キリスト教/東方正教会/教会法上合法でない“マケドニア正教会-オフリド大主教庁【MOC-OA】”が、国名も教会名も「マケドニア」を維持すべきと主張(2018年10月)

 ギリシャ系正教会メディア「ΡΟΜΦΑΙΑ(Romfea.gr)」が MIA (マケドニアのニュース)の報道を引いて記事にしているところによりますと、キリスト教/東方正教会の教会法上合法でない“マケドニア正教会-オフリド大主教庁【MOC-OA】”(以下、MOC-OA)が、国名も教会名も「マケドニア」を維持すべきと主張しているようです。

※MIAのニュースサイトを見てみましたが、英語版・マケドニア語版とも該当記事は見つかりません。

 

 (ギリシャ語)Σχισματική εκκλησία Σκοπίων: «Το όνομα της εκκλησίας και της χώρας να παραμείνει Μακεδονία»

 

 マケドニア共和国(マケドニア旧ユーゴスラビア共和国 : FYROM)は、ユーゴスラビア崩壊後、隣国ギリシャによって国名への「マケドニア」使用が反対され、欧州連合【EU】や北大西洋条約機構【NATO】への加盟も事実上拒否されてきましたが、現在の両国政権により、「国名を北マケドニア共和国に変える」ことで合意がなされました(どちらも厳しい反対意見があります)。

 そんな中で先月末、マケドニア共和国で国民投票がおこなわれましたが、投票率は事前に決めていた目標を下回りました。また、そもそも投票結果は行政府を束縛するものではありません。議会での賛成が必要でした。
 マケドニアの政権はまったくあきらめておらず、NATOやその拡大を目指すアメリカも支持していますが、一方、ロシアは反対している、という、いつもの状況です。

 それはともかくとして、教会の話ですが、MOC-OAは、仲の良いブルガリア正教会と教会法上合法化に向けた取り組みを開始しています(2017年11月報道よりたびたび話が出ます)。
 マケドニア共和国の領域は、セルビア正教会の管轄で、同教会が正教オフリド大主教庁を設置していますが、MOC-OAと同国政府はこれを弾圧してきました。
 MOC-OAの教会法上合法化はセルビア正教会には容認できるものではなく、またロシア正教会もセルビア正教会に同調しています(とはいえ両教会がすべてのことにおいて共同するわけではないことには注意が必要です)。
 そして、コンスタンティノープルの全地総主教庁も、「マケドニアやその派生語を含む名称」は一切認めないとしており、仮に名称を「北マケドニア正教会」としても、全地総主教庁の承認は得られない状況にあります。これはギリシャ国内のマケドニア地方が全地総主教庁の管轄下にあることが理由なのでしょう(ギリシャ国内の管轄権はギリシャ正教会に預けられているともいわれますが、これまでの状況をみるとギリシャ正教会は無視されているように思えます)。

 唯一の道は、教会名に「マケドニアやその派生語を含む名称」を一切入れないことで全地総主教庁の合意を得ることでしょうが、これもまた今回の声明が本気であれば、選択肢に入っていないようです(とはいえ、これまでもいろいろと報道が出ているので、フェイクニュースかもしれません)。

 MOC-OAのスタンスは興味深いですが、もし彼らが現在の立場を維持するならば、コンスタンティノープルの全地総主教庁とフル・コミュニオンに入ることはありえず、一方でロシア正教会モスクワ総主教庁とフル・コミュニオンに入ることもありえなさそうです。

 

キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教バルソロメオス聖下とギリシャ正教会首座アテネ大主教イエロニモス2世座下の会談が突如キャンセルとのこと(2018年10月)

 ギリシャ系正教会メディア「ΡΟΜΦΑΙΑ(Romfea.gr)」によりますと、2018年10月4日に予定されていたキリスト教/東方正教会首席/コンスタンティノープル=新ローマ大主教・全地総主教バルソロメオス聖下(バーソロミュー1世世界総主教バルトロマイ1世ヴァルソロメオス1世 : His All-Holiness Bartholomew, Archbishop of Constantinople-New Rome and Ecumenical Patriarch)とキリスト教/東方正教会/ギリシャ正教会首座/アテネ・全ギリシャ大主教イエロニモス2世座下(His Beatitude Hieronymos II, Archbishop of Athens and All Greece and Primate of the Autocephalous Orthodox Church of Greece)の会談が突如キャンセルされ、理由も開示されていないそうです。

 

 (ギリシャ語)ΑΠΟΚΛΕΙΣΤΙΚΟ: Ακυρώνεται η συνάντηση Ιερωνύμου – Βαρθολομαίου

 

 とりあえずですが、ウクライナを巡るロシア正教会との問題とは関係なさそうです。

 

キリスト教/セルビア総主教イリネイ聖下がアトス山を訪問(2018年10月)

 2018年10月1日、キリスト教/東方正教会/セルビア正教会の首座/セルビア総主教イリネイ聖下(ペーチ大主教 : ベオグラード・カルロヴツィ府主教 : His Holiness Irinej, Serbian Patriarch, Archbishop of Peć, Metropolitan of Belgrade and Karlovci)は、ギリシャ共和国内の東方正教会の聖地、アトス山を訪問しました。
 ヒランダル修道院の修道院長メトディイェ掌院(Archimandrite Metodije, abbot of the Chilandar Monastery)らと会見したようです。

 

Телевизија Храм:
ПАТРИЈАРХ ИРИНЕЈ НА СВЕТОЈ ГОРИ: Посетио Кареју а потом и Манастир Хиландар – YouTube

 

Телевизија Храм:
Беседа Патријарха Иринеја на трпези љубави у манастиру Хиландар – YouTube

 

Телевизија Храм:
Патријарх Иринеј богослужио у Хиландару – YouTube

 

 (英語:セルビア正教会総主教庁公式サイト)The Serbian Patriarch in Mount Athos | Serbian Orthodox Church [Official web site]

 (英語:ルーマニア正教会通信)Serbian Patriarch Irinej visits Holy Mount Athos – Basilica.ro

 

シスマ2018:キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教庁クリストポリス主教マカリオス座下が、現在“キエフ総主教”を称するフィラレート聖下が1990年にロシア正教会の首座になれなかったのは「ウクライナ人だったから」と発言していた模様(2018年9月)ロシア正教会系メディアは選出されたアレクシー2世聖下はドイツ人とスウェーデン人の血を引くエストニア人であると(微妙な)反論

【シスマ2018~】 ウクライナへの独立正教会設置を巡るコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立とそれに端を発した出来事の記事一覧

 

 先月、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルの全地総主教庁のクリストポリス主教マカリオス座下(His Grace Bishop Makarios of Christoupolis)が、1990年のロシア正教会の首座選出において、現在“キエフ総主教”を称しているフィラレート聖下が選出されなかったのは「ウクライナ人だから」と発言していたようです。

 ロシア正教会系メディアは、選出されたモスクワ総主教アレクシー2世聖下もまたドイツ人とスウェーデン人の血を引くエストニア人であり、ロシア人ではないとしています(もっともこれは、ウクライナ人だから排除されたという主張への反論にするには微妙でもありますが)。

 

 (英語)Constantinople hierarch fuels nationalistic enmity, claims Philaret was not chosen as Russian patriarch because of Ukrainian origin / OrthoChristian.Com

 

 いずれにせよ、全地総主教庁はソ連崩壊後にロシア正教会の社会的地位を大幅に躍進させた故アレクシー2世の選出まで否定的に扱い始めました。
 なんといいますか……そろそろ分裂するのも仕方ないねという状況が完全に整いつつあるような気がします。

 

追記:
 なお、マカリオス座下は後に(ウクライナのメディアのサイトに掲載された)この発言記事は自分の承認を経たものでもないとしています(1週間もたってからギリシャ系正教会メディアで情報が出る有様ですが)。

 (ギリシャ語)Ο Χριστουπόλεως Μακάριος απαντά στον Βολοκολάμσκ Ιλαρίωνα

 

キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教バルソロメオス聖下と、セルビア総主教イリネイ聖下が共同礼拝(2018年9月)

 すでに会談の件だけお伝えしましたが、2018年9月28日~9月30日の日程で、キリスト教/東方正教会/セルビア正教会の首座/セルビア総主教イリネイ聖下(ペーチ大主教 : ベオグラード・カルロヴツィ府主教 : His Holiness Irinej, Serbian Patriarch, Archbishop of Peć, Metropolitan of Belgrade and Karlovci)が、ギリシャ共和国マケドニア地方のテッサロニキを訪問しています。
 同教会のザグレブ=リュブリャナ府主教ポルフィリイェ座下(His Eminence Metropolitan Porfirije of Zagreb-Ljubljana)が同行。
 ネアポリス・スタウロポリス府主教バルナバス座下(His Eminence Metropolitan Barnabas of Neapolis and Stavroupolis)が出迎え。

 キリスト教/東方正教会首席/コンスタンティノープル=新ローマ大主教・全地総主教バルソロメオス聖下(バーソロミュー1世世界総主教バルトロマイ1世ヴァルソロメオス1世 : His All-Holiness Bartholomew, Archbishop of Constantinople-New Rome and Ecumenical Patriarch)と各地を訪問したほか、会談、第一次世界大戦戦死者の慰霊、共同礼拝などがおこなわれました。

 

Телевизија Храм:
Патријарх Иринеј: "Врло је важно да сачувамо јединство нас православних народа" – YouTube

 

Телевизија Храм:
Активности Патријарха Иринеја и Патријарха Вартоломеја у Солуну – YouTube

 

Телевизија Храм:
Патријарх Вартоломеј и Патријарх Иринеј на Зејтинлику посадили дрво маслине као симбол мира – YouTube

 

 (英語:セルビア正教会総主教庁公式サイト)A Centenary Anniversary of the End of the First World War Marked | Serbian Orthodox Church [Official web site]
 (英語:セルビア正教会総主教庁公式サイト)Patriarchal Liturgy in honor of the hundredth anniversary of the breakthrough of the Thessalonica front | Serbian Orthodox Church [Official web site]

 (セルビア語:セルビア正教会モンテネグロ・プリモルスカ府主教庁公式サイト)Патријарх Иринеј и Патријарх Вартоломеј у Солуну служили Свету архијерејску литургију | Православна Митрополија црногорско-приморска (Званични сајт)

 (英語:ルーマニア正教会通信)Ecumenical Patriarch Bartholomew, Serbian Patriarch Irinej plant olive tree in Thessaloniki to send message of peace – Basilica.ro