キリスト教/ウクライナ正教会(モスクワ総主教庁系)の大主教がポーランド正教会から勲章を受ける(2019年3月)

 2019年3月2日、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会(モスクワ総主教庁)の管轄下で高度な自治的権限を有するウクライナ正教会のリヴォフ・ガリツィヤ大主教【リヴィウ・ハリチュナ大主教】フィラレート座下(His Eminence Archbishop Filaret of Lviv and Galicia)はポーランド共和国を訪問、キリスト教/東方正教会/ポーランド正教会のルブリン・ヘウム大主教アベル座下(His Eminence Archbishop Abel of Lublin and Chełm)と共に礼拝をおこない、その後に勲章を受けたようです。

 

orthodox.fm:
Boska Liturgia w niedziela o Sądzie Ostatecznym – YouTube

 

 (ウクライナ語:ウクライナ正教会リヴォフ大主教区【リヴィウ大主教区】公式サイト)У Неділю м’ясопусну архієпископ Філарет звершив Богослужіння в кафедральному соборі м.Любліна (Польща) (+Відео)

Церква Галичиниさん(@church_galicia) • Instagram写真と動画

 

 (ウクライナ語:ウクライナ正教会公式サイト)Польська Православна Церкви нагородила архієпископа Львівського Філарета орденом (+відео) – Українська Православна Церква

 

キリスト教/東方正教会/エルサレム総主教セオフィロス3世聖下が、ウクライナ正教会(モスクワ総主教庁系)のバリシフカ主教ヴィクトル座下と会見(2019年3月)

 2019年3月4日、キリスト教/東方正教会/エルサレム・全パレスチナ総主教セオフィロス3世聖下(His Beatitude Theophilos III, Patriarch of Jerusalem and All Palestine)は、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会(モスクワ総主教庁)の管轄権下で高度な自治的権限を有するウクライナ正教会のバリシフカ主教ヴィクトル座下(His Grace Bishop Victor【Viktor】 of Baryshevka)と会見しました。
 エルサレム総主教庁より、ヨルダン大主教セオフィラクトス座下(Archbishop Theophylactos of Jordan)が同席。

 セオフィロス3世聖下は、(モスクワ総主教庁系の)キエフ・全ウクライナ府主教オヌフリー座下(His Beatitude Metropolitan Onufry【Onufriy】 of Kiev and All Ukraine)への支持を重ねて表明しているようです(ロシア側の表記であり、ギリシャ系メディアの Romfea 英語版ではその部分はありません)。

 

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Bishop Victor of Baryshevka meets with Patriarch Theophilos III of Jerusalem / News / Patriarchate.ru
 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Bishop Victor of Baryshevka meets with Patriarch Theophilos III of Jerusalem | The Russian Orthodox Church

 (ウクライナ語:ウクライナ正教会公式サイト)Єпископ Баришівський Віктор зустрівся з Єрусалимським Патріархом Феофілом ІІІ – Українська Православна Церква

 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Блаженнейший Патриарх Иерусалимский Феофил III встретился с представителем Украинской Православной Церкви при международных европейских организациях / Новости / Патриархия.ru

 (ロシア語)Интерфакс-Религия: Иерусалимский патриарх выразил поддержку Украинской православной церкви

 

 (英語)Patriarch Theophilos of Jerusalem welcomed Bishop Victor of Baryshevka – Romfea News
Romfea.newsさんのツイート: "Bishop Victor informed the #Patriarch_of_Jerusalem about the situation in Ukraine #romfeanews https://t.co/OPYjg0oWdc"

 

キリスト教/コンスタンティノープル下のアメリカの小教区から、在外ロシア正教会に移動した信徒がいる模様(2019年3月)

 ロシア側の発表なのと、規模がいまいちはっきりしませんが、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープル/アメリカ東方正教会のテキサスの小教区から離脱して、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会下で自治的な権限を保有する在外ロシア正教会【ROCOR】に移動した信徒たちがいるようです。

 

 (英語)ROCOR opens mission in Texas to minister to families that left Greek Constantinople parish / OrthoChristian.Com

 

 在外ロシア正教会は今回の一連の事態に対し、なぜかモスクワ総主教庁よりも憤っているようなところがありますが、それがなにに起因するのか、部外者にはよくわからないところです。

 

キリスト教/シリア正教会アンティオキア総主教イグナティウス・アフレム2世聖下が、“ウクライナのシリア化”を懸念する書簡をロシア正教会モスクワ総主教キリル聖下に(2019年2月)

 キリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁の公式サイトによりますと、キリスト教/オリエント正教会/シリア正教会の首座/アンティオキア・東方全土総主教“モラン”・“モル”・“イグナティウス”・アフレム2世聖下(His Holiness Moran Mor Ignatius Aphrem II, the Patriarch of Antioch and All the East, the Supreme Head of the Universal Syriac Orthodox Church)からロシア正教会の首座/モスクワ・全ロシア【全ルーシ】総主教キリル聖下(キリール総主教 : His Holiness Kirill, Patriarch of Moscow and all Russia【Rus’】)に対し、「ウクライナは、“宗教の皮をかぶった政治”が国内を無茶苦茶にしたシリアと同じ道をたどる」と懸念する書簡を送ったそうです。

※書簡についての発表はロシア正教会側からのみです。

 

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教公式サイト)Primate of the Syriac Orthodox Church has great concerns about large-scale of violence against believers of the canonical Church in Ukraine / News / Patriarchate.ru
 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Предстоятель Сирийской Ортодоксальной Церкви глубоко обеспокоен масштабами насилия, которому подвергаются верующие канонической Церкви на Украине / Новости / Патриархия.ru

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Primate of the Syriac Orthodox Church has great concerns about large-scale of violence against believers of the canonical Church in Ukraine | The Russian Orthodox Church

 

 シリアでの問題というか戦争というか内戦というか紛争というかについて、シリア正教会の立場は、アメリカや西側諸国とIS【イスラム国】含むイスラム過激派によって起こされた騒乱が国内を無茶苦茶にし、それらがキリスト教信者を弾圧したという立場であり、シリアのアサド政権及び同政権を支援しているロシアのプーチン政権はキリスト教の保護者という位置付けになると思います。
 「宗教の皮をかぶった政治」が、IS【イスラム国】含むイスラム過激派であり、またウクライナでそれに相当するものが、ポロシェンコ政権とコンスタンティノープルにトモスを与えられた独立正教会であるということになるでしょう。
 要するに、ウクライナのポロシェンコ政権はイスラム国【IS】のようなものと遠回しに述べているようにも取れますし、そうだとするとシリアと同じくプーチン政権による軍事介入が必要という帰結になるとも取れます。
 が、はっきりとそう書いてあるわけでは、無論ありません。

 

インタビュー記事(ロシア語):キリスト教/コンスタンティノープル管轄権下からの事実上の離脱を決めた西欧ロシア正教会大主教区のジャン【イオアン】大主教座下「理想的な教会は無い。ローマ・カトリック教会の現状を見るがいい」(2019年2月)

 2019年2月23日に臨時総会【EGA】がおこなわれ、事実上、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルからの離脱を決定した西欧ロシア正教会大主教区。

 この大主教区は、もともとロシア帝国崩壊後のソ連での弾圧から逃れた人々らにより結成され、その後ロシア正教会モスクワ総主教庁を完全に離れてコンスタンティノープルの管轄権下に入っていたものです(ものすごく簡単にいいましたが)。
 1999年には、コンスタンティノープルより総主教代理区として認めるトモスを与えられましたが、2018年11月27日にコンスタンティノープルより突如として一方的に廃止を宣告されました。また、これは大主教区自体の廃止を要求するものでした。
 一方、大主教区側は、これに対し、総主教代理区として認めるかどうかはコンスタンティノープルが決めるものだが、大主教区の将来を決めるのは大主教区自体の総会【GA : General Assembly】であるとし、2019年2月23日、臨時総会【EGA : Extraordinary General Assembly】を開催、コンスタンティノープルからの要求を拒否することを投票で決定しています。
関連:
 キリスト教/コンスタンティノープル管轄下で一方的に総主教代理区としては廃止された西欧ロシア正教会大主教区の臨時総会が開催、集団としての解体を認めないと決定(2019年2月)

 また、これから大主教区が、コンスタンティノープルではないどこの教会法上合法な教会に属するかですが、ロシア正教会モスクワ総主教庁、(ロシア正教会の管轄権下で自治的な権限を保有する)在外ロシア正教会、ルーマニア正教会、アメリカ正教会【OCA】の名前が挙がっていました。

  Orthodoxie.com によりますと、投票でコンスタンティノープルの要求の拒否が決まった後、同大主教区のジャン大主教座下(イオアン大主教 : ハリオポリス大主教)は、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会のウィーン・ブダペスト大主教アントニー座下(His Eminence Archbishop Anthony【Antoniy】 of Vienna and Budapest)からの書簡を読み上げ、すでにロシア正教会モスクワ総主教庁との間の対話が進んでいることをあきらかにしています。
関連:
 キリスト教/コンスタンティノープル管轄下で一方的に総主教代理区としては廃止され、事実上の離脱を決定した西欧ロシア正教会大主教区は、すでにロシア正教会モスクワ総主教庁との話を進めている模様(2019年2月)

 今回、さらに別のメディアがジャン座下へのインタビューをおこなっています。

 (ロシア語)Парижский архиепископ о перспективе перехода к РПЦ: «Идеальных церквей нет» – РОССИЯ – RFI

 今までの状況の確認ですが、興味深いものになっています。

 新しく属する教会として連絡を取った先として(ロシア正教会以外)、在外ロシア正教会とルーマニア正教会へも連絡を取ったことがあきらかにされていますが、在外ロシア正教会では大主教区側の要求が通りにくそうなこと、ルーマニア正教会ははっきりしないようです。アメリカ正教会【OCA】については言及がありません。
※なお、ルーマニア正教会が前向きに検討しているとする報道もありますが……。

 また、現在の政治情勢のもとで、ロシア正教会の管轄権下に入ることについては、「政治とは距離を置くこと」という状況によっては厳しいもののよくある聖職者的なコメントに加え、ロシアの聖堂や修道院が復興していることに心動かされている様子がうかがわれます。
 加えて、離脱者が出る可能性についても認めています。西欧は自由な国々なので立ち去るのも自由ということですが……これは東方正教会の聖職者として果たして良いのかとも思われます。
 しかし、次のようなコメントも面白いところです。
「スキャンダルなどの問題はすべて教会にある。ローマ・カトリック教会の現状を見よ(このインタビューより時間としては後ですが、本日、オーストラリアの枢機卿が複数の児童への性的虐待で有罪宣告)」
「私はいつも楽園はここにはないと言っている。修道院も楽園ではない。地上には天国はない」
「もし我々がもっとも理想的な教会を求めてもそんなものはない。無人島で一人で過ごすしかない」

 インタビューの中で質問されていながらはっきりと答えられていないように思うのは、大主教区が教会法上合法な教会の中にあるべきなのか(つまり「完全に独立した宗教組織になってはいけないの?」)ということと、現在の状況で東方正教会の教会法上合法な教会とはなにか(モスクワがコンスタンティノープルとのフル・コミュニオンを解除している現状で、コンスタンティノープルがモスクワとのフル・コミュニオンを解除する可能性はあるわけですが、そうなってもモスクワは教会法上合法な教会なのか)というあたりでしょうか。