係は緊密で、エジプトもロシアとは友好的、トルコ・イスラエルとは政治的な駆け引きがおこなわれる可能性がある程度あります。
 舞台は政治に移るのか。

 

 いずれにせよ、全地総主教庁がウクライナに独立正教会を設置した場合、東方正教会に関連する地域への渡航や、(日本にも存在しますが)東方正教会系統の聖堂・修道院・遺跡などには近づかないほうが良いかもしれません。
 特にウクライナ。個人的には、外務省は「レベル3 渡航は止めてください。(渡航中止勧告)」を全域に出すべきだと思います。

 

シスマ2018:キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教庁系のエストニア使徒正教会が声明内に、モスクワ総主教庁系のウクライナ正教会について「いわゆる“教会法上合法な”教会」と合法性を否定した一文(2018年10月)

 新約聖書/マタイによる福音書/10章/34節 より:

わたしが地上に平和をもたらすために来たと考えるな。平和ではなく剣をもたらすために来たのだ。

【シスマ2018】東方正教会大分裂: ウクライナへの独立正教会設置を巡るコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立とそれに端を発した出来事及びその他のシスマ的な出来事の記事一覧

 

 (エストニア語:エストニア使徒正教会公式サイト)Mõtisklusi Ukrainast – Eesti Apostlik-Õigeusu Kirik

nö “kanooniline” kirik

いわゆる「教会法上合法な」教会

 今回の騒動前まで、コンスタンティノープルの全地総主教庁はモスクワ総主教庁系のウクライナ正教会を教会法上合法な教会として認めていたことは否定できないはずですが、ウクライナの管轄権を放棄したことがないなどの発言が続き、完全にモスクワ総主教庁系のウクライナ正教会の地位を否定しているようです(もちろん管轄権を放棄したことがないなら、モスクワ総主教庁が設置した教会は教会法を無視して勝手に設立されたものなので、合法ではないことになりますが)。

 いずれにせよ、エストニア国内のコンスタンティノープル系とロシア系の東方正教会の対立も再燃するでしょう。
 最近ではロシア正教会との融和を狙ってきたエストニア大統領カリユライド閣下には迷惑なことですが、バルト三国の一員であることはそれ以上に迷惑なことが押し寄せてくることであることなので、さほど動じていないかもしれません。

 

キリスト教/キプロス大主教クリソストモス2世座下が、ロシアのセルゲイ・ ステパーシン(元)首相と会見(2018年10月)

 2018年10月7日、キリスト教/東方正教会/キプロス正教会の首座/ノヴァ・ユスティニアナと全キプロスの大主教クリソストモス2世座下(His Beatitude Archbishop Chrysostomos II of Nova Justiniana and all Cyprus)は、キプロス共和国を訪問中の元ロシア連邦首相セルゲイ・ヴァディモヴィチ・ステパーシン中将(Colonel General Sergei Vadimovich Stepashin)と会見しました。
 ステパーシン(元)首相は一時はエリツィン(当時)大統領の後継候補でしたが、結局そうはならず(プーチン(現)大統領が就任)、現在では Imperial Orthodox Palestine Society (帝立正教パレスチナ協会?)という、ロシア国内及び東方正教会関連の地域を除くとあまり知名度が高くないらしい団体の会長を務めています。

 会談では、経済を含む両国の関係強化や、ロシア正教会信徒のエルサレム巡礼の通過地・正教会関連の遺跡などがあるキプロスの重要性(平たくいえばロシアからの観光)などが語られたようです。

 キプロス共和国では、近年でも、メディアが国営企業民営化の妥当性についてクリソストモス2世座下に質問するなど、大主教の政治・経済との関わりが他国と違うようにも思えます。

 キプロス正教会のタマソス・オレイニ府主教イサイアス座下(His Eminence Metropolitan Isaias of Tamassos and Oreini)が同席。

 

 (ギリシャ語:キプロス正教会公式サイト)Συνάντηση Αρχιεπισκόπου Κύπρου με τον Πρωθυπουργό της Ρωσίας Sergei Stepashin – Εκκλησία της Κύπρου

 (ロシア語)Сергей Степашин посетил на Кипре ставропигиальный мужской монастырь Махерас и Церковь св. Лазаря Четырехдневного
 (ロシア語)Сергей Степашин встретился с Предстоятелем Кипрской Православной Церкви Блаженнейшим Архиепископом Новой Юстинианы и всего Кипра Хризостомом II

 

Γραφείο Ενημερώσεως και Επικοινωνίας της… – Γραφείο Ενημερώσεως και Επικοινωνίας της Εκκλησίας της Κύπρου | Facebook

 

Императорское Православное Палестинское… – Императорское Православное Палестинское Общество | Facebook

 

追記:
 クリソストモス2世座下も、ウクライナの問題について、汎・東方正教会会合を求めている、というロシア・メディアの報道です(ステパーシン元首相の発言から)。

 (ロシア語)Интерфакс-Религия: Архиепископ Кипра выступает против вмешательства политиков в дела Православной церкви на Украине – Степашин
 (英語)Archbishop of Cyprus opposes political interference in Ukrainian Church affairs / OrthoChristian.Com

 なお、会見を報じたギリシャの正教会系メディア「Romfea.gr(ΡΟΜΦΑΙΑ)」はウクライナに関する事項は報じていないようです。
 (ギリシャ語)Στον Αρχιεπίσκοπο Κύπρου ο πρώην Πρωθυπουργός της Ρωσίας Σεργκέι Στεπάσιν

 この、教会の首座らと会見した人物が「首座はこういっていた!」とメディアなど外部に発言する内容は信用できないというのが現在進行中の東方正教会大分裂【シスマ2018】の特徴です。

 キプロス正教会公式サイトにもウクライナに関する話題はなかったので、正否は不明ではあるものの、シスマに積極的に関わりたくない教会のひとつとみておいていいでしょう。
 しかし、ならば、「問題に関わりたくないが、ロシアの金は欲しい」といっているようなものではないかとも思えます。

 

 独立正教会の首座を含む聖職者らが、大きな問題になっているのに普段のきれいごとの説教のような言葉遣いをしたために、ウクライナ系メディアがそれを自分たちの好きなように解釈して報道し、それに対立するためにロシア系メディアが自分たちに都合の良いほうに少し動かして報道する、ということが繰り返され、もはやこの問題について(ウクライナ、ロシア関わらず)メディアの報道は信用できない状況です。

 シスマ2018の最大の問題は、各教会の発信する情報が明確でないために事態がややこしくなっていること。
 そしてそれをまったく反省せずに各教会が曖昧な情報発信を続けていること。
 それらが原因で正確でない情報が拡散し、さらに事態を悪化させていること、となるでしょう。
 部外者の視点ではただただあきれるだけですが……聖職者や信徒らはどう考えているのでしょう。

 

関連:
 【シスマ2018~】 ウクライナへの独立正教会設置を巡るコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立とそれに端を発した出来事の記事一覧

 

キリスト教/東方正教会/教会法上合法でない“マケドニア正教会-オフリド大主教庁【MOC-OA】”が、国名も教会名も「マケドニア」を維持すべきと主張(2018年10月)

 ギリシャ系正教会メディア「ΡΟΜΦΑΙΑ(Romfea.gr)」が MIA (マケドニアのニュース)の報道を引いて記事にしているところによりますと、キリスト教/東方正教会の教会法上合法でない“マケドニア正教会-オフリド大主教庁【MOC-OA】”(以下、MOC-OA)が、国名も教会名も「マケドニア」を維持すべきと主張しているようです。

※MIAのニュースサイトを見てみましたが、英語版・マケドニア語版とも該当記事は見つかりません。

 

 (ギリシャ語)Σχισματική εκκλησία Σκοπίων: «Το όνομα της εκκλησίας και της χώρας να παραμείνει Μακεδονία»

 

 マケドニア共和国(マケドニア旧ユーゴスラビア共和国 : FYROM)は、ユーゴスラビア崩壊後、隣国ギリシャによって国名への「マケドニア」使用が反対され、欧州連合【EU】や北大西洋条約機構【NATO】への加盟も事実上拒否されてきましたが、現在の両国政権により、「国名を北マケドニア共和国に変える」ことで合意がなされました(どちらも厳しい反対意見があります)。

 そんな中で先月末、マケドニア共和国で国民投票がおこなわれましたが、投票率は事前に決めていた目標を下回りました。また、そもそも投票結果は行政府を束縛するものではありません。議会での賛成が必要でした。
 マケドニアの政権はまったくあきらめておらず、NATOやその拡大を目指すアメリカも支持していますが、一方、ロシアは反対している、という、いつもの状況です。

 それはともかくとして、教会の話ですが、MOC-OAは、仲の良いブルガリア正教会と教会法上合法化に向けた取り組みを開始しています(2017年11月報道よりたびたび話が出ます)。
 マケドニア共和国の領域は、セルビア正教会の管轄で、同教会が正教オフリド大主教庁を設置していますが、MOC-OAと同国政府はこれを弾圧してきました。
 MOC-OAの教会法上合法化はセルビア正教会には容認できるものではなく、またロシア正教会もセルビア正教会に同調しています(とはいえ両教会がすべてのことにおいて共同するわけではないことには注意が必要です)。
 そして、コンスタンティノープルの全地総主教庁も、「マケドニアやその派生語を含む名称」は一切認めないとしており、仮に名称を「北マケドニア正教会」としても、全地総主教庁の承認は得られない状況にあります。これはギリシャ国内のマケドニア地方が全地総主教庁の管轄下にあることが理由なのでしょう(ギリシャ国内の管轄権はギリシャ正教会に預けられているともいわれますが、これまでの状況をみるとギリシャ正教会は無視されているように思えます)。

 唯一の道は、教会名に「マケドニアやその派生語を含む名称」を一切入れないことで全地総主教庁の合意を得ることでしょうが、これもまた今回の声明が本気であれば、選択肢に入っていないようです(とはいえ、これまでもいろいろと報道が出ているので、フェイクニュースかもしれません)。

 MOC-OAのスタンスは興味深いですが、もし彼らが現在の立場を維持するならば、コンスタンティノープルの全地総主教庁とフル・コミュニオンに入ることはありえず、一方でロシア正教会モスクワ総主教庁とフル・コミュニオンに入ることもありえなさそうです。