ロシア国営タス通信記事(英語):キリスト教/セルビア総主教イリネイ聖下「コンスタンティノープルの行動は東方正教会に長期に渡る亀裂を生み出す」(2018年10月)

 ロシア国営タス通信の記事ですが、キリスト教/東方正教会/セルビア正教会の首座/セルビア総主教イリネイ聖下(ペーチ大主教 : ベオグラード・カルロヴツィ府主教 : His Holiness Irinej, Serbian Patriarch, Archbishop of Peć, Metropolitan of Belgrade and Karlovci)が、現在進行中の事態について「コンスタンティノープルの行動は長期に渡る亀裂を生み出す」とコメントしているようです。

 

 (英語)TASS: Society & Culture – Constantinople’s actions in Ukraine to trigger long-term rift, warns Serb patriarch

 

 もっとも、具体的な行動はというと、アンティオキア・東方全土総主教ヨウハンナ10世聖下(His Beatitude Patriarch John X of Antioch and All the East)とともに、「東方正教会の全体会合を呼びかける」声明を出すというなんの意味もないことくらいしかしていないので、これからも自分たちの教会に直接関係が出てこない限り何もしないと思われます。

 

関連:
 2018年~ ウクライナへの独立正教会設置を巡るコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立関連の記事一覧

 

シスマ2018:イタリア紙がキリスト教/ロシア正教会ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下にインタビュー「ウクライナの教会分裂の背後にアメリカの影」(2018年10月)「コンスタンティノープルは金を受け取ったと思うか?」という質問に「わからないが1924年のポーランドの時には彼らは受け取った」

  「世界代表司教会議(シノドス)第15回通常総会(テーマ:若者、信仰そして召命の識別)」に臨席及びローマ教皇フランシスコ聖下との会見のために同地を訪問中のキリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下(ヒラリオン府主教 : His Eminence Metropolitan Hilarion of Volokolamsk, chairman of the Moscow Patriarchate’s Department for External Church Relations (DECR))は、イタリア紙「Il Messaggero」からインタビューを受けた模様です。

 同紙の公式サイト(イタリア語)と、ロシア正教会の公式サイト(ロシア語)に記事がありますが、掲載されている内容が違います
 矛盾しているわけではないですが片方にしか掲載されていない内容や、表現の仕方や単語の選び方が明らかに別です。

 タイトルはイタリア紙側では「イラリオン府主教『ウクライナの教会分裂の背後にアメリカの影』」
 ロシア正教会側では「イラリオン府主教:ヨーロッパの全教会は同じ問題に直面している」という感じです(同じ問題というのは「世俗化」です)。

 

 なお、どちらにも掲載されていますが(ロシア側の表現をベースに簡単に書きますと)、

記者:バルソロメオス総主教は(独立を認めるかわりに)お金を受け取ったと思うか?
イラリオン府主教:私にはわからない。私がいえるのは、1924年にコンスタンティノープルがポーランド正教会の独立を認めた時には金が支払われたということだ。交わされた書簡に金額が書かれている

 ……と、いうような部分があります。ロシア系メディアが、コンスタンティノープルの全地総主教庁が今回の件で約28億円を受け取っていると報道していることに関連した質問ですが、効果のほどはわかりませんが真偽は受け流しつつ疑惑を深めることを狙ったコメントでしょう(いきなり巻き込まれたポーランド正教会はいい迷惑ですが)。

 

 (イタリア語)Il metropolita Hilarion: «L'ombra degli Usa dietro lo scisma della chiesa ucraina»

 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Митрополит Волоколамский Иларион: Все христианские Церкви в Европе сегодня стоят перед одними и теми же вызовами | Русская Православная Церковь
 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Митрополит Волоколамский Иларион: Все христианские Церкви в Европе сегодня стоят перед одними и теми же вызовами / Интервью / Патриархия.ru

 

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シスマ2018:キリスト教/ローマ教皇フランシスコ聖下がロシア正教会ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下と会見(2018年10月)ロシア正教会はカトリックとの関係発展は続けるものの、カトリックと東方正教会全体の神学に関する対話には参加しないと通知

 2018年10月19日、キリスト教/ローマ・カトリック教会の首座/ローマ教皇聖座およびバチカン市国の絶対君主/ローマ教皇フランシスコ聖下(His Holiness Pope Francis)は、「世界代表司教会議(シノドス)第15回通常総会(テーマ:若者、信仰そして召命の識別)」に臨席のために同地を訪問中のキリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下(ヒラリオン府主教 : His Eminence Metropolitan Hilarion of Volokolamsk, chairman of the Moscow Patriarchate’s Department for External Church Relations (DECR))と会見しました。

 両者の会見は7回目。また、ウクライナ情勢を考慮した臨時会談というわけではありません。
 ローマ教皇聖座側からの内容発表がなく、ロシア正教会側が述べた情報のみとなります(とはいうものの、特におかしなところはありません)。

 会談では、フランシスコ教皇聖下よりシノドスに臨席したことへの感謝が述べられ、イラリオン府主教座下側からモスクワ総主教キリル聖下からの挨拶が伝えられた模様。

 そして、イラリオン座下から、ポルトガルのリスボン総大司教マヌエル・クレメンテ枢機卿座下【マヌエル3世】との会見など、カトリックとロシア正教会の関係に関する話題が出されたようです。
 また、これが一番重要になりましたが、2018年10月15日のロシア正教会聖シノドによるコンスタンティノープルの全地総主教庁とのユーカリスティック・コミュニオンの解除決定についてモスクワ総主教の立場の詳細を説明し、文書を手渡したようです。
 それに伴いカトリックと東方正教会全体の神学に関する対話への参加は停止するものの、カトリックとロシア正教会の関係発展については継続していく旨を強調した、とのことです。

 

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Metropolitan Hilarion of Volokolamsk meets with Pope Francis | The Russian Orthodox Church
 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Metropolitan Hilarion of Volokolamsk meets with Pope Francis / News / Patriarchate.ru

 (英語:主に事前の情報)TASS: Society & Culture – Russian bishop meets with Pope Francis

 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Митрополит Волоколамский Иларион встретился с Папой Римским Франциском | Русская Православная Церковь
 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Председатель ОВЦС встретился с Папой Римским Франциском / Новости / Патриархия.ru

 (ギリシャ語)Συνάντηση Βολοκολάμσκ Ιλαρίωνα με τον Πάπα Φραγκίσκο – ΒΗΜΑ ΟΡΘΟΔΟΞΙΑΣ
 (ギリシャ語)Με τον Πάπα Φραγκίσκο συναντήθηκε ο Μητροπολίτης Βολοκολάμσκ

 

vimaorthodoxiasさんのツイート: "Συνάντηση Βολοκολάμσκ Ιλαρίωνα με τον Πάπα Φραγκίσκο https://t.co/rATaFmHKA9 #ΡΩΣΙΚΗΕΚΚΛΗΣΙΑ #Βατικανό"

 

Romfea.grさんのツイート: "Με τον Πάπα Φραγκίσκο συναντήθηκε ο Μητροπολίτης Βολοκολάμσκ https://t.co/hrAXE7dTq7"

 

Βήμα Ορθοδοξίας -… – Βήμα Ορθοδοξίας – vimaorthodoxias.gr | Facebook

 

http://www.romfea.gr/patriarxeia-ts/patri… – Praktoreio Ekklisiastikon Eidiseon | Facebook

 

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インタビュー情報:
 シスマ2018:イタリア紙がキリスト教/ロシア正教会ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下にインタビュー「ウクライナの教会分裂の背後にアメリカの影」(2018年10月)「コンスタンティノープルは金を受け取ったと思うか?」という質問に「わからないが1924年のポーランドの時には彼らは受け取った」

 

シスマ2018:キリスト教/トルコ正教会がコンスタンティノープルの全地総主教庁を提訴。ロシアとウクライナの戦争を誘発するような行動はローザンヌ条約違反=トルコの刑法に違反とのこと(2018年10月)まだ存在していたことに驚きましたが……

【シスマ2018】東方正教会大分裂: ウクライナへの独立正教会設置を巡るコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立とそれに端を発した出来事及びその他のシスマ的な出来事の記事一覧など

 

 ロシアのタス通信によりますと、2018年10月16日、キリスト教/東方正教会(とはほとんどまったく思われていない少数集団)のトルコ正教会が、コンスタンティノープルの全地総主教庁を提訴した模様です。
 ロシア連邦とウクライナの戦争を誘発するような行動はローザンヌ条約違反=トルコの刑法に違反しているとのことです。

 

 (英語)TASS: World – Turkish Orthodox Church urges criminal case against Ecumenical Patriarchate

 

 率直な話、まだ存在していたことに驚きました。

 

 今回の記事でスポークスウーマンとして名前の出てきているセウギ・エレネロルSevgi Erenerol)という人ですが、首座(世襲)の姉妹で、5年前に終身刑になったはずでは……。

 

 なお、トルコ共和国大統領レジェップ・タイップ・エルドアン閣下(His Excellency Mr Recep Tayyip Erdoğan)はローザンヌ条約の見直しを求める発言をおこなっており、今回わざわざ条約名が出てきたことには、意味があるかもしれません。

 

追記:
 「ΡΟΜΦΑΙΑ(Romfea.gr)」による今回の件の記事によりますと、トルコ正教会は、全地総主教庁側が自分たちのものだと認識している建物(?)をいくつか保有(?)していて、係争中の模様です。

 (ギリシャ語)Το λεγόμενο Τουρκικό ''Ορθόδοξο Πατριαρχείο'' κατέθεσε μήνυση κατά του Φαναρίου

 

追記2:
 記事へのリンクをひとつ追加。

 (英語)Turkish Orthodox “Church” files lawsuit against Ecumenical Patriarchate / OrthoChristian.Com

 

キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教バルソロメオス聖下が、教会法上合法でない“マケドニア正教会-オフリド大主教庁【MOC-OA】”に対し、「あなたのところはセルビア正教会の管轄権下なので独立は承認できません」(2018年10月)

【シスマ2018】東方正教会大分裂: ウクライナへの独立正教会設置を巡るコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立とそれに端を発した出来事及びその他のシスマ的な出来事の記事一覧など

 

※フェイクニュースの可能性があります。

 

 ギリシャの正教会系メディア「ΡΟΜΦΑΙΑ(Romfea.gr)」によりますと、教会法上合法でない“マケドニア正教会-オフリド大主教庁【MOC-OA】”(以下、MOC-OA)が、マケドニアの名を冠さない教会名で全地総主教庁に承認を求めたところ、キリスト教/東方正教会首席/コンスタンティノープル=新ローマ大主教・全地総主教バルソロメオス聖下(バーソロミュー1世世界総主教バルトロマイ1世ヴァルソロメオス1世 : His All-Holiness Bartholomew, Archbishop of Constantinople-New Rome and Ecumenical Patriarch)に、「あなたのところは1922年にセルビア正教会に管轄権が移っているのでダメです」とにべもない回答が来たとのこと。

 

 (ギリシャ語)Αλλαγή στάσης από το Οικουμενικό Πατριαρχείο για την σχισματική Εκκλησία της πΓΔΜ

 

 これまでこの問題は行ったり来たりというか情報が錯綜しており、少し前には彼らは「国名も教会名もマケドニアを維持すべき」と主張しているという情報が出ました。このニュースはフェイクニュースだったのか、それとも意見をコロリと変えたのか。

 いずれにせよ、今回のニュースがフェイクニュースでない場合、また加えて以前にバルソロメオス聖下が「名前を変えればいいよ」と発言したとのニュースがフェイクニュースでなかった場合、聖下もまたコロリと意見を変えたわけですが、これはおそらくロシア正教会とセルビア正教会の二正面作戦は勝ち目がないという現実的な判断をしただけで、だとするとまたいつコロリと変わるかわかったものではありません。

 MOC-OAのプレスパ=ペラゴニア府主教ペタル座下(His Eminence Metropolitan Petar of Prespa-Pelagonia)は、無念さを隠していませんが、同教会はこれまで通り運営されるし、国名問題が解決すれば独立正教会として承認されるだろうと見込んでいるようです。

 

 そして、この問題を通じて、内部の見解の分裂が露呈し、マケドニアとの政治的連携を目的とする政治家や政治活動家による教会への介入を招いただけのブルガリア正教会はずいぶんとまた貧乏くじを引いてしまったものだと思います。

 

 それにしても、今回の話も全部フェイクニュースかもしれません(頭が痛い……)。