キリスト教/アルバニア正教会首座アナスタシオス大主教座下が、コンスタンティノープルとモスクワの関係が完全に断絶した場合、コンスタンティノープルに付く意向を表明(2019年3月)

 キリスト教/東方正教会/アルバニア正教会の首座/ティラナ・ドゥラス大主教アナスタシオス座下(His Beatitude Archbishop Anastasios of Tirana and Durres, Primate of Albania)は、2019年3月21日付(サイトには3月29日掲載)のキリスト教/東方正教会/コンスタンティノープル=新ローマ大主教・全地総主教バルソロメオス聖下(バーソロミュー1世世界総主教バルトロマイ1世ヴァルソロメオス1世 : His All-Holiness Bartholomew, Archbishop of Constantinople-New Rome and Ecumenical Patriarch)へのメッセージで、コンスタンティノープルとキリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁の関係が完全に断絶した場合には(異論はあるものの結局は)コンスタンティノープルに付くと明言しました。

 

 (英語:アルバニア正教会公式サイト)On the Ukrainian Ecclesiastical Question. 2nd Reply. Speaking the Truth in Love

However, in order to avoid any possible misinterpretation, we clarify that in the case of a tragic outcome to Schism (May God not allow it!), the Orthodox Autocephalous Church of Albania will remain with the Ecumenical Patriarchate firmly speaking the truth in love.

 (英語)Archbishop of Albania: In case of a Schism, we remain by the side of the Ecumenical Patriarchate – Romfea News

 

 もともとアナスタシオス座下はギリシャ人なので(アルバニア市民権も保有)、コンスタンティノープルに逆らえる可能性はゼロだとは思っていましたが、(なにも解決がされていないままでも)コンスタンティノープルに付くという意思がはっきりと表明されたことにより、事態はまた一つ進むでしょう。
 次の展開としては、ギリシャ系の他の教会によるコンスタンティノープルに付くという意思表明がなされるかどうか、そしてモスクワ総主教庁がアルバニア正教会とフル・コミュニオンを解除するかどうか、ということがあるかと思います。

 コンスタンティノープルのトルコ及びギリシャ共和国内にある管轄権下の地域は揺らがないと思いますが、聖職者制度の改定に関する異論により、アメリカ合衆国の教会からは離脱者が出る可能性は指摘されています。また、アメリカ正教会【OCA】内のコンスタンティノープルに同調する人々はOCAを離脱してコンスタンティノープルの管轄権下に入るという観測もされています。
 国の障壁が薄い地域はこれから本格的な“再編成”に入っていき、国の障壁が厚い地域はその壁をお互いに閉ざし、東方正教会は分裂していくでしょう。

 

追記:
 現在、モスクワ総主教庁系のウクライナ正教会は、アルバニア大主教の上記のコメントに対し、コンスタンティノープルの行動への疑問を指摘している部分を取り上げ、最終的にはコンスタンティノープルの側に付くとしていることは重要視していないようです。

 (ウクライナ語:ウクライナ正教会公式サイト)Предстоятель Албанської Церкви: Повернення розкольників у Православну Церкву не може відбутися без покаяння – Українська Православна Церква

 

キリスト教/アルメニア使徒教会/キリキア・カトリコスのアラム1世聖下が、東方正教会/コンスタンティノープルのフランス府主教エマニュエル座下らと会見(2019年3月)

 2019年3月21日、キリスト教/オリエント正教会/アルメニア使徒教会(アルメニア正教会)のキリキア・カトリコスアラム1世聖下(His Holiness Aram I, Catholicos of the Great House of Cilicia)は、レバノン共和国を訪問したキリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルのフランス府主教エマニュエル座下(His Eminence Metropolitan Emmanuel of France)及びアドリアノープル府主教アンフィロキオス座下(His Eminence Metropolitan Amphilochios of Adrianople)と会見しました。

 

 (英語:アルメニア使徒教会キリキア・カトリコス庁公式サイト)HIS HOLINESS ARAM I RECEIVED THE SPECIAL REPRESENTATIVE OF HIS ALL-HOLINESS ECUMENICAL PATRIARCH BARTHOLOMEW | Armenian Church Catholicosate of Cilicia

Armenian Churchさんのツイート: "On Thursday, March 21st, 2019, @CatholicosAramI received H.E. #Metropolitan Emmanuel of #France and #Western #Europe, Special #Representative of His All-Holiness #EcumenicalPatriarch Bartholomew, accompanied by the Representative of the Ecumenical Patriarch in #Athens.… https://t.co/1PgM4PLclg"

 

 下記、ギリシャの正教会系メディア Romfea の記事(アンティオキア総主教ヨウハンナ10世聖下による会見ととセットの記事)では、

 (英語)Delegation of Ecumenical Patriarchate visits Patriarchate of Antioch – Romfea News

The meeting with the Patriarch Aram of Armenians and Cilicia was conducted in a good atmosphere.

There were discussed issues of the Christians in the Middle East, especially the progress of the Bilateral Theological Dialogue between the Orthodox Church and the Ancient Churches of the East.

 「Patriarch Aram of Armenians and Cilicia」という表現からして謎ですが、これはとりあえず誰かは特定できる表現といえばそうです。カトリコスの「カ」の字もないのは、多くの人が「カトリコス」という称号を知らないからでしょう。「Armenians」というのも、「キリキア」と聞いてもよくわからないから「アルメニア人の教会ですよ」という注記のようなものでしょう。
 ちなみにキリキア・カトリコス庁の Twitter アカウントでは、ちゃんと「Ecumenical Patriarch」と相手側の称号を尊重した書き方をしていますね。この称号はそのままで知らない人でも「なんかえらい総主教なんだな」とわかりますし、またアルメニア使徒教会ではエチミアジンの「全アルメニア人のカトリコス」が「Supreme Patriarch(最高総主教)」の称号も用いるため、同教会から見ればさほど偉く見える称号というわけではありません。

 しかし Romfea の記事の、「Ancient Churches of the East」と、アッシリア東方教会から分離した古代東方教会の(英語での)名称が唐突に出てくるのは……。
 おそらくこれはアルメニア使徒教会などを含むオリエント正教会(非カルケドン派)のことを書きたかったのであって、ネストリウス派とも称される(ネストリウスよりも古くから続く)東方教会やアッシリア東方教会、古代東方教会とはなんにも関係ないでしょう。古代東方教会の教区がレバノンにあるという情報もありませんし。
 ギリシャの正教会系メディアの、ギリシャ系以外の教会(ギリシャ系以外の東方正教会すら含む)に対する“無知”というか雑さいかがなものか、と思うことがあります。

 

キリスト教/東方正教会/アンティオキア総主教ヨウハンナ10世聖下が、レバノンを訪問したコンスタンティノープルのフランス府主教エマニュエル座下らと会見(2019年3月)

 キリスト教/東方正教会/アンティオキア・東方全土総主教ヨウハンナ10世聖下(His Beatitude Patriarch John X of Antioch and All the East)は、レバノン共和国を訪問したキリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルのフランス府主教エマニュエル座下(His Eminence Metropolitan Emmanuel of France)らと会見しました。

 コンスタンティノープル側から、
 アドリアノープル府主教アンフィロキオス座下(His Eminence Metropolitan Amphilochios of Adrianople)、
 が同行。

 アンティオキア総主教庁側から、
 ビブロス・バトルン府主教シルアン座下(His Eminence, the Most Reverend Metropolitan Silouan of Byblos, Batroun and Dependencies)、
 ザバダニ主教コンスタンティネ座下(His Grace, the Right Reverend Bishop Constantine of Zabadani)、
 らが同席。

 今のところアンティオキア側がこの情報が掲載していませんが、これが特に更新が遅れているか更新対象としていない類のものなのか、あるいはコンスタンティノープル側の府主教二人が(コンスタンティノープルが設置したほうの独立正教会の)「ウクライナ正教会」(アンティオキア総主教庁とコミュニオン状態にない)と深く関わっているからなのかはよくわかりません。
 ただ、ギリシャの正教会系メディア Romfea の記事でも、礼拝がおこなわれたという記述がないため、単なるよくある挨拶回り程度のものなのかもしれません(ほかにも訪問先あり)。

 

 (英語)Delegation of Ecumenical Patriarchate visits Patriarchate of Antioch – Romfea News

 

Romfea.news – Delegation of the Ecumenical Patriarchate at… | Facebook

 

キリスト教/コンスタンティノープルから認められたほうの「ウクライナ正教会」が、ウクライナ東方典礼カトリック教会の首座/キエフ=ハリチ首位大司教スヴャトスラフ・シェウチューク大司教座下から要請された、聖ソフィア大聖堂の礼拝使用を断ることを決定した模様(2019年3月)

 2019年3月4日、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルに独立正教会として認められたほうの「ウクライナ正教会(AOCU : OCU)」の聖シノドは、キリスト教/東方典礼カトリック教会/ウクライナ東方典礼カトリック教会の首座/キエフ=ハリチ首位大司教スヴャトスラフ・シェウチューク大司教座下(His Beatitude Archbishop Sviatoslav Shevchuk, Major Archbishop of Kiev-Galicia : キエフ大司教 : Archbishop of Kiev)より要請されていた、聖ソフィア大聖堂の礼拝使用を断ることを決定したようです。

 

 (英語)The Autocephalous Church said “no” to the Uniate Archbishop to officiate in Saint Sophia Cathedral – Romfea News

Romfea.newsさんのツイート: "Recent statements of the Synod of the Autocephalous Church of Ukraine which convened today #romfeanews https://t.co/uaLZU7yLqE"

 

 上記、 Romfea 英語版の記事では、ウクライナの国内問題に深刻な影響を与えるという聖シノド側の見解が掲載されています。
 これより前に、シェウチューク大司教座下からの要請に対し、事実上この「ウクライナ正教会」を率いている“フィラレート名誉総主教”は、「東方正教会全体の問題となる」「ローマで東方正教会の首座が礼拝をおこなうようなもの」「プーチンが攻撃してくるかも」なぜか急にヘタレになったようなコメントをしたという情報もありました。東方正教会圏内以外には弱気なのか、とりあえず独立正教会設置にこぎつけて気合が抜けてしまったのか。この間まで世界で最も言論の自由を謳歌する一人だったのにガッカリです(「かわりにワシにバチカンの聖ペトロ大聖堂で礼拝させろ」くらい言ってみたらどうでしょうか)。

 一方、シェウチューク大司教座下は、この聖シノド会合よりも前の話ですが、フィラレート名誉総主教との直接対話で説得できる自信を示していました。会談がおこなわれたのか、これからおこなわれるのかおこなわれないのか、その辺りは不明です。

 シェウチューク大司教座下は、コンスタンティノープルからこの「ウクライナ正教会」に独立正教会として認めるトモスが渡されたことを受けて、ウクライナ東方典礼カトリック教会と合同してウクライナ総主教庁【ウクライナ総大司教庁】を結成し、ローマ及びコンスタンティノープルとのデュアル・コミュニオンに入ることを提案するという、なんとも誰も賛成しそうにない案を披露したりしていますが、この案自体も遡ればコンスタンティノープル側がかつて別の形で示したものが原型となっています。

 

キリスト教/ロシア正教会モスクワ総主教キリル聖下の北朝鮮訪問が計画されているとのこと(2019年3月)

 ロシア連邦の Interfax (ロシア語版)によりますと、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会の首座/モスクワ・全ロシア【全ルーシ】総主教キリル聖下(キリール総主教 : His Holiness Kirill, Patriarch of Moscow and all Russia【Rus’】)の朝鮮民主主義人民共和国【北朝鮮】訪問が計画されているようです。
 総主教の広報が明らかにしたとのこと。

 3月3日(日曜日)に、タイ王国のバンコクにて、東南アジアにおける総主教代理/シンガポール・東南アジア府主教セルギイ座下(His Eminence Metropolitan Sergiy of Singapore and South-East Asia, Patriarchal Exarch in South-East Asia)が、朝鮮民主主義人民共和国国務委員会委員長金正恩閣下(キム・ジョンウン : His Excellency Mr Kim Jong Un)の招待によりキリル総主教が訪問するだろうと述べたことに関してのようです。

 

 (ロシア語)Интерфакс-Религия: Патриарх Кирилл посетит КНДР
 (英語)Interfax-Religion: Patriarch Kirill to visit North Korea

 

 ロシア正教会が設置した東南アジアにおける総主教代理区には、朝鮮教区が設置され、北朝鮮と韓国はともにこの教区に含まれます。

 今回の訪問はまだ詳細が決定していないようですが、金正恩閣下とアメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプ閣下(The Honorable Donald J. Trump)のベトナム・ハノイでの会談が実に成果の無い状態で終わった後だけに、北朝鮮側がロシアとの連携を見せる狙いがあるのかもしれませんが……元からの予定であってなにも関係ないかもしれません

 

 コンスタンティノープルとモスクワの間が事実上決裂した昨年末に、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープル=新ローマ大主教・全地総主教バルソロメオス聖下(バーソロミュー1世世界総主教バルトロマイ1世ヴァルソロメオス1世 : His All-Holiness Bartholomew, Archbishop of Constantinople-New Rome and Ecumenical Patriarch)が大韓民国を訪問し、大韓民国大統領文在寅閣下(ムン・ジェイン : His Excellency Mr Moon Jae-in)と会談しましたが、その際大統領はバルソロメオス総主教に対し非核化への協力を要請していました。
 一方、コンスタンティノープルの管轄権下に属する韓国正教会【正教朝鮮府主教庁】は、北朝鮮の平壌にロシアが建てた聖堂を自らの小教区と記したカレンダーを配布し、朝鮮民主主義人民共和国駐箚のロシア連邦特命全権大使が激怒のコメントを出すということがありました。非核化への協力(笑)
 大統領の発言が少々間抜けであっても国会議長のひどさに比べればたいしたことはないわけですが、それにして北朝鮮と融和したいのにロシアに唾を吐くというのは、正直なにがしたいのかよくわからなかったわけですが……トランプ・金正恩が成果なく終わり(ハノイ・ショックとか)動揺しているらしいので、単純になにひとつ現実を見ていないのではないかという気もします。

 また、ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下(ヒラリオン府主教 : His Eminence Metropolitan Hilarion of Volokolamsk, chairman of the Moscow Patriarchate’s Department for External Church Relations (DECR))は、「無神論の国家である北朝鮮に我々の聖堂と小教区があるのに対し、韓国にはないというのはおかしいこと」と韓国への小教区設置に前向き、というかコンスタンティノープルとの対立の結果必然的な結論を述べていました。これがどうなったのかわかりません……まだ設置されていないと思うのですが……。
 現在の韓国の大統領らの動静を見ると、キリル総主教が金正恩国務委員長同志と会談した後だと、速やかにロシア正教会の小教区設置に協力するのではないかと思われます。
 しかし、それは、コンスタンティノープル(とその管轄権下に属する韓国正教会【正教朝鮮府主教庁】)の不満(なのかもっと大きな怒りなのかわかりませんが)を買うことにもなるでしょう。とはいえ、彼らの不満程度を気にするくらいなら、他に気にすることはもっとあるだろうということはさすがに大統領にもわかると思うので、つつがなく進行していくのではないでしょうか。

 

 そういうわけで、今回の訪問計画については、金正恩と仲の良いところを見せて韓国での聖堂や小教区設置を有利に運ぶのが目的ではないか、と思っています(繰り返しますが、もう設置しているかもしれません)。