キリスト教/コンスタンティノープルが、新たなアメリカ大主教にブルサ府主教エルピドフォロス座下を選出(2019年5月)次の全地総主教の有力候補

 2019年5月11日、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルの全地総主教庁は、新たなアメリカ大主教にブルサ府主教エルピドフォロス座下(His Eminence Metropolitan Elpidophoros of Bursa)を選出した模様です。

 

 (英語:アメリカ大主教区公式サイト)Metropolitan Elpidophoros of Bursa Elected Unanimously Archbishop of America – 2019 – Greek Orthodox Archdiocese of America

 

 前任のデメトリオス座下は、大主教区内の問題などにより全地総主教庁より退任を迫られ、今回新たな選出にいたりました。
 が、大主教区側が求めていた手続きを全地総主教庁側が無視するなど、またもコンスタンティノープルは一方的な行動を取っています。

 全地総主教庁が選出したエルピドフォロス座下は、コンスタンティノープルの全地総主教を「並ぶもののない第一人者(First without equals)」とする考えの人物(もはや全地総主教庁は全員そうなんだろうと思いますが)。
 また座下はトルコ生まれであり、トルコ当局が全地総主教の就任条件をトルコ生まれとしているため、次の全地総主教庁の有力候補と見られています。

 今回の一方的な選出は、次の全地総主教となるエルピドフォロス座下に“箔”をつけるためにコンスタンティノープルがゴリ押ししたようにも思えますが……。
 現在の、コンスタンティノープルのアメリカ大主教区は、内部のお金に関する問題や、コンスタンティノープルの今後の方針によっては保守派が離脱するという観測があるなど、よくわからないものとなっています。
 お金の件は結構多額のようですが、しかし、こんな程度の問題でギリシャ系住民がコンスタンティノープルと縁を切るとは思えないのが、昨年以来の状況を見てきた一人としての感想です。ぶっちゃけコンスタンティノープルと縁を切る可能性より棄教する可能性のほうが高いと思います。

 

 いずれにせよ、今回の選出は、コンスタンティノープルが今後も方針や行動を変えることは一切ないと宣言したようなものであり、ロシア正教会との関係改善の可能性は一世代先までゼロということになるのでしょう。

 ギリシャ系以外の東方正教会もそろそろ考えを決める(コンスタンティノープルに服従するか、フル・コミュニオンを解除するか)時期かとも思いますが……。

 ただ、肝心のウクライナでは、実力者の“フィラレート名誉総主教”が、かつての自分の片腕で、コンスタンティノープル主導で「独立正教会」の首座に擁立された“エピファニー府主教”と対立し、これを排除しようとしているという報道が出るなど(“エピファニー府主教”がモスクワ総主教庁系のオヌフリー府主教座下に接近しようとしているという観測も出てきており、またぞろフェイクニュース合戦になるのではないでしょうか)、UOC-KP 及び UAOC と その他に再分裂の可能性もあります(そもそも統一できていないという点はともかく)。

 

キリスト教/ロシア正教会ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下が、元ドイツ大統領クリスティアン・ヴルフ氏と会見(2019年4月)ロシア駐箚ドイツ大使リューディガー・フライヘル・フォン・フリッチュ=ゼーハウゼン閣下が同席

 2019年4月9日、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下(ヒラリオン府主教 : His Eminence Metropolitan Hilarion of Volokolamsk, chairman of the Moscow Patriarchate’s Department for External Church Relations (DECR))は、元ドイツ大統領クリスティアン・ヴルフ氏(Christian Wulff)と会見しました。
 ロシア連邦駐箚ドイツ連邦共和国特命全権大使リューディガー・フライヘル・フォン・フリッチュ=ゼーハウゼン閣下(Rüdiger Freiherr von Fritsch-Seerhausen)が同席。

 会談では、イラリオン座下より、ドイツにおけるロシア正教会の発展、同教会とカトリック・プロテスタントの対話、コンスタンティノープルの行動によりモスクワ総主教庁系のウクライナ正教会が同国政府などに弾圧を受けていることなどの話題に出たようです。

 

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)DECR chairman meets with Germany’s ex-president | The Russian Orthodox Church
 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)DECR chairman meets with Germany’s ex-president / News / Patriarchate.ru

 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Председатель ОВЦС встретился с экс-президентом Германии / Новости / Патриархия.ru
 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Председатель ОВЦС встретился с экс-президентом Германии | Русская Православная Церковь

 (英語)Metropolitan Hilarion meets with Germany’s ex-president – Romfea News

 

Romfea.newsさんのツイート: "Metropolitan #Hilarion warmly welcomed the #German ex-president at the #DECR #romfeanews #Wulff https://t.co/pFD44i6Mjr"

 

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キリスト教/ブルガリア正教会のスタラ・ザゴラ府主教キプリアン座下が、「エルサレムの聖火」受け取り時に、教会法上合法でない“マケドニア正教会-オフリド大主教庁【MOC-OA】”の主教を同行させる予定の模様(2019年4月)

 ギリシャの正教会系メディア Romfea によりますと、キリスト教/東方正教会/ブルガリア正教会のスタラ・ザゴラ府主教キプリアン座下(His Eminence Metropolitan Cyprian of Stara Zagora)とブルガリア共和国首相ボイコ・メトディエフ・ボリソフ閣下(His Excellency Mr Boyko Metodiev Borisov)の会談において、今年の「エルサレムの聖火」の受け取り時に教会法上合法でない“マケドニア正教会-オフリド大主教庁【MOC-OA】”の主教を同行させる方針が決まったようです。
 ブルガリア正教会は、教会法上合法でない MOC-OA との協調姿勢を崩しておらず、 MOC-OA の主教は、ギリシャ共和国と北マケドニア共和国間の国名問題解決に伴い、いずれコンスタンティノープルは MOC-OA を独立正教会として認めるだろうというコメントをしています。

 「エルサレムの聖火」は、東方正教会のエルサレム総主教が「復活教会【聖墳墓教会】」で使用したものを持ち帰って各教会が礼拝に使用するものですが、教会法上合法でない MOC-OA に直接エルサレム総主教側から聖火が渡せるものなのか。直接渡した場合、セルビア正教会がエルサレム総主教庁とのフル・コミュニオンを解除する可能性もあります。

 

 (英語)A “schismatic” bishop of the “Macedonian” Church will attend the ceremony of the Holy Fire – Romfea News

 

Romfea.newsさんのツイート: "Along with the Bulgarian delegation, a Bishop of the so-called “Macedonian” Church will also go to #Jerusalem for the Holy Fire #romfeanews #BulgarianChurch #HolyFire https://t.co/Q0pA7nWZVF"

 

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キリスト教/ロシア正教会モスクワ総主教キリル聖下が、アルメニア使徒教会カトリコスのガレギン2世聖下と会見(2019年4月)

 2019年4月2日、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会の首座/モスクワ・全ロシア【全ルーシ】総主教キリル聖下(キリール総主教 : His Holiness Kirill, Patriarch of Moscow and all Russia【Rus’】)は総主教邸ダニロフ修道院にて、キリスト教/オリエント正教会/アルメニア使徒教会/全アルメニア人のカトリコス・最高総主教ガレギン2世聖下(His Holiness Karekin IIGaregin II】, Supreme Patriarch and Catholicos of All Armenians)と会見しました。
 ロシア正教会側より、モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下(ヒラリオン府主教 : His Eminence Metropolitan Hilarion of Volokolamsk, chairman of the Moscow Patriarchate’s Department for External Church Relations (DECR))が同席。
 アルメニア使徒教会からは、ロシア・新ナヒチェヴァン教区長イェズラス・ネルシシャン大主教座下(His Eminence Archbishop Yezras Nersisyan, Primate of the Armenian Diocese of Russia and New Nakhichevan)が同行したようです。

 会談では、両教会間関係に関する話題のほか、ロシア側から、ウクライナにおいてモスクワ総主教庁系のウクライナ正教会が(コンスタンティノープルのせいで)弾圧を受けていることや、「人権」や「信仰の自由」を掲げる西側諸国がそれをスルーしていることに対する驚きや(このあたりは単なるグチといえばグチですが)、3月8日に永眠したアルメニア使徒教会の第84代コンスタンティノープル総主教メスロブ2世ムタヒャン大主教座下(His Beatitude Archbishop Mesrob II Mutafyan, Armenian Patriarch of Constantinople : メスロプ2世ムタフィアン総主教)への弔意が表明されました。
 アルメニア側からは、ナゴルノ=カラバフ問題及び現在派生して発生している件について、ロシアの助力を要請する内容があったようです。

 

russianchurch(ロシア正教会モスクワ総主教庁公式チャンネル):
Состоялась встреча Святейшего Патриарха Кирилла с Патриархом и Католикосом всех армян Гарегином II – YouTube

 

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)The Primate of the Russian Orthodox Church meets with the Supreme Patriarch and Catholicos of All Armenians / News / Patriarchate.ru
 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)The Primate of the Russian Orthodox Church meets with the Supreme Patriarch and Catholicos of All Armenians | The Russian Orthodox Church

 (英語:アルメニア使徒教会エチミアジン母座公式サイト)The Armenian Church – Mother See of Holy Etchmiadzin | Meeting of the Catholicos of All Armenians and the Patriarch of Moscow and All Russia in Moscow

 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Состоялась встреча Предстоятеля Русской Православной Церкви с Верховным Патриархом и Католикосом всех армян / Новости / Патриархия.ru
 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Состоялась встреча Предстоятеля Русской Православной Церкви с Верховным Патриархом и Католикосом всех армян | Русская Православная Церковь

 (アルメニア語:アルメニア使徒教会 聖エチミアジン母座 公式サイト)The Armenian Church – Մայր Աթոռ Սուրբ Էջմիածին | Մոսկվայում տեղի ունեցավ Ամենայն Հայոց Կաթողիկոսի և Մոսկվայի և Համայն Ռուսիո Պատրիարքի հանդիպումը

 (英語)Patriarch of Moscow: Unity of Orthodoxy is disempowered – Romfea News

 (英語)Interfax-Religion: Karabakh settlement process cannot be one-way road – Catholicos of All Armenians
 (ロシア語)Интерфакс-Религия: Глава Армянской церкви заявил о важности шагов навстречу в решении проблемы Карабаха

 

Մոսկվայում տեղի ունեցավ Ամենայն Հայոց… – Մայր Աթոռ Սուրբ Էջմիածին/ Mother See of Holy Etchmiadzin | Facebook

 

Romfea.newsさんのツイート: "#Patriarch_Kirill voices his concern on the church #crisis in #Ukraine at the expense of the Ukrainian Church of Moscow Patriarchate #romfeanews https://t.co/qPFWGYv1Nh"

 

Romfea.news – Patriarch Kirill voices his concern on the… | Facebook

 

キリスト教/コンスタンティノープル管轄権下で一方的に総主教代理区の地位を廃止され大主教区としても解体されそうなことにより事実上の離脱を決定したとみられていた西欧ロシア正教会大主教区の司祭らが、コンスタンティノープルを訪問(2019年3月)色々な駆け引きの途中か

 2019年2月23日に臨時総会がおこなわれ、組織の維持のために、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルからの離脱を事実上決定したと思われていた西欧ロシア正教会大主教区ですが、今回、2019年3月29日に、同大主教区のグレートブリテン・アイルランド司祭長区の司祭らがコンスタンティノープルの全地総主教庁を訪問、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープル=新ローマ大主教・全地総主教バルソロメオス聖下(バーソロミュー1世世界総主教バルトロマイ1世ヴァルソロメオス1世 : His All-Holiness Bartholomew, Archbishop of Constantinople-New Rome and Ecumenical Patriarch)及びフランス府主教エマニュエル座下(His Eminence Metropolitan Emmanuel of France)と会談したようです。

 

 (フランス語:西欧ロシア正教会大主教区公式サイト)Archevêché des églises russes en Europe occidentale – Communiqué du Conseil de l’Archevêché du 29 mars 2019
 (英語:西欧ロシア正教会大主教区グレートブリテン・アイルランド司祭長区公式サイト)Communiqué of the Archdiocesan Council of 29 March 2019 | Deanery of Great Britain and Ireland

 

 ぶっちゃけていいますと、歴史的経緯から、グレートブリテン・アイルランド司祭長区がロシア正教会モスクワ総主教庁に付く(戻る)可能性は低いと思うので、同大主教区のうちの親コンスタンティノープル派とみていいのではないかと思います。
 今回、その親コンスタンティノープル派を筆頭に使節がおくられているのは、コンスタンティノープル管轄権下に残るための話し合いがおこなわれているとみていいでしょう。

 

 同大主教区はロシア正教会の管轄権下に移動し、移動したくない人々は離脱してコンスタンティノープルの小教区となるか、独立するか、と思っていましたが……。
 今回のこの動きで、コンスタンティノープル側に大主教区の維持を認めさせたうえで管轄権下に残り、ロシアに付きたい人々が出ていく、という逆のパターンになる可能性も出てきました。
 また、後者になる場合、コンスタンティノープルが、次の世代の大主教となる人物を大主教区の聖職者から選び主教に叙聖するということが必要になる可能性が高いと思われます。

※この次の世代の大主教~という話ですが、こういった小規模な、あるいは首座のみが主教というグループが特別な自治的権限を持って行動している場合、それを管轄権下にむかえているほうは新世代の主教を叙聖しないことによりグループを自然消滅させるような行動を取るケースがあります。東方の教会では新たな主教の叙聖には二名の主教が必要であり、同大主教区の首位大主教ジャン座下(イオアン大主教 : ハリオポリス大主教)一人では新しい主教を叙聖できないのです。よってこのままジャン座下が永眠した場合、同大主教区は主教以上の神品【聖職者】に可能な行動を取ることができなくなります。
 オリエント正教会のコプト正教会から首座しか主教がいなかった英国正教会【イギリス正教会】が離脱した一因はあるいはこれかもしれません(同教会は離脱後に独自に首座の補佐をする主教を叙聖し、さらに続いて次世代の首座となる人物を叙聖しています。彼らはオリエント正教会の主流からは教会法上合法な主教とは見なされません)。

 

 コンスタンティノープル側とのコンタクトが発表されたわけですが、本気でコンスタンティノープルに譲歩を迫って管轄権下に残るつもりなのか、あるいはモスクワとの交渉で有利な条件を勝ち取るための行動なのか、そのあたりははっきりしません。
 コンスタンティノープルに譲歩を迫って大主教区の維持ができればそれでもいいという人々は今回の動きを見守るでしょう。
 しかし、コンスタンティノープルの管轄権下にとどまること自体に否定的な人々は、すでに同大主教区の小教区を受け入れている在外ロシア正教会【ROCOR】などに早めに移動する可能性もあります。
 6月の総会でどうするかを決めるという話になっていましたが、いろいろとその前に決まってしまいそうではあります。