訃報(2021年4月7日):アヴロナ・シノドの首座/“アンジェロス府主教”が永眠(1950~2021)

 2021年4月7日、アヴロナ・シノド(Avlona Synod)の首座/“アンジェロス府主教”(アヴロナ・ヴィオティア府主教アンジェロス座下 : His Beatitude Metropolitan Angelos of Avlona and Viotia)が永眠したようです。
 1950年生まれ。

 アヴロナ・シノドは(正式名称らしきものがいろいろ表記されていてよくわかりませんが)、キリスト教/東方正教会/ギリシャ正教会から1935年に分離したギリシャ真正教会からさらに1995年に分離した教会から、2010年に成立した集団です。

 同教会は、真正教会国際連合(International Union of Genuine Orthodox Churches : IUGOC)に加盟しています。

 

 (英語)Avlona Synod USA | REPOSE OF MET. ANGELOS
 (英語)Repose of Metropolitan Angelos of Avlona – The Autonomous Orthodox Metropolia of North and South America and the British Isles

 

 永眠後、フル・コミュニオンの状態にあるロシア真正教会(TOCiRのほう : True Orthodox Church in Russia)の首座“セラフィム府主教”の臨席のもとで、“ケロウブ主教”が新たな首座に選出され、府主教に昇叙となったようです。

 (英語)Avlona Synod USA | ELECTION OF MET. CHERUBIM

訃報(2021年1月30日):在外ロシア正教会からの分派の一つ RusOC (D) の首位“ダマスキン府主教”が永眠(1956~2011)

 2021年1月30日、RusOC (D)の首位/“ダマスキン府主教”(モスクワ・ロシア全土府主教ダマスキン座下 : His Eminence Metropolitan DamasceneDmaskin】 of Moscow, First Hierarch of the Russian Orthodox Church【RusOC (D)】)が永眠したということです。
 1956年1月11日生まれの65歳。

 RusOC (D) は、ROCIE (A-D) という略称でも知られています。
 在外ロシア正教会から離脱(本人たちから見れば自分たちが正統)した亡命ロシア正教会(Russian Orthodox Church in Exile : ROCIE : ROCOR (V))という集団があり、ここからさらに分離した集団でロシア正教会(Russian Orthodox Church)を称する RusOC または ROCOR (V-A) または ROCIE (A) と呼ばれる集団があるのですが、そこからさらに分離したのが RusOC (D) または ROCIE (A-D) と呼ばれる集団です。(ROCOR (V-A-D))とは呼ばれないようです。
 また、RusOC (D) は一時期、ロシア正教自治教会(ROAC)という、これもまた、先行して在外ロシア正教会から離脱した勢力とコミュニオンの状態にあったようですが、すでに解除されているようです。

 永眠に伴い、RusOC (D) がどうなるかはわかりませんが、ペンザ主教ヴァシリー座下(His Grace Bishop Vasily of Penza)という人物が訃報記事の最後に発表者として名前があり、他の主教は存在するようです。
追記:
 やや年月が経過しましたが、どうやらその段階でも同教会には大主教1人と主教2人が(最低でも)存在するようで、後継者が擁立される可能性はあります(まだされていないように取れます)。また、大主教はペンザ・中央ロシア大主教ステファン座下(His Eminence Archbishop Stefan of Penza and Central Russian)となっていて、上記のペンザ主教ヴァシリー座下はどうなったのかはまったくわかりません。その他の二名は、ヴォスクレセンスク主教ウラジーミル座下(His Grace Bishop Vladimir of Voskresensk)、ベルゴロド主教ミハイル座下(His Grace Bishop Mikhail of Belgorod)で、他の主教も存在するのかどうかはわかりません。

 (ロシア語:RusOC (D) 公式ウェブサイト)Информационное сообщение о преставлении Первоиерарха Российской Православной церкви Высокопреосвященного митрополита Дамаскина | Российская Православная Церковь – официальный сайт
 (ロシア語)Дамаскин (Балабанов) (1955-2021) – «Ибо Я милости хочу, а не жертвы, и Боговедения более, нежели всесожжений» (Ос. 6:6) — LiveJournal

東方正教会大分裂:キリスト教/キプロス大主教クリソストモス2世座下がコンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】の首座の名を礼拝中に挙げる。同教会シノドの事前同意なし(2020年10月)

 2020年10月24日、キリスト教/東方正教会/キプロス正教会の首座/ノヴァ・ユスティニアナと全キプロスの大主教クリソストモス2世座下(His Beatitude Archbishop Chrysostomos II of Nova Justiniana and all Cyprus)は、礼拝において、コンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】の“エピファニー府主教”の名を挙げました。これは要するに独立正教会の首座として認めたということですが、同教会のシノドの事前同意はないようです。

 

 (英語)Archbishop of Cyprus commemorates Metropolitan Epifaniy of Kyiv for first time (upd) – Orthodox Times
 (英語)Archbishop of Cyprus commemorates head of Ukrainian schismatics without Synodal consent / OrthoChristian.Com
 (英語)Media: Primate of the Church of Cyprus commemorates Epiphany – UOJ – the Union of Orthodox Journalists
 (英語)UOC Spokesman: Cypriot hierarchs are outraged by the act of their Primate – UOJ – the Union of Orthodox Journalists

 

 なお、これにいたる間の話は長いのでとても語れませんが、近いところだと、東方正教会のアレクサンドリア総主教セオドロス2世聖下がキプロス共和国を訪問した際に、キプロス正教会側の府主教らが共同礼拝をおこなわないということがありました。
 これはその前の訪問時に、総主教が事前には礼拝でエピファニー府主教の名を挙げないと約束していたのに、実際には礼拝で名を挙げて(つまり大嘘をこいて)キプロス正教会側の顔に泥を塗ったことに対する措置だと見られています。

 このような経緯もあり、今回、ウクライナ正教会(モスクワ総主教庁系)は、キプロス正教会内部でキプロス大主教に対して反発が起こっているとしています。
 これがただの希望的観測なのか、事実を確認しているのか、確認しているとして全体のどれくらいの割合なのかはわかりません。
 しかし2018年から見せられてきた、ギリシャ正教というのが「ギリシャ人はしいというえ」でしかなく、古代からの正しい教えなどどうでもよいようなルール無視ばかりという現実を考えると、キプロスの聖職者もバルバロイどものことなどどうでもよいというのが本音でしょう。

関連:
 キリスト教/キプロス大主教クリソストモス2世座下が、“北キプロス・ロシア正教会”を批判(2019年8月)在外ロシア正教会と、在外ロシア正教会から分離した(通称)“アガファンゲル・シノド”の区別がついていないのでは……

 アレクサンドリアとの問題もギリシャ人同士のメンツの問題であって、そこはそれギリシャ人同士にしかよくわからない手打ちがなされて終わりではないかと思います。

 

 また、 UOJ の記事は、 “ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】”首座/“フィラレート総主教”(キーウ・ルーシ=ウクライナ全土総主教フィラレート聖下 : His Holiness Patriarch Filaret of Kyiv and All Rus’-Ukraine)がコンスタンティノープルと OCU を批判(というかおちょくった)ために、コンスタンティノープルが力を見せつける必要が出てきたのではないかと分析しています。

関連:
 キリスト教/“ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】”の“フィラレート総主教”が、コンスタンティノープルとそのトモスを批判(2020年10月)
 インタビュー動画:キリスト教/“ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】”の“フィラレート総主教”への、新型コロナウイルス感染症【COVID-19】からの回復以降初のロング・インタビュー映像(2020年10月)

 真偽はわかりません。

 しかし、ギリシャ人が自分たち以外に興味がなく、その割に自分たちに逆らうものを許さないというのは、東方正教会において確実にいえる真実です(教会だけなら良いのですが……)ので、事態もまたそれに沿って進むだけでしょう。

 ロシア正教会モスクワ総主教庁の聖シノドがキプロス大主教とのコミュニオンを解除すると思いますが、それのみに関わらず政治・外交への影響も出るかもしれません。
 キプロス紛争への出るかもしれません。ロシアにとってキプロス共和国にもう価値は無く(もうロシアの兵器も購入しないでしょう)、ロシアが北キプロス共和国を支援し始めても不思議でもない状況となりました。……その発端がこんな出来事では……。

 

 (英語:ロシア真正教会 西欧教区 公式サイト)World "Orthodoxy's" Soap Opera of the “Orthodox Church of Ukraine" (OCU) Continues… – True Orthodox Diocese of Western Europe

 東方正教会系統の教会のうち、主流ではないロシア真正教会のサイトからおちょくられています。
 「 “OCU” のソープ・オペラは続く……」。
 おっしゃる通りとしか……。

 

続報:
 キリスト教/ウクライナ正教会(モスクワ総主教庁系)のボリスポリ・ブロヴァリー府主教アントニー座下がキプロス大主教の行動についてコメント(2020年10月)
 キリスト教/キプロス正教会のレメソス府主教、キッコス・ティリリア府主教、タマソス府主教、アマサス主教が、キプロス大主教とコンスタンティノープルを批判する声明(2020年10月)
 東方正教会大分裂:キリスト教/ロシア正教会の聖シノドがキプロス大主教クリソストモス2世座下とのユーカリスティック・コミュニオンを解除(2020年11月)

 

キリスト教/東方正教会系統の主流でない勢力、“アンドロニク派”がセルビア真正教会【STOC】を訪問(2020年10月)

 2020年10月9日、キリスト教/東方正教会系統の主流でない教会、在外ロシア正教会から離脱した勢力のうちアンドロニク派の“アンドロニク大主教”(Archbishop of New York and North America Andronik)らが、セルビア真正教会(STOC : Serbian True Orthodox Church)を訪問、 STOC の首座“アカキイェ主教”(His Grace Bishop Akakije)らが出迎えたようです。

 両者は9月18日にユーカリスティック・コミュニオンの状態に入っています。

 

 (英語:アンドロニク派のカナダの教区の公式サイト)Serbian True Orthodox Church Welcomes The Russian Orthodox Church Abroad

ROCA North America:
Приветсвенное Слово Епископа Акакия Делегации РПЦЗ/ Bishop Akakije Greets the Delegation of the ROCA – YouTube

 

キリスト教/東方正教会系統の主流でない勢力、セルビア真正教会【STOC】と、在外ロシア正教会から離脱した勢力からさらに離脱した勢力がユーカリスティック・コミュニオンの状態に入る(2020年9月)

 2020年9月18日、キリスト教/東方正教会系統の主流でない教会のうち、トゥルー・オーソドキシーと呼ばれる保守的な分類の勢力に属する、セルビア真正教会(STOC : Serbian True Orthodox Church)と、在外ロシア正教会から離脱した勢力(現在は自分たちを正統とし同じく「在外ロシア正教会」を称し“アガファンゲル・シノド”などと他からは呼ばれる)から離脱した勢力(“アンドロニク大主教”と呼ばれる人物が主導しているので以後記事にするときはアンドロニク派と呼んでおきます)が、ユーカリスティック・コミュニオンの状態に入ったようです。

 

 (英語:アンドロニク派のカナダの教区の公式サイト)ANNOUNCEMENT OF THE ESTABLISHMENT OF EUCHARISTIC COMMUNION BETWEEN STOC AND ROCA
 (セルビア語)СРБИН ИСТИНСКИ ПРАВОСЛАВАН: Обавештење о успостављању евхаристијског општења између СИПЦ и РПЦЗ

 これに関して、ここ数年、同じくトゥルー・オーソドキシーに分類されるも、この両者を批判し対立を深めていたロシア真正教会(RTOC : Russian True Orthodox Church)の公式サイトの一つが激しく批判しつつ取り上げています。

 (英語:ロシア真正教会 西欧教区 公式サイト)A New "Church Conglomeration" is Announced! "You speak an infinite deal of nothing.” ― William Shakespeare, "The Merchant of Venice". – True Orthodox Diocese of Western Europe

 

 さらに、ロシア真正教会は、同じくトゥルー・オーソドキシーおよびオールド・カレンダリスト【Old Calendarist】【旧暦主義者】に分類される、 GOC-K (Church of the Genuine Orthodox Christians of Greece : ギリシャ真正教会 : カリニコス・シノド : Kallinikos-Synod)の公式サイトの新規記事で、セルビア真正教会の首座“アカキイェ主教”(His Grace Bishop Akakije)が司祭扱いで表記されていることも伝えています。

 (英語:ロシア真正教会 西欧教区 公式サイト)Synod of GOC-Kallinikos Calls Bishop (But Here They Address Him as "Father") to Appear as "Accused" – True Orthodox Diocese of Western Europe

 カリニコス・シノドとセルビア真正教会は同じグループとみなされていますが、過去に意見相違があり、セルビア真正教会側は「セルビアは我々の管轄権下にあり、ギリシャの教会がどうこういってくるのは、“ファナリオット”(コンスタンティノープル原理主義者=ギリシャ人がしいというえを奉じる人々)だ」というようなどこかで聞いたような主張と対立の仕方をしていました。

 今回のアカキイェ主教によるギリシャ訪問は、この対立の解決のためのものかと思われますが、新型コロナウイルス感染症【COVID-19】対策のために中止となったようです。
 カリニコス・シノド側は、その(自分たちが主教と認めていたはずの)主教に対して司祭と呼んでいるということになりますが、自分たちギリシャ人に逆らった聖職者を一方的にランクダウンしたか、アカキイェ主教がギリシャ人ではないのでどうでもいいから記述が適当になっているか、どちらかでしょう。

 

 「教え」を理由に離脱したはずのトゥルー・オーソドキシー系統の教会の中には、成立当時よりさらにコンスタンティノープルが世俗化かつローマ接近を図っているにも関わらず、今回の東方正教会大分裂(コンスタンティノープル対モスクワ)でコンスタンティノープル支持に回っているところもあります。

 

続報:
 キリスト教/東方正教会系統の主流でない勢力、“アンドロニク派”がセルビア真正教会【STOC】を訪問(2020年10月)