キリスト教/コンスタンティノープル管轄下で一方的に総主教代理区としては廃止された西欧ロシア正教会大主教区の臨時総会が開催、集団としての解体を認めないと決定(2019年2月)

 2019年2月23日、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルの管轄権下にあり、2018年11月にコンスタンティノープルから一方的に総主教代理区としては廃止された、西欧ロシア正教会大主教区の臨時総会が開催されました。
 まだ正式発表はありませんが、 Orthodoxie.com によりますと、組織としての解体の拒否が投票により決定した模様。ただし、この後、どの教会に所属するかについては 6月 にあらたに総会を開いて決めるそうです。

 

 (英語)"Today, we need to choose between life and death" ⋆ Orthodoxie.com
 (英語)The Extraordinary General Assembly of the Archdiocese refused the dissolution ⋆ Orthodoxie.com

 

Orthodoxie.comさんのツイート: "The Extraordinary General Assembly of the Archdiocese refused the dissolution https://t.co/rimEduTWfG… "

 

Orthodoxie.comさんのツイート: "“Today, we need to choose between life and death” https://t.co/ci0CpOFbDC… "

 

 同大主教区の首位大主教ジャン座下(イオアン大主教 : ハリオポリス大主教)は「生か死かを決める日」と述べたようです。
 206人の投票者のうち、191人が組織の解体を拒否。
 大主教区の解体を拒否することがコンスタンティノープルに逆らうこととイコールになるのか(理屈がムチャクチャに振りかざされている現在では)微妙ですが、コンスタンティノープル側も組織の切り崩しを図っているとの話もあり、コンスタンティノープルの管轄権から離脱することになるとは思いますが……それに関する決定は今年【2019年】6月の総会でおこなわれるということで、またもかなり先の話となります。

 今年の前半中に、独立正教会のいくつかがウクライナに関する情勢に関して結論を出す可能性があるため、それを見極めて、ということになると思いますが、これはもうどこにもいけなくなるのではないかという気もします。

 すでにイタリア司祭長区のフィレンツェの聖堂が在外ロシア正教会に移動するなどの動きは起きています。モスクワの管轄権下に移るべきだとする考えの人々は6月を待たずに同様の行動を取る可能性があります。ロシア正教会は昨年12月に「西欧における総主教代理区」を設置(1990年に廃止されたものを再設置)しており、在外ロシア正教会に移るほかに、この総主教代理区に移ることも可能です。また、ある程度大きなグループを形成するなら、これらとは別の、自治的な権限を持つ集団として認めてもらう要請をすることも可能でしょう。
 また、投票で大主教区の解体に賛成した15人が代表を務める小教区は今後大主教区から離脱しコンスタンティノープルの各府主教区の直下の小教区へと移行する可能性もあります。

 

追記:
 OrthoChristian.Com も Orthodoxie.com の記事によりつつ、関係者の声などを加えて記事にしています。

 (英語)Archdiocese of Russian Churches in Western Europe votes against dissolution, discussions continue on which jurisdiction to join / OrthoChristian.Com

 これによりますと、同大主教区が管轄権下に入る先として、ロシア正教会モスクワ総主教庁、(ロシア正教会の管轄権下で自治的な権限を有する)在外ロシア正教会、ルーマニア正教会、アメリカ正教会【OCA】の名前が挙がっています。

 モスクワ総主教庁の管轄権下に入る場合は、独自の聖人の認定(列聖)が可能となる権限を与えられることが必要との認識も示されています(これはモスクワ総主教庁系のウクライナ正教会にはある権利ですが、コンスタンティノープルに独立正教会として承認されたほうの「ウクライナ正教会」には無い権利です)。

 なお、今回の決議に対し、コンスタンティノープル側からジャン大主教座下に神品(聖職者)としての務めの停止を含むような措置がおこなわれた場合、(もちろんその処断は無視して)ジャン大主教座下は礼拝中にキリスト教/東方正教会/ロシア正教会の首座/モスクワ・全ロシア【全ルーシ】総主教キリル聖下(キリール総主教 : His Holiness Kirill, Patriarch of Moscow and all Russia【Rus’】)の名前で祈りを捧げることになるともされています(独立正教会の首座以外の主教らは礼拝の中でそれぞれの独立正教会の首座の名を挙げて祈りを捧げます。現在、ジャン大主教座下は、コンスタンティノープルの管轄権下にあるため、キリスト教/東方正教会首席/コンスタンティノープル=新ローマ大主教・全地総主教バルソロメオス聖下(バーソロミュー1世世界総主教バルトロマイ1世ヴァルソロメオス1世 : His All-Holiness Bartholomew, Archbishop of Constantinople-New Rome and Ecumenical Patriarch)の名前を挙げるわけですが、“処分”があった場合、もはやトップとして扱わないということです)。

 これらの状況を鑑みると、モスクワ総主教庁の交渉を平和裏に(つまり大主教区側の望む条件が通るように)成立させ、 6月 の総会でその承認をおこない、モスクワ総主教庁の管轄権下で高度な自治的権限を持つ教会となるのが一番良く、またほかの選択肢は厳しい(ルーマニア正教会やアメリカ正教会が自らの管轄権下に受け入れたり、ましてやそのような高度な権限を認めたりする可能性は極めて薄いと思います)と考えられているのではないかと思いますが……。
 しかし、先ほども書きましたが 4月ごろまでに ウクライナの件について結論を出すつもりの独立正教会もあります。それ以外にも、ロシア連邦を巡る政治的情勢によって、場合によってはモスクワを選択できないような状況になってしまう可能性もあります。
 とはいえ、条件はともかくとして、モスクワ側も「はい、いいですよ」と即日で見解を回答できるものでもなく、調整期間が相当程度は必要なのでしょう。

 

追記2:
 公式サイトで発表文が出ました。

 (英語:西欧ロシア正教会大主教区公式サイト)Archevêché des églises russes en Europe occidentale – Communiqué of the Archdiocese – 23 February 2019
 (フランス語:西欧ロシア正教会大主教区公式サイト)Archevêché des églises russes en Europe occidentale – Communiqué de l’Archevêché – 23 février 2019
 (ドイツ:西欧ロシア正教会大主教区公式サイト)Archevêché des églises russes en Europe occidentale – Kommuniqué des Erzbistums – 23. Februar 2019
 (ロシア語:西欧ロシア正教会大主教区公式サイト)Archevêché des églises russes en Europe occidentale – Коммюнике Архиепископии от 23 февраля 2019 года !
 (イタリア語:西欧ロシア正教会大主教区公式サイト)Archevêché des églises russes en Europe occidentale – Comunicato dell’Arcivescovado – 23 febbraio 2019

 (英語:西欧ロシア正教会大主教区グレートブリテン・アイルランド司祭長区公式サイト)Communiqué of the Archdiocese – 23 February 2019 | Deanery of Great Britain and Ireland

 最初の Orthodoxie.com の報道通りです。

 また、文末に、教会法通りに、ジャン大主教座下は礼拝中に全地総主教(バルソロメオス聖下)の名を挙げて祈りをおこない、大主教区の(他の)神品(聖職者)たちはジャン大主教座下の名を挙げて祈りをおこなうことが記されています。
 これは書いてある通り、教会法通りですが、あくまで現時点で離脱したわけではないことを示しています。
 そして、上記の OrthoChristian.Com の記事によれば、もしコンスタンティノープルの全地総主教庁よりジャン大主教座下へのなんらかの処分などがおこなわれた場合には、モスクワ総主教キリル聖下の名を挙げるように切り替えるということですが……公式文章にはない以上、その時の状況次第となるかもしれません。

 

関連:
 キリスト教/コンスタンティノープル管轄下で一方的に総主教代理区としては廃止され、事実上の離脱を決定した西欧ロシア正教会大主教区は、すでにロシア正教会モスクワ総主教庁との話を進めている模様(2019年2月)
 インタビュー記事(ロシア語):キリスト教/コンスタンティノープル管轄権下からの事実上の離脱を決めた西欧ロシア正教会大主教区のジャン【イオアン】大主教座下「理想的な教会は無い。ローマ・カトリック教会の現状を見るがいい」(2019年2月)
 キリスト教/コンスタンティノープル管轄権下で一方的に総主教代理区の地位を廃止され大主教区としても解体されそうなことにより事実上の離脱を決定したとみられていた西欧ロシア正教会大主教区の司祭らが、コンスタンティノープルを訪問(2019年3月)色々な駆け引きの途中か

 

キリスト教/英国正教会【イギリス正教会】【ブリテン正教会】公式サイトの記事「ONE APOSTOLIC FAITH & TRADITION」(2019年2月)

 少し前に総主教の称号の使用を開始した英国正教会【イギリス正教会】【ブリテン正教会】(British Orthodox Church)ですが、今回公式サイトに首座のグラストンベリー府主教/第7代英国総主教【イギリス総主教】【ブリテン総主教】“マル”・セラフィム1世聖下(His Beatitude Mar Seraphim I, Metropolitan of Glastonbury and Seventh British Patriarch)が書いたらしい記事が出ています。

 

 (英語:英国正教会公式サイト)One Apostolic Faith & Tradition – The British Orthodox Church

 

 いろいろ歴史的な内容はありますが、要は東方正教会とオリエント正教会の融和というか合同に近いものを呼びかけるもののようです。
 両者については、どの公会議までを認めるかの差(東方正教会は七つに対し、オリエント正教会は三つまで)がありますが、今回の記事によれば、英国正教会はかなり昔から東方正教会と同じ七つを認めているということです(コプト正教会に属していた時期は除く)。
 もちろん合同を呼びかける立場としては両者のうちのどちらと同じにしても構わないとは思いますが、コプト正教会側もよくもまあ受け入れたものです。そして、コプト正教会側が近年出ていった英国正教会の呼びかけをまともに相手にするとも思えませんが……。

 

 気になる点は二つ。

 一つは、そもそも誰に向けてこの記事を書いたのか、それがよくわからないところです。
 合同の呼びかけをしているのに、オリエント正教会内のコミュニオンの状態(シリア正教会とインド正教会の間)はもとより、東方正教会の教会分裂についてもなにひとつ言及がありません。
 コプト正教会を離脱した彼らにとっても見れば、そんなことは些細なことかもしれませんが、(たとえば)コンスタンティノープルとのコミュニオンを解除するという大ごとになっているロシア正教会が英国正教会の訴えに耳を貸す理由がまったく見えません。
 東方正教会もオリエント正教会も彼ら自身の問題が片付いておらず、離脱して総主教を称しはじめた変な少数集団の呼びかけに応じるどころか、この文章を読む理由すらあまりないのでは、と思わざるをえません。

 二つ目は、末尾の署名(というかなんというか文章を書いた人物名の表記)が「Abba Seraphim」となっています。英国総主教である「Mar Seraphim I」を使用するということ(というかそもそも昔そう決まったということ)になっていたはずですが、いまだにその該当記事以外では以前からの称号と同じもので表記(総主教とまったく書いていない)されており、これはいったいどういうことなのか。
 少数集団や少数派、あるいは訴えの正統性が非常に危ぶまれる人物が、身の丈に合わない称号の使用をぶちあげるケースは良くありますが、気が付くと使わなくなっていることも多いです。使わないのであれば、あんなことは書かないほうがよかったと思います。

 

 ともあれ、この英国正教会は、非常に妙な経緯をたどってきている少数集団ですが、今後もなにかあれば記事にします(もう出すネタがないだろうという気もしますが)。

 

総主教称号の使用へ:キリスト教/英国正教会【イギリス正教会】【ブリテン正教会】首座/グラストンベリー府主教セラフィム座下が、2019年1月1日より“第7代”英国総主教【イギリス総主教】【ブリテン総主教】の称号を使用しているとのこと(2019年2月)

 英国正教会【イギリス正教会】【ブリテン正教会】(British Orthodox Church)はキリスト教/オリエント正教会/シリア正教会に関連した源流を持ち、一時期コプト正教会の管轄下に入りましたが、近年離脱

 公式サイトによりますと、2019年1月1日より、キリスト教/英国正教会首座/グラストンベリー府主教“アバ”・セラフィム座下(His Eminence Abba Seraphim, Metropolitan of Glastonbury)は、グラストンベリー府主教/第7代英国総主教【イギリス総主教】【ブリテン総主教】“マル”・セラフィム1世聖下(His Beatitude Mar Seraphim I, Metropolitan of Glastonbury and Seventh British Patriarch)の称号を用いているようです。
 また、(あくまで)同記事によれば、同教会は使徒時代に源流を持つものであり、総主教庁としても19世紀から存在することと、今回の件は新しく称し始めたのではなくもともとの状態に戻したとのことです。

 

 (英語:英国正教会公式サイト)The British Patriarchate Restored After 24 Years In Commission – The British Orthodox Church

[4] “An Act of the Holy Governing Synod proclaiming the Lawful & Canonical Succession of His Beatitude Mar Seraphim I to the Apostolic Throne of Glastonbury”, Glastonbury Chartulary, Vol. I, 1. (3 March 1979); “Memorial concerning the Solemn Enthronement of His Beatitude Mar Seraphim I as Metropolitan of Glastonbury & Seventh British Patriarch”, Glastonbury Chartulary, AS Vol. I, 14 (11 August 1979).

 

 上記によれば 1979 年に既にそうであったということになりますが……。

 今回の称号に関する件がコプト正教会離脱時に決められていたのかどうかはわかりません。
 今回の記事にもロシア、ルーマニア、セルビア、ブルガリアが総主教を称していることが書かれていますが、これらはいずれも東方正教会であり、オリエント正教会の総主教ではないので、東方正教会側のシスマの影響を受けたものかもしれません。

 2015年までコプト正教会に属していた英国正教会ですが、今回、外国の権威や管轄権をすべて拒否するとしています。

 

キリスト教/コプト正教会のロンドン大主教【ロンドン大司教】アンゲロス座下が、エジプトでのコプト正教会信徒への襲撃に関して声明(2018年11月)

 キリスト教/オリエント正教会/コプト正教会/ロンドン大主教【ロンドン大司教】アンゲロス座下(His Eminence Archbishop Angaelos of London)は、エジプト・アラブ共和国で起こったコプト正教会の信徒への襲撃に関して声明を出しました。

 

 (英語)The Coptic Orthodox Church UK: Statement by His Eminence Archbishop Angaelos, Coptic Orthodox Archbishop of London, following the murder of seven, and the wounding of at least a dozen others, outside a monastery in Upper Egypt
 (英語)Statement following the murder of seven, and the wounding of at least a dozen others, outside a monastery in Upper Egypt. | Bishop Angaelos.org

 

CopticMediaUKさんのツイート: "Statement https://t.co/zI4MLwKDJb by HE Archbishop Angaelos @BishopAngaelos following the brutal murder of seven, and the wounding of at least a dozen others, outside a monastery in Upper Egypt… https://t.co/3IrlTfucmo"

 

Archbishop Angaelos نさんのツイート: "Confirmed from sources in #Egypt Deadly Islamist attack on #Coptic #Orthodox pilgrims enroute to ancient monastery in Upper Egypt with multiple fatalities and injuries. Praying for our departed, injured and surviving brethren, and those mourning loved ones https://t.co/42SYnUsBgv"

 

一般報道:
 エジプト キリスト教徒乗ったバスが武装グループに襲撃される | NHKニュース

キリスト教系メディア:
 (ギリシャ語)Αίγυπτος: Πυροβολισμοί εναντίον λεωφορείου με Χριστιανούς – ΒΗΜΑ ΟΡΘΟΔΟΞΙΑΣ
 (ギリシャ語)Αίγυπτος: Τουλάχιστον 7 νεκροί από την επίθεση εναντίον λεωφορείου με Κόπτες Χριστιανούς – ΒΗΜΑ ΟΡΘΟΔΟΞΙΑΣ

 

信頼性は?ですが、欧州で10万人中のキリスト教の司祭(Priest)数はギリシャが一番多いとのこと(2018年10月)最下位はブルガリア……え?

 欧州で10万人中のキリスト教の司祭数はギリシャが一番多い約88人だということです。

※抜けている国もあります。

 

 (英語)Number of priests per 100,000 people • Jo Di

Jo Di 🏳️‍🌈さんのツイート: "Παράγουμε περισσότερους παπάδες από όσους μπορούμε να καταναλώσουμε! https://t.co/4qOOKlUTNI"

 

 参照データが、Catholic-Hierarchy、Wikipedia(ウィキペディア)、OrthodoxWiki、スウェーデン国教会の公式サイト、となっているので、これらのサイトのデータをつぎはぎしたものだと思われます(ざっと見た限り、結構こういうせこいことをやっているニュース?サイトのようです)。

 

※なお、プロテスタントには司祭は存在しないという話を読んだ方も多いかと思いますが、欧州のルター派の多くの教会には司祭(Priest)が存在します(この Priest は司祭なのかという疑問がわいた方は、泥沼にはまってしまうので他のことを考えましょう)。

 

 それにしても、欧州で一番「無宗教」が多いとされるチェコ(18.9人)よりも、国民の四分の三がブルガリア正教会を含む東方正教会の信徒とされるブルガリア(12人)のほうが司祭が少ないというのは、そんなバカな……。これで教会が運営できるなら、ギリシャは司祭を七分の一に削減可能だということになりますが……。