キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教バルソロメオス聖下が、永眠したキリスト教/セルビア正教会の重鎮/モンテネグロおよび沿海の府主教アンフィロヒイェ座下の追悼式(2020年11月)

 2020年11月3日、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープル=新ローマ大主教・全地総主教バルソロメオス聖下(バーソロミュー1世世界総主教バルトロマイ1世ヴァルソロメオス1世 : His All-Holiness Bartholomew, Archbishop of Constantinople-New Rome and Ecumenical Patriarch)は、2020年10月30日に永眠したキリスト教/セルビア正教会の重鎮、モンテネグロおよび沿海の府主教アンフィロヒイェ座下(His Eminence Metropolitan Amfilohije of Montenegro and the Littoral)の追悼式をおこないました。

 

Радио Светигора:
Помен Васељенског патријарха Митрополиту Амфилохију у Цариграду – YouTube

 

 (セルビア語:セルビア正教会 モンテネグロ・沿海府主教庁 公式サイト)Патријарх Вартоломеј служио помен Митрополиту Амфилохију у Цариграду | Православна Митрополија црногорско-приморска (Званични сајт)

 

 これまで、セルビア正教会のモンテネグロ・沿海府主教庁 公式サイトには、コンスタンティノープルからの弔意の表明を受けた記載はなく(ギリシャ正教会、キプロス正教会、アレクサンドリア総主教庁、エルサレム総主教庁、も記載なし)、また葬儀においては、ロシア正教会モスクワ総主教庁系のウクライナ正教会から共同司式でボリスポリ・ブロヴァリー府主教アントニー座下(His Eminence Metropolitan Antoniy of Boryspil and Brovary)が臨席したことにより、コンスタンティノープルおよび上記の教会のうちエルサレム総主教庁以外は主教が共同司式をおこなうことができない状態になっていました(コンスタンティノープルはモスクワ総主教庁側からコミュニオンを解除されており、他の教会は首座がコンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】を承認したためほぼ同様)。
 この状況下で、コンスタンティノープルが追悼式をおこなったことと、モンテネグロ・沿海府主教庁 公式サイトがそれを報じた(動画を引用して)ことは、両者とも縁を切るつもりはないということを示しています。
 しかし、北マケドニア共和国(セルビア正教会の管轄権下)の教会法上合法でない“マケドニア正教会-オフリド大主教庁”の承認をめぐって、いずれ決裂する可能性は高いと思われます。
 今回の追悼式が、両者のこの手の付き合いの最後になるかもしれません。

 

関連:
 ローマ教皇庁キリスト教一致推進評議会議長クルト・コッホ枢機卿座下が、永眠したキリスト教/セルビア正教会の重鎮/モンテネグロおよび沿海の府主教アンフィロヒイェ座下への弔意を表明(2020年11月)

 

動画:キリスト教/“ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】”の“フィラレート総主教”が、ウクライナ・ラジオのインタビューにこたえる映像(2020年10月)

 “ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】”首座/“フィラレート総主教”(キーウ・ルーシ=ウクライナ全土総主教フィラレート聖下 : His Holiness Patriarch Filaret of Kyiv and All Rus’-Ukraine)が、ウクライナ・ラジオのインタビューに答えています。

 

UA: Українське радіо:
Спеціальне інтерв‘ю у рамках програми «Сьогодні.Ввечері». Гість – Патріарх Філарет. – YouTube

 

 (ウクライナ語:キエフ総主教庁 公式サイト)Патріарх Філарет про Томос ПЦУ, аборти, одностатеві шлюби та коронавірус в ефірі Українського радіо – Українська Православна Церква Київський Патріархат

 

 内容はいつもの正教会の混乱に関するものや、人工妊娠中絶、同性結婚にまでいたりますが、だいたいその辺りは聞かなくても回答はわかりきっているので割愛(ローマ教皇フランシスコ聖下のコメントについても答えていますが、それもまあ聞かなくてもわかりきっている回答です)。
 新型コロナウイルス感染症【COVID-19】からの生還については、医師たちに感謝を述べています(この生還は、我々が思うより強い影響を持ってくるかもしれません)。

 フィラレート総主教は、コンスタンティノープルに「フィラレートの主張を認めないと、対モスクワで不利になってしまう」と思わせれば、コンスタンティノープルによって総主教と認められ、国外のウクライナ人の管轄も承認される可能性はあります。ありますというか、それを狙っているのでしょう。
 そうなるかどうかはわかりませんが、もはやどうなっても不思議ではない東方正教会です。

 

訃報(2020年10月30日):キリスト教/セルビア正教会の重鎮/モンテネグロおよび沿海の府主教アンフィロヒイェ座下が永眠(1938~2020)新型コロナウイルス感染症【COVID-19】の治療で入院との既報

 2020年10月30日、キリスト教/セルビア正教会の重鎮、モンテネグロおよび沿海の府主教アンフィロヒイェ座下(His Eminence Metropolitan Amfilohije of Montenegro and the Littoral)が永眠したと発表されました。
 1938年1月7日生まれの82歳。

 新型コロナウイルス感染症【COVID-19】の検査で陽性となり入院していました。
 容態は安定しているとされていたものの、ほぼ毎日、モンテネグロ府主教庁が状況を発表するなど、深刻さがうかがえる状態ではありました。
※現在、モンテネグロ府主教庁 公式サイトはアクセスが難しい状況です。

 座下はセルビア正教会の重鎮で、総主教候補となったり、また空位期の首座代行を務めたりもしました。
 東方正教会の神学者としても著名で、コンスタンティノープルとモスクワの教会分裂においてはコンスタンティノープルを批判していました。

 モンテネグロ国内においては、モンテネグロの野党指導者から「モンテネグロの象徴」と称えられた人物で、今回の永眠は、東方正教会全体からモンテネグロ国内の政治情勢にまで影響を与える可能性があります。

 

Телевизија Храм:
Блаженопочивши Митрополит црногорско – приморски Г. Амфилохије(1938-2020) – YouTube

 

 (英語:セルビア正教会 総主教庁 公式サイト)Metropolitan Amfilohije of Montenegro and the Littoral reposed in the Lord | Serbian Orthodox Church [Official web site]
 (英語:セルビア正教会 総主教庁 公式サイト)Biography of Metropolitan Amfilohije (Radovic) | Serbian Orthodox Church [Official web site]
 (英語:セルビア正教会 総主教庁 公式サイト)Memorial prayer rite for Metropolitan Amfilohije in the Cetinje Monastery | Serbian Orthodox Church [Official web site]

 (マケドニア語:正教オフリド大主教庁 公式サイト)Православна Охридска Архиепископија » Вести | Се упокои во Господа Митрополитот црногорско-приморски Амфилохиј

 (セルビア語:セルビア正教会 ザグレブ・リュブリャナ府主教庁 公式サイト)Упокојио се у Господу Митрополит црногорско-приморски Амфилохије – Митрополија загребачко-љубљанска

УПОКОЈИО СЕ У ГОСПОДУ МИТРОПОЛИТ… – Mitropolija zagrebačko-ljubljanska | Facebook

 

 (ポーランド語:ポーランド正教会 公式サイト)ORTHODOX | Nie żyje metropolita Amfilochiusz

 (ギリシャ語:アルバニア正教会 公式サイト)'Eπί τῇ ἐκδημίᾳ τοῦ Σεβασμιωτάτου Μητροπολίτου Μαυροβουνίου καί Παραθαλασσίας κυροῦ Ἀμφιλοχίου – Ορθόδοξος Αυτοκέφαλος Εκκλησία της Αλβανίας

 (ロシア語:ベラルーシ正教会 公式サイト)Отошел ко Господу митрополит Черногорский и Приморский Амфилохий (Радович) | Православие в мире | Новости | Официальный портал Белорусской Православной Церкви

 

 (英語)Metropolitan Amfilohije of Montenegro reposes in the Lord / OrthoChristian.Com
 (英語)Metropolitan Amfilohije of Montenegro and the Littoral reposes in the Lord – UOJ – the Union of Orthodox Journalists
 (英語)Metropolitan Amfilohije of Montenegro and the Littoral reposed in the Lord – Orthodox Times

 (英語)Montenegro's top Orthodox Christian cleric dies from COVID-19 infection | Reuters

 

関連:
 東方正教会の聖職者らから、永眠したキリスト教/セルビア正教会の重鎮/モンテネグロおよび沿海の府主教アンフィロヒイェ座下を追悼するメッセージ(2020年10月)
 数千人が、永眠したキリスト教/セルビア正教会の重鎮/モンテネグロおよび沿海の府主教アンフィロヒイェ座下の遺体到着を出迎える(2020年10月)ポドゴリツァのハリストス復活大聖堂
 葬儀:キリスト教/セルビア正教会の重鎮/モンテネグロおよび沿海の府主教アンフィロヒイェ座下の葬儀がおこなわれる(2020年11月)

 現在セルビア王室を称するユーゴスラビア皇太子アレクサンダル2世殿下夫妻が、永眠したキリスト教/セルビア正教会の重鎮/モンテネグロおよび沿海の府主教アンフィロヒイェ座下を追悼(2020年10月)新型コロナウイルス感染症【COVID-19】

 セルビア大統領アレクサンダル・ブチッチ閣下が、永眠したキリスト教/セルビア正教会の重鎮/モンテネグロおよび沿海の府主教アンフィロヒイェ座下への弔意を表明(2020年10月)
 モンテネグロ大統領ミロ・ジュカノヴィッチ閣下が、永眠したキリスト教/セルビア正教会の重鎮/モンテネグロおよび沿海の府主教アンフィロヒイェ座下への弔意を表明(2020年10月)
 ボスニア・ヘルツェゴビナ大統領評議会セルビア人代表ミロラド・ドディク閣下が、永眠したキリスト教/セルビア正教会の重鎮/モンテネグロおよび沿海の府主教アンフィロヒイェ座下に関するインタビューを受ける(2020年11月)
 モンテネグロ次期首相に指名されているズドラヴコ・クリヴォカピッチ氏が、永眠したキリスト教/セルビア正教会の重鎮/モンテネグロおよび沿海の府主教アンフィロヒイェ座下に関するインタビューを受ける(2020年11月) – キリスト教 高位聖職者のニュース
 モンテネグロ首相(退任予定)ドゥシュコ・マルコビッチ閣下が、永眠したキリスト教/セルビア正教会の重鎮/モンテネグロおよび沿海の府主教アンフィロヒイェ座下への弔意を表明(2020年10月)
 モンテネグロ議会議長アレクサ・ベーチッチ閣下が、永眠したキリスト教/セルビア正教会の重鎮/モンテネグロおよび沿海の府主教アンフィロヒイェ座下に関するインタビューを受ける(2020年11月)
 ボスニア・ヘルツェゴビナ/スルプスカ共和国【セルビア人共和国】大統領ジェリカ・ツヴィヤノヴィッチ閣下が、永眠したキリスト教/セルビア正教会の重鎮/モンテネグロおよび沿海の府主教アンフィロヒイェ座下への弔意を表明(2020年10月)

 キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教バルソロメオス聖下が、永眠したキリスト教/セルビア正教会の重鎮/モンテネグロおよび沿海の府主教アンフィロヒイェ座下の追悼式(2020年11月)

 

キリスト教/ロシア正教会/西欧における総主教代理アントニー府主教座下と、西欧ロシア正教会大主教区首座/ジャン府主教座下が会見(2020年10月)

 2020年10月22日、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会/西欧における総主教代理/コールスニ・西欧府主教アントニー座下(His Eminence Metropolitan Anthony【Antoniy】 of Korsun and Western Europe, Patriarchal Exarch of Western Europe)とキリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁の管轄権下で自治的な権限を持つ西欧ロシア正教会大主教区の首座大主教/ドゥブナ府主教ジャン座下(イオアン大主教 : His Eminence Metropolitan JeanJohn】【Ioan】【Ioann】 of Dubna, Archbishop of the Russian Orthodox Churches in Western Europe)が会見しました。

※ややこしいですが、前者は2018年からのコンスタンティノープルとのシスマに伴い復活・設置された総主教代理区で、後者はロシア革命とその後の混乱でコンスタンティノープルの管轄権下にあったものの同じくシスマに伴いロシア正教会モスクワ総主教庁の管轄権下に移動したものです。

 会談では、フランスおよび西欧における両機関の関係に関する問題点など、西欧ロシア大主教区がモスクワ総主教庁の一部となって1周年が近いことなどが話題となったようです。
 後者に関して、パリでの新型コロナウイルス感染症【COVID-19】対策の規制の状況が許せば、11月8日にアントニー府主教とジャン府主教が聖アレクサンドル・ネフスキー大聖堂で礼拝をおこなう予定としています。

 

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁 公式サイト)Patriarchal Exarch for Western Europe meets with head of Archdiocese of Western European Parishes of Russian Tradition / News / Patriarchate.ru

 (ロシア語:コールスニ教区 公式サイト)Cостоялась встреча Патриаршего экзарха Западной Европы митрополита Антония и главы Архиепископии западноевропейских приходов русской традиции митрополита Иоанна

 

キリスト教/キプロス正教会のレメソス府主教、キッコス・ティリリア府主教、タマソス府主教、アマサス主教が、キプロス大主教とコンスタンティノープルを批判する声明(2020年10月)

関連:
 東方正教会大分裂:キリスト教/キプロス大主教クリソストモス2世座下がコンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】の首座の名を礼拝中に挙げる。同教会シノドの事前同意なし(2020年10月)

 上記ニュースに関して、キプロス正教会の、

 レメソス府主教アサナシオス座下(His Eminence Metropolitans Athanasios of Limassol)、
 キッコス・ティリリア府主教ニキフォロス座下(His Eminence Metropolitans Nikiforos of Kykkos)、
 タマソス・オレイニ府主教イサイアス座下(His Eminence Metropolitan Isaias of Tamassos and Oreini)、
 アマサス主教ニコラオス座下(His Grace Bishop Nikolaos of Amathous)、

 の四人が、クリソストモス2世およびコンスタンティノープル(とバルソロメオス総主教)を非難する声明を出しているようです。

 四人のうち、アサナシオス府主教は、クリソストモス2世が礼拝の祈祷中に“エピファニー府主教”の名を挙げたので退出したようです。

 とはいうものの、人数で言えば、四人というのはキプロス正教会の主教以上では(キプロス大主教を含めると)三分の一に満たないので、これ以上の賛同者が集まらなければ押し切られて終わり、以前は違うことを言っていた大主教も含めてこれまでの発言もすべてなかったことになるでしょう。

 

 (英語)Metropolitans’ “attack” on Ecumenical Patriarch, Archbishop of Cyprus for recognition of Ukrainian autocephaly – Orthodox Times

 (英語)Cypriot Metropolitan Athanasios of Limassol left Liturgy in protest over commemoration of Ukrainian schismatic / OrthoChristian.Com
 (英語)“Ignoring and Despising His Own Holy Synod” / OrthoChristian.Com

 (英語)Media: Cyprus bishops oppose the "papal decision" of their Primate on OCU – UOJ – the Union of Orthodox Journalists

 

追記:
 他のギリシャ人系教会の主教らより四人の主教の反発は強いようで、「キプロス正教会の教会分裂につながる可能性」や、(はっきりいってはいませんが)キプロス大主教は教会法上合法な主教ではなくなったとまで踏み込んでいます(Romfea.grの英語版である Orthodox Times はここまでの反発を予想していなかったようです)。

 (英語)Reactions over Ukrainian autocephaly in Cyprus: Holy Synod is not to ratify primate’s arbitrariness – Orthodox Times

 そして、記事を読む限り、キプロス大統領ニコス・アナスタシアディス閣下が OCU を承認することに反対していたようにも取れ、そうだとすると、キプロス大主教は聖シノドのみならず大統領の顔にも泥を塗ったことにもなりますが……。
 しかし同大統領は、( OCU を承認した)アレクサンドリア総主教のこの前のキプロス訪問時に会談しています。正直、この動きは OCU 承認に賛同しているとも取れます。
 事情がわかりませんが、クリソストモス2世の健康状態もあり、ここからの動きは注目でしょう。