キリスト教/“ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】”の“フィラレート総主教”が同庁の“主教協議会”を開催(2019年7月)「コンスタンティノープルのトモスの目的は UOC-KP をつぶすことであり、モスクワはこれを喜んでいる」

 2019年7月27日、“ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】”の“フィラレート総主教”(キーウ・全ルーシ=ウクライナ総主教フィラレート聖下 : His Holiness Patriarch Filaret of Kyiv and All Rus’-Ukraine)は、 UOC-KP の主教協議会を開催、七項目からなる文章を発表しました。

 ものすごくざっくり書きますと、

  1. コンスタンティノープルのトモスの目的は UOC-KP をつぶすことであり、モスクワはこれを喜んでいる
  2. コンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】は UOC-KP をつぶそうとしている。
  3. 我々は OCU による UOC-KP の聖堂や修道院の占領を非難する。
  4. ウクライナ文化省の UOC-KP に対する措置は違法。
  5. ウクライナ文化省は東方正教会を壊そうとしている
  6. ゼレンスキー大統領に対し、ウクライナ文化省の違法介入行為を停止させるよう求める。
  7. 人権団体や知識人、コサックと全市民に対し、ウクライナ人の真の精神的守護者である UOC-KP をつぶそうとする行為を防ぐよう求める。

 ……ということで、ついにコンスタンティノープル&モスクワ結託論のようなものが出されるにいたりました。
 いや、良かったですね。モスクワとコンスタンティノープルのシスマなどなかった!

 

 そんなどうでもいい話はともかくとして、今回の出席者は、フィラレート総主教を含めて五人のようです。
 他の四方は、

  • ヨアサフ府主教”(ベルゴロド・オボヤンスキー府主教ヨアサフ座下 : His Eminence Metropolitan Ioasaf of Belgorod and Oboyansky)
  • イッリャ主教”(ハルキウ・ボホドヒウ主教イッリャ座下 : His Grace Bishop Illya of Kharkiv and Bohodukhiv)
  • ペトロ主教”(ヴァルイスキー主教ペトロ座下 : His Grace Bishop Petro of Valuysky)
  • アンドリー主教”(ヴァシルキウカ主教アンドリー座下 : His Grace Bishop Andriy of Vasylkivka)

 教区名からすると、ロシア連邦及びウクライナ国内の聖職者に思えます。
 主教全員ではないような……モルドバの方が見当たらない?

 

 (ウクライナ語: UOC-KP 公式サイト)Відбулося засідання Архієрейського Собору Української Православної Церкви Київського Патріархату – Українська Православна Церква Київський Патріархат

УПЦ КП – Відбулося засідання Архієрейського Собору… | Facebook

 

着座式(2019年7月27日):キリスト教/シリア東方典礼カトリック教会/ダマス大司教ヨウハンナ・ジハード・ムタノス・バッター座下の着座式がおこなわれる。同教会総大司教、メルカイト東方典礼カトリック教会総大司教、マリオ・ゼナリ枢機卿座下、シリア正教会総主教らが臨席(2019年7月)

 2019年7月27日、キリスト教/ローマ・カトリック教会/東方典礼カトリック教会/シリア東方典礼カトリック教会/ダマス大司教“モル”・ヨウハンナ・ジハード・ムタノス・バッター座下(His Most Reverend Excellency Archbishop Mor Youhanna Jihad Mtanos Battah, Archbishop of Damas)の着座式がおこなわれました。

 キリスト教/東方典礼カトリック教会/シリア東方典礼カトリック教会の首座/アンティオキア・東方全土総大司教“モラン”・“モル”・イグナティウス・ヨセフ3世ヨナン座下(His Beatitude Patriarch Moran Mor Ignatius Youssef III Younan, the Patriarch of Antioch and All the East for Syriac Catholic Church)が、司式。

 キリスト教/ローマ・カトリック教会/東方典礼カトリック教会/メルカイト東方典礼カトリック教会の首座/アンティオキア・東方全土(、アレクサンドリア、エルサレム)総大司教ユーセフ・アブシ座下(His Beatitude Patriarch Youssef Absi, S.M.S.P., Patriarch of Antioch【Antiochia】 and All the East, of Alexandria and Jerusalem of the Melkite Greek Catholic Church)、
 シリア・アラブ共和国駐箚ローマ教皇大使【ローマの使徒座使節】マリオ・ゼナリ枢機卿座下(His Eminence Mario Cardinal Zenari, Apostolic Nuncio to Syria)、
 キリスト教/オリエント正教会/シリア正教会の首座/アンティオキア・東方全土総主教“モラン”・“モル”・“イグナティウス”・アフレム2世聖下(His Holiness Moran Mor Ignatius Aphrem II, the Patriarch of Antioch and All the East, the Supreme Head of the Universal Syriac Orthodox Church)及び総主教管轄ダマスカス大主教区総主教代理“モル”・ティモセオス・マッタ・アル・クーリー座下(His Eminence Mor Timotheos Matta Al-Khoury, Patriarchal Vicar of the Patriarchal Archdiocese of Damascus)、
 らが臨席したようです。

 

 (英語:シリア正教会アンティオキア総主教庁公式サイト)Installation of the New Syriac Catholic Archbishop of Damascus | Syrian Orthodox Patriarchate of Antioch

 

قداسة سيدنا البطريرك يحضر رتبة تولية… – His Holiness Patriarch Mor Ignatius Aphrem II | Facebook

 

キリスト教/ウクライナ正教会(モスクワ総主教庁系)を離脱してコンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】に合流した府主教が、モスクワ総主教キリル聖下より授与されたパナギアを身に着けていることを茶化す記事(2019年7月)

 キリスト教/ロシアの正教会系メディアが、ウクライナ正教会(モスクワ総主教庁系)を離脱してコンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】に合流した“シメオン府主教”が、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会の首座/モスクワ・全ロシア【全ルーシ】総主教キリル聖下(キリール総主教 : His Holiness Kirill, Patriarch of Moscow and all Russia【Rus’】)より授与されたパナギア(ここでは首からかけているもの)を身に着けている(2019年7月25日の礼拝)ことを茶化す記事を出しています。

 

 (英語)Ex-metropolitan Simeon appears in the Panagia presented by Patriarch Kirill – UOJ – the Union of Orthodox Journalists

 

 シメオン府主教は、新設される OCU の首座を目指してウクライナ正教会(モスクワ総主教庁系)を裏切ったものの会合での投票であっさりと負けました。その少し前には会合には参加しないと発言していました。しないどころか自分のところの大聖堂を会合場所に強引に提供(謎の男たちが守衛から鍵を奪い取ったとか)。

  OCU はロシア正教会を教会法上合法でないとしているわけではないため、 OCU の府主教がキリル聖下より授けられたパナギアを着用しても彼ら自身からすればどこから見ても何も問題はありませんが、モスクワ総主教庁系のウクライナ正教会をロシアの手下だの悪魔の手先だの罵っていた人物がこれでは……。いやすでにいい加減な人物であることは昨年のシスマ2018でわかっていたし、他に重要な問題がいくらでもあるので、この程度はたいしたことではありません。しかし、もしや OCU を裏切ってモスクワ総主教庁系に戻るつもりを示しているのでは……と疑念がわきます(なお、モスクワ総主教庁系の府主教から「戻って来いよ」というコメントが出たことはあります)。

 7月27日~7月28日予定?の「ルーシ洗礼」の祝賀行事の各派の盛り上がりに注目です。

 

キリスト教/セルビア総主教イリネイ聖下が、セルビア大統領ブチッチ閣下と会見(2019年7月)

 2019年7月25日、キリスト教/東方正教会/セルビア正教会の首座/セルビア総主教イリネイ聖下(ペーチ大主教 : ベオグラード・カルロヴツィ府主教 : His Holiness Irinej, Serbian Patriarch, Archbishop of Peć, Metropolitan of Belgrade and Karlovci)は、セルビア共和国大統領アレクサンダル・ブチッチ閣下(ヴチッチ大統領 : His Excellency Mr Aleksandar Vučić)と会見しました。
 会談では、セルビアに関する全般、コソボ問題などが話し合われたようです。
 レメジヤナ主教ステファン座下(His Grace Bishop Stefan of Remesiana)が同席した模様。

 

 (英語:セルビア正教会総主教庁公式サイト)Састанак председника Вучића и Патријарха српског Иринеја | Српскa Православнa Црквa [Званични сајт]

 

 (セルビア語:セルビア大統領府公式サイト)Састанак са Његовом светошћу патријархом српским господином Иринејом | Председник Републике Србије

 

Александар ВучићさんはTwitterを使っています: 「Његову светост патријарха српског господина Иринеја информисао сам о актуелној политичкој ситуацији и изазовима са којима се Србија сусреће. У тешким временима јединство је од кључног значаја за опстанак нашег народа на Косову и Метохији. https://t.co/SYzYc5LwuN」 / Twitter

 

U srdačnom i otvorenom razgovoru, sa… – Budućnost Srbije – Aleksandar Vučić | Facebook

 

Aleksandar Vučićさん(@buducnostsrbijeav) • Instagram写真と動画

 

キリスト教/東方正教会/エルサレム総主教庁が、解任された前エルサレム総主教のイリネオス修道士の(修道士への)降格を撤回(2019年7月)また、ギリシャの正教会系メディア Romfea に対して抗議声明を発表

 2019年7月25日、キリスト教/東方正教会/エルサレム総主教庁の聖シノドは、解任された前エルサレム総主教のイリネオス修道士(IrenaiosEirinaios)への、修道士への降格の撤回を決議したようです。

 以降、「元エルサレム総主教(Former Patriarch of Jerusalem)」と称されると思われますが、敬称を含めて、どのように表記されるかはまだよくわからないところです。

 

 (英語:エルサレム総主教庁公式サイト)LIFTING OF THE DEGRADATION OF MONK EIRINAIOS (FORMER PATRIARCH OF JERUSALEM)

 

 また、入退院が報じられたそのイリネオス元エルサレム総主教に関して、ギリシャの正教会系メディア Romfea.gr が無責任な報道をおこなったとし、抗議声明を発表しています。

 

 (英語:エルサレム総主教庁公式サイト)REFUTATION AGAINST THE NEWS PUBLISHED BY ROMFEA.GR NEWS AGENCY

 

 Romfea は、イリネオス元総主教の健康状態や入退院を報じており、英語版の最新記事は以下のものになります(今回の降格撤回を報じる記事)。

 (英語)Irenaios gets the title “Former Patriarch” by the Holy Synod of the Patriarchate of Jerusalem – Romfea News

修正:
 ギリシャ正教会側は、アテネの新しい医療施設は、元総主教の受け入れの準備が出来ているとしているようです。
 エルサレム総主教庁側の抗議内容からすれば、元総主教はエルサレム総主教庁側の組織に属するどこかで治療を受けていると受け取れますが……。 Romfea 記事は、元総主教が劣悪な環境下に置かれていると示唆というか、はっきり書いているものがあるので、それに対する反駁なのかもしれません。
 なお、今後のことについては言及されていません。

 

追記:
 ロシアの正教会系メディア ORTHODOX CHRISTIANITY(OrthoChristian.Com) は、 Romfea の記事に依りつつ、今回のエルサレム総主教庁の決定により、“イリネオス総主教”とサインしたパスポートが有効になり、治療のためのギリシャ渡航が可能になったとしています。

 Ailing Irenaios (Skopelitis) officially recognized as “former patriarch” by Jerusalem Patriarchate / OrthoChristian.Com

 正直、ほんまかいなと思いますが……。

 Romfea の記事などによりますと、パスポートはエルサレム総主教庁が保管していたとされます。
 確かに元総主教は事実上の軟禁状態にあるといわれていたため、パスポートの更新すらできていなかったというのはありえますが、解任から10年以上たっているのにそのパスポートが使用可能なのか。
 また、パスポートの問題だとすれば、新しく発給すればそれで済む話ではないかとも思えます。まさか本人が「格を戻せ」とゴネたわけでもあるまいし。

 

※なお、パスポートに「総主教」と書けるのかという初歩的な疑問を持ってしまった方のために説明いたしますと、称号などが法源を持つ場合(王政・貴族制度が現存したり国教があったり)から大統領などがなにかを強引に通した場合などまで、称号などがパスポートに用いられる例は多々あります。
 エルサレムの総主教でいいますと、教会のほか、イスラエル、パレスチナ、ヨルダンの当局が地位を承認するものなので、これらの各国の法律文書で有効かと思われます。また、ギリシャ共和国は憲法でギリシャ正教会及びコンスタンティノープル総主教庁(及びそれらと一つの教えを奉じている各教会)とのつながりを規定しており、エルサレム総主教庁の称号もまた公的なものとされるでしょう。
 今回のパスポートに関して、どこが発給したものなのかいまいちはっきりしませんが、いずれにせよ、その発給元のパスポートを受け入れる各国で「イリネオス総主教」と署名したパスポートは有効だったはずです。