シスマ2018:キリスト教/アメリカ府主教ティーホン座下が、コンスタンティノープルの全地総主教庁がウクライナに独立正教会を設置しようとしている件について大主教教書を発布(2018年9月)汎正教会会合の開催呼びかけと、現行のロシア正教会系のウクライナ正教会支持

【シスマ2018~】 ウクライナへの独立正教会設置を巡るコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立とそれに端を発した出来事の記事一覧

 

 2018年9月26日、キリスト教/東方正教会/アメリカ正教会【OCA】の首座/ワシントン大主教、全アメリカ・カナダ府主教ティーホン座下(His Beatitude Metropolitan Tikhon of All America and Canada, Archbishop of Washington)は、コンスタンティノープルの全地総主教庁がウクライナに独立正教会を設置しようとしている件について大主教教書を発布しました。

 

 (英語:アメリカ正教会【OCA】公式サイト)Metropolitan Tikhon issues Archpastoral Letter concerning recent developments in Ukraine – Orthodox Church in America

 

 汎正教会会合の開催呼びかけと、現行のロシア正教会系のウクライナ正教会の首座/キエフ・全ウクライナ府主教オヌフリー座下(His Beatitude Metropolitan Onufriy of Kiev and All Ukraine)の支持、ということで、特に驚きはなく、また特に影響はないでしょう。
 また、ロシア正教会が全地総主教庁とユーカリスト・コミュニオンを停止することへの懸念は強いようです。

 ロシア正教会が主教らの交流を停止したことにより、アメリカ合衆国教会法上合法主教会議(Assembly of Canonical Orthodox Bishops of the United States of America)などのアセンブリーは重要な決定がくだせない状況にあると思います(議長が全地総主教庁から出ているのでロシア正教会の主教が出席しない)。
 そして、ユーカリスト・コミュニオンが停止されると(その重要性はともかくとして同会議としては)8月に新しく出したばかりの主教・教区情報が、一部の人たちには無意味なものになってしまうということもあります。
 また、アメリカ正教会【OCA】は全地総主教庁からは独立を認められていないものの、同協議会では独立した管轄権を持つものとして扱われており、今後全地総主教庁側がアメリカ正教会自体をどう位置づけていくのかというのも気になるところではあります。

 

シスマ2018:キリスト教/ロシア正教会ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下がポーランド訪問中のアレクサンドリア総主教セオドロス2世聖下と会談(2018年9月)

【シスマ2018~】 ウクライナへの独立正教会設置を巡るコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立とそれに端を発した出来事の記事一覧

 

 2018年9月24日、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下(ヒラリオン府主教 : His Eminence Metropolitan Hilarion of Volokolamsk, chairman of the Moscow Patriarchate’s Department for External Church Relations (DECR))は、ポーランド共和国訪問中のキリスト教/東方正教会/アレクサンドリア・全アフリカ総主教セオドロス2世聖下(His Beatitude Theodoros II, Pope and Patriarch of Alexandria and All Africa)と会見しました。

 内容は明らかになっていませんが、コンスタンティノープルの全地総主教庁がまもなく一方的に独立正教会をウクライナに設置する模様なので、なんといいますか、その話でしょう。

関連:
 シスマ2018:キリスト教/アレクサンドリア総主教セオドロス2世聖下とポーランド正教会首座サワ府主教座下が共同声明(2018年9月)

 

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Metropolitan Hilarion meets with Primates of Orthodox Church of Alexandria and Polish Orthodox Church | The Russian Orthodox Church

 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Митрополит Волоколамский Иларион встретился с Блаженнейшим Патриархом Александрийским Феодором / Новости / Патриархия.ru
 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Митрополит Иларион встретился с Блаженнейшим Патриархом Александрийским Феодором | Русская Православная Церковь

 

シスマ2018~:キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教庁からウクライナに送られた「キエフにおける総主教代理」二名がウクライナ大統領を訪問(2018年9月)

【シスマ2018~】 ウクライナへの独立正教会設置を巡るコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立とそれに端を発した出来事の記事一覧

 

 2018年9月17日、キリスト教/東方正教会/全地総主教庁から、「キエフにおける総主教代理」に叙任された二名、
 アメリカ合衆国ウクライナ正教会(Ukrainian Orthodox Church of the USA)のパンフィロン大主教ダニエル座下(His Eminence Archbishop Daniel, Archbishop of Pamphilon)、
 カナダ・ウクライナ正教会(Ukrainian Orthodox Church of Canada)のエドモントン・西部教区主教イラリオン座下(His Grace, the Right Reverend Bishop Ilarion, Bishop of Edmonton and the Western Eparchy)、
 は、
 ウクライナ大統領ペトロ・ポロシェンコ閣下(His Excellency Mr Petro Poroshenko)を訪問しました。

 

Адміністрація Президента України(ウクライナ大統領府公式チャンネル):
Зустріч Президента з Екзархами Вселенського патріархату в Україні – YouTube

 

 (英語:ウクライナ大統領府公式サイト)We came to work on the fait accompli – meeting of the President with the Exarchs of the Ecumenical Patriarchate in Ukraine — Official website of the President of Ukraine
 (英語)We are on an “extraordinary mission” Constantinople exarchs tell Poroshenko / OrthoChristian.Com

 

 両座下は、「キエフ総主教庁」および「ウクライナ独立正教会」以外にも、ロシア正教会系のウクライナ正教会の首座/キエフ・全ウクライナ府主教オヌフリー座下(His Beatitude Metropolitan Onufriy of Kiev and All Ukraine)を含む他の団体(といってもこの三つ以外は少数団体もいいところでしょうが)にも会う用意があるとしています。
 これは、全地総主教庁はウクライナに複数の独立正教会を容認する用意はないとみてもいいのではないでしょうか(合流させた一つの教会を独立正教会と認めると)。

 さて、オヌフリー座下は、座下の許諾なしに管轄権内に入った総主教代理二名とは会わないと声明を出しています。
 しかし、歴史上何人もの高位聖職者が前言を翻し、新たな立場に身を置いてきました。
 また、オヌフリー座下が会わないとしても、同教会から裏切り者が出る可能性もあります。

 

この記事を書いている時点で、会見のライブ動画の再生数は 19万回 となっています:
Петро Порошенко – Зустріч з Екзархами Вселенського Патріархату | Facebook

 

Петро Порошенкоさんのツイート: "Початок місії Екзархів Вселенського патріархату в Україні Архієпископа Даниїла та Єпископа Іларіона є надзвичайно важливою подією для усіх православних в Україні.… https://t.co/049VVeE4VQ"

 

Петро Порошенкоさんのツイート: "Дякую за великий особистий внесок Архієпископа Памфільського і Західної Єпархії УПЦ в США Даніїла і Єпископа Едмонтону і Захiдної Єпархії УПЦ в Канаді Іларіона, щоб Єдина Помісна Православна Церква наблизилася. Ми віримо, що вона точно стане можливою.… https://t.co/s6mEL99Uyp"

 

シスマ2018~:キリスト教/ロシア正教会ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下が「コンスタンティノープルが総主教代理を二名送ってきたのは主教叙聖には二名必要だから」(2018年9月)「教会法上合法でない教会の主教たちを“合法化”できる」

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 (英語)Constantinople exarchs in Ukraine could be planning to reconsecrate schismatic bishops—Met. Hilarion (Alfeyev) / OrthoChristian.Com

 

 キリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下(ヒラリオン府主教 : His Eminence Metropolitan Hilarion of Volokolamsk, chairman of the Moscow Patriarchate’s Department for External Church Relations (DECR))は、インタビューに答え、コンスタンティノープルの全地総主教庁が二名の総主教代理を送ってきたことについて、

 「通常、同じ地への総主教代理は一名」

 「主教叙聖には最低でも二名の主教が必要」

 「教会法上合法でない教会(“キエフ総主教庁”と“ウクライナ独立正教会”)の“主教”を合法な主教とするため二名来ているのだろう」

 と述べているようです。

 

 「二名」が送られてきたことから全地総主教庁側が本気であることを想定しているようです。両者のコミュニオンの完全な解除は間違いないと思ってもいいでしょう。

 とはいうものの、そうなってもまた結びなおすことはできるわけで、これはまだ割とよくある段階です。大きなものでも歴史上何回かはあるものです。

 しかし、これからの動きの中で、コンスタンティノープルの全地総主教庁の権威が完全に失墜した場合、東方正教会という枠組みはどうなるのか、これはわかりません。

 

シスマ2018~:キリスト教/ベラルーシ独立正教会【BAOC】(ロシア正教会系のベラルーシ正教会とは無関係)の首座が、自分たちも独立正教会と認められるべき存在と述べる(2018年9月)

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 キリスト教/東方正教会の教会法上合法とみなされていないベラルーシ独立正教会【BAOC】の首座/ナヴァフルダク大主教スヴャタスラウ座下(His Eminence Archbishop Sviataslaŭ of Novogrudok)が、ウクライナのニュースサイトのインタビューに答え、ベラルーシ独立正教会もまた独立正教会と認められるべき存在と述べたようです。

 

 (ウクライナ語)Церква Білорусі має канонічні підстави для оголошення автокефалії – архієпископ Святослав Логін
 (英語)Belarusian schismatics emboldened by Constantinople’s actions in Ukraine, hope for autocephaly too / OrthoChristian.Com

 

 この教会は、教会法上合法やらうんぬん以前に組織の体をなしていないという報道もされていたりします(とはいえその報道もあてになるかどうかわかりませんが)。
 スヴャタスラウ座下はウクライナ独立正教会【UAOC】と関わりを持っていた人物です。
 インタビューは理屈やきれいごとが多くて、実情がつかめないところがありますが、ベラルーシ独立正教会の独立を承認できるのはコンスタンティノープル全地総主教庁か“キエフ府主教庁”と述べており、必ずしも全地総主教庁ではなく、自らがすでに関わりを持っているウクライナ独立正教会から独立正教会として承認されるという選択もありうるということでしょう。これは全地総主教庁も想定しない状況(彼らが独立を認めたウクライナの正教会が、反ロシアのためにポンポンと他の独立正教会を認める)に入ってくる可能性が出てきました。
 エストニアも例示(同じように独立正教会として認められるべき)として出ていますが、全地総主教庁はそのつもりがない上に、大統領がモスクワ総主教直轄の女子修道院を訪問して友好を示そうとしている時期にこんなことを勝手にいわれても、エストニア共和国の政治家もうれしくもなんともないでしょう。数年前の反ロシアバブル時代ならともかく、バルト三国とフィンランドの政治家は、ウクライナの対ロシア政治情勢に巻き込まれることを望んでいません。

 ともあれ、状況はどんどん混沌へと向かうか、あるいはロシアのプーチン大統領をはじめとする政治家たちの手打ちによって押さえつけられるか、どちらかになりそうです。
 しかし、統一は失われる可能性が高いのではないでしょうか。
 ロシア正教会は、全地総主教庁とのフル・コミュニオンが必要ない理由をひねり出すでしょうし、Eastern Orthodox Church は終わり、Eastern Orthodox Churchesの時代になる、そんな気がします。
 もちろん数十年かかる気もしますが。