キリスト教/ウクライナ正教会(モスクワ総主教庁系)の今年最後の聖シノド会合がおこなわれる(2020年12月)

 2020年12月9日、キリスト教/ロシア正教会モスクワ総主教庁の管轄権下で高度な自治権を行使するウクライナ正教会は、今年最後の聖シノド会合をおこないました。

 ヴァルナヴ掌院(Archimandrite Varnavu)がミコライフ教区(ムィコラーイウ教区)の補佐としてノヴォブズキー主教に任命されるようです。

 内容はいろいろありますが、コンスタンティノープル批判が一番重要なものでしょうか。
 コンスタンティノープルのバルソロメオス総主教は、ウクライナ正教会の主教らについて「私は彼らが一時的にウクライナにいるのを許してやっている」などと発言するなど、とにかくまあこれはもういろいろとダメだろうと思う次第です。

 

ボリスポリ・ブロヴァリー府主教アントニー座下のコメントなど/
Українська Православна Церква(ウクライナ正教会 公式チャンネル):
КОМЕНТАР: Засідання Священного Синоду УПЦ – YouTube

 

#ВІДЕО Підсумки засідання Священного… – Українська Православна Церква | Facebook

 

 (ウクライナ語:ウクライナ正教会 公式サイト)Розпочалось останнє у 2020 році засідання Священного Синоду Української Православної Церкви – Українська Православна Церква
 (ウクライナ語:ウクライナ正教会 公式サイト)Підсумки Священного Синоду УПЦ від 9 грудня 2020 року (+відео) – Українська Православна Церква
 (ウクライナ語:ウクライナ正教会 公式サイト)УПЦ передала Антіохійській Церкві понад 2 мільйони гривень, – Священний Синод – Українська Православна Церква
 (ウクライナ語:ウクライナ正教会 公式サイト)УПЦ передала медичним закладам і нужденним 2,5 мільйона гривень і понад 450 тонн гуманітарної допомоги – Українська Православна Церква
 (ウクライナ語:ウクライナ正教会 公式サイト)Звіт Керуючого справами Української Православної Церкви за 2020 рік – Українська Православна Церква
 (ウクライナ語:ウクライナ正教会 公式サイト)Священний Синод благословив місцеве шанування 5-ох подвижників, які подвизались у Сумській і Олександрійській єпархіях – Українська Православна Церква
 (ウクライナ語:ウクライナ正教会 公式サイト)УПЦ у 2020 році – зросла кількість парафій, священнослужителів і студентів духовних навчальних закладів – Українська Православна Церква
 (ウクライナ語:ウクライナ正教会 公式サイト)Священний Синод обрав нового єпископа — вікарія Миколаївської єпархії – Українська Православна Церква
 (ウクライナ語:ウクライナ正教会 公式サイト)Священний Синод висловив позицію щодо заяви Патріарха Варфоломія відносно статусу УПЦ – Українська Православна Церква

 

Розпочалось останнє у 2020 році… – Українська Православна Церква | Facebook

 

9 грудня 2020 року під час останнього в… – Українська Православна Церква | Facebook

 

 ウクライナ正教会の聖シノドは、ウクライナ正教会の首座/キエフ・ウクライナ全土府主教オヌフリー座下(His Beatitude Metropolitan OnufriyOnufry】 of Kiev and All Ukraine)の臨席の元に開催され、固定メンバーは、

  • オデッサ・イズマイル府主教アガファンゲル座下(アハファンヘル府主教 : His Eminence Agafangel, Metropolitan of Odessa and Izmail)
  • シンフェロポリ・クリミア府主教ラザル座下(His Eminence Metropolitan Lazar of Simferopol and Crimea)
  • フスト・ヴィノグラドフ府主教【フースト・ヴィノフラーディフ府主教】マルク座下(His Eminence Metropolitan Mark of Khust and Vinogradov【Vynohradiv】)
  • ドネツク・マリウポリ府主教イラリオン座下(His Eminence Hilarion【Ilarion】, Metropolitan of Donetsk and Mariupol)
  • カメネツ=ポドリスク・ゴロドク府主教【カムヤネツィ=ポヂリスキー・ホロドク府主教】フョードル座下(His Eminence Metropolitan Theodore of Kamyanets-Podilskyi and Horodok)
  • ヴィシゴロド・チェルノブイリ府主教パーヴェル座下(His Eminence Metropolitan Pavel of Vyshgorod and Chornobyl)
  • ルガンスク・アルチェフスク府主教【ルハンスク・アルチェウスク府主教】ミトロファン座下(His Eminence Metropolitan MitrofanMytrofan】 of Lugansk【Luhansk】 and Alchevsk)
  • ボリスポリ・ブロヴァリー府主教アントニー座下(His Eminence Metropolitan Antoniy of Boryspil and Brovary)

 

 (ロシア語:ロシア正教会 モスクワ総主教庁 公式サイト)Блаженнейший митрополит Онуфрий возглавил последнее в 2020 году заседание Синода Украинской Православной Церкви / Новости / Патриархия.ru
 (ロシア語:ロシア正教会 モスクワ総主教庁 公式サイト)Состоялось очередное заседание Священного Синода Украинской Православной Церкви / Новости / Патриархия.ru

 (英語)Ukrainian Synod: Constantinople has no canonical grounds to talk about status of Ukrainian Church / OrthoChristian.Com
 (英語)2020 report: Ukrainian Church grows in number of monasteries, parishes, bishops, clergy / OrthoChristian.Com

 (英語)Synod: Phanar's rhetoric on UOC status threatens religious peace in Ukraine – UOJ – the Union of Orthodox Journalists
 (英語)Synod of UOC: Phanar's decisions on His Beatitude have no canonical grounds – UOJ – the Union of Orthodox Journalists

 

キリスト教/西欧ロシア正教会大主教区のジャン大主教座下とコンスタンティノープルのフランス府主教エマニュエル座下が共同声明(2020年12月)「お互いに気を使いましょうね」くらいの文章ですが……

 2020年12月4日付で、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁の管轄権下で自治的な権限を持つ西欧ロシア正教会大主教区の首座大主教/ドゥブナ府主教ジャン座下(His Eminence Metropolitan JeanJohn】【Ioan】【Ioann】 of Dubna, Archbishop of the Russian Orthodox Churches in Western Europe)と、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルのフランス府主教エマニュエル座下(His Eminence Metropolitan Emmanuel of France)による共同声明が発表されています。

 

 (フランス語:西欧ロシア正教会大主教区 公式サイト)Archevêché des églises orthodoxe de tradition russe en Europe occidentale – Communiqué du Bureau de l’Archevêque du 4 décembre 2020

 (英語)ROC structures and Phanar in Europe agree on fraternal coexistence – UOJ – the Union of Orthodox Journalists

ROC structures and Phanar in Europe… – Union of Orthodox Journalists – UOJ | Facebook

 

※現時点で西欧ロシア正教会大主教区側の発表と、フランスの正教会系メディア、ロシアの正教会系メディアの記事がありますが、コンスタンティノープル側からの発表はなく、ギリシャの正教会系メディアも言及していません。

 

 内容は「お互いに気を配りましょうね」くらいのもので、特に意味はありません
 コンスタンティノープルが(コンスタンティノープルの管轄権下にあった)西欧ロシア正教会大主教区をつぶそうとしたときに、モスクワ総主教庁の管轄権下に移ったジャン大主教座下らとコンスタンティノープルの管轄権下の小教区に移った人々がおり、この両者の間でケンカをなるべくしないようにしましょうねということです。
 モスクワ総主教庁がコンスタンティノープルとのコミュニオンを解除している以上、西欧ロシア正教会大主教区もまたコンスタンティノープル系の神品(聖職者)らと礼拝はおこなえず、せいぜいケンカしないくらいが限界ですが……。

 今回の合意文書がなぜ出されたかについては、判断できかねるところがあります。
 そもそも決裂して出ていったわけで、ケンカをする必要はないものの、もう距離をおいてしまえばいいはずです。そうしていないとすると、距離が取れていないし、取れない理由があるのでしょう。聖堂などの施設を今も共同で使用していたりするケースがあったり、片方がそれを自分たちだけのものにしようとしていたりという、そういう争いごとがあるのかもしれません。

 また、あるいはモスクワ総主教庁自体が大主教区になんらかの圧力をかけてきている可能性があります。
関連:
 キリスト教/ロシア正教会/西欧における総主教代理アントニー府主教座下と、西欧ロシア正教会大主教区首座/ジャン府主教座下が会見(2020年10月)
 ↑ の記事において、両者の関係に関する問題点が話し合われたことが伝えられたように、大主教区とモスクワ総主教庁の西欧における総主教代理区になにか問題があることは秘密でも何でもない様子。
 ジャン大主教が、コンスタンティノープルとの融和姿勢を見せて、モスクワ総主教庁を牽制している可能性もあります。

 

追記:
 ロシアの正教会系メディア ORTHODOX CHRISTIANITY も今回の件を伝えています。

 (英語)Moscow-Constantinople agreement in France signals end of Met. Emmanuel’s legal threats / OrthoChristian.Com

 この見解は、コンスタンティノープルのエマニュエル府主教が自身の主張を諦め、ジャン大主教の立場を認めたというようなものです。
 これはコンスタンティノープルに善意(?)があるとすれば一つの見方でしょう。
 しかしコンスタンティノープル側にメリットがなく(ないというか見えてこないというか)、そもそも東方正教会全体での絶対的な首位権を主張しているコンスタンティノープルが何かを諦める必要など毛頭ないというのが現在の前提である以上、あまり説得力はないのかなと思います(書いた人も信じているのかどうか)。

 

キリスト教/キプロス正教会の聖シノドの会合がおこなわれる(2020年11月)

 キプロス正教会の聖シノドの会合がおこなわれたようですが、玉虫色の結論もいいところのコミュニケが出ただけです(記事のリンクも面倒)。
 彼らにとって、自分たちの首座が一方的に(メンバーの一部が教会法上合法でない主教とみている人物と)コミュニオンの状態に入ったことは、信仰の問題ではないそうです。じゃあ趣味の問題なんですか??、というのも大人気ないですが。
 首座(名前を書くのも面倒)の決定に「反対しない」というよくわからない決定と、また、聖シノドのメンバーを拘束する決定もなされなかったようです。

 

関連:
 本日【2020年11月23日】キリスト教/キプロス正教会が聖シノドの会合をおこなう模様。おそらくコンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】を承認し、その後ロシア正教会側からフル・コミュニオンを解除されるということになるのでは(2020年11月)

 

本日【2020年11月23日】キリスト教/キプロス正教会が聖シノドの会合をおこなう模様。おそらくコンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】を承認し、その後ロシア正教会側からフル・コミュニオンを解除されるということになるのでは(2020年11月)

 本日【2020年11月23日】、キリスト教/キプロス正教会が聖シノドの会合をおこなう模様。
 おそらくコンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】を承認することになると思われます。

 

ここまでの事態:
 東方正教会大分裂:キリスト教/キプロス大主教クリソストモス2世座下がコンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】の首座の名を礼拝中に挙げる。同教会シノドの事前同意なし(2020年10月)
 キリスト教/ウクライナ正教会(モスクワ総主教庁系)のボリスポリ・ブロヴァリー府主教アントニー座下がキプロス大主教の行動についてコメント(2020年10月)
 キリスト教/キプロス正教会のレメソス府主教、キッコス・ティリリア府主教、タマソス府主教、アマサス主教が、キプロス大主教とコンスタンティノープルを批判する声明(2020年10月)
 東方正教会大分裂:キリスト教/ロシア正教会の聖シノドがキプロス大主教クリソストモス2世座下とのユーカリスティック・コミュニオンを解除(2020年11月)

 

 レメソス府主教ら四主教がクリソストモス2世を批判していますが、それ以外の批判者が続かないところをみると、聖シノドの会合はクリソストモス2世を支持するものが多数、 OCU を独立正教会として承認して終了するでしょう。

 その後は、ロシア正教会の聖シノドが臨時会合を開き、今まではキプロス大主教とのみフル・コミュニオンを解除していましたが、キプロス正教会全体とフル・コミュニオンを解除することを決定するということになります。
 東方正教会大分裂がまた一段階進みます。
 これは単なる大分裂ではなく、原則がムチャクチャになっているので、東方正教会崩壊というほうが正しいかもしれません。

 

 さて、そんな全体のことはともかく。
 このキプロスの一件で注目なのは、レメソス府主教らが、あくまで聖シノドの決定に従わず、分離シノドを形成する可能性です。
 彼ら自身も所詮はギリシャ人なので、最終的には折れてコンスタンティノープルに従うのではないかと思っていますが……。
 しかしコンスタンティノープルを批判する声明を出した四人があっさりとまた短期間で言葉を翻すようでは、東方正教会のギリシャ人の神品(聖職者)は嘘つきばかりと大宣伝しているようなもの。
 彼らは(コンスタンティノープルやそれに続く連中と共に)、キリスト教と東方正教会とギリシャ人という人種の評判を大幅に下落させることになります。
 まあでも、そうするんじゃないでしょうか(達観)。

 

 あとは北キプロス・トルコ共和国への影響です。
 分離シノドが形成されるようなことがなければ、ロシア正教会は北キプロスにある聖堂・修道院などの接収を(ロシア政府を通じて)トルコ共和国政府および北キプロス政府に求めるでしょう(なにしろもはや正当な所有者がいないため)。
 政治・外交への影響は避けられないように思えます。

 

東方正教会大分裂:キリスト教/ロシア正教会の聖シノドがキプロス大主教クリソストモス2世座下とのユーカリスティック・コミュニオンを解除(2020年11月)

 2020年11月20日、キリスト教/ロシア正教会の聖シノドの会合がおこなわれました。

 キリスト教/東方正教会/キプロス正教会の首座/ノヴァ・ユスティニアナと全キプロスの大主教クリソストモス2世座下(His Beatitude Archbishop Chrysostomos II of Nova Justiniana and all Cyprus)とのユーカリスティック・コミュニオンの継続は不可能との結論など、最重要なのはキプロス大主教との関係解除の決定です。
関連:
 東方正教会大分裂:キリスト教/キプロス大主教クリソストモス2世座下がコンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】の首座の名を礼拝中に挙げる。同教会シノドの事前同意なし(2020年10月)

 東方正教会の教会法は、教会法上合法でない主教とコミュニオンに入った主教は、同じく教会法上合法でない主教になると定めています。
 よって、たいした説明もなく OCU を設置したりいろいろと雑なことをやらかしたコンスタンティノープル自体がその時点でもはや教会法上合法な存在ではないのですが、コンスタンティノープルというブランド名が外部から見るよりはるかに重いらしく、まだまだなんやかやと細かい関係解除を重ねて大分裂という既成事実に近づいているという状況です。

 

 (英語:ロシア正教会 モスクワ総主教庁 公式サイト)Holy Synod states the impossibility of Eucharistic communion with Archbishop Chrysostomos of Cyprus / News / Patriarchate.ru
 (ロシア語:ロシア正教会 モスクワ総主教庁 公式サイト)ЖУРНАЛЫ заседания Священного Синода от 20 ноября 2020 года / Официальные документы / Патриархия.ru

 (英語)Patriarch Kirill ceases commemoration of Archbishop of Cyprus / OrthoChristian.Com

 (英語)Interfax-Religion: Patriarch Kirill ceases liturgical commemoration of archbishop of Cyprus for backing schism in Ukraine

 

 聖シノドのメンバー:

 議長:
 キリスト教/東方正教会/ロシア正教会の首座/モスクワ・ロシア全土【ルーシ全土】総主教キリル聖下(キリール総主教キリイル総主教 : His Holiness Kirill, Patriarch of Moscow and all Russia【Rus’】)

 常任メンバー:

  • ウクライナ正教会の首座/キエフ・ウクライナ全土府主教オヌフリー座下(His Beatitude Metropolitan Onufriy of Kiev and All Ukraine)
  • クルチツィ・コロムナ府主教ユヴェナリー座下(His Eminence Metropolitan Juvenaly of Krutitsy and Kolomna)
  • モルドバ正教会の首座/キシナウ・モルドバ全土府主教ヴラジミール座下(His Eminence Metropolitan Vladimir of Chişinău and All Moldova)
  • アスタナ・カザフスタン府主教アレクサンドル座下(His Eminence Metropolitan Alexander of Astana and Kazakhstan)
  • タシケント・ウズベキスタン府主教ヴィケンティー座下(His Eminence Metropolitan Vikentiy of Tashkent and Uzbekistan)
  • サンクトペテルブルク・ラドガ府主教ヴァルソノフィー座下(His Eminence Metropolitan Varsonofy of St. Petersburg and Ladoga)
  • ベラルーシ全土における総主教代理(ベラルーシ正教会首座)のミンスク・ザスラーヴリ府主教ヴェニャミン座下(His Eminence Metropolitan BenjaminVeniamin】of Minsk and Zaslavl, the Patriarchal Exarch of All Belarus)
  • モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下(ヒラリオン府主教 : His Eminence Metropolitan Hilarion of Volokolamsk, chairman of the Moscow Patriarchate’s Department for External Church Relations (DECR))
  • ヴォスクレセンスク府主教ディオニシー座下(His Eminence Metropolitan Dionisiy of Voskresensk)

 その他、冬季(9月~2021年2月)メンバーが五名います。