キリスト教/コンスタンティノープル管轄下で一方的に総主教代理区としては廃止され、事実上の離脱を決定した西欧ロシア正教会大主教区は、すでにロシア正教会モスクワ総主教庁との話を進めている模様(2019年2月)

 2019年2月23日に臨時総会がおこなわれ、事実上、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルからの離脱を決定した西欧ロシア正教会大主教区ですが、報道によりますと、同大主教区の首位大主教ジャン座下(イオアン大主教 : ハリオポリス大主教)は、臨時総会の投票でコンスタンティノープルに従わないという結果が出た後にキリスト教/東方正教会/ロシア正教会のウィーン・ブダペスト大主教アントニー座下(His Eminence Archbishop Anthony【Antoniy】 of Vienna and Budapest)からの書簡を読み上げたということです。

 

 (フランス語)Les propositions du Patriarcat de Moscou à l'Archevêché ⋆ Orthodoxie.com
 (英語)Propositions made by the Moscow Patriarchate to the Archdiocese ⋆ Orthodoxie.com
※ロシア語原文の PDF ファイル(画像)へのリンクあり。

※アントニー座下はモスクワ総主教庁の中で、海外の組織(?)について扱う部署の長ですが、これまでそこまで目立つ活動の記事を見たことがないので権能や役割はよくわかりません(なお、他の教会組織などとの折衝や対話をおこなう渉外局長とは違います)。

 

 すでにかなりの事項が「大丈夫ですよ」というように並べられていますが、前回の記事で触れた独自の聖人の認定(列聖)に関する項目がなく、もしかしたらその辺りがメルクマールというかこれからの交渉のラインになるのかもしれません。

 

関連:
 キリスト教/コンスタンティノープル管轄下で一方的に総主教代理区としては廃止された西欧ロシア正教会大主教区の臨時総会が開催、集団としての解体を認めないと決定(2019年2月)
 インタビュー記事(ロシア語):キリスト教/コンスタンティノープル管轄権下からの事実上の離脱を決めた西欧ロシア正教会大主教区のジャン【イオアン】大主教座下「理想的な教会は無い。ローマ・カトリック教会の現状を見るがいい」(2019年2月)

 

キリスト教/ロシア正教会/東南アジアにおける総主教代理/シンガポール・東南アジア府主教セルギイ座下が叙任後初の礼拝をおこなう(2019年2月)

 2019年2月10日、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会/東南アジアにおける総主教代理/シンガポール・東南アジア府主教セルギイ座下(His Eminence Metropolitan Sergiy of Singapore and South-East Asia, Patriarchal Exarch in South-East Asia)が叙任後初の礼拝をシンガポールにておこなったようです。

 

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Head of the Patriarchal Exarchate in South-East Asia celebrates Divine Liturgy at Dormition church in Singapore | The Russian Orthodox Church
 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Head of the Patriarchal Exarchate in South-East Asia celebrates Divine Liturgy at Dormition church in Singapore / News / Patriarchate.ru
 (英語)Interfax-Religion: Russian Orthodox Church’s Asian exarch assumes office created in response to Constantinople’s actions

 

 東南アジアにおける総主教代理区は、シンガポール、ベトナム、インドネシア、カンボジア、北朝鮮【朝鮮民主主義人民共和国】、韓国【大韓民国】、ラオス、マレーシア、フィリピン、タイ王国を管轄。
 セルギイ座下はモスクワ総主教庁事務局長ですが、一時的にこの職務は停止ということになっているようです。

 また、ロシア正教会はコンスタンティノープルとのシスマ(教会分裂)を受け、昨年末に「西欧における総主教代理区(Patriarchal Exarchate in Western Europe)」を設置しており、ボゴロツク主教イオアン座下がコールスニ・西欧府主教(Metropolitan of Korsun and Western Europe)として西欧における総主教代理(Patriarchal Exarch in Western Europe)となっています(1990年に廃止されていましたが再設置。廃止当時の総主教代理は、後にモスクワ総主教庁下でウクライナ正教会の首座/キエフ・全ウクライナ府主教となる故ボロジミル座下です。一連の事態がすべてつながっていることを感じさせます)。

 どちらもあわただしい叙任で、特に後者は主教から大主教を経ずに府主教に昇叙がなされたとのことで、教会分裂を受けて動きが活発化していることをうかがわせます(さらに少し前に別の地位で赴任予定だったアメリカ合衆国で入国を拒否されるという事態があったとか……)。

 なお、どちらも気が付いたら正教会表記(「西欧正教会」「東南アジア正教会」)がされているかもしれません(ベラルーシの例に倣って)。

 

 「西欧における総主教代理区」については、コンスタンティノープル管轄権下に属し昨年後半に総主教代理区(西欧ロシア伝統正教小教区総主教代理区)としての地位を一方的に剥奪された「西欧ロシア正教会大主教区」との区別がややこしいところもあります。
 どちらも現在の首座は(ロシア語では) Иоанн ですし。

 また、その総主教代理区としての地位を剥奪された西欧ロシア正教会大主教区は今月に臨時総会を開き、今後の活動方針を決定する模様です。
関連:
 キリスト教/コンスタンティノープル管轄下で一方的に総主教代理区としては廃止された西欧ロシア正教会大主教区の臨時総会が開催、集団としての解体を認めないと決定(2019年2月)

 

シスマ2018:キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教庁クリストポリス主教マカリオス座下が、現在“キエフ総主教”を称するフィラレート聖下が1990年にロシア正教会の首座になれなかったのは「ウクライナ人だったから」と発言していた模様(2018年9月)ロシア正教会系メディアは選出されたアレクシー2世聖下はドイツ人とスウェーデン人の血を引くエストニア人であると(微妙な)反論

【シスマ2018~】 ウクライナへの独立正教会設置を巡るコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立とそれに端を発した出来事の記事一覧

 

 先月、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルの全地総主教庁のクリストポリス主教マカリオス座下(His Grace Bishop Makarios of Christoupolis)が、1990年のロシア正教会の首座選出において、現在“キエフ総主教”を称しているフィラレート聖下が選出されなかったのは「ウクライナ人だから」と発言していたようです。

 ロシア正教会系メディアは、選出されたモスクワ総主教アレクシー2世聖下もまたドイツ人とスウェーデン人の血を引くエストニア人であり、ロシア人ではないとしています(もっともこれは、ウクライナ人だから排除されたという主張への反論にするには微妙でもありますが)。

 

 (英語)Constantinople hierarch fuels nationalistic enmity, claims Philaret was not chosen as Russian patriarch because of Ukrainian origin / OrthoChristian.Com

 

 いずれにせよ、全地総主教庁はソ連崩壊後にロシア正教会の社会的地位を大幅に躍進させた故アレクシー2世の選出まで否定的に扱い始めました。
 なんといいますか……そろそろ分裂するのも仕方ないねという状況が完全に整いつつあるような気がします。

 

追記:
 なお、マカリオス座下は後に(ウクライナのメディアのサイトに掲載された)この発言記事は自分の承認を経たものでもないとしています(1週間もたってからギリシャ系正教会メディアで情報が出る有様ですが)。

 (ギリシャ語)Ο Χριστουπόλεως Μακάριος απαντά στον Βολοκολάμσκ Ιλαρίωνα

 

キリスト教/ロシア正教会のウィーン・ブダペスト大主教アントニー座下が、ハンガリー首相オルバーン閣下を訪問(2018年9月)

 2018年9月14日、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会のウィーン・ブダペスト大主教アントニー座下(His Eminence Archbishop Anthony【Antoniy】 of Vienna and Budapest)が、ハンガリー首相オルバーン・ヴィクトル博士閣下(オルバン首相 : His Excellency Dr Viktor Orbán)を訪問しました。

 

 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Архиепископ Венский и Будапештский Антоний встретился с премьер-министром Венгрии Виктором Орбаном / Новости / Патриархия.ru
 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Архиепископ Венский и Будапештский Антоний встретился с премьер-министром Венгрии Виктором Орбаном | Русская Православная Церковь

 (記事の掲載が終了しています)(ハンガリー語:ハンガリー首相府公式サイト)Kormányzat – Miniszterelnök – Hírek – Az orosz ortodox egyház magyarországi beruházásairól egyeztetett Orbán Viktor
掲載時URL:http://www.kormany.hu/hu/a-miniszterelnok/hirek/az-orosz-ortodox-egyhaz-magyarorszagi-beruhazasairol-egyeztetett-orban-viktor

 

80歳(2018年9月5日):キリスト教/日本正教会首座/全日本府主教ダニイル(主代郁夫)座下が80歳に

 2018年9月5日、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会下で自治的な権限を持つ日本正教会【日本ハリストス正教会】の首座/東京大主教・全日本府主教ダニイル座下(His Eminence Daniel【Daniil】, Archbishop of Tokyo, Metropolitan of All Japan : 主代郁夫ぬしろ いくおIkuo Nushiro)が80歳を迎えたようです。
 ロシア正教会の、ウィーン・ブダペスト大主教アントニー座下(His Eminence Archbishop Anthony【Antoniy】 of Vienna and Budapest)らが祝福のために来日していた模様。

 

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)80th birthday of the Primate of the Japanese Autonomous Orthodox Church celebrated in Tokyo | The Russian Orthodox Church

 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)В Токио отметили 80-летие Предстоятеля Японской Автономной Православной Церкви / Новости / Патриархия.ru
 (セルビア語:セルビア正教会モンテネグロ・プリモルスカ府主教庁公式サイト)Митрополит токијски молитвено обележио осамдесет година живота | Православна Митрополија црногорско-приморска (Званични сајт)