ギリシャ共和国憲法改正の動き進むも、次は総選挙後に審議?(2019年3月)ツィプラス政権は憲法三条=「ギリシャではキリスト教/東方正教会を優遇しますよ」という条文の変更を目指していますが……

 ギリシャ共和国の議会は、憲法改正の動きを進める投票をおこない、過半数以上の156人が賛成票を投じました。
 ただ、改正には総選挙後の議会(憲法改正の審議をおこなうため特別な名称が付くらしいです)で180票(全体の五分の三)が必要らしいです。

 ギリシャ共和国総選挙は今年【2019年】おこなわれ、ギリシャ共和国首相アレクシス・ツィプラス閣下(チプラス首相 : His Excellency Mr Alexis Tsipras)からは10月が候補として挙げられたことがあります。有利と見た時期におこなうでしょうが、現状の世論調査では SYRIZA は現有議席の確保も難しく、このままでは通らないんではないかと思います。とはいえ半年以上あればイスラム系で同国で暮らしている人々に国籍やら選挙権やらをたくさん与えられる可能性もあり、非キリスト教有権者の増大が選挙結果を大きく変えるかもしれません。

 

 (英語)Revision of Article 3 was approved by the Parliament – Romfea News

Romfea.newsさんのツイート: "Revision of Article 3 was approved by the Hellenic Parliament #romfeanews #greekparliament #constitutionalrevision #Article3 #churchofgreece https://t.co/cRhNEkzWCf"

 

 なお、その憲法三条ですが、簡単にいいますと

  1. ギリシャではコンスタンティノープル及び同じ教えを奉じる東方正教会のギリシャ正教会を優遇しますよ
  2. 聖職に関して、国家は前項に反するようなこと考えちゃダメですよ
  3. 聖書を、コンスタンティノープルとギリシャ正教会の許可なしに変えちゃダメですよ

 というようなことらしいです(1項はもっと長いです)。

 これに対し「宗教的中立」というお題目を提示してツィプラス政権は憲法改正を図っています。

 

キリスト教/ギリシャ正教会聖シノド会合が終了(2019年3月7日)2019年3月19日から会合を開くことを決定

 キリスト教/東方正教会/ギリシャ正教会の聖シノドの会合が終了しましたが、大したことは決まらず、2019年3月19日~21日に(おそらく全主教出席の)会合を開くことが決定されたようです。

 

 (英語)The decisions will be taken by the meeting of the Hierarchs on March 19 – Romfea News

 

Romfea.newsさんのツイート: "The meeting of the #Hierarchs will have the last word on March 19 #romfeanews #ChurhOfGreece https://t.co/GDmrLxAZ8K"

 

 現在、ギリシャ正教会は発狂寸前ではないかという状態です。

 コンスタンティノープルとモスクワの対立をもう引き返せないところまでにしてしまったウクライナの件に加え、SYRIZAを率いるギリシャ共和国首相アレクシス・ツィプラス閣下(チプラス首相 : His Excellency Mr Alexis Tsipras)による国家と教会の分離(平たく言えば教会排除の方針)。また首相・SYRIZAによってマケドニア問題に関して国名を「北マケドニア共和国」で認めることや、トルコ共和国とのなんだかよくわからない関係の構築(ギリシャ正教会の府主教からは首相をトルコ系ユダヤ人とする発言も出ています。首相自身がトルコ紙に語ったことがベースになっているようですが)、そして、アフガニスタン・パキスタンなどからのイスラム教徒【ムスリム】への選挙権付与により票の上積みをはかっているなど。トルコ系ユダヤ人の無神論者がイスラム教徒から支持を受けるということでどこまで本当かわかりませんが、ツィプラス政権でギリシャと教会は滅ぶと恐怖しているようにみえます。
 なお、いろいろありましが、ギリシャの世論調査を信じるならば、今年【2019年】中におこなわれる(首相はかつて10月と発言)ギリシャ議会選挙で SYRIZA に投票すると答えた人は微増している状況です。この調査結果は、選挙までの残り半年以上で首相がさらになにかをやらかす可能性を上昇させています。

 また、欧州全体の景気後退が始まったのではないかという観測に加えて、仮にロシア正教会からフル・コミュニオンを解除されると、ロシア人巡礼観光客はさらに減少し(某府主教はロシア正教会を批判する一方で「365日ロシア人をもてなす」とかのんきなことをいってましたが)、ギリシャ経済は悪化、首相によって教会に責任が押しつけられるという展開もありえます。
 これはギリシャだけでなく、モスクワとの関係は、キプロスやエルサレムもそれぞれの国の経済・政治・外交に直結する問題なので、正直どこも頭が痛いでしょう。

 

キリスト教/シリア正教会アンティオキア総主教イグナティウス・アフレム2世聖下が、“ウクライナのシリア化”を懸念する書簡をロシア正教会モスクワ総主教キリル聖下に(2019年2月)

 キリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁の公式サイトによりますと、キリスト教/オリエント正教会/シリア正教会の首座/アンティオキア・東方全土総主教“モラン”・“モル”・“イグナティウス”・アフレム2世聖下(His Holiness Moran Mor Ignatius Aphrem II, the Patriarch of Antioch and All the East, the Supreme Head of the Universal Syriac Orthodox Church)からロシア正教会の首座/モスクワ・全ロシア【全ルーシ】総主教キリル聖下(キリール総主教 : His Holiness Kirill, Patriarch of Moscow and all Russia【Rus’】)に対し、「ウクライナは、“宗教の皮をかぶった政治”が国内を無茶苦茶にしたシリアと同じ道をたどる」と懸念する書簡を送ったそうです。

※書簡についての発表はロシア正教会側からのみです。

 

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教公式サイト)Primate of the Syriac Orthodox Church has great concerns about large-scale of violence against believers of the canonical Church in Ukraine / News / Patriarchate.ru
 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Предстоятель Сирийской Ортодоксальной Церкви глубоко обеспокоен масштабами насилия, которому подвергаются верующие канонической Церкви на Украине / Новости / Патриархия.ru

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Primate of the Syriac Orthodox Church has great concerns about large-scale of violence against believers of the canonical Church in Ukraine | The Russian Orthodox Church

 

 シリアでの問題というか戦争というか内戦というか紛争というかについて、シリア正教会の立場は、アメリカや西側諸国とIS【イスラム国】含むイスラム過激派によって起こされた騒乱が国内を無茶苦茶にし、それらがキリスト教信者を弾圧したという立場であり、シリアのアサド政権及び同政権を支援しているロシアのプーチン政権はキリスト教の保護者という位置付けになると思います。
 「宗教の皮をかぶった政治」が、IS【イスラム国】含むイスラム過激派であり、またウクライナでそれに相当するものが、ポロシェンコ政権とコンスタンティノープルにトモスを与えられた独立正教会であるということになるでしょう。
 要するに、ウクライナのポロシェンコ政権はイスラム国【IS】のようなものと遠回しに述べているようにも取れますし、そうだとするとシリアと同じくプーチン政権による軍事介入が必要という帰結になるとも取れます。
 が、はっきりとそう書いてあるわけでは、無論ありません。

 

シスマ2018:ギリシャの正教会系メディア「ΒΗΜΑ ΟΡΘΟΔΟΞΙΑΣ」が、ロシア大統領ウラジーミル・プーチン閣下の第6回在外同胞世界会議でのコメントを「ウクライナにおけるコンスタンティノープルの全地総主教庁の行動を批判」「シスマに関する初の意見表明」と報道(2018年10月)ロシア系メディアはこの件について特に報道せず

 ロシア連邦では、第6回在外同胞世界会議(6th World Congress of Compatriots Living Abroad)というものが開催されています。海外に在住するロシア人との絆を維持していくための行事のようです。
 2018年10月31日、ロシア連邦大統領ウラジーミル・ウラジーミロヴィチ・プーチン閣下(His Excellency Mr Vladimir Vladimirovich Putin)が、スピーチをおこなった模様です。
 ギリシャの正教会系メディア「ΒΗΜΑ ΟΡΘΟΔΟΞΙΑΣ」は、プーチン大統領が「ウクライナにおけるコンスタンティノープルの全地総主教庁の行動を批判」「シスマに関する初の意見表明」と報道しています。

 

 (ギリシャ語)Ο Πούτιν προς Οικουμενικό Πατριαρχείο: Οποιος πολιτικοποιεί τη θρησκεία θα έχει συνέπειες – ΒΗΜΑ ΟΡΘΟΔΟΞΙΑΣ

 

 一方で、ロシア系メディアは、第6回在外同胞世界会議が始まったことと、プーチン大統領がスピーチをおこなったことは記事にしているものの、教会に関する発言を重要視していない、というか教会に関する部分の発言を報道しているものを見かけません
 スピーチ内容がクレムリンの公式サイトにあったので(とりあえず英語版を)チェックしてみましたが……

 

 (英語:ロシア大統領府【クレムリン】公式サイト)World Congress of Compatriots Living Abroad • President of Russia

I must also say a few more words about the efforts of the Russian Orthodox Church and other traditional national confessions, including Islam, Judaism and Buddhism. I can see many representatives of these religions in this hall, and I would like to welcome them. I want to thank them for their efforts to strengthen cultural and humanitarian ties between our compatriots abroad and Russia. Unfortunately, some are now trying to sever these ties, one way or another, and to force these people to stay in their respective countries. I would like to note one thing: political intrigues in this sensitive sphere have always spelled dire consequences, primarily for those who are doing this. It is our shared duty (to the people, in the first place) to do everything possible to preserve spiritual and historical unity.

 該当部分はおそらくここでしょう。
 確かに「ロシア正教会」という単語はあり、「私は一つのことを指摘したい:この慎重に扱うべき領域における政治的策謀は、それをおこなったものたちをはじめとして、常に深刻な結果を招いてきた」という部分はシスマに関するコメントに思えます。
 一方、イスラム教、ユダヤ教、仏教の名も並んでおり、コンスタンティノープルの全地総主教庁の名称を出しているわけでもないので、現今の世界情勢(反ロシア)と歴史について一般論を語っただけのように取ることもできます。

 すでにロシア大統領報道官ペスコフ氏が「クレムリンはロシア正教会の懸念を共有」と述べており、ロシア系メディアがスルーしているところをみると、今回の発言は気にするものではないのでしょう。

 

 とはいえ、東方正教会の信徒の中で最大の影響力を持つ政治家の発言なので、宗教に関して発言した場合に東方正教会系メディアが報道するのは、過敏とまでいうのかはわかりませんが。

 

President of Russiaさんのツイート: "At the World Congress of Compatriots, the President announced the approval of the 2019–2025 State Migration Policy Concept https://t.co/8Q36dHPwBg… https://t.co/jK4gfkG9AA"

 

追記:
 ΡΟΜΦΑΙΑ(Romfea.gr)(の引用元記事)は、プーチン大統領が批判している対象を第一にアメリカ合衆国としています。
 また、ロシア外交筋がギリシャ政府に対して、ロシア寄りの姿勢を示すよう要求しているとしています。

 (ギリシャ語)Πούτιν για αυτοκεφαλία στην Ουκρανία: ''Θα υπάρξουν σοβαρότατες συνέπειες''

 

 【シスマ2018 – The Schism of 2018】<東方正教会大分裂>: ウクライナへの独立正教会設置から始まったコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立とそれに端を発した出来事及びその他のシスマ的な出来事の記事一覧など<東方正教会内戦、大分裂、そして崩壊?>

 

キリスト教/ローマ教皇フランシスコ聖下が新任のローマ教皇聖座駐箚イラン大使と会見、信任状の捧呈を受ける(2018年10月)

 2018年10月29日、キリスト教/ローマ・カトリック教会の首座/ローマ教皇聖座およびバチカン市国の絶対君主/ローマ教皇フランシスコ聖下(His Holiness Pope Francis)は、新任のローマ教皇聖座駐箚イラン・イスラム共和国特命全権大使“セイエド”・タハ・ハシェミ博士閣下(セイイェド・ターハー・ハーシェミー師 : His Excellency Dr Seyed Taha Hashemi)と会見、信任状の捧呈を受けたようです。

 

 (英語)Iran's new ambassador gives the pope a Persian rug | ROME REPORTS

ROME REPORTS in English:
Iran's new ambassador gives the pope a Persian rug – YouTube

 

 (英語:ローマ教皇聖座公式サイト)The Credential Letters of the Ambassador of the Islamic Republic of Iran to the Holy See, 29.10.2018