東方正教会シスマ2020:モンテネグロ議会選挙でジュカノヴィッチ大統領与党敗北(2020年8月)野党連合の代表の一人は、キリスト教/セルビア正教会の重鎮モンテネグロ府主教アンフィロヒイェ座下に報告

 モンテネグロ議会選挙は野党連合の勝利に終わりましたが、ジュカノヴィッチ大統領はまだまだゴネており余談を許さない状況ではあります。
 ここでは、東方正教会の方面から事態を見ていきます。

 

 もともとモンテネグロは、キリスト教/東方正教会/セルビア正教会の管轄権下にあります。
 一方、同国には、教会法上合法でない勢力が結成したモンテネグロ正教会が存在します。
 ジュカノヴィッチ大統領はこの集団を利用し、コンスタンティノープルから独立正教会として認めるトモスを得て政治に役立てようとしましたが(いわゆるウクライナモデル)、この集団の首座“ミハイロ府主教”がコンスタンティノープルの不興を買っている人物であったこともあり、こちらの計画は進んでいませんでした(ミハイロ府主教は承認に自信を見せたりしていましたが……)。

 一方、ジュカノヴィッチ大統領は、同国のセルビア正教会モンテネグロ府主教庁【モンテネグロおよび沿海の府主教庁】の教会財産を強制接収する法案を通しました。
 これに対する抗議行動は、他の多数の抗議行動と結ぶ付き、今回の選挙結果につながっています。

 選挙後、野党連合の代表の一人ズドラヴコ・クリヴォカピッチ氏(Zdravko Krivokapić)は、モンテネグロおよび沿海の府主教アンフィロヒイェ座下(His Eminence Metropolitan Amfilohije of Montenegro and the Littoral)を選挙後訪問、祝福を求めたようです。

 

Susret Amfilohija i Krivokapića posle izbornog trijumfa opozicije – YouTube

 

 同府主教庁の公式サイトでは、「キリスト復活! モンテネグロ復活!【ハリストス復活! ツルナ・ゴーラ復活!】」などの文字が踊り、ジュカノヴィッチ政権の弾圧終了に向けた選挙結果を祝っていました。
 ただし、組閣は10月予定であり、ジュカノヴィッチ大統領がおとなしくしているとも思われていません。
 まだまだ予断を許さない状況の中、(あとで記事にしますが)北マケドニア共和国の大統領がコンスタンティノープルに対し自国の教会法上合法でない集団を独立正教会として認めるよう要請したというニュースが出てきました。
 どちらもセルビア正教会の管轄権下にある領域である以上、片方の状況がもう片方に強く影響することは言うまでもありません。
 「シスマはシスマは呼ぶ」とは有名な言葉ですが、モンテネグロが落ち着くかどうかはまったく見通せません。

 

関連:
 東方正教会シスマ2020:北マケドニア大統領ペンダロフスキ閣下が、キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教バルソロメオス聖下に対し、同国の教会法上合法でない“マケドニア正教会-オフリド大主教庁”を独立正教会として認めるよう要請したと報道(2020年9月)

 訃報(2020年10月30日):キリスト教/セルビア正教会の重鎮/モンテネグロおよび沿海の府主教アンフィロヒイェ座下が永眠(1938~2020)新型コロナウイルス感染症【COVID-19】の治療で入院との既報

 

東方正教会シスマ2020:キリスト教/ロシア正教会系のベラルーシ正教会の首座が交代(2020年8月)教会方面から見た場合、プーチン政権のルカシェンコ大統領支援は必然

 ベラルーシ共和国の混乱が最終的にどうなるのかわかりませんが、ここではキリスト教/東方正教会の現況からすると、プーチン政権がルカシェンコ大統領(大統領としておきます)を支援するのは必然ということになるということを記しておこうと思います。

 

 2018年~2019年に、キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教庁が、元来はロシア正教会の管轄権下にあるとされてきたウクライナにおいて、教会法上合法でない勢力(合法でない神品=聖職者の集団)を独立正教会として一方的に認めるということがありました(当サイトでは東方正教会大分裂やシスマ2018という単語を使っています)。ロシア正教会はこの結果、コンスタンティノープルとのフル・コミュニオンを解除。ウクライナ国内では、モスクワ総主教庁系のウクライナ正教会が当局やナショナリストから弾圧を受けるということが続き、ゼレンスキー大統領に代わっても、いまだ攻撃は続いています(率直にいって以前よりだいぶゆるくなっているようには思えますが……)。
 公平のために言えば、これはロシアとの政治的緊張があることが原因ではありますが、だからといって「古代からの正しい教え」がどうたらといっていた人たちが教会法とか聖職者とかテキトーでいいですなどと言いだせば状況がムチャクチャになるのは当たり前のことです。

 この(教会大分裂の)件は、いまだになんの解決も見ていないどころか傷口を広げていますが(トルコがコンスタンティノープルの聖堂をぽんぽん接収してモスクに変えている件もコンスタンティノープルとモスクワの絶縁状態のため「協力して対抗してくることはあるまい」とエルドアン大統領になめられているといううがった見方もあります)、今回のベラルーシの混乱において、この方面からの指摘があまりなされていないというのが不思議である、というのが正直な感想です。

 

 そもそもウクライナへの独立正教会設置は、当時のポロシェンコ大統領が求めたものであり、この政治主導のアイデアはモンテネグロや北マケドニアに波及し、さらに東方正教会の混乱を深めています。
 一方、ロシア連邦とベラルーシ共和国の統合国家【Union State】のさらなる推進には極めて消極的だったルカシェンコ大統領は、宗教面においてはロシア正教会系のベラルーシ正教会【ベラルーシ全土における総主教代理区】を尊重していました。今も尊重しています。

 この状況で、反ルカシェンコ勢力が立ち上がるわけですが、彼ら・彼女らが反ロシア・反プーチンを叫んでいなかったからといって、彼ら・彼女らがルカシェンコ大統領よりもプーチン政権に好意的である可能性はなく、ベラルーシ正教会にいたってはどうでもいいとしか思っていないことは明らかでしょう。
 ベラルーシ正教会の勢力が弱まれば、ウクライナにおいてコンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】と争っているウクライナ正教会(モスクワ総主教庁)系【UOC or UOC-MP】にもダメージとなります。弾圧強化が起こる可能性もあります。
 平たく言えば、反ルカシェンコ勢力の成功は、ロシア正教会とプーチン政権にとってはベラルーシのみならずウクライナへの影響力を大きく削がれるものであり、(当初彼ら・彼女らや一部専門家が見ていた)ロシアの介入はないだろうなどというのは能天気にもほどがある観測だったということです。

 現に、コンスタンティノープル系ウクライナ正教会の首座“エピファニー府主教”は、ベラルーシ正教会の聖職者のうちで反ルカシェンコ政権の抗議行動に身を投じた聖職者らなどにコンスタンティノープルに独立正教会として認めてもらうよう勧める発言をしました。ベラルーシには主に国外で活動する(教会法上合法でない)ベラルーシ独立正教会という反体制系教会もあり、この教会は OCU を構成した教会法上合法でない教会とも関係を持っていました。
 仮にこの動きが成功していれば、彼らコンスタンティノープル系のグループは、ウクライナ国内でさらに有利に戦えることになったでしょう(まだ失敗したと確定したわけではないですが)。

 

 以上の状況からプーチン政権はルカシェンコ大統領をバックアップする体制を整えざるをえない(えないというか……)ので整えていくわけですが、ロシア正教会モスクワ総主教庁にも動きがありました。
 ベラルーシ人である、ボリソフ・マリーナゴルカ主教ヴェニャミン座下(His Grace Bishop BenjaminVeniamin】 Borisov and Marinogorsk)を新たにベラルーシ全土における総主教代理/ベラルーシ正教会の首座に選出しました(2020年8月。これまで首座であったミンスク・ザスラーヴリ府主教パーヴェル座下(His Eminence Metropolitan PaulPavel】of Minsk and Zaslavl, the Patriarchal Exarch of All Belarus)の辞意を受けてのものとされる)。また翌月には座下は府主教に昇叙されています。
 これは要するにベラルーシ人を首座に選出してガス抜きをしたということで、これにどれほどの効果があるのか正直わかりません。

 しかし、ロシアの政界・聖界ともに引くつもりはまったくないだろうということは明らかで(今回のシスマ全般にいえますが、どの勢力も引くとマイナスが大きすぎるので引けない)、たとえ第三次世界大戦になろうともロシアが引くことはないのではないかと思います。

 

キリスト教/東方正教会/アンティオキア総主教ヨウハンナ10世聖下が、爆発のあったベイルートを視察(2020年8月)

 キリスト教/東方正教会/アンティオキア・東方全土総主教ヨウハンナ10世聖下(His Beatitude Patriarch John X of Antioch and All the East)は、爆発のあったレバノン共和国ベイルートを視察しました。

 

Greek Orthodox Patriarchate of Antioch and all the East(東方正教会アンティオキア・東方全土総主教庁公式チャンネル):
الزيارة التفقديّة للبطريرك يوحنّا العاشر لبيروت – YouTube

 

 (英語)Inspection visit of Patriarch John X to Beirut – Ορθοδοξία News Agency

 

‫البطريرك يوحنا العاشر في زيارة تفقدية لبيروت | Facebook‬
https://www.facebook.com/media/set/?set=a.2557374511032913

 

キリスト教/ジョージア総主教【グルジア総主教】イリア2世聖下が、グルジンスキー系ジョージア王室【グルジア王室】当主/ジョージア皇太子ヌグザル殿下から叙勲を受ける(2020年8月)

※この記事は世界の王室ニュースと重複します。

 

 2020年8月2日、グルジンスキー系ジョージア王室【グルジア王室】当主/ジョージア皇太子ヌグザル殿下(His Royal Highness Crown Prince Nugzar of Georgia : ヌグザル・バグラチオン=グルジンスキー公子 : Prince Nugzar Bagration-Gruzinskyヌグザル・バグラチオニ=グルジンスキー公子 : Prince Nugzar Bagrationi-GruzinskiBatonishviliTsarevich)は、キリスト教/東方正教会/ジョージア正教会【グルジア正教会】の首座/全ジョージアのカトリコス=総主教イリア2世聖下(His Holiness Catholicos-Patriarch Ilia II of All Georgia)を、王立エレクレ2世騎士団に叙勲しました。

※この騎士団の詳細がわからないので、騎士に叙任したといっていいのかわかりませんが……。

 

The Royal House of Georgia საქართველოს სამეფო სახლი – ერეკლე მეორის სამეფო ორდენი | Facebook

On August 2nd, in the Cathedral of Sameba in the capital of Georgia, the Head of the Royal House of Georgia, HRH Crown Prince Nugzar Bagrationi-Gruzinski bestowed upon HH the Patriarch of all Georgia Ilia II the Royal Order of King Erekle II.

キリスト教/ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下が、ロシア連邦駐箚の日本国大使と会見(2020年2月)

 2020年2月16日、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下(His Eminence Metropolitan Hilarion of Volokolamsk, chairman of the Moscow Patriarchate’s Department for External Church Relations (DECR))は、ロシア連邦駐箚日本国特命全権大使上月豊久閣下(こうづき とよひさ : His Excellency Mr Toyohisa Kozuki)と会見しました。

 両者は、2020年8月に予定されている、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会の首座/モスクワ・ロシア全土【ルーシ全土】総主教キリル聖下(キリール総主教 : His Holiness Kirill, Patriarch of Moscow and all Russia【Rus’】)の日本訪問の準備に関して協議したようです。

 また、同大使は、総主教から送られた即位に伴う祝意に対する、天皇陛下(徳仁なるひと : Emperor Naruhito : His Majesty【His Imperial Majesty】 The Emperor)の謝意を伝えたようです。

 

 (英語:ロシア正教会 モスクワ総主教庁 公式サイト)Metropolitan Hilarion of Volokolamsk meets with Japan’s ambassador / News / Patriarchate.ru

 (英語:イラリオン府主教 サイト)Metropolitan Hilarion of Volokolamsk meets with Japan’s ambassador