キリスト教/コンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】首座“エピファニー府主教”「フィラレート名誉総主教は OCU の主教の一人」(2020年1月)

 キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】の首座“エピファニー府主教”は、OCU から離脱し、独自に主教に選出・叙聖をおこなった“ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】”の“フィラレート総主教”(キーウ・全ルーシ=ウクライナ総主教フィラレート聖下 : His Holiness Patriarch Filaret of Kyiv and All Rus’-Ukraine)について、「“フィラレート名誉総主教”は OCU の主教の一人」「単に孤立しているだけ」「 UOC-KP はすでに存在していないので、それについて話す必要はない」と述べたようです。

 

 (ウクライナ語)Почесний патріарх Філарет перебуває в самоізоляції – митрополит ПЦУ Епіфаній

 (英語)Epiphany is still convinced that Filaret is OCU member – UOJ – the Union of Orthodox Journalists

 

 無効で反教会法といっていたはずが、「存在しないものについて話す必要はない」に変わりました。でも、 UOC-KP がさらに何かやらかせばまた違うことを言い始めるでしょう。

  UOJ の記事(上記の英語記事)は、少し前に、コンスタンティノープルのバルソロメオス総主教が、ロシア正教会をけなすためにフィラレート総主教を持ち上げた件(そんなに褒めるなら最初からフィラレート総主教をトップに認めてあげればウクライナ内部はもう少し落ち着いたんじゃないの?)の記事へリンクし、それゆえにコンスタンティノープルの下部組織の長でしかないエピファニー府主教はフィラレート総主教を攻撃できなくなっていると示唆しているかのようです。

 

首座全体会合を呼びかけたキリスト教/東方正教会/エルサレム総主教セオフィロス3世聖下の真意はいまだ不明。ギリシャの正教会系メディアには苛立ちも(2020年1月)

 キリスト教/東方正教会/エルサレム・全パレスチナ総主教セオフィロス3世聖下(His Beatitude Theophilos III, Patriarch of Jerusalem and All Palestine)が東方正教会首座全体会合を呼びかけた件ですが、聖下の真意はいまだ不明です。

 これについて、ギリシャの正教会系メディアのひとつ、 ΟΡΘΟΔΟΞΙΑ INFO(orthodoxia.info)が、エルサレム総主教から、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープル=新ローマ大主教・全地総主教バルソロメオス聖下(バーソロミュー1世世界総主教バルトロマイ1世ヴァルソロメオス1世 : His All-Holiness Bartholomew, Archbishop of Constantinople-New Rome and Ecumenical Patriarch)に送られた英文の手紙を入手して公開しています。

 

 (ギリシャ語)ΑΠΟΚΛΕΙΣΤΙΚΟ: Η επιστολή Ιεροσολύμων για την σύναξη Προκαθημένων στην Ιορδανία – ΟΡΘΟΔΟΞΙΑ INFO

 

 この手紙については、すでに各方面で話題になっているのですが、このほど同じくギリシャの正教会系メディアのひとつ romfea.gr(英語版は Orthodox Times に名称を変更)がこれを批判的に取り上げています

 

 (英語)The letter of the Patriarch of Jerusalem for the synaxis of Orthodox primates in Jordan – Orthodox Times

 

 この記事の末尾、

It is noteworthy for historical reasons that the Patriarch of Jerusalem, who cited unity and love to justify his intervention in the powers of the Ecumenical Throne, has ceased communion with the Patriarch of Antioch over the last six years due to a disagreement over jurisdiction in Qatar where only one parish exists!

 エルサレム総主教庁は、カタールの大主教庁設置の件で、アンティオキア総主教庁と相互にコミュニオンを解除していますが、これを取り上げ、
 「たった一つの小教区で六年もアンティオキアとコミュニオンを停止しておいて、なにが一致と愛だ!」

 ──と、この記事を書いた人物が吐き捨てているのが目に見えるようです。

 しかしこれはブーメランで、そのたった一つの小教区をめぐるエルサレムとアンティオキアの間の調停を六年間おこなえなかったコンスタンティノープルが、ここまで乱れた東方正教会全体を立て直すのは不可能というツッコミが来るでしょう。

※しかも、そのエルサレムとアンティオキアの対立は、解決するかもしれない可能性が出てきています。
 キリスト教/東方正教会/アンティオキア総主教ヨウハンナ10世聖下が、エルサレム総主教の呼びかけによる東方正教会首座会合に関するメッセージを届けに来たフリストフォロス大主教座下と会見(2019年12月)
 個人的にはうまくいかないと思っていますが……。

 

 他にもこの記事には、

the Chief Secretary of the Holy Synod, Archbishop Aristarchos of Constantina, said that he could not make further statements without the blessing of his Patriarch.

 エルサレム総主教庁の聖シノドの事務を統括するコンスタンティナ大主教アリスタルコス座下(Geronda Secretary-General Most Reverend Archbishop Aristarchos of Constantina)が、「総主教の祝福がないとこれ以上は話せないのだ」と人を食ったようなことを言っていることにも言及されています。

 

 それにしても、エルサレム総主教庁の一連の動きは不可解です。

 セオフィロス3世総主教がどういう人物かといいますと、(もちろん会ったこともないですけど)、「東方正教会の高位聖職者で一番発言が軽い」「親アメリカ派」というのが、シスマ2018の前での定評と考えていいでしょう(真面目な方面ではそんなことは言われてなかったかもしれませんけど)。

 キリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁の管轄権下で高度な自治的権限を有するウクライナ正教会の首座/キエフ・全ウクライナ府主教オヌフリー座下(His Beatitude Metropolitan Onufry of Kiev and All Ukraine)について、総主教は「オヌフリー府主教は神がこの難局を乗り越えるために選んだ人物」ととてつもない持ち上げようをしましたが、ロシア側からはまったく発言を信用されておらず、ロシア正教会によるコンスタンティノープルとのコミュニオン解除時には、「エルサレムがコンスタンティノープルに追随するならエルサレムともコミュニオンを解除だ!」との発言が出る始末でした。

 要するに、コンスタンティノープル側、モスクワ側、双方ともエルサレムはコンスタンティノープルに追随すると思い込んでいたわけですが、当のエルサレム総主教はかたくなにコンスタンティノープル支持を拒否し続けています。

 挙句の果てに、ウクライナ問題解決のための首座会合の招集という、(上記記事中にあるように用語の問題はあるにせよ)コンスタンティノープルの権威に挑戦する(※コンスタンティノープル派の意見)かのような行動に出たわけで、何が目的なのか、東方正教会全体が首をひねっている状態です。

 

キリスト教/コンスタンティノープル/アメリカ合衆国アメリカ・カルパト=ロシア正教教区【ACROD】の小教区ひとつが、在外ロシア正教会【ROCOR】に移動した模様(2019年12月)

 2019年12月30日、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルの管轄権下である程度自治的な権限を有するアメリカ合衆国アメリカ・カルパト=ロシア正教教区(American Carpatho-Russian Orthodox Diocese of the U.S.A. : ACROD)のフロリダ州/ハリウッドの聖堂の小教区が、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会の管轄権下で自主的に行動している在外ロシア正教会【ROCOR】に移動した模様です。

 

 (英語:在外ロシア正教会 米国東部 公式サイト)Hollywood, FL: Three Hierarchs Church transfers to ROCOR, Altar to be Consecrated | Eastern American Diocese of the Russian Orthodox Church Abroad

Eastern American Diocese… – Eastern American Diocese (ROCOR) | Facebook

 

 2020年1月3日に、マイアミ州周辺から在外ロシア正教会の神品(聖職者)が訪問、宝座の成聖などをおこなうようです。

 

追加リンク:

 (英語)Constantinople parish in Florida moves to ROCOR / OrthoChristian.Com

 

キリスト教/東方正教会/アンティオキア総主教ヨウハンナ10世聖下が、エルサレム総主教の呼びかけによる東方正教会首座会合に関するメッセージを届けに来たフリストフォロス大主教座下と会見(2019年12月)

 2019年12月28日、キリスト教/東方正教会/アンティオキア・東方全土総主教ヨウハンナ10世聖下(His Beatitude Patriarch John X of Antioch and All the East)は、キリスト教/東方正教会/エルサレム総主教庁のキリアクーポリ大主教フリストフォロス座下(His Eminence【The Most Reverend】 Archbishop Christophoros of Kyriakoupolis)と会見しました。

※なお、アンティオキア総主教庁公式サイトなどでは、アンマン府主教【Metropolitan of Amman】となっていますが、ヨルダンのアンマンでの役割もありますが、キリアクーポリ大主教なのではないかと思います(当方が人違いをしていなければ)。

 

 フリストフォロス座下は、キリスト教/東方正教会/エルサレム・全パレスチナ総主教セオフィロス3世聖下(His Beatitude Theophilos III, Patriarch of Jerusalem and All Palestine)が呼びかけた東方正教会首座全体会合に関するメッセージを届けたようで、ヨウハンナ10世聖下はおそらく参加するでしょう。

 

 (英語:東方正教会アンティオキア総主教庁公式サイト)His Beatitude Patriarch John X received His Eminence Christophoros, the Metropolitan of Amman delegated by His Beatitude Patriarch Theophilus III, – Greek Orthodox Patriarchate of Antioch and All the East

(English translation below – Traduction… – Antioch Patriarchate | Facebook

 

 一方で、エルサレム総主教庁とアンティオキア総主教庁は、エルサレム側のカタール大主教庁設置の結果、相互にフル・コミュニオンを解除したままです。

 今回のニュースを報じているロシアの正教会系メディア「ORTHODOX CHRISTIANITY(OrthoChristian.Com)」によりますと、

 (英語)Patriarch of Jerusalem invites Patriarch of Antioch to Synaxis of Primates in Jordan / OrthoChristian.Com

At present, Pat. John does not commemorate Pat. Theophilos in the Divine services, though Pat. Theophilos commemorates Pat. John.

 現在、ヨウハンナ10世聖下はセオフィロス3世聖下の名前を礼拝で挙げていませんが、セオフィロス3世聖下はヨウハンナ10世聖下の名を挙げているようです。エルサレム側が歩み寄るつもりなのか、あるいはそう見せかけているだけなのか。
 セオフィロス3世聖下の首座全体会合開催の呼びかけの目的も、表面上は「ウクライナ問題」の解決ですが解決するわけがないのであって、いったい何が目的なのか。
 無理に予想しようとして出てくるのは、「これだけやってもダメでした」という言い訳作りか、コンスタンティノープルを引きずりおろして自らが首位に立つことくらいですが、どちらも現実味を感じさせないところです。
 とりあえず集まったけれど、何も良い知恵は出ず、問題は先送りというオチになるのでは……。

 

キリスト教/“ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】”が新たに三人の主教を選出(2019年12月)コンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】は「無効で反教会法」と批判

 2019年12月27日、“ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】”は、“フィラレート総主教”(キーウ・全ルーシ=ウクライナ総主教フィラレート聖下 : His Holiness Patriarch Filaret of Kyiv and All Rus’-Ukraine)臨席のもと、他五名の府主教・主教らが出席する主教協議会を開きました。
 決定項目のうちに、三人の主教が新たに選出されるというものが含まれています。

 これに対し、コンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】は、「無効で反教会法」と批判しています。

※フィラレート総主教は、反 OCU の活動を続ける現在でも、 OCU の名誉総主教であり、もちろん主教の一人です。

 

 (ウクライナ語: UOC-KP 公式サイト)Відбувся Архієрейський собор Української Православної Церкви Київського Патріархату – Українська Православна Церква Київський Патріархат

27 грудня 2019 року у Київській… – УПЦ Київський Патріархат | Facebook

 

 (ウクライナ語: OCU サイト)ПЦУ | Щодо антиканонічних дій Почесного Патріарха Філарета і його оточення – PCU

 (英語)OCU: Ordinations of Filaret are void and anti-canonical – UOJ – the Union of Orthodox Journalists

 

  OCU の主張は彼らが教会法上合法な存在だとすれば筋が通らないわけではないものの、 OCU の教会法上合法な主教はフィラレート総主教だけじゃないのかという根本的な疑問が解決されていない状況では、失笑する元気も出ません。ロシア系の UOJ もツッコミを入れる気もないようです(何回も書いてて疲れたんでしょう)。
 東方正教会の教会法は、この世界にあるもののうち、この二年で価値が大暴落したもののひとつですが、まだまだ滑り落ちる気配が濃厚です。

 

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