キリスト教/セルビア正教会/正教オフリド大主教庁(北マケドニアを管轄)聖シノドが、モンテネグロ政権を批判する声明(2019年12月)「北マケドニアでも弾圧が続いている」

 モンテネグロで、キリスト教/東方正教会/セルビア正教会の教会財産を摂取するための法律が成立しましたが、これに関して、セルビア正教会の管轄権下で北マケドニア共和国で自治的な権限を持つ正教オフリド大主教庁の聖シノドが声明を発表しています。

 

 (マケドニア語:正教オフリド大主教庁公式サイト)Православна Охридска Архиепископија » Свет архиерејски синод » Соопштенија

 

 モンテネグロ政権の動きを全体主義と批判、北マケドニア共和国でも正教オフリド大主教庁への弾圧が続いていること、セルビア正教会の重鎮/モンテネグロ・プリモルスカ府主教アンフィロヒイェ座下(His Eminence Metropolitan Amfilohije of Montenegro and the Littoral)をはじめとするモンテネグロの教会法上合法な教会に属する神品(聖職者)と信徒を支持することなどが挙げられています。

 

 モンテネグロ大統領ミロ・ジュカノヴィッチ閣下(His Excellency Mr Milo ĐukanovićМило Ђукановић)がここまで強硬な動きに走ることは、一年前には予想されていなかったことです。
 政治的な影響は置いておくとしても、東方正教会の各教会(各勢力)がこの動きに対してどのような声明を発表し、どのような動きを取るかで、来年の東方正教会の教会分裂(シスマ)の動向が決まっていくような気がします。

 

キリスト教/オリエント正教会系のメディア OCP が、オリエン正教会の各教会と東方正教会/ロシア正教会の関係は悪化しているわけではないとわざわざ記事を出す(2019年12月)

 キリスト教/オリエント正教会系のメディア OCP(Orthodoxy Cognate PAGE) が、オリエン正教会の各教会とキリスト教/東方正教会/ロシア正教会の関係は悪化しているわけではないとわざわざ記事を出しています。

 

 (英語)Russian Orthodox Church – Oriental Orthodox Relations – OCP Statement | News | Orthodoxy Cognate PAGE

OCP® TweetsさんはTwitterを使っています: 「https://t.co/cb0OcgRHYr」 / Twitter

 

※オリエント正教会の主流のコミュニオンに属するのは、コプト正教会(アレクサンドリア総主教庁)、アルメニア使徒教会【アルメニア教会】、シリア正教会(アンティオキア総主教庁)、エチオピア正教会(エチオピア正教合性論教会)、エリトリア正教会(エリトリア正教合性論教会)、マランカラ正教シリア教会【インド正教会】の六つ。
 このうち、シリア正教会とインドのマランカラ正教シリア教会はコミュニオンが成立しておらず、エリトリアでは政府が教会を主導していることにより他の教会とは正常な関係にありません。また、エチオピアでは人種対立の教会分裂への影響が取り沙汰されています。

 

 ウクライナから発した、ロシア正教会とコンスタンティノープル・ギリシャ正教会・アレクサンドリア総主教庁との関係悪化という、宗教の枠内で見れば東方正教会内部の問題は、オリエント正教会の各教会に強い影響を与えているわけではない状況です(そういう状況だと思います)。
 もともと、正教会(Orthodox Church)という称を、オリエント正教会・東方正教会の両者とも多用するため混同が起きやすいわけですが。

 オリエント正教会ではアレクサンドリアといえばコプト正教会であるため、ロシア正教会が(東方正教会の)アレクサンドリア総主教とのコミュニオンを解除したことによる誤解(?)のようなものも一部に発生しているのかもしれません。

 

 それにしても、 OCP のような、東方正教会とオリエント正教会の間のコミュニオン回復とそれによるカトリックへの対抗を目指す立場というのは、今回の東方正教会大分裂とコンスタンティノープル原理主義の満開で望みは潰えていると思えるのですが、まだ頑張るのでしょうか。

 

関連:
 東方正教会大分裂:キリスト教/ロシア正教会の聖シノド会合がアレクサンドリア総主教とのコミュニオン解除を決定(2019年12月)
 キリスト教/シリア正教会アンティオキア総主教イグナティウス・アフレム2世聖下が、“ウクライナのシリア化”を懸念する書簡をロシア正教会モスクワ総主教キリル聖下に(2019年2月)

 

モンテネグロ議会が野党議員を18人ほど拘束してキリスト教/セルビア正教会の教会財産を大量に接収するための新法を成立(2019年12月)

 モンテネグロ議会は、キリスト教/東方正教会/セルビア正教会の教会財産を大量に接収するための新法を成立させました。

※法律名称としては、まあその、麗しい名前を使っていますし、理屈も別のことを言っていますが、セルビア正教会の財産を奪うのが目的の法律です。

 

 (英語)Montenegro MPs arrested in clash over religious freedom law – BBC News
 (英語)Thousands Rally Against Religion Law in Montenegro | Balkan Insight
 (英語)Serbian church warns Montenegrin authorities about backlash from new religious law – World – TASS

 

 (セルビア語:モンテネグロ・プリモルスカ府主教庁公式サイト)Полиција ноћас претукла Епископа диоклијског Методија | Православна Митрополија црногорско-приморска (Званични сајт)

 なお、セルビア正教会モンテネグロ・プリモルスカ府主教庁の公式サイトが、同教会のドゥクリャ主教メトディイェ座下(His Grace Bishop Metodije of Dioclea)がモンテネグロの警官から殴打を受けたと報じています。
 モンテネグロ当局は否定していると報道されています。

 

 モンテネグロ大統領ミロ・ジュカノヴィッチ閣下(His Excellency Mr Milo ĐukanovićМило Ђукановић)は、これを“ウクライナ・モデル”としています。
 セルビア正教会の教会財産を接収し、東方正教会の教会法上合法な教会に属さない(または主流のグループに属さない)“モンテネグロ正教会(MOC)”を国家の後押しでこれまで以上に推進していくということになります。今は教会法上合法な教会でなくても、コンスタンティノープルから承認をもらえば教会法上合法な教会になるので問題はない、とウクライナで証明されているので、何も問題はありません(念のために書いておきますと、コンスタンティノープルが承認する予定はありませんが、コンスタンティノープルがなにをするかはもはやなんの信用も置けない状態です)。
 BBC の報道を中立ということで、信徒数の割合いを書いておきますと、モンテネグロの10人のうち7人はセルビア正教会の信徒だそうです。そこまで多いならなぜ反セルビア正教会のジュカノヴィッチ大統領が当選しているのかよくわからないところですので、この数字は少し大きめのような気もします。

 セルビア正教会の重鎮/モンテネグロ・プリモルスカ府主教アンフィロヒイェ座下(His Eminence Metropolitan Amfilohije of Montenegro and the Littoral)は(以前から言っていますが)無神論者(ジュカノヴィッチ大統領のこと)が教会を作った歴史上最初の例と批判しています(それ以外にもクソミソに罵ってますけど)。
 同座下は、ウクライナ問題を巡ってはコンスタンティノープルへの批判を繰り返していますので、今回の事態を受けて最終的に何を発言するかは注目ではあります。
 しかし、それ以前に火薬庫が活性化してきているのが不安なところです。

 

関連:
 映像(セルビア語のため内容よくわかりませんが):キリスト教/セルビア正教会の重鎮モンテネグロ・プリモルスカ府主教アンフィロヒイェ座下が、モンテネグロ新法に賛成投票予定の政治家を破門(anathema)宣告している映像とのこと(2019年12月)
 キリスト教/セルビア正教会/正教オフリド大主教庁(北マケドニアを管轄)聖シノドが、モンテネグロ政権を批判する声明(2019年12月)「北マケドニアでも弾圧が続いている」
 キリスト教/セルビア総主教イリネイ聖下がセルビア大統領ブチッチ閣下と会見(2019年12月)モンテネグロ新法の話題など
 キリスト教/“モンテネグロ正教会”の“ミハイロ府主教”が、コンスタンティノープルからの独立正教会としての承認に自信をみせたとの報道(2020年1月)

 

キリスト教/コンスタンティノープルに属していたジャマイカ正教伝道本部の二つの小教区が在外ロシア正教会【ROCOR】への管轄権下への移動を決めた模様(2019年12月)

 キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルに属していた、ジャマイカ正教伝道本部の二つの小教区が、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁の管轄権下で自主的に行動している在外ロシア正教会【ROCOR】への管轄権下への移動を決めた模様です。

 

 (英語)Jamaican Orthodox Mission leaving Constantinople for ROCOR / OrthoChristian.Com

 

 在外ロシア正教会【ROCOR】の首位、米国東部・ニューヨーク府主教イラリオン座下(His Eminence Metropolitan Hilarion of Eastern America & New York)は、補佐主教であるシラキュース主教ルカ座下(His Grace Bishop Luke of Syracuse, Vicar of the Eastern American Diocese)に受け入れについて指示したようです。

 

キリスト教/“ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】”の“フィラレート総主教”が、記者会見にてあらためて UOC-KP を守る意向を表明(2019年12月)国連へ訴えるとの話も

 2019年12月13日、“ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】”の首座、“フィラレート総主教”(キーウ・全ルーシ=ウクライナ総主教フィラレート聖下 : His Holiness Patriarch Filaret of Kyiv and All Rus’-Ukraine)は、コンスタンティノープル系ウクライナ正教会(OCU)による UOC-KP 及びウクライナ独立正教会【UAOC】の消滅の宣言の後も、引き続き信教の自由などに基づき UOC-KP を守っていく考えを記者会見で表明しました。
 報道では、ウクライナ政府以外にも、国連や OSCE に訴える意向ともあり、ウクライナ国内外が(西側諸国からみれば)人権侵害だらけの現状では、これはまたなにか面倒ごとを引き起こすかもしれません。

 正直、ここまでくれば、フィラレート総主教が元の影響力を取り戻すことはありえないと思いますが、彼を蹴落とした人々を道連れにする可能性はまだなくなっていない(コンスタンティノープルや東方正教会全体を含む)と思えます。

 2019年12月20日には、また支持者を集めたフォーラムを開くそうですが……。

 

Укрінформ:
На захист Київського Патріархату – YouTube

 

 (ウクライナ語: UOC-KP 公式サイト)Відбулася прес-конференція Патріарха Філарета щодо останніх подій в Українському Православ’ї – Українська Православна Церква Київський Патріархат

 (ロシア語)Интерфакс-Религия: Филарет анонсировал форум в защиту "Киевского патриархата"
 (英語)Filaret announces a UOC-KP protection forum and aims to turn to UN and OSCE – UOJ – the Union of Orthodox Journalists