キリスト教/ウクライナ正教会(モスクワ総主教庁)のザポロージエ・メリトポリ府主教ルカ座下が、聖地アトス山の修道士らに、アルホントニス氏(コンスタンティノープルのバルソロメオス総主教のこと)を拒否するよう要請する公開のテレグラム(2019年8月)

 (ウクライナ語)Telegram: Contact @Lekarzp

 (英語)Metropolitan Luke publishes an open letter to the monastics of Athos – UOJ – the Union of Orthodox Journalists

 

 ロシア語で書いても向こうは読めない人が多いんじゃないかと思いますが……。

 キリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁の管轄権下で高度な自治的権限を有するウクライナ正教会のザポロージエ・メリトポリ府主教ルカ座下(His Eminence Metropolitan Luke of Zaporizhia and Melitopol)が、ギリシャ共和国のアトス山の修道士たちに向けたテレグラムを公開しています。

※この方も徐々にこの世界で真に言論の自由を謳歌する人々の仲間入りをしてきています。

 それによりますと、“総主教と呼ばれている”バルソロメオスなる「神を裏切った人物」のおかげでウクライナ正教会は血と涙を流している、この人物が2019年10月19日にアトス山訪問を予定しているので(要は)「帰れ!」といってくれというようなそんな内容です。

 文章の後半には、

господин Архондонис

アルホントニス氏

 と、姓表記で言及している例もあり、すでにウクライナ正教会はトルコの総主教として言及したこともありますが、そろそろアルホントニス氏が定着していくのではないかという気がします。

 また、ルカ座下は、“アルホントニス氏”に関して、教会を攻撃してくるナショナリストでさえ教会の一員だが、彼や彼と同じような先達は人類の敵としています。
 その先達には、ネストリウス派を形成したネストリウス(Nestorius)や、単意論のセルギオス1世Sergius I【Sergios I】)、ローマ・カトリック教会との合同を目指して廃位されたイオアニス9世・ベッコスJohn XI Bekkos)、そして近代のメレティオス4世アシナゴラスといった、歴代のコンスタンティノープル大主教や総主教が挙げられています(ネストリウスを除けば99.999%以上の日本人は聞いたこともないでしょう)。

 

 さて、上記の話とは別ですが。
 もはや世俗化を超えて世俗の政治団体となっているコンスタンティノープル(彼らの神学? コンスタンティノープルの命令を聞け! 要はそれだけです)、しかしアトス山の修道士は逆らえないのではないか、という指摘がロシア側の人々から出ています。
 なんでも追い出されたら食っていけないからだとか。

 ……いったい、聖地の修道士とはなんなのか。

 かつてオウム真理教の信者を批判して、「世間で人と面倒な付き合いをしつつ労働していくことを嫌い、劣悪な環境下での修行へ逃げた」といったような言葉が出たことがありますが……。

 昨年から続くシスマは、東方正教会、キリスト教、伝統宗教にはもはやなんの価値もないのではないかという不安を呼び起こすもので(いや個人的には不安もなにもないですけど)、これがどう着地するのかは非常に興味深いところです。

 

キリスト教/ギリシャ正教会が、コンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】を承認するかどうかを議論する模様(2019年8月)

 ギリシャの正教会系メディア Romfea によりますと、2019年8月26日~8月28日におこなわれるキリスト教/東方正教会/ギリシャ正教会の常任聖シノドで、コンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】を独立正教会として承認するかどうかが議論されるという話です(同様の話はこれまでも出ては消えてましたが)。

 

 (英語)The Church of Greece decides on Ukraine – Romfea News

 

 今回決まるのかどうかはわかりませんが、いずれにせよ長期的にコンスタンティノープルに逆らえるギリシャ人系教会はないだろうというのが主な見方ですし、まして管轄権とギリシャ共和国憲法が原因でコンスタンティノープルに“浸食”されているギリシャ正教会が一番最初になるだろうというのもほぼ共通の見方です。

 ギリシャ正教会が承認を決定した場合、ロシア正教会モスクワ総主教庁の聖シノドはギリシャ正教会とフル・コミュニオンの解除を決議するほかなく(モスクワ総主教庁は積極的にしたくはないでしょうが、モスクワ総主教庁系ウクライナ正教会が我慢する可能性は低い)、ギリシャ正教とロシア正教の分離、そして東方正教会の崩壊へとつながっていきます。
 皮肉なことにギリシャ正教とロシア正教の分離を最後に“認定”するのはローマ・カトリック教会で、彼らがコンスタンティノープルとモスクワを完全に別に扱い始めれば、その二つはもう一つの教えを奉じていないとみなされることになります。

 

追記:
 (速報気味の情報ですが)キリスト教/ギリシャ正教会の常任聖シノドはコンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】を独立正教会として承認するかどうかを10月の全主教団聖シノド会合で決定することにしたという情報(2019年8月)

 

キリスト教/東方正教会/エルサレム総主教庁のイリネオス前総主教がギリシャのアテネで治療を受けることに合意(2019年8月)

 ギリシャの正教会系メディア Romfea 英語版が別のメディアからの情報として記事にしているところによりますと、先月に修道士への降格撤回と“前総主教”の称号の承認がおこなわれたイリネオス元エルサレム総主教(Eirinaios, Former Patriarch of Jerusalem)ですが、治療のためのギリシャ行きに同意したようです。

 

 (英語)Former Patriarch of Jerusalem finally comes to Athens – Romfea News

 

 経緯がいまいちはっきりしないのですが、

  • イリオネス修道士の健康状態悪化
  • 同修道士の姉か妹が、エルサレム総主教庁系の医療機関からひどい扱いを受けている(床に転がされているとか)と発言、ギリシャの総領事館に助けを求める
  • ギリシャ正教会のアテネ大主教が、新設した関連医療機関での受け入れ準備が出来ていると発言
  • ギリシャ総領事館「パスポートが“イリネオス総主教”になっているので無効。なんとかしてもらいたい」
  • エルサレム総主教庁が“前総主教”の称号を承認(いくつかのメディアによるとこれでパスポートが有効になったことになるらしいです)。そして適切なケアがおこなわれていると抗議声明
  • イリオネス前総主教がギリシャに行きたくない(エルサレムにとどまりたい)という意思を示す
  • 今回 → イリオネス前総主教がギリシャ行きに同意(記事からはパスポートの発効を申請する書類にサインしたように読めますが……)

 ということになりますが、今回申請したとすると、パスポートがどうたらという話は結局申請しなおさないといけないという当たり前の結論になったということなんでしょうか。よくわかりません。

 

 まだこの問題は引きずるかもしれません。
 イリネオス前総主教は、教会法上合法でない教会の中に「解任は無効で今も正当な総主教」とする勢力もあります。
 エルサレム総主教庁や報道からは、もう教会指導者としての職務をやるなど不可能な体調であるという前提が感じられますが、世の中なにが起こるかわかりません。

 

キリスト教/アレクサンドリア・全アフリカ総主教セオドロス2世聖下のキプロス訪問始まる。キプロス大主教クリソストモス2世座下と会談(2019年8月)

 2019年8月23日、キリスト教/東方正教会/アレクサンドリア・全アフリカ総主教セオドロス2世聖下(His Beatitude Theodoros II, Pope and Patriarch of Alexandria and All Africa)のキプロス共和国訪問が始まりました。

 空港では、キプロス正教会のカルパシア主教フリストフォロス座下(His Grace Bishop Christoforos of Karpasia)が出迎えた模様。
 同主教の同行によりキプロス大主教庁に到着し、キリスト教/東方正教会/キプロス正教会の首座/ノヴァ・ユスティニアナと全キプロスの大主教クリソストモス2世座下(His Beatitude Archbishop Chrysostomos II of Nova Justiniana and all Cyprus)との会談がおこなわれ、その後に昼食会が催されたようです。

 昼食会に臨席したのは、両首座とフリストフォロス主教のほか、
 キプロス正教会から、
 キティオン府主教ネクタリオス座下(His Eminence Metropolitan Nektarios of Kition)、
 メサオリア主教グリゴリオス座下(His Grace Bishop Grigorios of Mesaoria)、
 アレクサンドリア総主教庁から、
 ニトリア主教ニコデモス座下(キプロスにおける首座代理 : His Grace Bishop Nikodemos of Nitria, the Exarch of the Patriarchate of Alexandria in Cyprus)。

 

 (ギリシャ語:キプロス正教会公式サイト)Άφιξη του Πατριάρχη Αλεξανδρείας στην Κύπρο – Εκκλησία της Κύπρου

Γραφείο Ενημερώσεως και Επικοινωνίας της… – Γραφείο Ενημερώσεως και Επικοινωνίας της Εκκλησίας της Κύπρου | Facebook

 

 (英語:ルーマニア正教会通信)Patriarch of Alexandria arrived in Cyprus – Basilica.ro

 

キリスト教/キプロス大主教クリソストモス2世座下が、“北キプロス・ロシア正教会”を批判(2019年8月)在外ロシア正教会と、在外ロシア正教会から分離した(通称)“アガファンゲル・シノド”の区別がついていないのでは……

 キリスト教/東方正教会/キプロス正教会の首座/ノヴァ・ユスティニアナと全キプロスの大主教クリソストモス2世座下(His Beatitude Archbishop Chrysostomos II of Nova Justiniana and all Cyprus)が、“北キプロス・ロシア正教会【Russian Orthodox Church of Northern Cyprus】”を批判し、9月5日の聖シノドで議題とする考えのようです。

 これは要するに、分断されているキプロス島の、トルコ側勢力が支配する北キプロス・トルコ共和国において、ロシア人系の勢力“北キプロス・ロシア正教会”がキプロス正教会の所有する聖堂などを占有しており、ロシア政府(プーチン大統領にエルドアン大統領への仲介など、またラヴロフ外相や外務省への要請など)及びロシア正教会モスクワ総主教庁に対応を要請したもののまったくやる気が感じられないということのようです。

 しかし、キプロス正教会公式サイト(公式サイトへの転載?)の記事に依ると、(ロシア側にやる気があまりないのはそうだろうとは思いますが)、キプロス正教会側がそもそもロシア正教会について認識が適当なのではと思われる箇所があります。
 たとえば、クリソストモス2世座下は、“北キプロス・ロシア正教会”を率いているらしい司祭について、モスクワ総主教庁渉外局、つまりキリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下(ヒラリオン府主教 : His Eminence Metropolitan Hilarion of Volokolamsk, chairman of the Moscow Patriarchate’s Department for External Church Relations (DECR))に問い合わせて、その司祭はロシア正教会とはまったく関係がないという回答を得ているのですが、それに関して、その司祭を叙聖したアガファンゲル府主教という人物について述べていないので不十分であるかのように指摘しています。
 これはそうかもしれないのですが、そのアガファンゲル府主教を在外ロシア正教会【ROCOR】の米国東部・ニューヨーク府主教及びタヴリダ・オデッサ大主教としているのには相当驚かされました。御存じの通り(といっていいかどうかわかりませんが)、在外ロシア正教会【ROCOR】の米国東部・ニューヨーク府主教は、同教会首位の米国東部・ニューヨーク府主教イラリオン座下(His Eminence Metropolitan Hilarion of Eastern America & New York)であって、アガファンゲル府主教ではありません。ここで指摘されている“アガファンゲル府主教”は、在外ロシア正教会がロシア正教会の管轄権下に戻ることを不服として離脱し、通称“アガファンゲル・シノド”(自称は同じく在外ロシア正教会)を結成した人物です(タヴリダ・オデッサ大主教としていることから明らか)。キプロス大主教が教会法上合法な在外ロシア正教会の首位の名前すら知らないという衝撃の事実ですが、これでは(渉外局長のほうの)イラリオン座下がやる気のない回答をしたのかまさかそんなことも知らないとは思わなかったのか判断に困ります。というか知らないとは思わないでしょう
 東方正教会のギリシャ人は本当に自分たち以外に興味ないですね……。

 また、さらに驚きなことに、キプロス大主教らはこの府主教に対して名前(姓)を訪ねるメールを送ったそうです。なんでも、モスクワ総主教庁系ウクライナ正教会にオデッサ・イズマイル府主教アガファンゲル座下がいるので、別人であることを確認するためのようですが……いやあの……なんで素性の知れないほうの人物に尋ねるのですか? 確実に誰だかわかっているウクライナ正教会の人物に尋ねればいいではありませんか。
 返事はないとのことですが、メールを送られた“アガファンゲル府主教”もあきれ返っているのではないでしょうか。

 ともあれ、自覚はまったくないようですが、キプロス正教会はロシア正教会(特に在外ロシア正教会)にムダな喧嘩を売ったようなものです。「容認できない!」とか言われても……。
 しかし、ロシア正教会側もこんなアホウな人違いをされているとは思っていなかったでしょうし、この後の対応はさらにやる気を無くすでしょう。

 

 あと、“北キプロス・ロシア正教会”ですが、おそらくは“アガファンゲル・シノド”の一部ではないかと思います。
関連:
 キリスト教/“在外ロシア正教会アガファンゲル・シノド【ROCOR (A)】”の“ロマン主教”が、北キプロスで礼拝(2019年7月)

 

 (ギリシャ語:キプロス正教会公式サイト)Aρχιεπίσκοπος Κύπρου: Στην Ιερά Σύνοδο το θέμα των Ρώσων – Εκκλησία της Κύπρου

Γραφείο Ενημερώσεως και Επικοινωνίας της… – Γραφείο Ενημερώσεως και Επικοινωνίας της Εκκλησίας της Κύπρου | Facebook

 

 (英語)Archbishop of Cyprus on Russian Church in Occupied Cyprus: They are scammers, the Holy Synod will consider this issue – Romfea News

Romfea.newsさんはTwitterを使っています: 「#Archbishop #Chrysostomos: The self-styled “Russian Orthodox Church of Northern Cyprus” is unacceptable and does not belong to the official #Russian #Church #romfeanews #churchofcyprus https://t.co/y8WI03AWDT」 / Twitter

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