キリスト教/古代東方教会が、新たに首座/カトリコス=総主教として米国東部・欧州全土主教ゲワルギス・ヨナン座下を選出(2022年11月)「ゲワルギス3世ヨナン」を名乗る予定

 2022年11月12日、キリスト教/東方教会/古代東方教会は、新たに首座として米国東部・欧州全土主教“マル”・ゲワルギス・ヨナン座下(His Grace Mar Gewargis Younan, Bishop for the Diocese of Eastern USA & all Europe)を選出した模様。
 同教会のカトリコス=総主教として、“マル”・ゲワルギス3世ヨナンMar Gewargis III Younan)を名乗るようです。

 古代東方教会では、
 訃報(2022年2月11日):キリスト教/古代東方教会首座/カトリコス=総主教アッダイ2世ゲワルギス聖下が永眠(1948?~2022)
 キリスト教/古代東方教会の次の首座/カトリコス=総主教に、ヤコブ・ダニル府主教座下が選出(2022年6月)
 キリスト教/古代東方教会の首座/カトリコス=総主教に選出されていたヤコブ3世ダニル聖下が「退位」を表明との報道(2022年8月)
 と、アッダイ2世ゲワルギス聖下永眠後に、ドタバタがありました。
 「ヤコブ3世ダニル」は「退位」の理由にアッシリア東方教会との(再)統合の話し合いを進めるためというようなことを挙げていたとの報道がありましたが、(他の理由を誤魔化すためのいいわけではないのなら)単純にまたもや統合の話はどこかへ立ち消えたということになります。

 また、今回選出された「ゲワルギス3世ヨナン」は第110代であり、アッダイ2世ゲワルギス聖下の後継とされており、「ヤコブ3世ダニル」は歴代にも入らないということになりそうです。

 

Shamiram Media, Inc.:
H.G. Mar Gewargis Younan is elected as 110th Catholicos-Patriarch of the Ancient Church of the East – YouTube

 

A statement from the Synod of… – Ancient Church of the East | Facebook

 

Announcement from the Synod of Bishops of the Ancient Church of the East regarding the Patriarchal Election. | Announcement from the Synod of Bishops of the Ancient Church of the East regarding the Patriarchal Election. بيان من المجمع المقدس حول انتخاب جاثليق… | By Ancient Church of the East | Facebook

キリスト教/古代東方教会の首座/カトリコス=総主教に選出されていたヤコブ3世ダニル聖下が「退位」を表明との報道(2022年8月)

 2022年8月13日、6月にキリスト教/東方教会/古代東方教会の首座/第110代カトリコス=総主教に選出されていた“マル”・ヤコブ・ダニル聖下(His Holiness Mar Yakoob III Danil)は、(唐突に)「退位」を表明しました。
 これは、アッシリア東方教会との(再)統合の話し合いを進めるため、ということのようですが……。
 話している内容は言語上まったくわかりませんし、正式な着座式をおこなってもいない状況で「退位」といわれても。
 そもそも話し合いがうまくいかなかったから、選出されたはずですが、急転直下の進展があったのか、など首をひねる気持ちです。

続報:
 キリスト教/古代東方教会が、新たに首座/カトリコス=総主教として米国東部・欧州全土主教ゲワルギス・ヨナン座下を選出(2022年11月)「ゲワルギス3世ヨナン」を名乗る予定

 

 (英語)Patriarch of Ancient Church of the East Mar Yakoob III Danil abdicates two months after election – SyriacPress

 

مار ياقو دانيال يتنحى عن الدرجة البطريركية | تنحي مار يعقوب دانيال البطريرك المنتخب، عن الدرجة البطريركية من أجل مصلحة الكنيسة | By Nahrain Post | Facebook

キリスト教/古代東方教会の次の首座/カトリコス=総主教に、ヤコブ・ダニル府主教座下が選出(2022年6月)

 2022年6月2日、キリスト教/東方教会/古代東方教会の聖シノドは、2月11日に永眠した首座/第109代カトリコス=総主教“マル”・アッダイ2世ゲワルギス聖下(His Holiness Mar Addai II Gewargis, Catholicos Patriarch of the Ancient Church of the East)の後継として、オーストラリア・ニュージーランド府主教ヤコブ・ダニル座下(His Beatitude【Eminence】 Mar Yakoob Danil, Metropolitan of Archdiocese of Australia and New Zealand)を選出したようです。

 着座に伴う儀式は8月19日におこなわれる予定。

 アッシリア東方教会との(再)統合の協議は(やはり)うまくいかなかったようです。

 

 (英語)IRAQ ANCIENT CHURCH OF THE EAST PICKS NEW PATRIARCH, PUTS BRAKES ON REUNIFICATION
 (英語)New patriarch elected for the Ancient Church of the East – SyriacPress
 (英語)ASIA/IRAQ – Mar Yakoob III Danil elected new Patriarch of the Ancient Church of the East – Agenzia Fides

 

続報:
 キリスト教/古代東方教会の首座/カトリコス=総主教に選出されていたヤコブ3世ダニル聖下が「退位」を表明との報道(2022年8月)

(注意:失礼なツッコミ多々あります)キリスト教/東方正教会のウクライナ問題をめぐる名言・珍言【その後の展開を含む】(2019年5月あたりまで)

 最近の情勢を補足しつつ、ざーっと書いていきます。


 

 コンスタンティノープル支持派の某聖職者:
「コンスタンティノープルと縁を切ったら、我々はプロテスタントと同レベルになってしまう!」

 この方は、凄まじく適切に東方正教会の現況を言い表しました。
 かねがね東方正教会の主教らは、「我々の聖なるコミュニオンは、寄り集まっているだけのルター派とは違う」などと発言していましたが、最近の体たらくを見るにつけ、あなた方、そろそろ贖罪の時期が来たのではないですか?

 


 

 コンスタンティノープルが独立を認めたほうのウクライナ正教会(OCU)で、影からすべてを操る予定だったにも関わらず名誉職に追いやられた“フィラレート名誉総主教”:
「ポロシェンコ大統領と“エピファニー府主教”に騙された」

 エピファニー府主教は、フィラレート名誉総主教が操り人形にする予定だった人物ですが、OCUの首座に選出されて地位を得た後は、フィラレート名誉総主教を排除する方向に動いています(排除というかそもそも別に名誉総主教にはルール上なんの実権もないので当然のことをしているだけというか)。
 これについて、フィラレート名誉総主教は、「彼は私に、彼自身は対外的な役割だけをこなし、実権はすべて私に預けると約束した」とエピファニー府主教が操り人形になることに同意していたと発言し、波紋を呼んでいます。
 そして、

「コンスタンティノープルからの独立が必要」

 とも発言。
 あなたがコンスタンティノープルの介入を要求したのでは……いやポロシェンコ大統領に騙されたのでしたな!

 それにしてもモスクワに破門されてもウクライナ国内に影響力を確保していた人間が、その破門をコンスタンティノープルに撤回されたら影響力を喪失していくというのは、なんともいえない悲哀……悲哀?、まあ悲哀でいいですか、悲哀を感じます。
 ポロシェンコ大統領と共に大喜び(ぬか喜び)している映像が世界に流れてから半年と少ししか経過していません。二人とも今年中には話題から完全にフェードアウトするのではないかと思いますが、しかしフィラレート名誉総主教はチキンレースの果てに OCU とコンスタンティノープルを崩壊に追いやる可能性もあります。

 なお、 OCU の前身となった、ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】及びウクライナ独立正教会【UAOC】は、団体としてはまだ登録されているらしく(当局者は否定?)、聖堂などの所有権を含めて、なにがどうなっているのかははっきりしません。
 もちろん所有権が残っていても、現在のウクライナでは強制的に暴力で奪うことが許されている(?)ので、あまり意味はないかもしれません。

 


 

 エルサレム総主教セオフィロス3世聖下:
「(モスクワ総主教庁系ウクライナ正教会首座の)オヌフリー府主教は、神がこの難局を乗り越えるために選んだ人物」

 これは、コンスタンティノープルが吹っ切れて暴走し始める少し前の発言です。
 その後事態が展開してから、ロシア正教会側の聖職者の一人が「エルサレムがコンスタンティノープルを支持するなら、エルサレムともフル・コミュニオンを解除する」という発言をしていました。つまり、少なくともロシア正教会の一部聖職者は、セオフィロス総主教は「神が~選んだ人物」と発言した少し後にはその彼を見捨てるような人物と考えていたわけであり、エルサレム総主教に対してなんと無礼な、と思ったりしますが、みんな興奮していたのか咎める声もありませんでした。
 とはいうものの、これはセオフィロス3世聖下がいい加減な人物と思われている傍証にはなるでしょう。

 現在までエルサレム総主教庁は、モスクワ寄りというか、コンスタンティノープルから距離を置くというか、そのような立ち位置を取っています。
 ポロシェンコ大統領が、約束を破って OCU の聖職者を同行して訪問してきたときには、仮病を使ってスルー(公式発表は体調不良による入院ですが、前後にモスクワ総主教庁系のウクライナ正教会の聖職者らと会見)するなど、ロシア系正教会メディアもそのふんばりを評価していますが、一方、アメリカにも近いといわれる総主教がなぜそんなにがんばっているのかわからない状況でもあります。
 なにか陰謀を企んでいるのか、スリルを楽しんでいるのか……。

 


 

 教会法上非合法なマケドニア正教会-オフリド大主教庁の主教:
「我々は近いうちにコンスタンティノープルに独立を承認されるだろう。しかし、各独立正教会がウクライナの独立正教会(OCU)を承認していないので、我々も彼らを承認するかどうかはわからない」

「コンスタンティノープルの顔に泥を塗る予定ですが、コンスタンティノープルから独立正教会として承認されると思ってます」というこれまた凄い発言。
 今、東方正教会は歴史上もっとも言論の自由を謳歌する時代。

 とはいうものの、マケドニア(北マケドニア共和国)を管轄権に持つセルビア正教会の聖シノドが、マケドニアについてなんらかの検討をおこなっているという情報が出てきています。
 そして、同教会のアメリカの主教が一人、コンスタンティノープル支持を表明しているらしく、またもや混沌の予感。
 セルビア正教会の海外の教会組織については、オーストラリアとニュージーランドの新グラディシュカ府主教庁の件が解決して以来、特に問題は残っていないのではないかと思いますが、親コンスタンティノープル・反ロシアがこの主教一人ということも考えにくいので、にわかにセルビア正教会の海外の組織が気になってくるところです。

 


 

 キリスト教/ローマ・カトリック教会/ウクライナ東方典礼カトリック教会【UGCC】の首座/キエフ=ハリチ首位大司教スヴャトスラフ・シェウチューク大司教座下:
「唯一の Patriarchate (総主教庁 or 総大司教庁)を設立し、ローマ及びコンスタンティノープルとデュアル=コミュニオンを結ぼう」

 要するにローマからもコンスタンティノープルからも認められる教会を設立しようということをですが、ローマもコンスタンティノープルもそんなつもりはないのに、なにをいうとるのか、とまったくもって相手にされていませんでした。でもあきらめていない様子

 なお、前述の OCU の首座エピファニー府主教は、「 OCU と UGCC はともに愛国的な教会組織」というような発言をしています。
 おっしゃりたい欲はわからなくもないですが、えーと、あなた方のことは、ウクライナ天主教愛国会ズとお呼びすればいいですか?

 


 

 在外ロシア正教会:
「もはやコンスタンティノープル自体が教会法上非合法な存在」

 昨年の話ですが、コンスタンティノープルの管轄権下にある西欧ロシア正教会大主教区のイタリア司祭長区のひとつの聖堂と信徒たちが、在外ロシア正教会に現在の情勢について尋ねたところ、上記の回答をえたため、同大主教区を離脱して在外ロシア正教会の管轄権下に入るということがありました。
 ここまでは「そうですか」という話ですが、これについて大主教区の首座ジャン大主教が、在外ロシア正教会側に抗議する(そりゃするでしょう)などをしていたところ、一月も経たないうちにコンスタンティノープルが西欧ロシア正教会大主教区の総主教代理区としての地位を剥奪、集団としての解体を要求し始めるという摩訶不思議な事態に。「うちの子分がロシアに嫌がらせを受けているぞ。よし、その子分をつぶそう」ということです。
 現在、同大主教区は、議論を重ねつつ、教会法上合法かつ自治的な権限を持つ集団であり続ける方向を模索していますが、コンスタンティノープルとのコミュニオンにあることを教会法上合法とする限り難しいでしょう。
 フィラレート名誉総主教と違い、何の罪もない、じゃなかった騙されたわけでもないのに、崩壊していく大主教区に同情してもいいところですが、もはや「教会法上合法」とかいわれるだけで失笑気味なので同情できません

 ところで、この項目の発言を読んでから、ページトップの悲痛な叫びを読んでいただくと、より一層事態がわかりやすいのではないかと思います。

 


 

シスマ2018:キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教庁系統の西欧ロシア伝統正教小教区総主教代理区下にあったイタリア・フィレンツェの教会が、在外ロシア正教会【ROCOR】に移ったとの報道(2018年10月)

 2018年10月28日に、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルの全地総主教庁の管轄権下にある西欧ロシア伝統正教小教区総主教代理区のイイスス・ハリストス降誕・奇蹟者聖ニコライ聖堂が、信徒らの意見も踏まえて、在外ロシア正教会【ROCOR】に移った、との報道が出ています。
 これは、全地総主教庁のウクライナへの介入、ロシア正教会が全地総主教庁とのコミュニオンを解除したことによるものです。

 

 (英語)Parish in Italy moves from Constantinople to ROCOR / OrthoChristian.Com
 (ロシア語)Интерфакс-Религия: Община Константинополя во Флоренции перешла в РПЦЗ в ответ на его действия на Украине
 (フランス語)Florence : la paroisse russe Saint Nicolas décide de se placer sous l’omophore de l’EORHF

※聖堂の公式サイトのほうはいまだ情報なし
 (ロシア語)Русский Православный Храм | Рождества Христова и Св. Николая Чудотворца

 

 なお、同じく全地総主教庁下にあるアメリカ合衆国アメリカ・カルパト=ロシア正教教区から、少し前に司祭が一人離脱し、在外ロシア正教会【ROCOR】に合流したとの情報もあります。

 これらの教会は、ロシア的伝統を保持しながら、全地総主教庁の管轄権下にあったわけですが、これからも動きが続くかもしれません。

 

 【シスマ2018 – The Schism of 2018】<東方正教会大分裂>: ウクライナへの独立正教会設置から始まったコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立とそれに端を発した出来事及びその他のシスマ的な出来事の記事一覧など<東方正教会内戦、大分裂、そして崩壊?>