キリスト教/東方正教会コンスタンティノープルの司祭が「バルソロメオス総主教のウクライナにおける行動は誤り」(2023年10月)

 (ウクライナ語)«Вважаю дії патріарха Варфоломія стосовно українського питання помилковими»

 (英語)Phanar cleric from UOC-KP: I was re-ordained, why was OCU admitted in rank? – News – news of Orthodoxy – the Union of Orthodox Journalists
 (英語)Phanar priest: Patriarch Bartholomew’s actions in Ukraine are a mistake – News – news of Orthodoxy – the Union of Orthodox Journalists

 (英語)Constantinople priest: The OCU is a spiritually deluded, frivolous church—Patriarch Bartholomew greatly erred / OrthoChristian.Com

 

 キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルの司祭がウクライナ語のインタビューで、バルソロメオス総主教のウクライナにおける行動は誤りと述べています。

※インタビューの中には、教会法以外の現実の問題の話もありますが、とりあえずここではルールの話に絞ります。

 2018年に、バルソロメオス総主教らの主導により、ウクライナで“統合会議”なるものが開催され、教会法上合法でなかった“ウクライナ正教会キエフ総主教庁(UOC-KP)”や“ウクライナ独立正教会(UAOC)”らの“主教”らによって、“ウクライナ正教会(OCU)”が結成されました。
 2019年、バルソロメオス総主教のトモスが OCU の“首座”“エピファニー府主教”に渡され、 OCU は独立正教会となった、というのが事の流れですが……。
  OCU を独立正教会、その“主教”らを神品(聖職者)と認めているのは、コンスタンティノープルやコンスタンティノープルに追随したギリシャ人系の教会(エルサレム総主教庁を除く)だけで、元・コンスタンティノープルの聖職者が首座を務めるアルバニア正教会ですら OCU を認めるのを拒否しているという状況。
 もともと、ウクライナには、ロシア正教会モスクワ総主教庁の管轄権下で自治的な権限を行使していた教会法上唯一合法なウクライナ正教会(UOC)が存在し、こちらはロシア・ウクライナ間の事態の流れにより独立正教会であることを宣言してはいますが、今もこちらをウクライナ国内の唯一の教会法上合法な教会と認めている教会が多数。そもそも、ほとんどの教会にとって、 OCU の“主教”らは神品(聖職者)でない(=せいぜい平信徒、あるいは信徒ですらない)ので、 OCU が独立正教会かどうかというのは実はどうでもいい従属の問題(そもそも平信徒は教会を率いることはできないし、信徒でないならば無関係)です。
 ところが、日本の NHK を含む各国の報道がいい加減なこともあり、何も知らない人たちには、コンスタンティノープルがアホなことをやったという、ただそれだけのことが、まったく伝わっておらず、宗教的に意味があることがおこなわれたようなことになっている。これはまあ、カトリック系のメディアとかもいい加減なので、 NHK が悪いというよりは、所詮メディアは……ということなのでしょう。

 今回の司祭のインタビューでは、この件がさらに掘り下げられています。
 この人物は、上記の教会法上合法でない UOC-KP の“司祭”だったらしいのですが、 2004 年にコンスタンティノープルで叙聖を受けてコンスタンティノープルの司祭となりました。これは、 UOC-KP の“司祭”は司祭としては認められないというのがコンスタンティノープルの姿勢だったからです。つまり彼は、コンスタンティノープルの叙聖を受けるまで、教会法上合法な司祭ではなかったということです。
 ところが、2018年になって、突如上記のような事態になり、 UOC-KP や UAOC の神品(聖職者)は教会法上合法な存在だということになりました。なりましたというか、コンスタンティノープルの中でそうなったのかどうかすらわからないのですが、そう扱っているからそうなったのでしょう。しかし、これに関して、なんにも説明がないのです。なんでいきなり教会法上合法な存在になったのか? 天から何か降ってきたのか? 地から何かわいてきたのか? コンスタンティノープルは彼らを教会法上合法な存在にする行為を何もしていないのだから、元から教会法上合法な存在だったということになるしかないのですが、そうなると 2004年 にこの司祭は(コンスタンティノープルからどうこうされるまでもなく)教会法上合法な司祭だったはずです。しかし、すでに司祭になっている人物に(同格の)司祭の叙聖をおこなうのはこれまたルール違反なので、どこをつついてもコンスタンティノープルはムチャクチャという結論しか出ないのです。

 要するにコンスタンティノープルは、ロシア正教会にマウントをかけたいがために教会法を大幅に無視してムチャクチャをした、その結果多くの教会からスルーされ、今回自らの司祭から批判を受けている、それだけのことです。そして、ここで折れるともはや失墜が避けられないため、ルール違反をルール違反と知りつつ政治的に押し通そうとしているのです。
 それが成功するかどうかは、しないような気もしますが、わかりませんが、したところでだからなんなんだというしか……。

着座式(2023年10月22日):キリスト教/日本正教会首座/全日本府主教セラフィム座下の着座式

 2023年10月22日、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁の管轄権下で自治正教会として活動する日本正教会【日本ハリストス正教会】の新たな首座に選出された(9月28日)日本正教会首座/東京大主教・全日本府主教セラフィム座下(His Eminence Seraphim, Archbishop of Tokyo, Metropolitan of All Japan : 辻永昇つじえ のぼるNoboru Tsujie)の着座式がおこなわれました。
 ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教アントニー座下(His Eminence Metropolitan Anthony of Volokolamsk, Chairman of the Department for External Church Relations of the Moscow Patriarchate)らが臨席。

 

 2023年10月22日(日)セラフィム府主教着座式 | 日本正教会|ハリストス正教会 The Orthodox Church in Japan

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁 公式ウェブサイト)Enthronement of Primate of the Japanese Autonomous Orthodox Church takes place / News / Patriarchate.ru
 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁 渉外局 公式ウェブサイト)Enthronement of Primate of the Japanese Autonomous Orthodox Church takes place.

 (英語)New primate of Japanese Church enthroned / OrthoChristian.Com
 (英語)Metropolitan Seraphim Enthroned as the Primate of the Japanese Autonomous Orthodox Church

 

関連:
 訃報(2023年8月10日):キリスト教/日本正教会首座/全日本府主教ダニイル座下が永眠(1938~2023)
 キリスト教/日本正教会の新たな首座に、仙台大主教セラフィム座下が選出(2023年9月)

“モンテネグロ正教会”の公式ウェブサイトで、「トモスを手に入れる唯一の条件」は「教会が国家の支持を受けること」(2023年10月)

 キリスト教/東方正教会系統の、主流の教会からはどこからも教会法上合法と認められていない(さらに対立で分裂も起きている)、モンテネグロ正教会(MOC)の、“ミハイロ府主教”(ツェティニェ大主教・モンテネグロ府主教ミハイロ座下 : His Beatitude Mihailo, Archbishop of Cetinje and Montenegrin Metropolitan)側の公式ウェブサイトで、「トモスを手に入れる唯一の条件」は「教会が国家の支持を受けること」というような文章を含む記事が出ています。

 

 (モンテネグロ語:モンテネグロ正教会【ミハイロ府主教側】 公式ウェブサイト)Odgovor Branku Kaluđeroviću | Crnogorska Pravoslavna Crkva

 

 これは要するに、ミハイロ府主教は、元はファナル(コンスタンティノープル)から破門された司祭にすぎないのですが、モンテネグロという国家が認めれば、ファナルから独立正教会として認めるトモスが手に入るだろう、という見解です。
 (対立しているボリス府主教派の立場は、ファナルから破門された人物がトップにいるとトモスが手に入らないだろうという見解)

 これを一笑に付すのは簡単ですが、ラトビアで政府主導で“独立正教会”が成立した(というか宣言した)ということを考えると……(ラトビア正教会の独立は、どこもまだ認めてないようですが)。

 どちらにせよ、外部と関係なく分裂に陥っているモンテネグロ正教会の未来は明るいものでもないでしょう。

キリスト教/ロシア正教会/プスコフ・ポルホフ府主教ティーホン座下が、シンフェロポリ・クリミア府主教に(2023年10月)

 キリスト教/東方正教会/ロシア正教会の聖シノドは、シンフェロポリ・クリミア府主教ラザル座下(His Eminence Metropolitan Lazar of Simferopol and Crimea)の引退と、プスコフ・ポルホフ府主教ティーホン座下(His Eminence Metropolitan Tikhon of Pskov and Porkhov)を新たにシンフェロポリ・クリミア府主教にすることを決定したようです。

 

 (ロシア語:ロシア正教会クリミア府主教庁 公式ウェブサイト)Митрополит Тихон (Шевкунов) назначен главой Крымской митрополии

 (英語)Metropolitan Tikhon of Pskov (author of Everyday Saints) transferred to Crimea / OrthoChristian.Com

キリスト教/ロシア正教古儀式派教会の首座コルニリー府主教座下が、ロシア正教会ヴォロコラムスク府主教アントニー座下を訪問(2023年10月)

 2023年10月6日、キリスト教/東方正教会系統の古儀式派のロシア正教古儀式派教会の首座/モスクワ・ロシア全土府主教コルニリー座下(His Eminence Metropolitan Korniliy of Moscow and all Russia)が、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教アントニー座下(His Eminence Metropolitan Anthony of Volokolamsk, Chairman of the Department for External Church Relations of the Moscow Patriarchate)を訪問しました。

 両教会の協力などに加え、ロシア正教古儀式派教会の公式ウェブサイトを読む限りでは、教会法上の問題などについても話されたようです。

 

 (ロシア語:ロシア正教古儀式派教会 公式ウェブサイト)Встреча с представителями РПЦ

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁 公式ウェブサイト)DECR chairman meets with first hierarch of the Russian Orthodox Old Believer Church / News / Patriarchate.ru
 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁 渉外局 公式ウェブサイト)DECR chairman meets with first hierarch of the Russian Orthodox Old Believer Church