モンテネグロ議会が野党議員を18人ほど拘束してキリスト教/セルビア正教会の教会財産を大量に接収するための新法を成立(2019年12月)

 モンテネグロ議会は、キリスト教/東方正教会/セルビア正教会の教会財産を大量に接収するための新法を成立させました。

※法律名称としては、まあその、麗しい名前を使っていますし、理屈も別のことを言っていますが、セルビア正教会の財産を奪うのが目的の法律です。

 

 (英語)Montenegro MPs arrested in clash over religious freedom law – BBC News
 (英語)Thousands Rally Against Religion Law in Montenegro | Balkan Insight
 (英語)Serbian church warns Montenegrin authorities about backlash from new religious law – World – TASS

 

 (セルビア語:モンテネグロ・プリモルスカ府主教庁公式サイト)Полиција ноћас претукла Епископа диоклијског Методија | Православна Митрополија црногорско-приморска (Званични сајт)

 なお、セルビア正教会モンテネグロ・プリモルスカ府主教庁の公式サイトが、同教会のドゥクリャ主教メトディイェ座下(His Grace Bishop Metodije of Dioclea)がモンテネグロの警官から殴打を受けたと報じています。
 モンテネグロ当局は否定していると報道されています。

 

 モンテネグロ大統領ミロ・ジュカノヴィッチ閣下(His Excellency Mr Milo ĐukanovićМило Ђукановић)は、これを“ウクライナ・モデル”としています。
 セルビア正教会の教会財産を接収し、東方正教会の教会法上合法な教会に属さない(または主流のグループに属さない)“モンテネグロ正教会(MOC)”を国家の後押しでこれまで以上に推進していくということになります。今は教会法上合法な教会でなくても、コンスタンティノープルから承認をもらえば教会法上合法な教会になるので問題はない、とウクライナで証明されているので、何も問題はありません(念のために書いておきますと、コンスタンティノープルが承認する予定はありませんが、コンスタンティノープルがなにをするかはもはやなんの信用も置けない状態です)。
 BBC の報道を中立ということで、信徒数の割合いを書いておきますと、モンテネグロの10人のうち7人はセルビア正教会の信徒だそうです。そこまで多いならなぜ反セルビア正教会のジュカノヴィッチ大統領が当選しているのかよくわからないところですので、この数字は少し大きめのような気もします。

 セルビア正教会の重鎮/モンテネグロ・プリモルスカ府主教アンフィロヒイェ座下(His Eminence Metropolitan Amfilohije of Montenegro and the Littoral)は(以前から言っていますが)無神論者(ジュカノヴィッチ大統領のこと)が教会を作った歴史上最初の例と批判しています(それ以外にもクソミソに罵ってますけど)。
 同座下は、ウクライナ問題を巡ってはコンスタンティノープルへの批判を繰り返していますので、今回の事態を受けて最終的に何を発言するかは注目ではあります。
 しかし、それ以前に火薬庫が活性化してきているのが不安なところです。

 

関連:
 映像(セルビア語のため内容よくわかりませんが):キリスト教/セルビア正教会の重鎮モンテネグロ・プリモルスカ府主教アンフィロヒイェ座下が、モンテネグロ新法に賛成投票予定の政治家を破門(anathema)宣告している映像とのこと(2019年12月)
 キリスト教/セルビア正教会/正教オフリド大主教庁(北マケドニアを管轄)聖シノドが、モンテネグロ政権を批判する声明(2019年12月)「北マケドニアでも弾圧が続いている」
 キリスト教/セルビア総主教イリネイ聖下がセルビア大統領ブチッチ閣下と会見(2019年12月)モンテネグロ新法の話題など
 キリスト教/“モンテネグロ正教会”の“ミハイロ府主教”が、コンスタンティノープルからの独立正教会としての承認に自信をみせたとの報道(2020年1月)

 

キリスト教/コンスタンティノープルに属していたジャマイカ正教伝道本部の二つの小教区が在外ロシア正教会【ROCOR】への管轄権下への移動を決めた模様(2019年12月)

 キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルに属していた、ジャマイカ正教伝道本部の二つの小教区が、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁の管轄権下で自主的に行動している在外ロシア正教会【ROCOR】への管轄権下への移動を決めた模様です。

 

 (英語)Jamaican Orthodox Mission leaving Constantinople for ROCOR / OrthoChristian.Com

 

 在外ロシア正教会【ROCOR】の首位、米国東部・ニューヨーク府主教イラリオン座下(His Eminence Metropolitan Hilarion of Eastern America & New York)は、補佐主教であるシラキュース主教ルカ座下(His Grace Bishop Luke of Syracuse, Vicar of the Eastern American Diocese)に受け入れについて指示したようです。

 

キリスト教/“ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】”の“フィラレート総主教”が、記者会見にてあらためて UOC-KP を守る意向を表明(2019年12月)国連へ訴えるとの話も

 2019年12月13日、“ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】”の首座、“フィラレート総主教”(キーウ・全ルーシ=ウクライナ総主教フィラレート聖下 : His Holiness Patriarch Filaret of Kyiv and All Rus’-Ukraine)は、コンスタンティノープル系ウクライナ正教会(OCU)による UOC-KP 及びウクライナ独立正教会【UAOC】の消滅の宣言の後も、引き続き信教の自由などに基づき UOC-KP を守っていく考えを記者会見で表明しました。
 報道では、ウクライナ政府以外にも、国連や OSCE に訴える意向ともあり、ウクライナ国内外が(西側諸国からみれば)人権侵害だらけの現状では、これはまたなにか面倒ごとを引き起こすかもしれません。

 正直、ここまでくれば、フィラレート総主教が元の影響力を取り戻すことはありえないと思いますが、彼を蹴落とした人々を道連れにする可能性はまだなくなっていない(コンスタンティノープルや東方正教会全体を含む)と思えます。

 2019年12月20日には、また支持者を集めたフォーラムを開くそうですが……。

 

Укрінформ:
На захист Київського Патріархату – YouTube

 

 (ウクライナ語: UOC-KP 公式サイト)Відбулася прес-конференція Патріарха Філарета щодо останніх подій в Українському Православ’ї – Українська Православна Церква Київський Патріархат

 (ロシア語)Интерфакс-Религия: Филарет анонсировал форум в защиту "Киевского патриархата"
 (英語)Filaret announces a UOC-KP protection forum and aims to turn to UN and OSCE – UOJ – the Union of Orthodox Journalists

 

東方正教会大分裂:キリスト教/ロシア正教会が、アレクサンドリア総主教庁の駐モスクワ・メトヒオン【ポドヴォリエ】(正教会の大使館的聖堂)の権能を停止する予定との報道(2019年11月)

 ロシアの Interfax によりますと、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会は、キリスト教/東方正教会/アレクサンドリア総主教庁の、駐モスクワ・メトヒオン【ポドヴォリエ】(正教会の大使館的聖堂)の権能を停止する予定のようです。

 

 (英語)Interfax-Religion: Patriarch Kirill suspends operation of Alexandria Patriarchate’s Moscow mission
 (英語)Representation church of Patriarchate of Alexandria in Moscow temporarily suspended / OrthoChristian.Com

 

 これは、キリスト教/東方正教会/アレクサンドリア・全アフリカ総主教セオドロス2世聖下(His Beatitude Theodoros II, Pope and Patriarch of Alexandria and All Africa)が、ロシア正教会というかモスクワ総主教庁の管轄権下で高度な自治的権限を有するウクライナ正教会の首座/キエフ・全ウクライナ府主教オヌフリー座下(His Beatitude Metropolitan Onufry of Kiev and All Ukraine)を裏切り(ユダとまでする抗議活動もあったようですが)コンスタンティノープル系ウクライナ正教会を承認したことによるものです。

 一方ですが、アレクサンドリア総主教庁とのフル・コミュニオン解除も見込まれていた先週のロシア正教会聖シノドでは、キリスト教/東方正教会/エルサレム・全パレスチナ総主教セオフィロス3世聖下(His Beatitude Theophilos III, Patriarch of Jerusalem and All Palestine)がヨルダンでの東方正教会の首座の会合を招集したことにより、アレクサンドリアへの対応は延期されています。
 これは矛盾するようではありますが、現時点でなんらかの処置をする意思を示さないわけにもいかないとも思えます。

 また、キリスト教/東方正教会/ギリシャ正教会首座/アテネ・全ギリシャ大主教イエロニモス2世座下(His Beatitude Hieronymos II, Archbishop of Athens and All Greece and Primate of the Autocephalous Orthodox Church of Greece)は、エルサレム総主教の招集に対し、「そのような権限はコンスタンティノープルの全地総主教にのみある」と発言し、参加を事実上拒否しました。
 さらにこの、アテネ大主教による他の首座とのなんの相談もなしのままのエルサレム総主教庁の権威を否定する発言に対し、東方正教会から離脱した保守的な勢力から「ついに古代五大総主教座(Pentarchy)の権威までもが否定された」と驚きの声までも上がっています。

 加えて、エルサレムとアテネが割れる事態に、キリスト教/東方正教会/アルバニア正教会の首座/ティラナ・ドゥラス大主教アナスタシオス座下(His Beatitude Archbishop Anastasios of Tirana and Durres, Primate of Albania)が強い危機感を表明しています。

 エルサレム総主教庁の行動の目的が、ロシアとの政治的対立を避けざるを得ないためか、あるいはこの事態を利用して自らが東方正教会の首位に立とうとするものなのか、まったくわかりませんが(本当にわかりません)、東方正教会の崩壊が現実味を帯びてきた感はあります。

 

キリスト教/西欧ロシア正教会大主教区の公式サイトで、反ジャン大主教派(コンスタンティノープル派)とジャン大主教座下が反目する声明を発表し合う不可思議な展開続く(2019年9月)

 キリスト教/東方正教会の愚かしさを世界に知らしめている西欧ロシア正教会大主教区の騒動はまだまだ続きそうです。

 元々はロシア正教会に起源をもち、名称は「西欧ロシア正教会大主教区」というものの、ごちゃ混ぜの集団となっていた同大主教区。
 昨年(2018年)11月ににコンスタンティノープルから一方的に総主教代理区としては廃止され、またその後、大主教区という集団としても存在を否定されました。
 9月14日にジャン大主教座下はコンスタンティノープルを見限りロシア正教会モスクワ総主教庁へ移動することを発表、これに対し反ジャン大主教派というかコンスタンティノープル原理主義者たちが「大主教区のルールによりジャン大主教は首座の資格を失ったのでコンスタンティノープルに首座代行の指名を求めた」という内容を含む声明を公式サイトに掲載(削除済み)、ジャン大主教座下がこれに反論する声明を出す、という展開となっていました。
 今日【9月28日】、同大主教区では会合が予定されており、これで残る人々と離れる人々がだいたい決まって事態は終息に向かうかと思われましたが、なんと反ジャン大主教派がまたも公式サイトに声明を発表、しかもその声明(今回は今のところ削除されないまま。ただしトップページからのリンクははずされている状況)に対しジャン大主教座下が反論する声明を公式サイトでまたも出す、という公式サイトを共有したまま反目を続けるという不可思議な事態が続いています(このサイトの主旨からは外れますが、セキュリティリスクや公共の団体として登録していることも含め極めてよろしくない状況です。またこんな有様では大主教区の財産に関する裁判が将来始まる可能性も高いでしょう)。
 その反ジャン大主教派の声明ですが、コンスタンティノープルは首座代行にフランス府主教エマニュエル座下を指名したので、9月30日に会合を開催するという内容のものです。コンスタンティノープル側は大主教区は「解体された」「存在しない」などと発言してきましたが、(これが反ジャン大主教派のフェイクニュースでないならば存在しないと宣言したものに首座代行を設置してきたということで失笑ものです。さすが、「彼らの脳内にしかない永遠のビザンチウムに暮らしている」と皮肉を言われる集団ですが、なに、東方正教会の他の主流の教会もその脳内ビザンツ帝国で暮らす連中と結局は縁が切れない人々で、コンスタンティノープルを批判する資格などあるのかどうか。
 ジャン大主教座下側の声明は、上で書いたような内容(コンスタンティノープル側の立場のいい加減さ)や、反ジャン大主教派の理屈のおかしい部分を指摘していますが、この不毛なやり取りだけでも伝統的なキリスト教とやらに価値があるのかどうか疑問に思えます(本当のところは誰も何も信じてないんでしょうかね)。ジャン大主教座下は以前の発言(インタビュー記事(ロシア語):キリスト教/コンスタンティノープル管轄権下からの事実上の離脱を決めた西欧ロシア正教会大主教区のジャン【イオアン】大主教座下「理想的な教会は無い。ローマ・カトリック教会の現状を見るがいい」(2019年2月))で理想的な教会は存在しないと主張していましたが、シスマ2018から将来の東方正教会の滅亡まで続くげんなりする展開への言い訳を先にしていたと評価されるのではないかという気がしてきました。

 

※反ジャン大主教派の声明。削除される可能性があるので画面キャプチャもしておきます。追記:削除されました
掲載時URL:http://www.archeveche.eu/spip.php?article2422

En réponse à cette demande, le Secrétariat général du Saint-Synode du Patriarcat œcuménique de Constantinople a notifié au Métropolite Emmanuel de France sa désignation comme Locum Tenens.

En cette qualité, le Métropolite Emmanuel réunira le Conseil de l’Archevêché, le lundi 30 septembre à 17 heures, à la date qui avait été arrêtée par le Conseil lors de sa dernière réunion du 30 août 2019.

Tous les membres élus du Conseil, les six membres clercs et les six laïcs, sont invités à cette importante réunion.

Pour le Conseil :

Prêtre Christophe D’Aloisio

Archiprêtre Alexandre Fostiropoulos

Alexis Obolensky

Elisabeth von Schlippe

Archiprêtre Serge Sollogoub

Alexandre Victoroff

Didier Vilanova

 

※ジャン大主教座下による反論の声明
 (フランス語:西欧ロシア正教会大主教区公式サイト)Archevêché des églises russes en Europe occidentale – Annonce