シスマ2018:インタビュー記事(BBCロシア語):キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教庁/テルメッソス大主教ヨブ座下(ウクライナ系の人物)(2018年11月)ロシアの正教会系サイトは座下の発言について「全地総主教庁は独立を認めるのみならず、独立を剥奪することもできる」

 BBCロシア語が、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープル全地総主教庁のテルメッソス大主教ヨブ座下(Archbishop Job of Telmessos)へのインタビューの記事を掲載しています。

 

 (ロシア語)"Надеемся, Москва обратится к разуму". Константинопольский епископ об украинской автокефалии – BBC News Русская служба

 

 ざーっと見てみましたが、とにかく長いうえに、大半がこちらには判定できない内容なので、詳細は読まないとは思います。

 この記事について、ロシアの正教会系サイト「OrthoChristian.Com」は、

 (英語)Not only can we give, but we can also take away autocephaly—Abp. Job (Getcha) / OrthoChristian.Com
 (英語)“The Moscow Patriarchate no longer exists in Ukraine today”—Abp. Job (Getcha) / OrthoChristian.Com

 「我々は独立を与えるだけでなく、剥奪することをもできる」と見出しにつけて紹介しています。
 当方はざーっと読んだだけなので、BBCロシア語の記事において、直接この部分にあたる箇所を見つけていません。
 とはいえ、全地総主教庁がそう考えているのはほぼ間違いないでしょう。
 近代において、彼らは、ギリシャ正教会の独立を認めた後に剥奪しています。
 そうなると、独立正教会というのは、「そもそも独立しているのか」というのが疑問になってきます。Autocephaly な 教会を「独立正教会」または「独立教会」としたのは、誤訳の類で、実際は「いつでも権限を剥奪される可能性のある自治的な教会」のことでしょう(全地総主教庁の見解が正しいとすれば)。もちろんこれでは Autonomous な教会との差がわかりませんが、「いつでも権限を剥奪される可能性のある第一級自治正教会」と「いつでも権限を剥奪される可能性のある第二級自治正教会」とでもすればよろしい。
 それにしても独立正教会が実は「独立していない正教会」のことだったとは……。

 また、座下は、1054年の東西教会分裂(教会大シスマ)のときと今では状況が違うことを述べています(1054年についてはめんどくさい話にもなりますので、とりあえず象徴的な年だとして先へ話を進めましょう)。
 要するに、東西教会分裂は神学上の違いなどがあったのに対し、今回はそんなものはない、シスマなどといっている連中は人々を脅しているのだ、ということです(当方のサイトもシスマといっているので、大主教からお叱りを受けてしまったことになるのでしょう!)。
 しかし、座下の発言全体をざっくり要約すれば、「我々が正しい。ロシアは従わないなら教会法違反。異論は認めない」といっているだけ
 ウクライナ系の人物が話し合いをする気がない意思をロシアに対して示しているのは、なるほどシスマではなく、ただの世俗的ケンカにすぎないともいえるでしょう。
 ですが、2016年の聖大シノド(The Great and Holy Synod)の件をみても明らかなように、教えに関しても分裂の兆しははっきりとあります。
 あるいは教会法についてまともな統一的見解も出てきていない状況を見れば、「一つの教えを奉じている」などというのが大嘘か大間違いで、「一つの教えを奉じている詐欺」か、「一つの教えを奉じているつもりだったがそんなことはなかったぜ!」というオチすら見えてきています(これについては本気で疑っており、検証すべきことだと考えています)。
 いずれにせよ、座下の定義するシスマにあてはまるかそうでないかはともかく、東方正教会は分裂するので(話し合うつもりがないんですから)、これからもシスマと書きます。

 そのほか、(ロシアのみならずオランダ系の機関による)世論調査で全地総主教庁の見解(ウクライナの人々が望んでいる)とは明らかに反する結果が出たのを意識したのか、「議会の多数の賛成があれば多数の人々が望んでいるということなのだ」という理屈をおっしゃっています。
 ジャン=ジャック・ルソー以降、思想家は、民意(民意に相当する言葉)をベースに、民主主義と現在いわれているよくわからない考えの集積について頭をひねってきましたが、結局のところ、民意というものがとらえどころがない=なんとでもいえるという現実を克服することはできず、「でも豊かで平和だしこれからも世の中はよくなるだろう」というにまどろんで仕事をサボっているうちに、アメリカや西欧は(他の地域も)とんでもない状況を迎えています。
 そんな時期に、「議会の多数の賛成があれば多数の人々が望んでいるということなのだ」。……こんなものは今どき意見のうちにも入りません
 世俗化(=聖職者はバカなので宗教に金や時間をつぎこむのはムダ)が進むわけだと納得してしまいました。いやまあ……もとから知ってました……けど。

 

 ともあれ今回のインタビュー、読みこむ気がまるでしませんが、キリスト教、東方正教会のダメっぷりをあらわす記念碑的なものになっているのではないか、と強引に歴史的評価をして感想を終わりたいと思います。

 新約聖書/マタイによる福音書/10章/34節 より:

わたしが地上に平和をもたらすために来たと考えるな。平和ではなく剣をもたらすために来たのだ。

 

 【シスマ2018 – The Schism of 2018】<東方正教会大分裂>: ウクライナへの独立正教会設置から始まったコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立とそれに端を発した出来事及びその他のシスマ的な出来事の記事一覧など<東方正教会内戦、大分裂、そして崩壊?>

 

キリスト教/ベラルーシ正教会首座パーヴェル府主教座下が、ベラルーシ駐箚のアルメニア大使と会見(2018年10月)

 2018年10月26日、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁下でわずかな自治的な権限を保有するベラルーシ正教会【全ベラルーシにおける総主教代理区】首座/ミンスク・ザスラーヴリ府主教パーヴェル座下(His Eminence Metropolitan PaulPavel】of Minsk and Zaslavl, The Patriarchal Exarch of All Belarus)は、新任のベラルーシ共和国駐箚アルメニア共和国大使アルメン・ゲヴォンジャン閣下(His Excellency Mr Armen Ghevondyan)と会見しました。

 

 (ロシア語:ベラルーシ正教会公式サイト)Состоялась встреча митрополита Павла с Послом Армении в Беларуси | Межрелигиозный диалог | Белорусская Православная Церковь | Новости | Официальный портал Белорусской Православной Церкви

 

 大使からパーヴェル座下に、キリスト教/オリエント正教会/アルメニア使徒教会/全アルメニア人のカトリコス・最高総主教ガレギン2世聖下(His Holiness Karekin IIGaregin II】, Supreme Patriarch and Catholicos of All Armenians)からの書籍の贈り物が手渡され、パーヴェル座下からガレギン2世聖下へ返礼のイコンが贈られたようです。

 

Белорусская Православная… – Белорусская Православная Церковь | Facebook

 

シスマ2018:イタリア紙がキリスト教/ロシア正教会ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下にインタビュー「ウクライナの教会分裂の背後にアメリカの影」(2018年10月)「コンスタンティノープルは金を受け取ったと思うか?」という質問に「わからないが1924年のポーランドの時には彼らは受け取った」

  「世界代表司教会議(シノドス)第15回通常総会(テーマ:若者、信仰そして召命の識別)」に臨席及びローマ教皇フランシスコ聖下との会見のために同地を訪問中のキリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下(ヒラリオン府主教 : His Eminence Metropolitan Hilarion of Volokolamsk, chairman of the Moscow Patriarchate’s Department for External Church Relations (DECR))は、イタリア紙「Il Messaggero」からインタビューを受けた模様です。

 同紙の公式サイト(イタリア語)と、ロシア正教会の公式サイト(ロシア語)に記事がありますが、掲載されている内容が違います
 矛盾しているわけではないですが片方にしか掲載されていない内容や、表現の仕方や単語の選び方が明らかに別です。

 タイトルはイタリア紙側では「イラリオン府主教『ウクライナの教会分裂の背後にアメリカの影』」
 ロシア正教会側では「イラリオン府主教:ヨーロッパの全教会は同じ問題に直面している」という感じです(同じ問題というのは「世俗化」です)。

 

 なお、どちらにも掲載されていますが(ロシア側の表現をベースに簡単に書きますと)、

記者:バルソロメオス総主教は(独立を認めるかわりに)お金を受け取ったと思うか?
イラリオン府主教:私にはわからない。私がいえるのは、1924年にコンスタンティノープルがポーランド正教会の独立を認めた時には金が支払われたということだ。交わされた書簡に金額が書かれている

 ……と、いうような部分があります。ロシア系メディアが、コンスタンティノープルの全地総主教庁が今回の件で約28億円を受け取っていると報道していることに関連した質問ですが、効果のほどはわかりませんが真偽は受け流しつつ疑惑を深めることを狙ったコメントでしょう(いきなり巻き込まれたポーランド正教会はいい迷惑ですが)。

 

 (イタリア語)Il metropolita Hilarion: «L'ombra degli Usa dietro lo scisma della chiesa ucraina»

 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Митрополит Волоколамский Иларион: Все христианские Церкви в Европе сегодня стоят перед одними и теми же вызовами | Русская Православная Церковь
 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Митрополит Волоколамский Иларион: Все христианские Церкви в Европе сегодня стоят перед одними и теми же вызовами / Интервью / Патриархия.ru

 

関連:
 2018年~ ウクライナへの独立正教会設置を巡るコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立関連の記事一覧

 

シスマ2018:キリスト教/フランス正教主教会議【AEOF】がウクライナ問題を憂慮し解決を訴える声明(2018年10月)ロシア正教会の主教らは出席せず

【シスマ2018】東方正教会大分裂: ウクライナへの独立正教会設置を巡るコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立とそれに端を発した出来事及びその他のシスマ的な出来事の記事一覧など

 

 2018年10月16日、キリスト教/東方正教会のフランス正教主教会議【AEOF】がウクライナ問題を憂慮し解決を訴える声明を出したようです。ロシア正教会の主教らは出席せず。

 

 (英語)Statement by the assembly of the French Orthodox Bishops on the Ukrainian issue ⋆ Orthodoxie.com

 (英語:ルーマニア正教会通信)Statement by the assembly of the French Orthodox Bishops on the Ukrainian issue – Basilica.ro

 

 そして、このフランス正教主教会議【AEOF】の議長は、ロシア正教会による“フィラレート聖下”及び“マカリー座下”へのAnathemaを全地総主教庁が一方的に撤回することを発表したフランス府主教エマニュエル座下(His Eminence Metropolitan Emmanuel of France)であり、座下自信のみによる決定ではもちろんないにせよ、座下の発表により問題が発生しているのに「ウクライナ問題の解決」「正教会の統一」「独立正教会関係の協働の必要性」を求める声明を出すなど実にまあ神経が太いことです。ロシア正教会にさらにケンカをふっかけているのか、それとも脅していればロシアは屈服すると思っているのかよくわかりませんが……。

 なお、管轄権が確定していない東方正教会の信徒が少数派の各国などに正教主教会議は設置されていますが、コンスタンティノープルの全地総主教庁の主教が議長となるため、ロシア正教会はユーカリスティック・コミュニオン解除前から参加しないことを決定しています。
 コミュニオン解除により、ますます参加の可能性がなくなりました。

 これらの正教主教会議のウェブサイトからいつロシア正教会やロシア正教会の主教らの名前が消えるかというのが気になるポイントではありますが、このフランス正教主教会議【AEOF】の公式サイトでは年内に消すこともあるかもしれません。

 

シスマ2018:あくまでロシアの正教会系メディアの情報ですが、キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教庁、“ウクライナ正教会キエフ総主教庁”、“ウクライナ独立正教会”で、独立正教会設置に向けた細かな計画について同意が進んでいない模様(2018年10月)

【シスマ2018】東方正教会大分裂: ウクライナへの独立正教会設置を巡るコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立とそれに端を発した出来事及びその他のシスマ的な出来事の記事一覧など

 

 (英語)Ukrainian schismatic leaders disagreeing over how to unite / OrthoChristian.Com

 

 あくまでロシアの正教会系メディアが(おそらくウクライナ国内の報道から自分たちに良いものを選んで構成しているのだと思いますが)、コンスタンティノープルの全地総主教庁、“ウクライナ正教会キエフ総主教庁”、“ウクライナ独立正教会”の間で、独立正教会設置に向けた細かな調整が進んでいないようだという話です。

 まず全地総主教庁ですが、新設する独立正教会の首座を府主教とし、“ウクライナ正教会キエフ総主教庁のキエフ総主教フィラレート聖下”をそれにあてたい、という考えが(全体でないにせよ)出ています。
 が、フィラレート聖下は「自分はすでに総主教、これからも総主教」と、府主教への降格を受け入れるつもりはまったくないようです(下手をすれば、“キエフ・全ルーシ総主教”と言い出すかもしれません)。
 付言していえば、“ウクライナ正教会キエフ総主教庁”と“ウクライナ独立正教会”、及びウクライナ国内のその他の親コンスタンティノープル派の少数グループが合流すれば、その信徒数については、ルーマニア正教会の信徒数を超えているとも考えられます。ロシア正教会が全地総主教庁とのコミュニオンから離脱した以上、東方正教会の教会法上合法な教会で最大の信徒数を誇るのは新設される「ウクライナ正教会」である、と考えれば、その首座が総主教であるのは当たり前のことで、なぜ今になって全地総主教庁が府主教にとどめたい意向を示しているのか、よくわからないところです(もちろんこのニュースが本当だとしてですが)。

 そして、“ウクライナ独立正教会の首座/キエフ・全ウクライナ府主教マカリー座下”ですが、フィラレート聖下との話し合いで、新たな教会をどうするかについて、「一方的な合流を求められた」という話をしているそうです(しつこいようですが、ロシアの正教会系メディアが正しく報道していれば)。しっかり話し合って組織としての在り方を決めるべきだとまっとうなことを主張しているようですが……まっとうなことを考える人は今回のようなムチャな展開に関わってはいけないのでは……。
 そもそも過去にこの二教会は一時的には協調しましたが、その後の合同については失敗に終わっています。
 また、マカリー座下は、全地総主教庁がしっかりとした主導をしていないことにも不満があるようです。

 

 いろいろ問題はあるようですが、一方で全地総主教庁はおそらく近いうちに独立正教会の設置を承認するでしょう。
 設立する独立正教会がしっかり運用されるのかという現実的な問題が浮上してきています。
 まだ名前すら決まっていないということですので。