キリスト教/シリア正教会アンティオキア総主教イグナティウス・アフレム2世聖下が、アルメニア使徒教会コンスタンティノープル総主教サハク2世マシャリャン座下を訪問(2023年10月)

 2023年10月16日、キリスト教/オリエント正教会/シリア正教会の首座/アンティオキア・東方全土総主教“モラン”・“モル”・“イグナティウス”・アフレム2世聖下(His Holiness Moran Mor Ignatius Aphrem II, the Patriarch of Antioch and All the East, the Supreme Head of the Universal Syriac Orthodox Church)は、キリスト教/オリエント正教会/アルメニア使徒教会コンスタンティノープル総主教サハク2世マシャリャン大主教座下(His Beatitude Archbishop Sahak II Mashalian, Armenian Patriarch of Constantinople)を訪問しました。

 

 シリア正教会側から、
 イスタンブール・アンカラ・イズミルにおける総主教代理“モル”・フィロクセヌス・ユスフ・チェティン大主教座下(His Eminence Mor Philoxenus Yusuf Cetin, Patriarchal Vicar of Istanbul, Ankara and Izmir)
 “モル”・セオフィルス・ゲオルゲス・サリバ大主教座下(His Eminence Mor Theophilos George Saliba, Patriarchal Advisor)
 トゥルアブディン大主教“モル”・ティモセオス・サムエル・アクタス座下(His Eminence Mor Timotheos Samuel Aktas, Archbishop of Turabdin)
 スウェーデンにおける総主教代理“モル”・ディオスコロス・ベンジャミン・アタス大主教座下(His Eminence Mor Dioscorus Benjamin Atas, Patriarchal Vicar in Sweden)、
 ベイルート大主教“モル”・クレーミス・ダニエル・クーリエフ座下(His Eminence Mor Clemis Daniel Kourieh, Archbishop of Beirut)、
 ホムス・ハマ・タルトゥース及び近郊大主教“モル”・ティモセオス・マッタ・アル・クーリー座下(His Eminence Mor Timotheos Matta Al-Khoury, Archbishop of Homs, Hama, Tartous and Environs)
 アル=ジャジーラ・ユーフラテス大主教“モル”・マウリス・アムシフ座下(Mor Maurice Amsih, Archbishop of Al-Jazeerah and Euphrates)、
 “モル・ヨセフ・バリ大主教座下(His Eminence Mor Joseph Bali, Patriarchal Assistant)
 らが同行。

 

 (英語:シリア正教会アンティオキア総主教庁 公式ウェブサイト)Visit to His Beatitude Armenian Orthodox Patriarch of Istanbul Sahag II | Syrian Orthodox Patriarchate of Antioch
 (英語)Syrian Orthodox Patriarch Ignatius Aphrem II Visits Armenian Patriarchate of Constantinople – Orthodoxy Cognate PAGE

 

キリスト教/ローマ教皇フランシスコ聖下の、ロシアの若者へのメッセージにウクライナ政府などが反発。バチカンはウクライナ政府側の見解を拒否(2023年8月)

 2023年8月25日、キリスト教/ローマ教皇フランシスコ聖下(His Holiness Pope Francis)は、ロシア青年の日に、サンクトペテルブルクに集まった若者たちへメッセージを送りました。

 このメッセージの末尾、

 (ロシア語:)«Вы собрались, чтобы быть единой Церковью». Телемост российской молодёжи с Папой Франциском – Римско-католическая Архиепархия Божией Матери в Москве

Перед благословением Святейший Отец завершил встречу следующими словами: «Никогда не забывайте о наследии. Вы наследники великой России: великой России святых, правителей, большой России Петра I, Екатерины II, той империи – великой, просвещенной, [страны] большой культуры и большой человечности. Никогда не отказывайтесь от этого наследства, вы наследники великой Матушки России, идите вперёд с этим. И спасибо вам. Спасибо за ваш способ быть, за ваш способ быть россиянами».

(Google翻訳に一部手入れ)
「あなたたちは偉大なロシアの相続人です。聖人・統治者たちの偉大なロシア、ピョートル1世・エカチェリーナ2世の偉大なロシア、偉大で啓蒙された、偉大な文化と偉大な人間性を備えた帝国の子孫です。 この遺産を決して手放さないでください。あなた方は偉大で母なるロシアの相続人です。これを進めてください。そしてありがとう。あなたの生き方、ロシア人のあり方に感謝します」

 

 この部分にウクライナ政府などが激怒。

 ローマ教皇、ロシア皇帝に好意的言及 ウクライナが批判|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
 ウクライナ、ローマ教皇の演説に反発 「帝国主義的プロパガンダ」 – CNN.co.jp

 しかし、ローマ教皇聖座側はこのような見解を拒絶しました。

 (英語:バチカンニュース)Holy See Press Office: Pope did not exalt imperialist logic in remarks about Russia – Vatican News

 

 今回のメッセージは、お偉方にありがちな、さしたる理由も意味もないリップサービスかもしれません。

 しかし、現今の世界状況の中(そうでなければ別に流しても良いようなものですが)で、ローマ教皇によって、ロシア正教会ではなく(あるいはのみならず)ロシアのキリスト教文化そのものとそれを牽引した皇帝たちが称揚されたことは注目すべきことでしょう。

 東西教会(カトリック教会と東方正教会)の融和というのは、名目上(ローマとコンスタンティノープル)と実質上(ローマとモスクワ)の二つがわかれているのがこれまで度々問題となってきましたが、1453年以降の状況を考えれば、コンスタンティノープルなどオスマン帝国下で見苦しい行動をしていたにすぎないというのが大半の状況であり、それにくらべて、「正教の中心はモスクワに移った」と言われたのがロシア
 今回のフランシスコ教皇の発言、そのロシアの実質は「決して東方正教会というくくり」におさまるものではないというのが含意されている発言である、と理解してもよさそうです。
 つまり、ウクライナどうこうの反応は教皇にとってもウクライナ政府自身にとっても直接はどうでもよく、これはコンスタンティノープルにとって(長い目で見れば)衝撃となるものでしょう。もう500年以上、あなたたちコンスタンティノープルに実質の価値はないんですよ。

 

 さて、ウクライナ政府はカトリックの活動を国内で禁止するでしょうか? するべきだと思いますね。トップがロシアを支持したのですから。でも、すると西側諸国の支援は削られますね。できませんね。国内で「ロシアにつながりがある」とウクライナ正教会(UOCのほう)に色々やってきましたが、西側諸国に見捨てられるのは怖いでしょう。だからカトリックには何もしないでしょう。なんて信教の自由がある平等で民主的な国家なんでしょう。

 あと、コンスタンティノープルが認めた方のウクライナ正教会(OCU)に異論が多数存在しているという事実を言っただけで、他人をモスクワの手先扱いする方々がネットには満ちていますが、そういう方々には「ローマ教皇はモスクワの手先だ! ウクライナでカトリックを禁止しろ!!」とぜひ言っていただきたいものです。言う人が増えるほどウクライナ政府が困るだけですけどね。

キリスト教/ブルガリア正教会が、マケドニア正教会-オフリド大主教庁を独立正教会として承認(2022年12月)教会名は「北マケドニア共和国正教会」首座は「北マケドニア大主教ステファン座下」

 2022年12月13日、キリスト教/東方正教会/ブルガリア正教会は、聖シノド会合で、“マケドニア正教会-オフリド大主教庁”を独立正教会と認めました。
 教会名は「北マケドニア共和国正教会(Orthodox Church in the Republic of North Macedonia)」、ディプティクに加える首座名は北マケドニア大主教ステファン座下(His Beatitude Stefan, Archbishop of North Macedonia)とするようです。
 これらについて、東方正教会全体の会合がおこなわれるまでの暫定のようなものということですが、全体会合がおこなわれることはもうないであろうと全体が思っている状況では……。ともあれ、当面はこれらの名前を正式名称としてブルガリア正教会は使用し、状況によって他の言及の仕方もするでしょうし、変更もありうるでしょう。

 “マケドニア正教会-オフリド大主教庁”は、セルビア正教会の管轄権である北マケドニア共和国に存在していた、過去にセルビア正教会から離脱した教会法上合法でない集団でしたが、セルビア正教会は唐突に今年、合法な集団(自治的な権限を持つ教会)として認め、さらに唐突に独立正教会として認めました。
 また、教会名については、よそとの話し合いで決めてください、としました。
 これは、コンスタンティノープルは「マケドニアは我々に権利のある名前なのでオフリド大主教庁にせよ」と言っており、ブルガリア正教会は「オフリド大主教庁は歴史ある名前でブルガリア正教会に権利のある名前なので、別のにせよ」といっていて、要するにセルビア正教会は面倒なので投げたわけです。管轄権も含めて投げた理由はわかりませんが、政治が絡んだことなのか、それともマケドニアの管轄権に興味のある聖職者が実は少なかったのかもしれません。セルビア正教会に従ってマケドニアで活動してきた教会法上合法な集団、正教オフリド大主教庁は唐突に位置付けが微妙な集団になってしまいました。今後どうなるかも流動的、というか決まっておらず、首座が政権から弾圧を受け、牢獄に押し込まれてまで頑張ったのはなんだったのかまたひとつ、東方正教会にひどい結末が生まれているわけですが、各教会が“マケドニア正教会-オフリド大主教庁”との融和がなって良かった良かったというのが表向きの状況です。
 今のところ、“マケドニア正教会-オフリド大主教庁”は、東方正教会全体から独立正教会と認められているわけではありません。一部では教会法上合法と認めていない聖職者もいます。また、(ブルガリア正教会が独立正教会と認めている)アメリカ正教会と相互に独立正教会として承認し合うかもわかりません。

 

 (ブルガリア語:ブルガリア正教会 ブルガリア総主教庁 公式サイト)Решение на Св. Синод във връзка с дадената автокефалия на Православната църква в Северна Македония

Българска православна църква – Българска патриаршия | Facebook

キリスト教/ロシア正教会ヴォロコラムスク府主教アントニー座下がシプカ峠を訪問(2022年12月)

 2022年7月12日、ブルガリア共和国を訪問中のキリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教アントニー座下(His Eminence Metropolitan Anthony of Volokolamsk, Chairman of the Department for External Church Relations of the Moscow Patriarchate)は、シプカ峠とそのふもとの修道院を訪問しました。
 1877年~1878年の露土戦争での戦場で、同戦争は近代ブルガリアの成立につながりました。

 

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁 公式サイト)DECR Chairman visits the memorial in Shipka Pass / News / Patriarchate.ru

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局 公式サイト)DECR Chairman visits the memorial in Shipka Pass
 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局 公式サイト)Председатель ОВЦС посетил мемориальный комплекс на Шипке: новость ОВЦС

Председатель ОВЦС посетил мемориальный комплекс на Шипке… – Mospat.ru Официальный интернет-портал Отдела Внешних Церковных Связей МП | Facebook

キリスト教/東方正教会シスマ2022:アレクサンドリア総主教セオドロス2世聖下が、モスクワ総主教キリル聖下の名を礼拝で挙げることを停止(2022年11月)ロシア側からは2019年に停止済み。相互に関係停止へ

 現在開催されている、キリスト教/東方正教会/アレクサンドリア総主教庁の聖シノドの会合で、キリスト教/東方正教会/アレクサンドリア・全アフリカ総主教セオドロス2世聖下(His Beatitude Theodoros II, Pope and Patriarch of Alexandria and All Africa)は、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会の首座/モスクワ・ロシア全土【ルーシ全土】総主教キリル聖下(キリール総主教キリイル総主教 : His Holiness Kirill, Patriarch of Moscow and all Russia【Rus’】)の名を礼拝で挙げることを停止することを決定しました。
 会合はまだ終了していないので、全体の決定の詳細がどうなるかはわかりませんが、2019年にロシア正教会側は同様の決定をしているので、これで相互に関係の停止となりました。
 また、アレクサンドリア総主教庁は、ロシア正教会のアフリカにおける総主教代理/クリン府主教レオニード座下(His Eminence Metropolitan Leonid of Klin, Patriarchal Exarch for Africa)の聖職権限を剥奪するとしています。ロシア正教会には何の関係もありませんが

 

 (ギリシャ語)Το Πατριαρχείο Αλεξανδρείας διέκοψε την μνημόνευση του Πατριάρχη Μόσχας
 (英語)Patriarch Theodoros stops commemorating Patriarch Kirill, Russian Exarch declared defrocked by Alexandria / OrthoChristian.Com

 

 2018年~2019年にコンスタンティノープルが、自身がロシア正教会の管轄権下と認めていたウクライナで、教会法上合法でない上に使徒継承性が成立していない“主教”を首座とする OCU を承認するというムチャクチャな事態(使徒継承性や独立正教会に関するルールという、東方正教会の根幹を儀礼上トップの場所が雑に破った)があり、それに追随したアレクサンドリア総主教庁、ギリシャ正教会、キプロス正教会を含めて、ロシア正教会は関係を停止しています(一部残ってる部分もありますが)。コンスタンティノープルを含む4教会以外は追随していないため事態はその後には大きく動いていませんでしたが、アレクサンドリア総主教庁はロシア正教会と相互に関係を停止することを選びました。4教会はこのままロシア正教会と縁を切る方向に進む可能性が増しているように見えます。

 今回のアレクサンドリア総主教庁の決定は、ロシア正教会が、アレクサンドリア総主教庁の管轄権下であるとロシア正教会が認めていたはずのアフリカに、「アフリカにおける総主教代理区」を許可なく設置し、アレクサンドリア総主教庁を無視してお株を奪うような活動を始めたことが原因です(が、そもそも、上記のようなコンスタンティノープルの愚行に賛同した時点で結末は予見できていたようなものです)。
 ただ、ロシア正教会を含む各独立正教会は、一度独立正教会と認め、その管轄権下と認めれば撤回が出来ないという立場(そのため、ウクライナをロシア正教会の管轄権下ではないと一方的に認めることはできない)であり、ロシア正教会はアフリカ全土をアレクサンドリア総主教庁の管轄権下であると20世紀初頭に認めています。つまり、一方的にアフリカで活動すると「そんなことをしたらコンスタンティノープルと同レベルになってしまう」という指摘は出ていました。
 これに対する公式な立場はモスクワ総主教庁からは出ていないように思います。ロシア正教会の聖職者からは、「アフリカ全土はそもそもローマ総主教庁の管轄権下なので、モスクワ総主教庁が勝手によその総主教庁に移動することは出来ないから、アレクサンドリア総主教庁の管轄権下と認めたこと自体が無効なので無意味」というような見解も出ているようです(よく考えるものというか……)。

 ともあれ、ロシア正教会側のアフリカにおける総主教代理区が、オリエント正教会のコプト正教会から建物の提供を受けるに及び、アレクサンドリア総主教からコプト正教会側へ抗議(「東方正教会内部の問題への介入だ!」)もおこなわれたようですが、特に意味のある反応もなかったようで、結果的にことは東方正教会内部の問題におさまっていないことを示した形に。

 もともと、アレクサンドリア総主教庁は、活動において、ギリシャとロシア正教会からの支援に強く依存している形があり、ギリシャからの要求によりコンスタンティノープルに追随したものの、ロシア正教会からの関係停止とそのアフリカにおける総主教代理区設置から受けるマイナスな影響は強かったはず。
 その後、セオドロス総主教は、アフリカの要人と会見する機会もいくつかあったようで、おそらくロシア正教会と完全に縁を切ってもやっていける、あるいはやっていくしかないと踏んだということなんでしょう。
 今回の件がコンスタンティノープルやギリシャの諸集団と事前に協議したものなのかどうかはわかりませんが、どちらにせよアレクサンドリアと歩調をあわせていく形になるでしょう。

 

続報:
 キリスト教/東方正教会シスマ2022:ロシア正教会/アフリカにおける総主教代理/クリン府主教レオニード座下が、アレクサンドリア総主教庁による“処分”についてコメント(2022年11月)
 インタビュー動画(ロシア語・英語字幕):キリスト教/ロシア正教会/アフリカにおける総主教代理/クリン府主教レオニード座下が、アレクサンドリア総主教庁による“処分”についてコメント(2022年11月)