キリスト教/ウクライナ正教会(モスクワ総主教庁系)のボリスポリ・ブロヴァリー府主教アントニー座下が、ジョージア総主教【グルジア総主教】イリア2世聖下を訪問(2019年2月)

 2019年2月20日、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁管轄権下で高度な自治的権限を有するウクライナ正教会のボリスポリ・ブロヴァリー府主教アントニー座下(His Eminence Metropolitan Antoniy of Boryspil and Brovary)が、キリスト教/東方正教会/ジョージア正教会【グルジア正教会】の首座/全ジョージアのカトリコス=総主教イリア2世聖下(イリヤ2世 : His Holiness Catholicos-Patriarch Ilia II of All Georgia)を訪問しました。

 

митрополит Антоний Паканич(アントニー府主教公式チャンネル):
ГРУЗИЯ. Встреча со Святейшим и Блаженнейшим патриархом Илией ІІ – YouTube

 

 (ウクライナ語:ウクライナ正教会公式サイト)Керуючий справами УПЦ зустрівся з Патріархом Грузії Ілією – Українська Православна Церква
 (ジョージア語【グルジア語】:ジョージア正教会総主教庁公式サイト)სრულიად საქართველოს კათოლიკოს-პატრიარქმა უკრაინის ეკლესიის (მოსკოვის საპატრიარქო) წარმომადგენლები მიიღო
 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Управляющий делами Украинской Православной Церкви встретился с Патриархом Грузии Илией ІІ / Новости / Патриархия.ru
 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Chancellor of Ukrainian Orthodox Church meets with Catholicos-Patriarch Iliya II of All Georgia / News / Patriarchate.ru
 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Chancellor of Ukrainian Orthodox Church meets with Catholicos-Patriarch Iliya II of All Georgia | The Russian Orthodox Church
 (ロシア語)Интерфакс-Религия: Патриарх Грузии озабочен ситуацией в украинском православии
 (英語)Interfax-Religion: Patriarch of Georgia concerned about situation in Ukrainian Orthodox Christianity
 (英語)Canonical Ukrainian Church delegation meets with Patriarch Ilia of Georgia (+ VIDEO) / OrthoChristian.Com

 

 ジョージア正教会公式サイトによりますと、会談は「非公式」であるそうです。
 内容はもちろん東方正教会の教会分裂。

 ジョージア正教会側から首座代行であるセナキ・チホロツク府主教シオ座下(His Eminence Metropolitan Shio of Senaki and Chkhorotsqu)、
 ズグジジ・ツァイシ府主教ゲラシメ座下(His Eminence Metropolitan Gerasime of Zugdidi and Tsaishi)、
 ゴリ・アテニ府主教アンドリア座下(His Eminence Metropolitan Andria of Gori and Ateni)、
 ニコルツミンダ主教ヴァフタング座下(His Grace Bishop Vakhtang of Nikortsminda)、
 アハルツィヘ・タオ=クラルジェティ府主教テオドレ座下(His Eminence Metropolitan Teodore【Theodore】 of Akhaltsikhe and Tao-Klarjeti)、
 らが同席とのことです。

 

キリスト教/ロシア正教会ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下らとクルト・コッホ枢機卿座下らが会談。年次の文化的な交流に関するもの(2019年2月)

 2019年2月13日、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下(ヒラリオン府主教 : His Eminence Metropolitan Hilarion of Volokolamsk, chairman of the Moscow Patriarchate’s Department for External Church Relations (DECR))らは、キリスト教/ローマ・カトリック教会/ローマ教皇庁キリスト教一致推進評議会議長クルト・コッホ枢機卿座下(His Eminence Kurt Cardinal Koch, President of the Pontifical Council for Promoting Christian Unity)らと、年次の文化的な交流に関する会談をおこないました。

 ロシア正教会から、文化評議会議長/プスコフ・ポルホフ府主教ティーホン座下(His Eminence Metropolitan Tikhon of Pskov and Porkhov)、
 ローマ・カトリック教会側からは、ロシア連邦駐箚ローマ教皇大使チェレスティーノ・ミッリョーレ大司教座下(His Most Reverend Excellency Monsignor Archbishop Celestino Migliore, Apostolic Nuncio to Russian Federation : カノーザ名義大司教 : Titular Archbishop of Canosa)らが同席。

 

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Working Group for Cultural Cooperation between the Russian Orthodox Church and the Roman Catholic Church holds its regular meeting in Moscow | The Russian Orthodox Church
 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Working Group for Cultural Cooperation between the Russian Orthodox Church and the Roman Catholic Church holds its regular meeting in Moscow / News / Patriarchate.ru

 

 なお、プスコフ・ポルホフ府主教ティーホン座下は、もともとカトリックへの強い批判者であり、カトリックをキリスト教とすらみなしていない主旨の発言を繰り返していましたが、東方正教会で教会分裂が起こった今、立場に変化があるのか注目されます。

 

総主教称号の使用へ:キリスト教/英国正教会【イギリス正教会】【ブリテン正教会】首座/グラストンベリー府主教セラフィム座下が、2019年1月1日より“第7代”英国総主教【イギリス総主教】【ブリテン総主教】の称号を使用しているとのこと(2019年2月)

 英国正教会【イギリス正教会】【ブリテン正教会】(British Orthodox Church)はキリスト教/オリエント正教会/シリア正教会に関連した源流を持ち、一時期コプト正教会の管轄下に入りましたが、近年離脱

 公式サイトによりますと、2019年1月1日より、キリスト教/英国正教会首座/グラストンベリー府主教“アバ”・セラフィム座下(His Eminence Abba Seraphim, Metropolitan of Glastonbury)は、グラストンベリー府主教/第7代英国総主教【イギリス総主教】【ブリテン総主教】“マル”・セラフィム1世聖下(His Beatitude Mar Seraphim I, Metropolitan of Glastonbury and Seventh British Patriarch)の称号を用いているようです。
 また、(あくまで)同記事によれば、同教会は使徒時代に源流を持つものであり、総主教庁としても19世紀から存在することと、今回の件は新しく称し始めたのではなくもともとの状態に戻したとのことです。

 

 (英語:英国正教会公式サイト)The British Patriarchate Restored After 24 Years In Commission – The British Orthodox Church

[4] “An Act of the Holy Governing Synod proclaiming the Lawful & Canonical Succession of His Beatitude Mar Seraphim I to the Apostolic Throne of Glastonbury”, Glastonbury Chartulary, Vol. I, 1. (3 March 1979); “Memorial concerning the Solemn Enthronement of His Beatitude Mar Seraphim I as Metropolitan of Glastonbury & Seventh British Patriarch”, Glastonbury Chartulary, AS Vol. I, 14 (11 August 1979).

 

 上記によれば 1979 年に既にそうであったということになりますが……。

 今回の称号に関する件がコプト正教会離脱時に決められていたのかどうかはわかりません。
 今回の記事にもロシア、ルーマニア、セルビア、ブルガリアが総主教を称していることが書かれていますが、これらはいずれも東方正教会であり、オリエント正教会の総主教ではないので、東方正教会側のシスマの影響を受けたものかもしれません。

 2015年までコプト正教会に属していた英国正教会ですが、今回、外国の権威や管轄権をすべて拒否するとしています。

 

シスマ2018:インタビュー記事(BBCロシア語):キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教庁/テルメッソス大主教ヨブ座下(ウクライナ系の人物)(2018年11月)ロシアの正教会系サイトは座下の発言について「全地総主教庁は独立を認めるのみならず、独立を剥奪することもできる」

 BBCロシア語が、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープル全地総主教庁のテルメッソス大主教ヨブ座下(Archbishop Job of Telmessos)へのインタビューの記事を掲載しています。

 

 (ロシア語)"Надеемся, Москва обратится к разуму". Константинопольский епископ об украинской автокефалии – BBC News Русская служба

 

 ざーっと見てみましたが、とにかく長いうえに、大半がこちらには判定できない内容なので、詳細は読まないとは思います。

 この記事について、ロシアの正教会系サイト「OrthoChristian.Com」は、

 (英語)Not only can we give, but we can also take away autocephaly—Abp. Job (Getcha) / OrthoChristian.Com
 (英語)“The Moscow Patriarchate no longer exists in Ukraine today”—Abp. Job (Getcha) / OrthoChristian.Com

 「我々は独立を与えるだけでなく、剥奪することをもできる」と見出しにつけて紹介しています。
 当方はざーっと読んだだけなので、BBCロシア語の記事において、直接この部分にあたる箇所を見つけていません。
 とはいえ、全地総主教庁がそう考えているのはほぼ間違いないでしょう。
 近代において、彼らは、ギリシャ正教会の独立を認めた後に剥奪しています。
 そうなると、独立正教会というのは、「そもそも独立しているのか」というのが疑問になってきます。Autocephaly な 教会を「独立正教会」または「独立教会」としたのは、誤訳の類で、実際は「いつでも権限を剥奪される可能性のある自治的な教会」のことでしょう(全地総主教庁の見解が正しいとすれば)。もちろんこれでは Autonomous な教会との差がわかりませんが、「いつでも権限を剥奪される可能性のある第一級自治正教会」と「いつでも権限を剥奪される可能性のある第二級自治正教会」とでもすればよろしい。
 それにしても独立正教会が実は「独立していない正教会」のことだったとは……。

 また、座下は、1054年の東西教会分裂(教会大シスマ)のときと今では状況が違うことを述べています(1054年についてはめんどくさい話にもなりますので、とりあえず象徴的な年だとして先へ話を進めましょう)。
 要するに、東西教会分裂は神学上の違いなどがあったのに対し、今回はそんなものはない、シスマなどといっている連中は人々を脅しているのだ、ということです(当方のサイトもシスマといっているので、大主教からお叱りを受けてしまったことになるのでしょう!)。
 しかし、座下の発言全体をざっくり要約すれば、「我々が正しい。ロシアは従わないなら教会法違反。異論は認めない」といっているだけ
 ウクライナ系の人物が話し合いをする気がない意思をロシアに対して示しているのは、なるほどシスマではなく、ただの世俗的ケンカにすぎないともいえるでしょう。
 ですが、2016年の聖大シノド(The Great and Holy Synod)の件をみても明らかなように、教えに関しても分裂の兆しははっきりとあります。
 あるいは教会法についてまともな統一的見解も出てきていない状況を見れば、「一つの教えを奉じている」などというのが大嘘か大間違いで、「一つの教えを奉じている詐欺」か、「一つの教えを奉じているつもりだったがそんなことはなかったぜ!」というオチすら見えてきています(これについては本気で疑っており、検証すべきことだと考えています)。
 いずれにせよ、座下の定義するシスマにあてはまるかそうでないかはともかく、東方正教会は分裂するので(話し合うつもりがないんですから)、これからもシスマと書きます。

 そのほか、(ロシアのみならずオランダ系の機関による)世論調査で全地総主教庁の見解(ウクライナの人々が望んでいる)とは明らかに反する結果が出たのを意識したのか、「議会の多数の賛成があれば多数の人々が望んでいるということなのだ」という理屈をおっしゃっています。
 ジャン=ジャック・ルソー以降、思想家は、民意(民意に相当する言葉)をベースに、民主主義と現在いわれているよくわからない考えの集積について頭をひねってきましたが、結局のところ、民意というものがとらえどころがない=なんとでもいえるという現実を克服することはできず、「でも豊かで平和だしこれからも世の中はよくなるだろう」というにまどろんで仕事をサボっているうちに、アメリカや西欧は(他の地域も)とんでもない状況を迎えています。
 そんな時期に、「議会の多数の賛成があれば多数の人々が望んでいるということなのだ」。……こんなものは今どき意見のうちにも入りません
 世俗化(=聖職者はバカなので宗教に金や時間をつぎこむのはムダ)が進むわけだと納得してしまいました。いやまあ……もとから知ってました……けど。

 

 ともあれ今回のインタビュー、読みこむ気がまるでしませんが、キリスト教、東方正教会のダメっぷりをあらわす記念碑的なものになっているのではないか、と強引に歴史的評価をして感想を終わりたいと思います。

 新約聖書/マタイによる福音書/10章/34節 より:

わたしが地上に平和をもたらすために来たと考えるな。平和ではなく剣をもたらすために来たのだ。

 

 【シスマ2018 – The Schism of 2018】<東方正教会大分裂>: ウクライナへの独立正教会設置から始まったコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立とそれに端を発した出来事及びその他のシスマ的な出来事の記事一覧など<東方正教会内戦、大分裂、そして崩壊?>

 

ベラルーシのミンスクで日本の亜使徒聖ニコライ(キリスト教/ロシア正教会)を記念する聖堂が建設中。週末の手伝いを募集している模様。手袋持参でとのこと(2018年11月)

 ベラルーシのミンスクで日本の亜使徒聖ニコライ(キリスト教/ロシア正教会)を記念する聖堂が建設中。
 今週末の手伝いを募集している模様です。手袋持参でとのこと。

※このページを見ている人は誰もいけないとは思いますが。

 

православный портал sobor.by:
Нужна помощь на стройплощадке храма свт. Николая Японского в Минске – YouTube