2018年~ ウクライナへの独立正教会設置を巡るコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立関連の記事一覧
キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教庁が、ウクライナの独立正教会設置に向けてキエフにおける総主教代理を二名任命し、ロシア正教会系のウクライナ正教会は激しく反発した件について、チェコ・スロバキア正教会のプラハ大主教に着座しながらも、主に全地総主教庁やチェコ共和国の役所などによってその地位を覆され、現在はベロウン大主教となっているヤヒム座下(His Grace Archbishop Jachým of Beroun)が、ウクライナ正教会の首座/キエフ・全ウクライナ府主教オヌフリー座下(His Beatitude Metropolitan Onufriy of Kiev and All Ukraine)を支持する超短いメッセージを Facebook に投稿しています。
Укрепи, Боже, во всех испытаниях… – Arcibiskup Jáchym | Facebook
なお、ベロウン大主教というのは教区を持たない名義だけのもので、(彼の後任というか正統に選出された)プラハ大主教の手伝いをやるという扱いです(実際にやっているのかはわかりません)。
数年前のチェコ・スロバキア正教会の騒動については、結局こちらではよくわからないことも多いので、詳細な説明はできませんが……。
簡単にいいますと、まずチェコ・スロバキア正教会首座のクリシュトフ座下に女性関係のスキャンダルが複数発生し辞任(本人は疑惑は否定し、教会の団結を守るための辞任と主張。今も存命)。
ブルノ・オロモウツ主教シメオン大主教座下(Archbishop Simeon of Brno and Olomouc : 少なくともこの時点では大主教は個人称号)が首座代行になります。
ロシア正教会のバックアップを受けた一派が、シメオン首座代行を解任し、ヤヒム座下のプラハ大主教への選出と、教会全体の首座にチェコ・スロバキア府主教ラスティスラフ座下(プレショフ大主教 : His Beatitude Metropolitan Rastislav, Archbishop of Prešov, Primate of the Orthodox Church of the Czech Lands and Slovakia)を選出します。
一方、シメオン座下は自身の解任を無効と宣言、コンスタンティノープルの全地総主教庁がこれをバックアップし、コンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会によるお決まりの対決パターンに入ります。
また、シメオン座下は、相手陣営の聖職者による教会財産の横領疑惑を主張し泥沼化。
このあたりで、ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下(ヒラリオン府主教 : His Eminence Metropolitan Hilarion of Volokolamsk, chairman of the Moscow Patriarchate’s Department for External Church Relations (DECR))が、ラスティスラフ座下の選出は有効とし、「そもそもほかに人がいない」、という論陣をはっていました。
他の独立正教会では、アンティオキア総主教庁がラスティスラフ座下を支持(状況がよくわからないままロシア正教会からの要請に従ったものとみられています)、ポーランド正教会も支持、ルーマニア正教会が事実上支持、他の教会はお茶を濁しますが、ヤヒム座下やラスティスラフ座下を避けるような動きはありました。
そして結局、ラスティスラフ座下は全地総主教庁に地位を認められ(なんでかはわかりません)、ローマ教皇フランシスコ聖下と会見したりと今となれば順風満帆。
全地総主教庁に首座代行と認められ、ヤヒム座下やラスティスラフ座下と対立していたシメオン大主教座下は、ラスティスラフ座下が承認されたことに対して失意の日々ではあるでしょうが、今もまだ教区の長ではある、と思います(最新の情報をどこで確認すればいいのかわからないのがチェコ・スロバキア正教会の恐ろしいところ)。
要するにヤヒム座下だけひきずりおろされた、そういうことなのですが、今もまだ親ロシア派のようです。
年齢的なことからすれば、待っていればやがては地位がまた来るかもしれませんが……。