(注意:失礼なツッコミ多々あります)キリスト教/東方正教会のウクライナ問題をめぐる名言・珍言【その後の展開を含む】(2019年5月あたりまで)

 最近の情勢を補足しつつ、ざーっと書いていきます。


 

 コンスタンティノープル支持派の某聖職者:
「コンスタンティノープルと縁を切ったら、我々はプロテスタントと同レベルになってしまう!」

 この方は、凄まじく適切に東方正教会の現況を言い表しました。
 かねがね東方正教会の主教らは、「我々の聖なるコミュニオンは、寄り集まっているだけのルター派とは違う」などと発言していましたが、最近の体たらくを見るにつけ、あなた方、そろそろ贖罪の時期が来たのではないですか?

 


 

 コンスタンティノープルが独立を認めたほうのウクライナ正教会(OCU)で、影からすべてを操る予定だったにも関わらず名誉職に追いやられた“フィラレート名誉総主教”:
「ポロシェンコ大統領と“エピファニー府主教”に騙された」

 エピファニー府主教は、フィラレート名誉総主教が操り人形にする予定だった人物ですが、OCUの首座に選出されて地位を得た後は、フィラレート名誉総主教を排除する方向に動いています(排除というかそもそも別に名誉総主教にはルール上なんの実権もないので当然のことをしているだけというか)。
 これについて、フィラレート名誉総主教は、「彼は私に、彼自身は対外的な役割だけをこなし、実権はすべて私に預けると約束した」とエピファニー府主教が操り人形になることに同意していたと発言し、波紋を呼んでいます。
 そして、

「コンスタンティノープルからの独立が必要」

 とも発言。
 あなたがコンスタンティノープルの介入を要求したのでは……いやポロシェンコ大統領に騙されたのでしたな!

 それにしてもモスクワに破門されてもウクライナ国内に影響力を確保していた人間が、その破門をコンスタンティノープルに撤回されたら影響力を喪失していくというのは、なんともいえない悲哀……悲哀?、まあ悲哀でいいですか、悲哀を感じます。
 ポロシェンコ大統領と共に大喜び(ぬか喜び)している映像が世界に流れてから半年と少ししか経過していません。二人とも今年中には話題から完全にフェードアウトするのではないかと思いますが、しかしフィラレート名誉総主教はチキンレースの果てに OCU とコンスタンティノープルを崩壊に追いやる可能性もあります。

 なお、 OCU の前身となった、ウクライナ正教会キエフ総主教庁【UOC-KP】及びウクライナ独立正教会【UAOC】は、団体としてはまだ登録されているらしく(当局者は否定?)、聖堂などの所有権を含めて、なにがどうなっているのかははっきりしません。
 もちろん所有権が残っていても、現在のウクライナでは強制的に暴力で奪うことが許されている(?)ので、あまり意味はないかもしれません。

 


 

 エルサレム総主教セオフィロス3世聖下:
「(モスクワ総主教庁系ウクライナ正教会首座の)オヌフリー府主教は、神がこの難局を乗り越えるために選んだ人物」

 これは、コンスタンティノープルが吹っ切れて暴走し始める少し前の発言です。
 その後事態が展開してから、ロシア正教会側の聖職者の一人が「エルサレムがコンスタンティノープルを支持するなら、エルサレムともフル・コミュニオンを解除する」という発言をしていました。つまり、少なくともロシア正教会の一部聖職者は、セオフィロス総主教は「神が~選んだ人物」と発言した少し後にはその彼を見捨てるような人物と考えていたわけであり、エルサレム総主教に対してなんと無礼な、と思ったりしますが、みんな興奮していたのか咎める声もありませんでした。
 とはいうものの、これはセオフィロス3世聖下がいい加減な人物と思われている傍証にはなるでしょう。

 現在までエルサレム総主教庁は、モスクワ寄りというか、コンスタンティノープルから距離を置くというか、そのような立ち位置を取っています。
 ポロシェンコ大統領が、約束を破って OCU の聖職者を同行して訪問してきたときには、仮病を使ってスルー(公式発表は体調不良による入院ですが、前後にモスクワ総主教庁系のウクライナ正教会の聖職者らと会見)するなど、ロシア系正教会メディアもそのふんばりを評価していますが、一方、アメリカにも近いといわれる総主教がなぜそんなにがんばっているのかわからない状況でもあります。
 なにか陰謀を企んでいるのか、スリルを楽しんでいるのか……。

 


 

 教会法上非合法なマケドニア正教会-オフリド大主教庁の主教:
「我々は近いうちにコンスタンティノープルに独立を承認されるだろう。しかし、各独立正教会がウクライナの独立正教会(OCU)を承認していないので、我々も彼らを承認するかどうかはわからない」

「コンスタンティノープルの顔に泥を塗る予定ですが、コンスタンティノープルから独立正教会として承認されると思ってます」というこれまた凄い発言。
 今、東方正教会は歴史上もっとも言論の自由を謳歌する時代。

 とはいうものの、マケドニア(北マケドニア共和国)を管轄権に持つセルビア正教会の聖シノドが、マケドニアについてなんらかの検討をおこなっているという情報が出てきています。
 そして、同教会のアメリカの主教が一人、コンスタンティノープル支持を表明しているらしく、またもや混沌の予感。
 セルビア正教会の海外の教会組織については、オーストラリアとニュージーランドの新グラディシュカ府主教庁の件が解決して以来、特に問題は残っていないのではないかと思いますが、親コンスタンティノープル・反ロシアがこの主教一人ということも考えにくいので、にわかにセルビア正教会の海外の組織が気になってくるところです。

 


 

 キリスト教/ローマ・カトリック教会/ウクライナ東方典礼カトリック教会【UGCC】の首座/キエフ=ハリチ首位大司教スヴャトスラフ・シェウチューク大司教座下:
「唯一の Patriarchate (総主教庁 or 総大司教庁)を設立し、ローマ及びコンスタンティノープルとデュアル=コミュニオンを結ぼう」

 要するにローマからもコンスタンティノープルからも認められる教会を設立しようということをですが、ローマもコンスタンティノープルもそんなつもりはないのに、なにをいうとるのか、とまったくもって相手にされていませんでした。でもあきらめていない様子

 なお、前述の OCU の首座エピファニー府主教は、「 OCU と UGCC はともに愛国的な教会組織」というような発言をしています。
 おっしゃりたい欲はわからなくもないですが、えーと、あなた方のことは、ウクライナ天主教愛国会ズとお呼びすればいいですか?

 


 

 在外ロシア正教会:
「もはやコンスタンティノープル自体が教会法上非合法な存在」

 昨年の話ですが、コンスタンティノープルの管轄権下にある西欧ロシア正教会大主教区のイタリア司祭長区のひとつの聖堂と信徒たちが、在外ロシア正教会に現在の情勢について尋ねたところ、上記の回答をえたため、同大主教区を離脱して在外ロシア正教会の管轄権下に入るということがありました。
 ここまでは「そうですか」という話ですが、これについて大主教区の首座ジャン大主教が、在外ロシア正教会側に抗議する(そりゃするでしょう)などをしていたところ、一月も経たないうちにコンスタンティノープルが西欧ロシア正教会大主教区の総主教代理区としての地位を剥奪、集団としての解体を要求し始めるという摩訶不思議な事態に。「うちの子分がロシアに嫌がらせを受けているぞ。よし、その子分をつぶそう」ということです。
 現在、同大主教区は、議論を重ねつつ、教会法上合法かつ自治的な権限を持つ集団であり続ける方向を模索していますが、コンスタンティノープルとのコミュニオンにあることを教会法上合法とする限り難しいでしょう。
 フィラレート名誉総主教と違い、何の罪もない、じゃなかった騙されたわけでもないのに、崩壊していく大主教区に同情してもいいところですが、もはや「教会法上合法」とかいわれるだけで失笑気味なので同情できません

 ところで、この項目の発言を読んでから、ページトップの悲痛な叫びを読んでいただくと、より一層事態がわかりやすいのではないかと思います。

 


 

キリスト教/ローマ教皇フランシスコ聖下が、南スーダン共和国大統領サルヴァ・キール・マヤルディト閣下らと会見、足にキス(2019年4月)カンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビー座下が同席

 2019年4月11日、キリスト教/ローマ・カトリック教会の首座/ローマ教皇聖座およびバチカン市国の絶対君主/ローマ教皇フランシスコ聖下(His Holiness Pope Francis)はサンタ・マルタや館にて、南スーダン和平の協議の一環として教皇を訪問した南スーダン共和国大統領サルヴァ・キール・マヤルディト閣下(サルバ・キール・マヤルディ大統領 : His Excellency Mr Salva Kiir Mayardit)及び(元)南スーダン共和国副大統領リエック・マシャール閣下(Riek Machar)らと会見。
 会見中には、和平要望のために足にキスをするということがありました。

 キリスト教/アングリカン・コミュニオン/英国国教会/カンタベリー大主教ジャスティン・ウェルビー座下(全イングランド首座 : The Most Reverend and Right Honourable Justin Welby : His Grace The Lord Archbishop of Canterbury : Primate of All England)らが同席。

 

Vatican News – English:
Pope Francis – Leaders of South Sudan 2019-04-11 – YouTube

 

Vatican News – Italiano:
Papa Francesco – Leaders del Sud Sudan 2019-04-11 – YouTube

 

Vatican News – Italiano:
Papa Francesco: il gesto storico per la pace in Sud Sudan – YouTube

 

 (英語)Pope's unexpected gesture: kisses feet of South Sudan leaders at war against one another | ROME REPORTS

Pope's unexpected gesture: kisses feet of South Sudan leaders at war against one another – YouTube

 

 (英語)Pope to enemy leaders of South Sudan: Your people are tired of war | ROME REPORTS

ROME REPORTS in English:
Pope to enemy leaders of South Sudan: Your people are tired of war – YouTube

 

 (英語:バチカン・ニュース)Pope Francis: peace, light, and hope are possible in South Sudan – Vatican News
 (英語:バチカン・ニュース)The gesture of the Servant of the Servants of God – Vatican News

 

80歳(2019年4月8日):キリスト教/聖墳墓騎士団総長エドウィン・フレデリック・オブライエン枢機卿座下が80歳を迎え、ローマ教皇選挙権を喪失。選挙権を持つ枢機卿の人数は121人に減少

 2019年4月8日、キリスト教/ローマ・カトリック教会のエルサレム聖墳墓騎士団総長エドウィン・フレデリック・オブライエン枢機卿座下(His Eminence Edwin Frederick Cardinal O’Brien, Grand Master of the Equestrian Order of the Holy Sepulchre of Jerusalem)が80歳を迎え、ローマ教皇選挙権を喪失しました。
 これに伴い、選挙権を持つ枢機卿の人数は121人に減少しました。

 

 (英語)Card. Edwin O’Brien has turned 80 and loses right to participate in conclave | ROME REPORTS

ROME REPORTS in English:
Card. Edwin O’Brien has turned 80 and loses right to participate in conclave – YouTube

 

キリスト教/ブルガリア正教会が、2019年5月に予定されているローマ教皇フランシスコ聖下のブルガリア訪問について、共同礼拝などをおこなうつもりはないことを表明(2019年4月)

 2019年4月3日、キリスト教/東方正教会/ブルガリア正教会は、2019年5月に予定されているキリスト教/ローマ・カトリック教会の首座/ローマ教皇聖座およびバチカン市国の絶対君主/ローマ教皇フランシスコ聖下(His Holiness Pope Francis)のブルガリア共和国訪問について、共同礼拝などをおこなう予定はないことなど、やや冷淡というか当然というか、そういう表明をしたようです。
 ブルガリア共和国駐箚(マケドニア兼轄)ローマ教皇大使アンセルモ・グイド・ペコラリ大司教座下(Archbishop Anselmo Guido Pecorari : ポプロニア名義大司教 : Titular Archbishop of Populonia)に通知された模様。

 なお、今回の招待はブルガリア共和国によっておこなわれたものであり、教会は関わっていないようです。

 教皇が聖アレクサンドル・ネフスキー大聖堂に入る(入るだけ)ことは可能だし、教皇と聖シノドの会合はおこなわれるようですが、共同礼拝などを拒否、通訳の司祭についても大聖堂の訪問と聖シノドの会合を除いては祝福しない模様。
 当然のことといえば当然なんですが、ローマ教皇がブルガリアの招待でやってくるのに、政府に対して強く出れるほど強いわけでもないブルガリア正教会が、ここまでいってしまって大丈夫かと心配になります。
 とはいえ提案をのんだ瞬間にブルガリア正教会が分裂するかもしれず、東方正教会がムチャクチャになっているこの時期になぜブルガリアはローマ教皇を呼んでしまったのか、と不思議に思う次第です。

 

 (ブルガリア語:ブルガリア正教会公式サイト)Решение на Св. Синод от 02.04.2019 г. относно посещението на папа Франциск у нас

 (英語)Bulgarian Orthodox Church refuses to take part in any services during Pope Francis’s visit – Romfea News
 (英語)Bulgarian Holy Synod takes hard stance against attending any services during Pope Francis’ visit in May / OrthoChristian.Com
 (英語)Decision of the Bulgarian Orthodox Church Holy Synod regarding Pope Francis’s visit ⋆ Orthodoxie.com

 

キリスト教/ローマ教皇フランシスコ聖下とモロッコ王 モハメッド6世 陛下が会見、共同文書への署名、など(2019年3月)

 モロッコ王国を訪問しているキリスト教/ローマ・カトリック教会の首座/ローマ教皇聖座およびバチカン市国の絶対君主/ローマ教皇フランシスコ聖下(His Holiness Pope Francis)は、モロッコ王モハメッド6世陛下(His Majesty the King Mohammed VI of Morocco)と会見、ともに王廟の訪問や、エルサレムに関する共同の請願への署名、イスラム教法学者などを養成する研究所の訪問などをおこないました。

 

 (英語)Pope Francis and Moroccan King sign joint appeal for Jerusalem | ROME REPORTS

ROME REPORTS in English:
Pope Francis and Moroccan King sign joint appeal for Jerusalem – YouTube

 

 (英語)Pope visits King Mohammed VI Institute, where 1,200 imams have been trained | ROME REPORTS

ROME REPORTS in English:
Pope visits King Mohammed VI Institute, where 1200 imams have been trained – YouTube

 

 モロッコ訪問:ムハンマド6世と教皇、エルサレムをめぐる共同アピール – バチカン・ニュース
 モロッコ:教皇、イスラム教の研究所を訪問 – バチカン・ニュース

 (英語:バチカン・ニュース)Pope in Morocco: visit to Mausoleum, signing the Book of Honour – Vatican News
 (英語:バチカン・ニュース)Pope Francis and King Mohammed VI make appeal for Jerusalem – Vatican News

 (英語:ローマ教皇聖座公式サイト)Apostolic Trip of His Holiness Francis to Morocco (30 to 31 March 2019) – Visit to the Mohammed V Mausoleum, Courtesy Visit to King Mohammed VI, and Visit to the Mohammed VI Institute for the Training of Imams, Mordichines and Mordichates
 (英語:ローマ教皇聖座公式サイト)Apostolic Trip of His Holiness Francis to Morocco (30 to 31 March 2019) – Appeal of His Majesty King Mohammed VI and His Holiness Pope Francis on Jerusalem / Al Quds Holy City and place of encounter