訃報(2020年10月16日):キリスト教/コンスタンティノープルのイタリア府主教ゲンナディオス座下が永眠(1937~2020)全地総主教バルソロメオス聖下が礼拝。ヴェネツィア総大司教フランチェスコ・モラッリャ座下が弔意

 2020年10月16日、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルのイタリア府主教ゲンナディオス座下(南欧における首座代理 : His Eminence, the Metropolitan of Italy and Exarch of the Southern Europe Gennadios)が永眠しました。
 1937年生まれ。

 コンスタンティノープル=新ローマ大主教・全地総主教バルソロメオス聖下(バーソロミュー1世世界総主教バルトロマイ1世ヴァルソロメオス1世 : His All-Holiness Bartholomew, Archbishop of Constantinople-New Rome and Ecumenical Patriarch)は鎮魂の礼拝をおこないました。

 また、ローマ・カトリック教会のヴェネツィア総大司教フランチェスコ・モラッリャ座下(His Beatitude Patriarch Francesco Moraglia, Patriarch of Venice)が弔意を表明しています。

 

 (イタリア語:イタリア・マルタ正教会大主教庁 公式サイト)Sacra Arcidiocesi Ortodossa d'Italia e Malta | È TRANSITATO AL CIELO IL METROPOLITA GENNADIOS

È TRANSITATO AL CIELO IL METROPOLITA… – Arcidiocesi Ortodossa d'Italia e Malta | Facebook

 

 (英語)Metropolitan Gennadios of Italy fell asleep in the Lord – Orthodox Times

 

Orthodox TimesさんはTwitterを使っています 「Metropolitan Gennadios of #Italy fell asleep in the Lord #orthodox_times https://t.co/quPtjA1Nvx」 / Twitter

 

Orthodox Times – Metropolitan Gennadios of #Italy fell… | Facebook

 

 (英語)Greek Metropolitan Gennadios of Italy reposes in the Lord / OrthoChristian.Com

 

Orthodox ChristianityさんはTwitterを使っています 「Greek Metropolitan Gennadios of Italy reposes in the Lord https://t.co/r12XSCvO2F He served as a hierarch in Italy since 1970. During his long pastorate, he founded more than 50 parishes and 5 monasteries and reestablished the Monastery of St. George in Venice. https://t.co/rIZu3AjW1p」 / Twitter

 

バルソロメオス聖下の礼拝:
Ecumenical Patriarchate – Πατριαρχικό Τρισάγιο για τον μακαριστό Μητροπολίτη Ιταλίας και Μελίτης | Facebook

 

 (イタリア語:ヴェネツィア総大司教庁 公式サイト)La morte del Metropolita Gennadios | Un ricordo nel messaggio di condoglianze del Patriarca Francesco all’Arcidiocesi ortodossa greca d’Italia e Malta: “Un vero testimone e costruttore di unità, un uomo di Dio, una persona ricca di gioia”
 (イタリア語:ヴェネツィア総大司教庁 公式サイト)Messaggio del Patriarca per la scomparsa del Metropolita Gennadios

 

東方正教会シスマ2020:キリスト教/ロシア正教会系のベラルーシ正教会の首座が交代(2020年8月)教会方面から見た場合、プーチン政権のルカシェンコ大統領支援は必然

 ベラルーシ共和国の混乱が最終的にどうなるのかわかりませんが、ここではキリスト教/東方正教会の現況からすると、プーチン政権がルカシェンコ大統領(大統領としておきます)を支援するのは必然ということになるということを記しておこうと思います。

 

 2018年~2019年に、キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教庁が、元来はロシア正教会の管轄権下にあるとされてきたウクライナにおいて、教会法上合法でない勢力(合法でない神品=聖職者の集団)を独立正教会として一方的に認めるということがありました(当サイトでは東方正教会大分裂やシスマ2018という単語を使っています)。ロシア正教会はこの結果、コンスタンティノープルとのフル・コミュニオンを解除。ウクライナ国内では、モスクワ総主教庁系のウクライナ正教会が当局やナショナリストから弾圧を受けるということが続き、ゼレンスキー大統領に代わっても、いまだ攻撃は続いています(率直にいって以前よりだいぶゆるくなっているようには思えますが……)。
 公平のために言えば、これはロシアとの政治的緊張があることが原因ではありますが、だからといって「古代からの正しい教え」がどうたらといっていた人たちが教会法とか聖職者とかテキトーでいいですなどと言いだせば状況がムチャクチャになるのは当たり前のことです。

 この(教会大分裂の)件は、いまだになんの解決も見ていないどころか傷口を広げていますが(トルコがコンスタンティノープルの聖堂をぽんぽん接収してモスクに変えている件もコンスタンティノープルとモスクワの絶縁状態のため「協力して対抗してくることはあるまい」とエルドアン大統領になめられているといううがった見方もあります)、今回のベラルーシの混乱において、この方面からの指摘があまりなされていないというのが不思議である、というのが正直な感想です。

 

 そもそもウクライナへの独立正教会設置は、当時のポロシェンコ大統領が求めたものであり、この政治主導のアイデアはモンテネグロや北マケドニアに波及し、さらに東方正教会の混乱を深めています。
 一方、ロシア連邦とベラルーシ共和国の統合国家【Union State】のさらなる推進には極めて消極的だったルカシェンコ大統領は、宗教面においてはロシア正教会系のベラルーシ正教会【ベラルーシ全土における総主教代理区】を尊重していました。今も尊重しています。

 この状況で、反ルカシェンコ勢力が立ち上がるわけですが、彼ら・彼女らが反ロシア・反プーチンを叫んでいなかったからといって、彼ら・彼女らがルカシェンコ大統領よりもプーチン政権に好意的である可能性はなく、ベラルーシ正教会にいたってはどうでもいいとしか思っていないことは明らかでしょう。
 ベラルーシ正教会の勢力が弱まれば、ウクライナにおいてコンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】と争っているウクライナ正教会(モスクワ総主教庁)系【UOC or UOC-MP】にもダメージとなります。弾圧強化が起こる可能性もあります。
 平たく言えば、反ルカシェンコ勢力の成功は、ロシア正教会とプーチン政権にとってはベラルーシのみならずウクライナへの影響力を大きく削がれるものであり、(当初彼ら・彼女らや一部専門家が見ていた)ロシアの介入はないだろうなどというのは能天気にもほどがある観測だったということです。

 現に、コンスタンティノープル系ウクライナ正教会の首座“エピファニー府主教”は、ベラルーシ正教会の聖職者のうちで反ルカシェンコ政権の抗議行動に身を投じた聖職者らなどにコンスタンティノープルに独立正教会として認めてもらうよう勧める発言をしました。ベラルーシには主に国外で活動する(教会法上合法でない)ベラルーシ独立正教会という反体制系教会もあり、この教会は OCU を構成した教会法上合法でない教会とも関係を持っていました。
 仮にこの動きが成功していれば、彼らコンスタンティノープル系のグループは、ウクライナ国内でさらに有利に戦えることになったでしょう(まだ失敗したと確定したわけではないですが)。

 

 以上の状況からプーチン政権はルカシェンコ大統領をバックアップする体制を整えざるをえない(えないというか……)ので整えていくわけですが、ロシア正教会モスクワ総主教庁にも動きがありました。
 ベラルーシ人である、ボリソフ・マリーナゴルカ主教ヴェニャミン座下(His Grace Bishop BenjaminVeniamin】 Borisov and Marinogorsk)を新たにベラルーシ全土における総主教代理/ベラルーシ正教会の首座に選出しました(2020年8月。これまで首座であったミンスク・ザスラーヴリ府主教パーヴェル座下(His Eminence Metropolitan PaulPavel】of Minsk and Zaslavl, the Patriarchal Exarch of All Belarus)の辞意を受けてのものとされる)。また翌月には座下は府主教に昇叙されています。
 これは要するにベラルーシ人を首座に選出してガス抜きをしたということで、これにどれほどの効果があるのか正直わかりません。

 しかし、ロシアの政界・聖界ともに引くつもりはまったくないだろうということは明らかで(今回のシスマ全般にいえますが、どの勢力も引くとマイナスが大きすぎるので引けない)、たとえ第三次世界大戦になろうともロシアが引くことはないのではないかと思います。

 

去年【2019年】9月に設置されたばかりのモルドバ内務省内の十字架像撤去が決定。キリスト教/ロシア正教会系のモルドバ正教会の首座/キシナウ・全モルドバ府主教ヴラジミール座下と、ルーマニア正教会のベッサラビア府主教ペトル座下(モルドバ管轄)が怒りの声明(2020年1月)

 事情がよくわからないのですが、モルドバ共和国で、去年【2019年】9月に設置されたばかりのモルドバ内務省内の十字架像撤去が決まったようです。

 

Instalarea unui crucifix în holul… – Consiliul pentru egalitate – Совет по равенству – Equality Council | Facebook

 

 決めた機関は、どんな権限があるところかよくわからないのですが、決定した内容については、要するにキリスト教を優遇するのは差別で、世俗的国家として良くありませんよ、ということでしょう。
 反論の期間は設けられているようなので、まだ撤去されたわけではないものと思います。

 十字架像設置時に臨席した、
 キリスト教/東方正教会/ロシア正教会の管轄権下で自治的な権限を行使するモルドバ正教会の首座/キシナウ・全モルドバ府主教ヴラジミール座下(His Eminence Metropolitan Vladimir of Chişinău and All Moldova)、
 キリスト教/東方正教会/ルーマニア正教会/ベッサラビア府主教庁のベッサラビア府主教/キシナウ大主教ペトル座下(His Eminence Petru, the Archbishop of Chisinau, the Metropolitan of Basarabia and the Exarch of the Plains)、
 は、ともに怒りの声明を発出しており、そもそもモルドバ共和国の国旗では鷲が十字架を咥えているという指摘もあります。

※「国旗を変えろ」という話が出てきたら大騒動ですが。

 

 (ルーマニア語【モルドバ語】:モルドバ正教会 モルドバ・全キシナウ府主教庁 公式ウェブサイト)Mitropolia Chişinăului şi a Întregii Moldove

Mitropolia Chișinăului și a Întregii… – Mitropolia Chișinăului și a Întregii Moldove | Facebook

 

 (ルーマニア語:ベッサラビア府主教庁 公式ウェブサイト)Mitropolia Basarabiei consideră drept un atentat la identitatea noastră de Credință și de Neam, decizia Consiliului pentru Prevenirea și Eliminarea Discriminării și Asigurarea Egalității, privind decizia de a scoate Crucifixul instalat în incinta M.A.I. | Mitropolia

http://mitropoliabasarabiei.md/mitropolia… – Mitropolia Basarabiei | Facebook

 

追加リンク:
 (英語)Romanian hierarch condemns removal of crucifix from Moldovan Ministry of Internal Affairs building / OrthoChristian.Com
 (英語)Romanian Metropolitan of Bessarabia condemns removal of crucifix from Moldovan Ministry of Internal Affairs building – Basilica.ro

 

キリスト教/ベラルーシ正教会の前首座フィラレート府主教座下が、現首座パーヴェル府主教座下およびローマ・カトリック教会のミンスク=マヒリョウ大司教タデウシュ・コンドルシエヴィチ座下と会見(2020年1月)

 2020年1月9日、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁下でわずかに自治的な権限を持つベラルーシ正教会【全ベラルーシにおける総主教代理区】の前・首座/全ベラルーシにおける名誉総主教代理/前ミンスク・スルーツク府主教フィラレート座下(His Eminence Metropolitan FilaretPhilaret】, The Patriarchal Exarch Emeritus of All Belarus)は、ベラルーシ正教会【全ベラルーシにおける総主教代理区】の首座/ミンスク・ザスラーヴリ府主教パーヴェル座下(His Eminence Metropolitan PaulPavel】of Minsk and Zaslavl, the Patriarchal Exarch of All Belarus)およびキリスト教/ローマ・カトリック教会/ミンスク=マヒリョウ大司教タデウシュ・コンドルシエヴィチ座下(Tadeusz Kondrusiewicz, Archbishop of Minsk-Mohilev)の訪問を受けました。

 降誕祭に際したもののようです。

 

 (ロシア語:ベラルーシ正教会公式サイト)Митрополит Филарет принял поздравления с праздником Рождества Христова | Межрелигиозный диалог | Белорусская Православная Церковь | Новости | Официальный портал Белорусской Православной Церкви

 

キリスト教/西欧ロシア正教会大主教区のジャン大主教座下の降誕祭のメッセージ(2020年1月)

 キリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁の管轄権下で自治的な権限を持つ西欧ロシア正教会大主教区の首座大主教/ドゥブナ府主教ジャン座下(イオアン大主教 : His Eminence Metropolitan JeanJohn】【Ioan】【Ioann】 of Dubna, Archbishop of the Russian Orthodox Churches in Western Europe)の降誕祭のメッセージです。

 

 (フランス語:西欧ロシア正教会大主教区 公式サイト)Archevêché des églises russes en Europe occidentale – Vœux de Noël 2020 de Son Eminence Monseigneur JEAN de Doubna

 

 2019年、コンスタンティノープルの管轄権下にあった同大主教区は、シスマ2018の影響を受けて分裂。モスクワ総主教庁に帰順したジャン大主教座下率いる勢力と、反発して分離した複数の勢力にわかれました。