シスマ2018:キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教庁系統の西欧ロシア伝統正教小教区総主教代理区下にあったイタリア・フィレンツェの教会が、在外ロシア正教会【ROCOR】に移ったとの報道(2018年10月)

 2018年10月28日に、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルの全地総主教庁の管轄権下にある西欧ロシア伝統正教小教区総主教代理区のイイスス・ハリストス降誕・奇蹟者聖ニコライ聖堂が、信徒らの意見も踏まえて、在外ロシア正教会【ROCOR】に移った、との報道が出ています。
 これは、全地総主教庁のウクライナへの介入、ロシア正教会が全地総主教庁とのコミュニオンを解除したことによるものです。

 

 (英語)Parish in Italy moves from Constantinople to ROCOR / OrthoChristian.Com
 (ロシア語)Интерфакс-Религия: Община Константинополя во Флоренции перешла в РПЦЗ в ответ на его действия на Украине
 (フランス語)Florence : la paroisse russe Saint Nicolas décide de se placer sous l’omophore de l’EORHF

※聖堂の公式サイトのほうはいまだ情報なし
 (ロシア語)Русский Православный Храм | Рождества Христова и Св. Николая Чудотворца

 

 なお、同じく全地総主教庁下にあるアメリカ合衆国アメリカ・カルパト=ロシア正教教区から、少し前に司祭が一人離脱し、在外ロシア正教会【ROCOR】に合流したとの情報もあります。

 これらの教会は、ロシア的伝統を保持しながら、全地総主教庁の管轄権下にあったわけですが、これからも動きが続くかもしれません。

 

 【シスマ2018 – The Schism of 2018】<東方正教会大分裂>: ウクライナへの独立正教会設置から始まったコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立とそれに端を発した出来事及びその他のシスマ的な出来事の記事一覧など<東方正教会内戦、大分裂、そして崩壊?>

 

キリスト教/カンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビー座下が、コンスタンティノープルの全地総主教バルソロメオス聖下を訪問(2018年10月)

 2018年10月19日、キリスト教/アングリカン・コミュニオン/英国国教会/カンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビー座下(全イングランド首座 : The Most Reverend and Right Honourable Justin Welby : His Grace The Lord Archbishop of Canterbury : Primate of All England)は、キリスト教/東方正教会首席/コンスタンティノープル=新ローマ大主教・全地総主教バルソロメオス聖下(バーソロミュー1世世界総主教バルトロマイ1世ヴァルソロメオス1世 : His All-Holiness Bartholomew, Archbishop of Constantinople-New Rome and Ecumenical Patriarch)を訪問しました。

 

 (英語:カンタベリー大主教公式サイト)Archbishop of Canterbury visits Ecumenical Patriarch in Istanbul | The Archbishop Of Canterbury

 

Lambeth Palace نさんのツイート: "Archbishop @JustinWelby visited the Ecumenical Patriarch in Istanbul today. Find out more: https://t.co/hA2rYgMOAV… "

 

 会談中、バルソロメオス聖下は、ジャスティン・ウェルビー座下に、ウクライナ及びマケドニア共和国(マケドニア旧ユーゴスラビア共和国 : FYROM)における全地総主教庁の立場を伝えた模様。
※ジャスティン・ウェルビー座下は、昨年【2017年】11月にロシア正教会モスクワ総主教キリル聖下よりロシア正教会側の立場を説明されている模様。

 上記リンクのカンタベリー大主教公式サイトの記事末尾には、ジャスティン・ウェルビー座下のコメントとして「ウクライナで持ち上がっている(東方正教会の)教会法上の問題は東方正教会が対処する問題」という主旨から始まる、外部の教会の人がコメントしそうな短いコメントが末尾に掲載されています。

 

関連:
 【シスマ2018 – The Schism of 2018】<東方正教会大分裂>: ウクライナへの独立正教会設置から始まったコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立とそれに端を発した出来事及びその他のシスマ的な出来事の記事一覧など<大分裂、または崩壊?>

 

シスマ2018:キリスト教/ロシア正教会モスクワ総主教キリル聖下のモルドバ訪問日程が4日→2日に短縮(2018年10月)ルーマニア正教会がコンスタンティノープルの全地総主教庁に同調しモルドバの管轄権を両者で分割するとも

 【シスマ2018】2018年<東方正教会大分裂>: ウクライナへの独立正教会設置から始まったコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立とそれに端を発した出来事及びその他のシスマ的な出来事の記事一覧など

 

 ロシアの正教会系情報サイト「OrthoChristian.Com」によりますと、2018年10月25日~28日に予定されていたキリスト教/東方正教会/ロシア正教会の首座/モスクワ・全ロシア【全ルーシ】総主教キリル聖下(キリール総主教 : His Holiness Kirill, Patriarch of Moscow and all Russia【Rus’】)によるモルドバ共和国訪問が、10月27日~10月28日に短縮されたとのことです。
追記:
 10月30日現在で続報を見かけないので訪問がおこなわれたのかどうかわかりません。

 

 (英語)Provocations reportedly planned against Pat. Kirill during upcoming visit to Moldova / OrthoChristian.Com

 

 同サイトによりますと(微妙にまわりくどいのでまとめますと)、反ロシア的な不穏な政治情勢を考慮して訪問中止が検討されていたところを、モルドバ共和国大統領イーゴル・ドドン閣下(His Excellency Mr Igor Dodon)が「二日間だけでいいので来てください!」とお願いしたところ、そうなった、ということです。

 

 また、モルドバ共和国の管轄は、ロシア正教会系のモルドバ正教会と、ルーマニア正教会系のベッサラビア府主教庁が対立していますが、これに関して教会分裂的な進展があるという情報が出ています。
 キリスト教/東方正教会首席/コンスタンティノープル=新ローマ大主教・全地総主教バルソロメオス聖下(バーソロミュー1世世界総主教バルトロマイ1世ヴァルソロメオス1世 : His All-Holiness Bartholomew, Archbishop of Constantinople-New Rome and Ecumenical Patriarch)のルーマニア訪問が2018年11月に予定されており、その訪問中の2018年11月25日に、キリスト教/東方正教会/ルーマニア正教会の首座/ルーマニア正教会総主教ダニエル聖下(ブカレスト大主教 : ムンテニア・ドブロジャ府主教 : カエサレア・カッパドキアエ座代行 : His Beatitude Daniel, Archbishop of Bucharest, Metropolitan of Muntenia and Dobrudgea, Locum tenens of the throne of Caesarea Cappadociae, Patriarch of the Romanian Orthodox Church)とともに、モルドバ共和国の管轄権に関する宣言をおこなうのではないかということです。
 モルドバ共和国にはガガウズ自治区というトルコ系東方正教会信徒が多数派の地域があり、ここをコンスタンティノープルが取り、残りをルーマニア正教会のものだと宣言するということでしょう。
※モルドバには、事実上独立している(というかロシア領になっているというか)沿ドニエストル共和国がありますが、ここは対ロシア戦争で勝ち取らない限りどうにもなりません

 ともあれ、この情報が本当だとすると、東方正教会の中で第二の信徒数があるルーマニア正教会が全地総主教庁に完全に同調することになり、教会間の調停は不可能だという見方がまた深くなるでしょう。

 

ロシア国営タス通信記事(英語):キリスト教/セルビア総主教イリネイ聖下「コンスタンティノープルの行動は東方正教会に長期に渡る亀裂を生み出す」(2018年10月)

 ロシア国営タス通信の記事ですが、キリスト教/東方正教会/セルビア正教会の首座/セルビア総主教イリネイ聖下(ペーチ大主教 : ベオグラード・カルロヴツィ府主教 : His Holiness Irinej, Serbian Patriarch, Archbishop of Peć, Metropolitan of Belgrade and Karlovci)が、現在進行中の事態について「コンスタンティノープルの行動は長期に渡る亀裂を生み出す」とコメントしているようです。

 

 (英語)TASS: Society & Culture – Constantinople’s actions in Ukraine to trigger long-term rift, warns Serb patriarch

 

 もっとも、具体的な行動はというと、アンティオキア・東方全土総主教ヨウハンナ10世聖下(His Beatitude Patriarch John X of Antioch and All the East)とともに、「東方正教会の全体会合を呼びかける」声明を出すというなんの意味もないことくらいしかしていないので、これからも自分たちの教会に直接関係が出てこない限り何もしないと思われます。

 

関連:
 2018年~ ウクライナへの独立正教会設置を巡るコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立関連の記事一覧

 

シスマ2018:イタリア紙がキリスト教/ロシア正教会ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下にインタビュー「ウクライナの教会分裂の背後にアメリカの影」(2018年10月)「コンスタンティノープルは金を受け取ったと思うか?」という質問に「わからないが1924年のポーランドの時には彼らは受け取った」

  「世界代表司教会議(シノドス)第15回通常総会(テーマ:若者、信仰そして召命の識別)」に臨席及びローマ教皇フランシスコ聖下との会見のために同地を訪問中のキリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下(ヒラリオン府主教 : His Eminence Metropolitan Hilarion of Volokolamsk, chairman of the Moscow Patriarchate’s Department for External Church Relations (DECR))は、イタリア紙「Il Messaggero」からインタビューを受けた模様です。

 同紙の公式サイト(イタリア語)と、ロシア正教会の公式サイト(ロシア語)に記事がありますが、掲載されている内容が違います
 矛盾しているわけではないですが片方にしか掲載されていない内容や、表現の仕方や単語の選び方が明らかに別です。

 タイトルはイタリア紙側では「イラリオン府主教『ウクライナの教会分裂の背後にアメリカの影』」
 ロシア正教会側では「イラリオン府主教:ヨーロッパの全教会は同じ問題に直面している」という感じです(同じ問題というのは「世俗化」です)。

 

 なお、どちらにも掲載されていますが(ロシア側の表現をベースに簡単に書きますと)、

記者:バルソロメオス総主教は(独立を認めるかわりに)お金を受け取ったと思うか?
イラリオン府主教:私にはわからない。私がいえるのは、1924年にコンスタンティノープルがポーランド正教会の独立を認めた時には金が支払われたということだ。交わされた書簡に金額が書かれている

 ……と、いうような部分があります。ロシア系メディアが、コンスタンティノープルの全地総主教庁が今回の件で約28億円を受け取っていると報道していることに関連した質問ですが、効果のほどはわかりませんが真偽は受け流しつつ疑惑を深めることを狙ったコメントでしょう(いきなり巻き込まれたポーランド正教会はいい迷惑ですが)。

 

 (イタリア語)Il metropolita Hilarion: «L'ombra degli Usa dietro lo scisma della chiesa ucraina»

 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Митрополит Волоколамский Иларион: Все христианские Церкви в Европе сегодня стоят перед одними и теми же вызовами | Русская Православная Церковь
 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Митрополит Волоколамский Иларион: Все христианские Церкви в Европе сегодня стоят перед одними и теми же вызовами / Интервью / Патриархия.ru

 

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