キリスト教/コンスタンティノープル系のウクライナ正教会【OCU】に合流していたはずの“ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】”の“フィラレート総主教”が、コンスタンティノープルからの(独立正教会として承認する)トモスを拒否すると表明したと報道(2019年6月)

 2019年6月11日、報道によりますと、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルが独立正教会として認めた“ウクライナ正教会【OCU】”に合流し“名誉総主教”と(ウクライナ国内では)称されていた“ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】”の“フィラレート総主教”が、独立正教会として認めるトモスの内容を事前に承知していなかったとしてこれを拒否すると表明したようです。
 表明したのは、フィラレート総主教が主催(?)したフォーラムかなにかで、下記記事の写真を見る限りでは、盛況とも思えませんが(開催前か開催後なのかもしれません)、 OCU に合流した二組織の一つのトップだった人物が拒否を表明するというのは、なんともバカバカしいというか、どうせ面倒なことが起こることはわかっていたというか、論評のしようがないほどアホらしい事態ではあります。
 フィラレート総主教の建前は、モスクワ及びコンスタンティノープルからの独立です。しかし、コンスタンティノープルからトップに認められていればこんなことは言い出してなかったことは明らかで、真面目に受け取る必要はまったくありません。はたしてどのような影響があるのか、あるいはないのか。
  OCU 首座の“エピファニー府主教”が、キリスト教/東方正教会首席/コンスタンティノープル=新ローマ大主教・全地総主教バルソロメオス聖下(バーソロミュー1世世界総主教バルトロマイ1世ヴァルソロメオス1世 : His All-Holiness Bartholomew, Archbishop of Constantinople-New Rome and Ecumenical Patriarch)の聖名日を祝うためにトルコ共和国イスタンブールを訪問しているときにこんな意見を表明したということで、 OCU が分裂するか、あるいはフィラレート総主教が幽囚されるか、どちらかになるのではないかと思います。

 

 (ウクライナ語)Філарет: Томос ми не приймаємо, бо ми не знали його змісту | Громадське телебачення

 

追記:
 フィラレート総主教は、2019年6月20日に、昨年【2018年】12月15日の統合を決めた会合(”Unification Council”)の否定と、今年授与されたトモスの拒否を決定する、新たな会合を招集するとしています。
 また、“エピファニー府主教”らは、“ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】”を離れコンスタンティノープルに依存する教会を作っただけであり、 UOC-KP は解散しておらずこれからも存在し続けると主張。
 そして、“エピファニー府主教”がギリシャ正教会の司祭を主教に叙したのは、主教を通じてコンスタンティノープルの指示を受けるためであり、そんな教会は独立正教会ではないとも宣言したようです。

 (ウクライナ語)Філарет скликає собор для збереження Київського патріархату: на коли і які будуть наслідки – BBC News Україна

 (英語)Filaret summons a Synod to cancel decisions of the United Synod on December 15 – Romfea News
 (ギリシャ語)Ο Φιλάρετος συγκαλεί Τοπική Σύνοδο για να ακυρώσει αποφάσεις της Ενωτικής Συνόδου

 (ロシア語)Интерфакс-Религия: Филарет не признает решение о самоликвидации УПЦ-КП и планирует его отменить

 

ウクライナ法務省が、“ウクライナ正教会キエフ総主教庁”【UOC-KP】が団体として“存続”しているとメディアに回答(2019年5月)キリスト教/コンスタンティノープルが承認した“ウクライナ正教会”【OCU】は UOC-KP は“消滅”したと説明していたもの

 “フィラレート名誉総主教”が、「キエフ総主教庁は存続し続けており、自分は今も昔もキエフ総主教」と語ったことについて、メディアがウクライナ法務省に問い合わせたようです。
 その回答によりますと、、“ウクライナ正教会キエフ総主教庁”【UOC-KP】は登録団体として存続してるようです。
 これは、そもそも法務省のホームページ上で確認できていたという話もあるので、意外な結果ではありませんが……。

 UOC-KP は、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルが独立正教会として承認した“ウクライナ正教会”【OCU】に統合されたため“消滅”したと(OCUによって)説明されていたものです。
 なお、もちろんのことですが、教会法上の集団と、国などの承認を受けている法人はまた別のものですが、とりあえずのところ、ウクライナの法律上は存続しているということです。

 

 (ウクライナ語)В Минюсте сообщили, что решение о роспуске УПЦ КП может принять только Поместный собор Киевского патриархата или суд / ГОРДОН

 

 “エピファニー府主教”と“フィラレート総主教”の対立が深まっている OCU 、というか、もうなんと総称すればいいのかわからない状態になっている集団ですが、 UOC-KP が団体として存続しているとして、所有している財産がどうなのかというところが問題になるかと思います。
 UOC-KP の公式サイトはそのまま更新されているらしいですが(未確認)、ウェブサイトのドメイン所有権やレンタルサーバ(?)との契約を保持し続けているとすると、 UOC-KP が所有し続けているものはありそうです。
 また、“フィラレート総主教”は、ポロシェンコ大統領と“エピファニー府主教”に「騙された」と語っており、仮に騙して財産を移転したということになると、詐欺で(前)大統領と“府主教”を告訴することも可能ではないかと思います。

 “フィラレート総主教”は、彼に逆らう主教らを、「モスクワの手下からコンスタンティノープルの手下に変わっただけの連中」としており、“エピファニー府主教”が彼に従えば問題は解決する、というなんともすさまじく自分中心の解決策を提示しています(「解決策」とはいわないかもしれませんが)。
 一方の、“エピファニー府主教”がなにを考えているのかはわかりませんし、現時点でなにを考えていても重要ではないと思います。“エピファニー府主教”は、コンスタンティノープルとフル・コミュニオン状態にある教会の首座の中で圧倒的に若く、もし予想外の健康問題を抱えなければ、他の教会の首座が全員世を去った後も、それどころか他の教会の首座が二世代~三世代も世を去った後も君臨している可能性があります。ロシア正教会を除けば、 OCU が信徒数最大となるという数値もあり、“フィラレート総主教”排除に成功し、国内地盤を固めることができれば、東方正教会(ロシア正教会を除く)最大の実力者となっていくかもしれません。全体の信徒数は半分以下になっているでしょうけど。

 

 ウクライナに関しては、コンスタンティノープルにとっては、半分期待外れ、半分期待以上というところではないでしょうか(そもそも彼らはもうウクライナにあまり興味がないというか)。
 期待外れというのは、コンスタンティノープルに追随して、 OCU を承認しようとする独立正教会が出ないことです。
 期待以上というのは、にも関わらず、コンスタンティノープルと完全に縁を切る可能性が取り沙汰されないという状況です。
 これはさらなるバクチを打つのに十分であり、東方正教会全体を自分たちの下部組織に作り変えるための動きを進めることになるでしょう。
 コンスタンティノープルは、マケドニア(北マケドニア共和国)への独立正教会設置へ動くとみられており、セルビア正教会は教会法上非合法な“マケドニア正教会-オフリド大主教庁”への態度を緩和して話し合いを示唆するコメントを出しています(まだこのサイトでは記事にしてませんが)。しかし、いずれにせよ、コンスタンティノープルの仕事はセルビア人やマケドニア人(スラヴ系のマケドニア人)を満足させることではなく、自分たちとギリシャ人を満足させることであり、マケドニアへの独立正教会設置は(時期がいつになるかはわかりませんが)コンスタンティノープルの権威を示すためにおこなわれるでしょう。ほかに理由は必要ありません。セルビア正教会がそれに対して(ロシア正教会と同じく)コミュニオンの解除を宣言するしかできないとすると、完全に縁を切ることはできないと宣言しているようなものです。そして完全に縁を切ることはできないでしょう。この状況を見ればロシア正教会は興奮しているうちに勢いでコンスタンティノープルへの破門(Anathemaのほう)を宣言し、バクチの打ち合いに入ったほうが良かったのかもしれません。主導権を握る機会がまったく見えてきません。この半年間、彼らは実効性のある策をなにひとつ打てず、愚痴ってただけのようにみえます。
 ともあれ、ウクライナはある程度は終わった話題(東方正教会のこれまでの教会法と共に)であり、マケドニアへの独立正教会設置の行方に注目でしょう。

 

訃報(2019年5月12日):キリスト教/マロン東方典礼カトリック教会【マロン派】の前首座/アンティオキア名誉総大司教ナスララー・ブートロス・スフェイル枢機卿座下が帰天(1920~2019)枢機卿の人数は221人に減少

 2019年5月12日、キリスト教/ローマ・カトリック教会/東方典礼カトリック教会のひとつ、マロン東方典礼カトリック教会【マロン派】の前首座/アンティオキア名誉総大司教ナスララー・ブートロス・スフェイル枢機卿座下(His Eminent Beatitude Nasrallah Butros Cardinal Sfeir, Patriarch Emeritus of Antioch【Antiochia】 of the Maronites)が帰天しました。
 1920年5月15日生まれの98歳。
 1986年~2011年までマロン派トップのアンティオキア総大司教。
 この間、1994年に枢機卿に叙任されていました。

 帰天により枢機卿の人数は221人に減少。

 

 (英語)Cardinal Sfeir, patriarch emeritus of the Maronites, dies at the age of 98 | ROME REPORTS

ROME REPORTS in English:
Cardinal Sfeir, patriarch emeritus of the Maronites, dies at the age of 98 – YouTube

 

(注意:失礼なツッコミ多々あります)キリスト教/東方正教会のウクライナ問題をめぐる名言・珍言【その後の展開を含む】(2019年5月あたりまで)

 最近の情勢を補足しつつ、ざーっと書いていきます。


 

 コンスタンティノープル支持派の某聖職者:
「コンスタンティノープルと縁を切ったら、我々はプロテスタントと同レベルになってしまう!」

 この方は、凄まじく適切に東方正教会の現況を言い表しました。
 かねがね東方正教会の主教らは、「我々の聖なるコミュニオンは、寄り集まっているだけのルター派とは違う」などと発言していましたが、最近の体たらくを見るにつけ、あなた方、そろそろ贖罪の時期が来たのではないですか?

 


 

 コンスタンティノープルが独立を認めたほうのウクライナ正教会(OCU)で、影からすべてを操る予定だったにも関わらず名誉職に追いやられた“フィラレート名誉総主教”:
「ポロシェンコ大統領と“エピファニー府主教”に騙された」

 エピファニー府主教は、フィラレート名誉総主教が操り人形にする予定だった人物ですが、OCUの首座に選出されて地位を得た後は、フィラレート名誉総主教を排除する方向に動いています(排除というかそもそも別に名誉総主教にはルール上なんの実権もないので当然のことをしているだけというか)。
 これについて、フィラレート名誉総主教は、「彼は私に、彼自身は対外的な役割だけをこなし、実権はすべて私に預けると約束した」とエピファニー府主教が操り人形になることに同意していたと発言し、波紋を呼んでいます。
 そして、

「コンスタンティノープルからの独立が必要」

 とも発言。
 あなたがコンスタンティノープルの介入を要求したのでは……いやポロシェンコ大統領に騙されたのでしたな!

 それにしてもモスクワに破門されてもウクライナ国内に影響力を確保していた人間が、その破門をコンスタンティノープルに撤回されたら影響力を喪失していくというのは、なんともいえない悲哀……悲哀?、まあ悲哀でいいですか、悲哀を感じます。
 ポロシェンコ大統領と共に大喜び(ぬか喜び)している映像が世界に流れてから半年と少ししか経過していません。二人とも今年中には話題から完全にフェードアウトするのではないかと思いますが、しかしフィラレート名誉総主教はチキンレースの果てに OCU とコンスタンティノープルを崩壊に追いやる可能性もあります。

 なお、 OCU の前身となった、ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】及びウクライナ独立正教会【UAOC】は、団体としてはまだ登録されているらしく(当局者は否定?)、聖堂などの所有権を含めて、なにがどうなっているのかははっきりしません。
 もちろん所有権が残っていても、現在のウクライナでは強制的に暴力で奪うことが許されている(?)ので、あまり意味はないかもしれません。

 


 

 エルサレム総主教セオフィロス3世聖下:
「(モスクワ総主教庁系ウクライナ正教会首座の)オヌフリー府主教は、神がこの難局を乗り越えるために選んだ人物」

 これは、コンスタンティノープルが吹っ切れて暴走し始める少し前の発言です。
 その後事態が展開してから、ロシア正教会側の聖職者の一人が「エルサレムがコンスタンティノープルを支持するなら、エルサレムともフル・コミュニオンを解除する」という発言をしていました。つまり、少なくともロシア正教会の一部聖職者は、セオフィロス総主教は「神が~選んだ人物」と発言した少し後にはその彼を見捨てるような人物と考えていたわけであり、エルサレム総主教に対してなんと無礼な、と思ったりしますが、みんな興奮していたのか咎める声もありませんでした。
 とはいうものの、これはセオフィロス3世聖下がいい加減な人物と思われている傍証にはなるでしょう。

 現在までエルサレム総主教庁は、モスクワ寄りというか、コンスタンティノープルから距離を置くというか、そのような立ち位置を取っています。
 ポロシェンコ大統領が、約束を破って OCU の聖職者を同行して訪問してきたときには、仮病を使ってスルー(公式発表は体調不良による入院ですが、前後にモスクワ総主教庁系のウクライナ正教会の聖職者らと会見)するなど、ロシア系正教会メディアもそのふんばりを評価していますが、一方、アメリカにも近いといわれる総主教がなぜそんなにがんばっているのかわからない状況でもあります。
 なにか陰謀を企んでいるのか、スリルを楽しんでいるのか……。

 


 

 教会法上非合法なマケドニア正教会-オフリド大主教庁の主教:
「我々は近いうちにコンスタンティノープルに独立を承認されるだろう。しかし、各独立正教会がウクライナの独立正教会(OCU)を承認していないので、我々も彼らを承認するかどうかはわからない」

「コンスタンティノープルの顔に泥を塗る予定ですが、コンスタンティノープルから独立正教会として承認されると思ってます」というこれまた凄い発言。
 今、東方正教会は歴史上もっとも言論の自由を謳歌する時代。

 とはいうものの、マケドニア(北マケドニア共和国)を管轄権に持つセルビア正教会の聖シノドが、マケドニアについてなんらかの検討をおこなっているという情報が出てきています。
 そして、同教会のアメリカの主教が一人、コンスタンティノープル支持を表明しているらしく、またもや混沌の予感。
 セルビア正教会の海外の教会組織については、オーストラリアとニュージーランドの新グラディシュカ府主教庁の件が解決して以来、特に問題は残っていないのではないかと思いますが、親コンスタンティノープル・反ロシアがこの主教一人ということも考えにくいので、にわかにセルビア正教会の海外の組織が気になってくるところです。

 


 

 キリスト教/ローマ・カトリック教会/ウクライナ東方典礼カトリック教会【UGCC】の首座/キエフ=ハリチ首位大司教スヴャトスラフ・シェウチューク大司教座下:
「唯一の Patriarchate (総主教庁 or 総大司教庁)を設立し、ローマ及びコンスタンティノープルとデュアル=コミュニオンを結ぼう」

 要するにローマからもコンスタンティノープルからも認められる教会を設立しようということをですが、ローマもコンスタンティノープルもそんなつもりはないのに、なにをいうとるのか、とまったくもって相手にされていませんでした。でもあきらめていない様子

 なお、前述の OCU の首座エピファニー府主教は、「 OCU と UGCC はともに愛国的な教会組織」というような発言をしています。
 おっしゃりたい欲はわからなくもないですが、えーと、あなた方のことは、ウクライナ天主教愛国会ズとお呼びすればいいですか?

 


 

 在外ロシア正教会:
「もはやコンスタンティノープル自体が教会法上非合法な存在」

 昨年の話ですが、コンスタンティノープルの管轄権下にある西欧ロシア正教会大主教区のイタリア司祭長区のひとつの聖堂と信徒たちが、在外ロシア正教会に現在の情勢について尋ねたところ、上記の回答をえたため、同大主教区を離脱して在外ロシア正教会の管轄権下に入るということがありました。
 ここまでは「そうですか」という話ですが、これについて大主教区の首座ジャン大主教が、在外ロシア正教会側に抗議する(そりゃするでしょう)などをしていたところ、一月も経たないうちにコンスタンティノープルが西欧ロシア正教会大主教区の総主教代理区としての地位を剥奪、集団としての解体を要求し始めるという摩訶不思議な事態に。「うちの子分がロシアに嫌がらせを受けているぞ。よし、その子分をつぶそう」ということです。
 現在、同大主教区は、議論を重ねつつ、教会法上合法かつ自治的な権限を持つ集団であり続ける方向を模索していますが、コンスタンティノープルとのコミュニオンにあることを教会法上合法とする限り難しいでしょう。
 フィラレート名誉総主教と違い、何の罪もない、じゃなかった騙されたわけでもないのに、崩壊していく大主教区に同情してもいいところですが、もはや「教会法上合法」とかいわれるだけで失笑気味なので同情できません

 ところで、この項目の発言を読んでから、ページトップの悲痛な叫びを読んでいただくと、より一層事態がわかりやすいのではないかと思います。

 


 

キリスト教/コンスタンティノープルが、新たなアメリカ大主教にブルサ府主教エルピドフォロス座下を選出(2019年5月)次の全地総主教の有力候補

 2019年5月11日、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルの全地総主教庁は、新たなアメリカ大主教にブルサ府主教エルピドフォロス座下(His Eminence Metropolitan Elpidophoros of Bursa)を選出した模様です。

 

 (英語:アメリカ大主教区公式サイト)Metropolitan Elpidophoros of Bursa Elected Unanimously Archbishop of America – 2019 – Greek Orthodox Archdiocese of America

 

 前任のデメトリオス座下は、大主教区内の問題などにより全地総主教庁より退任を迫られ、今回新たな選出にいたりました。
 が、大主教区側が求めていた手続きを全地総主教庁側が無視するなど、またもコンスタンティノープルは一方的な行動を取っています。

 全地総主教庁が選出したエルピドフォロス座下は、コンスタンティノープルの全地総主教を「並ぶもののない第一人者(First without equals)」とする考えの人物(もはや全地総主教庁は全員そうなんだろうと思いますが)。
 また座下はトルコ生まれであり、トルコ当局が全地総主教の就任条件をトルコ生まれとしているため、次の全地総主教庁の有力候補と見られています。

 今回の一方的な選出は、次の全地総主教となるエルピドフォロス座下に“箔”をつけるためにコンスタンティノープルがゴリ押ししたようにも思えますが……。
 現在の、コンスタンティノープルのアメリカ大主教区は、内部のお金に関する問題や、コンスタンティノープルの今後の方針によっては保守派が離脱するという観測があるなど、よくわからないものとなっています。
 お金の件は結構多額のようですが、しかし、こんな程度の問題でギリシャ系住民がコンスタンティノープルと縁を切るとは思えないのが、昨年以来の状況を見てきた一人としての感想です。ぶっちゃけコンスタンティノープルと縁を切る可能性より棄教する可能性のほうが高いと思います。

 

 いずれにせよ、今回の選出は、コンスタンティノープルが今後も方針や行動を変えることは一切ないと宣言したようなものであり、ロシア正教会との関係改善の可能性は一世代先までゼロということになるのでしょう。

 ギリシャ系以外の東方正教会もそろそろ考えを決める(コンスタンティノープルに服従するか、フル・コミュニオンを解除するか)時期かとも思いますが……。

 ただ、肝心のウクライナでは、実力者の“フィラレート名誉総主教”が、かつての自分の片腕で、コンスタンティノープル主導で「独立正教会」の首座に擁立された“エピファニー府主教”と対立し、これを排除しようとしているという報道が出るなど(“エピファニー府主教”がモスクワ総主教庁系のオヌフリー府主教座下に接近しようとしているという観測も出てきており、またぞろフェイクニュース合戦になるのではないでしょうか)、UOC-KP 及び UAOC と その他に再分裂の可能性もあります(そもそも統一できていないという点はともかく)。