キリスト教/オリエント正教会の首座三人、コプト正教会首座/アレクサンドリア教皇タワドロス2世聖下、シリア正教会アンティオキア総主教イグナティウス・アフレム2世聖下、アルメニア使徒教会/キリキア・カトリコスのアラム1世聖下による会合(2022年10月)

 2022年10月17日~19日にかけて、キリスト教/オリエント正教会のコプト正教会、シリア正教会、アルメニア使徒教会キリキア・カトリコス庁の代表による会合がエジプトでおこなわれました。

 コプト正教会の首座/アレクサンドリア教皇タワドロス2世聖下(His Holiness Pope Tawadros II of Alexandria)、
 シリア正教会の首座/アンティオキア・東方全土総主教“モラン”・“モル”・“イグナティウス”・アフレム2世聖下(His Holiness Moran Mor Ignatius Aphrem II, the Patriarch of Antioch and All the East, the Supreme Head of the Universal Syriac Orthodox Church)、
 アルメニア使徒教会(アルメニア正教会)キリキア・カトリコスのアラム1世聖下(His Holiness Aram I, Catholicos of the Great House of Cilicia【Catholicos of the Holy See of Cilicia】)
 らが参列しています。

 

 会合の結果、他教会(オリエント正教会以外の教会)との関係に関する部分では(大意)、

  • 東方正教会との対話が止まっているので、エマニュエル府主教に問い合わせる
  • コプト正教会とシリア正教会は、ロシア正教会との対話を進めている
  • ローマ・カトリック教会との対話も進んでいる
  • アングリカン・コミュニオンとの対話も進めたい

 というような部分があります(全部、「対話」と書いてしまいましたが、こう言い切っていいかはわかりません)。

 ともあれ、エマニュエル府主教というのは、ファナル(東方正教会のコンスタンティノープル)のカルケドン府主教エマニュエル座下(His Eminence Elder Metropolitan Emmanuel of Chalcedon)のことでしょう。
 次のロシア正教会との項目とあわせて考えると、ファナルがウクライナで一方的な行為(教会法違反)をおこなったことにより、モスクワ総主教庁との関係が断絶しているので、東方正教会全体との対話が出来なくなっていることを前提に、和解(ファナルがモスクワ総主教庁に謝罪し、ウクライナでやったことを取り消す)ように求めているようにも取れます(それはファナルには絶対に無理でしょうが)。
 もっとも、ロシア正教会との対話に、キリキア・カトリコス庁が含まれていないので、これは温度差のあることでしょう。
 東方正教会全体とオリエント正教会の各教会の対話はもう進むことはないかもしれません(各教会同士の対話は進むでしょうが)。

 カトリックとの対話に関しては特に感想もないですが、もし東方正教会との対話が停止したまま、オリエント正教会とアングリカン・コミュニオンの対話が進んでいくとするなら興味深いところです。

 

 また、これとは別に、エチオピア正教会が“占拠”しているエルサレムのスルタン修道院に関して、コプト正教会に権利があるという立場をシリア正教会とキリキア・カトリコス庁が支持することも確認されています。
 関連:
 映像(アラビア語・英語字幕):キリスト教/コプト正教会の修道士がイスラエル警察に“暴力”を受けた件でアレクサンドリア教皇タワドロス2世聖下がそもそもの問題を説明する動画(2018年10月)イスラエル政府とエチオピア正教会を批判

 

 (英語:シリア正教会アンティオキア総主教庁公式サイト)Arrival to Egypt | Syrian Orthodox Patriarchate of Antioch
 (英語:シリア正教会アンティオキア総主教庁公式サイト)13th Meeting – Heads of the Oriental Orthodox Churches in the ME | Syrian Orthodox Patriarchate of Antioch
 (英語:シリア正教会アンティオキア総主教庁公式サイト)Joint Statement of the 13th Meeting of the Heads of the Oriental Orthodox Churches in the Middle East | Syrian Orthodox Patriarchate of Antioch
 (英語:アルメニア使徒教会 キリキア・カトリコス庁 公式サイト)A MEETING IN EGYPT BETWEEN HIS HOLINESS CATHOLICOS ARAM I, HIS HOLINESS PATRIARCH MOR IGNATIUS APHREM II AND HIS HOLINESS POPE TAWADROS II | Armenian Church Catholicosate of Cilicia

 

 コプト正教会より、
 アルクサヤ・ミール主教“アンバ”・トマス座下(His Grace Anba Thomas, Bishop of Alqousaya and Meer)、
 北シュブラ教会代表主教“アンバ”・アンゲロス座下(His Grace Anba Angelos, General Bishop of North Shoubra Churches)、

 シリア正教会より、
 レバノン山脈・トリポリ大主教“モル”・セオフィルス・ゲオルゲス・サリバ座下(His Eminence Mor Theophilus Georges Saliba, Archbishop of Mount Lebanon and Tripoli)、
 ベイルート大主教“モル”・クレーミス・ダニエル・クーリエフ座下(His Eminence Mor Clemis Daniel Kourieh, Archbishop of Beirut)、

 アルメニア使徒教会キリキア・カトリコス庁より、
 テヘラン教区長セブフ・サルキシャン大主教座下(His Eminence Archbishop Sebouh Sarkissian, Prelate of Tehran)、
 シリア駐箚使徒座使節マガル・アシュカリャン主教座下(His Grace Bishop Magar Ashkarian, Pontifical Nuncio to the Prelacy of Syria)
 らが同席。

 

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訃報(2022年3月4日):キリスト教/エチオピア正教会第4代総主教“アブネ”・メルコリオス聖下が永眠(1938~2022)

 2022年3月4日、第4代のキリスト教/オリエント正教会/エチオピア正教会の首座/エチオピア総主教・カトリコス“アブネ”・メルコリオス聖下(His Holiness Abune Merkorios, Patriarch and Catholicos of Ethiopia)が永眠したようです。
 1938年6月14日生まれの83歳。
 3月14日に葬儀がおこなわれました。

※永眠の日付を3月3日としているところもあります。

 アブネ・メルコリオス聖下は、1991年にエチオピアを離れ、エチオピア人民革命民主戦線(EPRDF)の政権によって退位を強要されたとして、1991年~2018年までアメリカ合衆国で亡命シノドを擁していました。
 2018年に和解が成立し、エチオピアに帰国、本国で活動していた第6代“アブネ”・マティアス1世聖下(His Holiness Abune Mathias I, Patriarch and Catholicos of Ethiopia)と二人の総主教が存在する体制となっていました。
関連:
 キリスト教/亡命中のエチオピア正教会第4代総主教メルコリオス聖下と、本国の第6代総主教マティアス聖下の和解が成立。単一の教会が二人の総主教を戴く模様(2018年7月~8月)

 永眠に伴い、アブネ・マティアス1世聖下が単独の総主教・カトリコスとなります。

 

africanews:
Ethiopia bids farewell to Patriarch Abune Merkorios – YouTube

 

 (英語)Ethiopia: EOTC Patriarch Abune Merkorios Passes Away – allAfrica.com
 (英語)Patriarch Abune Merkorios Laid to Rest – Walta Media and Communication Corporate
 (英語)Ethiopia bids farewell to Patriarch Abune Merkorios | Africanews

キリスト教/ロシア正教会モスクワ総主教キリル聖下が、復活祭向けのメッセージを東方正教会以外の教会の首座に発出(2021年4月)

 キリスト教/東方正教会/ロシア正教会の首座/モスクワ・ロシア全土【ルーシ全土】総主教キリル聖下(キリール総主教キリイル総主教 : His Holiness Kirill, Patriarch of Moscow and all Russia【Rus’】)は、東方正教会がいの首座に向けて、復活祭のメッセージを発出したようです。

 

 (ロシア語:ロシア正教会 モスクワ総主教庁 公式サイト)Пасхальное поздравление Святейшего Патриарха Кирилла главам инославных церквей / Патриарх / Патриархия.ru

 

 全員ではないようですが、宛先として名前が挙がっているのは、

  • オリエント正教会/コプト正教会の首座/アレクサンドリア教皇タワドロス2世聖下(His Holiness Pope Tawadros II of Alexandria)
  • ローマ・カトリック教会/ローマ教皇フランシスコ聖下(His Holiness Pope Francis
  • オリエント正教会/シリア正教会の首座/アンティオキア・東方全土総主教“モラン”・“モル”・“イグナティウス”・アフレム2世聖下(His Holiness Moran Mor Ignatius Aphrem II, the Patriarch of Antioch and All the East, the Supreme Head of the Universal Syriac Orthodox Church)
  • オリエント正教会/アルメニア使徒教会/全アルメニア人のカトリコス・最高総主教ガレギン2世聖下(His Holiness Karekin IIGaregin II】, Supreme Patriarch and Catholicos of All Armenians)
  • オリエント正教会/アルメニア使徒教会(アルメニア正教会)キリキア・カトリコスのアラム1世聖下(His Holiness Aram I, Catholicos of the Great House of Cilicia【Catholicos of the Holy See of Cilicia】)
  • 東方教会(景教、通称:ネストリウス派、など)/アッシリア東方教会首座のカトリコス=総主教“マル”・ゲワルギス3世聖下(ギワルギス3世 : His Holiness Mar Gewargis III【Giwargis III】, The Catholicos-Patriarch of the Assyrian Church of the East)
  • ローマ・カトリック教会/東方典礼カトリック教会/マロン東方典礼カトリック教会のアンティオキア・全レバント総大司教ベカラ・ブートロス・ライ枢機卿座下(His Beatitude and Eminence Moran Mor Béchara Boutros Cardinal Raï, O.M.M. , Patriarch of Antioch【Antiochia】 and the Whole Levant (Maronite))
  • オリエント正教会/マランカラ正教シリア教会【インド正教会】首座/東方カトリコス・マランカラ府主教“モラン”・“マル”・バセリオス・マルトマ・パウロス2世聖下(シロ・マランカル典礼カトリコスモラン・バゼリオス・マルトマ・パウロス2世 : His Holiness Moran Mar Baselios Marthoma【Mar Thoma】 Paulose II, the Catholicos of the East and Malankara Metropolitan, the Supreme Head of the Malankara Orthodox Syrian Church of India)
  • オリエント正教会/エチオピア正教会の首座/エチオピア総主教・カトリコス“アブネ”・マティアス1世聖下(His Holiness Abune Mathias I, Patriarch and Catholicos of Ethiopia)

 です。

着座8周年(2021年3月3日):キリスト教/エチオピア総主教“アブネ”・マティアス1世聖下の着座8周年

 2021年3月3日、キリスト教/オリエント正教会/エチオピア正教会の首座/エチオピア総主教・カトリコス“アブネ”・マティアス1世聖下(His Holiness Abune Mathias I, Patriarch and Catholicos of Ethiopia)は、着座8周年を迎えました。

 

 (英語)The 8th Enthronement Anniversary of Patriarch Abune Mathias of Ethiopia | News | Orthodoxy Cognate PAGE

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キリスト教/ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局副局長のレオニード大主教座下が、アレクサンドリア総主教庁の100人を超える神品(聖職者)がロシア正教会の管轄下に移ることを望んでいると発言(2020年11月)

 ロシアの正教会系メディア「Orthodox Christianity」が、インタビュー動画の内容として報じているところによりますと、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局副局長のウラジカフカス・アラン大主教レオニード座下(His Eminence Archbishop Leonid of Vladikavkaz and Alan, Deputy Chairman of the Moscow Patriarchate’s Department for External Church Relations (DECR))が、キリスト教/東方正教会/アレクサンドリア総主教庁の100人を超える神品(聖職者)が、ロシア正教会の管轄下に移ることを望んでいると発言したようです。

 ロシア正教会は、アレクサンドリア総主教とはコミュニオンを解除していますが、それはそれとしてアフリカ全土をアレクサンドリア総主教庁の管轄権下にあると過去に認めてしまっているため、これを実行に移すには理屈と実現能力が必要になるでしょう。

 

 (英語)Hundreds of clergy of Patriarchate of Alexandria want to join Russian Church due to Ukraine crisis, says DECR rep / OrthoChristian.Com
 (英語)ROC DECR: Hundreds of clergymen of Alexandrian Church want to be in the ROC – UOJ – the Union of Orthodox Journalists

 

 経緯全体の説明は割愛してアレクサンドリア総主教個人の問題に移りますが、モスクワ総主教庁系のウクライナ正教会を支持すると言っていたのをいきなり翻したあげく、キプロスでは現地の府主教に対して祈祷でコンスタンティノープル系ウクライナ正教会の首座の名前をあげないと約束していたのにあげたり(つまり平然と特定個人の面前でその人に対して嘘をついたり)、もうどうでもいい人の一人です。

 また、この問題とは関係ありませんが、「アフリカのどこへいっても人々が自分のことをホワイト・ファーザー(White father)と歓迎してくれる」と発言するなど、このご時世に思考が大丈夫なのかと思われる部分すら出てきています(あるいはアフリカ人たちからはカトリックの伝道師集団の一員と思われているのかもしれません)。

※冷淡に言ってしまいますと、ロシアとの関係が長いはずなのにロシア語は挨拶が少しできる程度という点からみて、大昔の、植民地に赴任したけど植民地の人々とまともに触れ合わず、勝手な思い込みだけで終わっていた本国人のような人ではないかという気がします。

 

 なお、ロシア正教会のレオニード大主教ですが、アルゼンチン・南米主教として外国に飛ばされたり、ウラジカフカス・アラン主教・大主教として北オセチア・南オセチアのあたりで難しい活動に携わったり、オリエントの教会への使者の一員として折衝にあたったり、アレクサンドリア総主教庁への代表として赴任したりしていたようです。
 英語・ギリシャ語およびエジプト方言のアラビア語を話せるそうで、普通仕事するならこうだよなあと思わされます。