インタビュー記事(ロシア語):キリスト教/コンスタンティノープル管轄権下からの事実上の離脱を決めた西欧ロシア正教会大主教区のジャン【イオアン】大主教座下「理想的な教会は無い。ローマ・カトリック教会の現状を見るがいい」(2019年2月)

 2019年2月23日に臨時総会【EGA】がおこなわれ、事実上、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルからの離脱を決定した西欧ロシア正教会大主教区。

 この大主教区は、もともとロシア帝国崩壊後のソ連での弾圧から逃れた人々らにより結成され、その後ロシア正教会モスクワ総主教庁を完全に離れてコンスタンティノープルの管轄権下に入っていたものです(ものすごく簡単にいいましたが)。
 1999年には、コンスタンティノープルより総主教代理区として認めるトモスを与えられましたが、2018年11月27日にコンスタンティノープルより突如として一方的に廃止を宣告されました。また、これは大主教区自体の廃止を要求するものでした。
 一方、大主教区側は、これに対し、総主教代理区として認めるかどうかはコンスタンティノープルが決めるものだが、大主教区の将来を決めるのは大主教区自体の総会【GA : General Assembly】であるとし、2019年2月23日、臨時総会【EGA : Extraordinary General Assembly】を開催、コンスタンティノープルからの要求を拒否することを投票で決定しています。
関連:
 キリスト教/コンスタンティノープル管轄下で一方的に総主教代理区としては廃止された西欧ロシア正教会大主教区の臨時総会が開催、集団としての解体を認めないと決定(2019年2月)

 また、これから大主教区が、コンスタンティノープルではないどこの教会法上合法な教会に属するかですが、ロシア正教会モスクワ総主教庁、(ロシア正教会の管轄権下で自治的な権限を保有する)在外ロシア正教会、ルーマニア正教会、アメリカ正教会【OCA】の名前が挙がっていました。

  Orthodoxie.com によりますと、投票でコンスタンティノープルの要求の拒否が決まった後、同大主教区のジャン大主教座下(イオアン大主教 : ハリオポリス大主教)は、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会のウィーン・ブダペスト大主教アントニー座下(His Eminence Archbishop Anthony【Antoniy】 of Vienna and Budapest)からの書簡を読み上げ、すでにロシア正教会モスクワ総主教庁との間の対話が進んでいることをあきらかにしています。
関連:
 キリスト教/コンスタンティノープル管轄下で一方的に総主教代理区としては廃止され、事実上の離脱を決定した西欧ロシア正教会大主教区は、すでにロシア正教会モスクワ総主教庁との話を進めている模様(2019年2月)

 今回、さらに別のメディアがジャン座下へのインタビューをおこなっています。

 (ロシア語)Парижский архиепископ о перспективе перехода к РПЦ: «Идеальных церквей нет» – РОССИЯ – RFI

 今までの状況の確認ですが、興味深いものになっています。

 新しく属する教会として連絡を取った先として(ロシア正教会以外)、在外ロシア正教会とルーマニア正教会へも連絡を取ったことがあきらかにされていますが、在外ロシア正教会では大主教区側の要求が通りにくそうなこと、ルーマニア正教会ははっきりしないようです。アメリカ正教会【OCA】については言及がありません。
※なお、ルーマニア正教会が前向きに検討しているとする報道もありますが……。

 また、現在の政治情勢のもとで、ロシア正教会の管轄権下に入ることについては、「政治とは距離を置くこと」という状況によっては厳しいもののよくある聖職者的なコメントに加え、ロシアの聖堂や修道院が復興していることに心動かされている様子がうかがわれます。
 加えて、離脱者が出る可能性についても認めています。西欧は自由な国々なので立ち去るのも自由ということですが……これは東方正教会の聖職者として果たして良いのかとも思われます。
 しかし、次のようなコメントも面白いところです。
「スキャンダルなどの問題はすべて教会にある。ローマ・カトリック教会の現状を見よ(このインタビューより時間としては後ですが、本日、オーストラリアの枢機卿が複数の児童への性的虐待で有罪宣告)」
「私はいつも楽園はここにはないと言っている。修道院も楽園ではない。地上には天国はない」
「もし我々がもっとも理想的な教会を求めてもそんなものはない。無人島で一人で過ごすしかない」

 インタビューの中で質問されていながらはっきりと答えられていないように思うのは、大主教区が教会法上合法な教会の中にあるべきなのか(つまり「完全に独立した宗教組織になってはいけないの?」)ということと、現在の状況で東方正教会の教会法上合法な教会とはなにか(モスクワがコンスタンティノープルとのフル・コミュニオンを解除している現状で、コンスタンティノープルがモスクワとのフル・コミュニオンを解除する可能性はあるわけですが、そうなってもモスクワは教会法上合法な教会なのか)というあたりでしょうか。

 

キリスト教/ローマ教皇フランシスコ聖下が、ギリシャ正教会の「アポストリキ・ディアコニア」代表団のファナリオン主教アガサンゲロス座下らと会見(2019年2月)

 2019年2月25日、キリスト教/ローマ・カトリック教会の首座/ローマ教皇聖座およびバチカン市国の絶対君主/ローマ教皇フランシスコ聖下(His Holiness Pope Francis)は、キリスト教/東方正教会/ギリシャ正教会に聖シノドに属する「アポストリキ・ディアコニア(Apostolikì Diakonìa : Αποστολική Διακονία)」の訪問を受け、ファナリオン主教アガサンゲロス座下(His Grace Bishop Agathanghelos of Phanarion)らと会見しました。

 フランシスコ教皇聖下は、「フル・コミュニオンへの道にそびえる困難を克服」することを呼びかけることなどを含む挨拶をしたようです。

 

Vatican News – Italiano:
Papa Francesco: i discepoli di Cristo non siano prigionieri delle differenze – YouTube

 

 (英語)Pope Francis meets Orthodox Church of Greece delegation | ROME REPORTS

ROME REPORTS in English:
Pope Francis meets Orthodox Church of Greece delegation – YouTube

 

 (英語:ローマ教皇聖座公式サイト)Audience with a delegation of the “Apostolikì Diakonìa” of the Church of Greece, 25.02.2019
 (英語:バチカンニュース)Pope to Greek Orthodox: ‘we have more in common than what keeps us apart' – Vatican News

 

キリスト教/ロシア正教会ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下らとクルト・コッホ枢機卿座下らが会談。年次の文化的な交流に関するもの(2019年2月)

 2019年2月13日、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下(ヒラリオン府主教 : His Eminence Metropolitan Hilarion of Volokolamsk, chairman of the Moscow Patriarchate’s Department for External Church Relations (DECR))らは、キリスト教/ローマ・カトリック教会/ローマ教皇庁キリスト教一致推進評議会議長クルト・コッホ枢機卿座下(His Eminence Kurt Cardinal Koch, President of the Pontifical Council for Promoting Christian Unity)らと、年次の文化的な交流に関する会談をおこないました。

 ロシア正教会から、文化評議会議長/プスコフ・ポルホフ府主教ティーホン座下(His Eminence Metropolitan Tikhon of Pskov and Porkhov)、
 ローマ・カトリック教会側からは、ロシア連邦駐箚ローマ教皇大使チェレスティーノ・ミッリョーレ大司教座下(His Most Reverend Excellency Monsignor Archbishop Celestino Migliore, Apostolic Nuncio to Russian Federation : カノーザ名義大司教 : Titular Archbishop of Canosa)らが同席。

 

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Working Group for Cultural Cooperation between the Russian Orthodox Church and the Roman Catholic Church holds its regular meeting in Moscow | The Russian Orthodox Church
 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Working Group for Cultural Cooperation between the Russian Orthodox Church and the Roman Catholic Church holds its regular meeting in Moscow / News / Patriarchate.ru

 

 なお、プスコフ・ポルホフ府主教ティーホン座下は、もともとカトリックへの強い批判者であり、カトリックをキリスト教とすらみなしていない主旨の発言を繰り返していましたが、東方正教会で教会分裂が起こった今、立場に変化があるのか注目されます。

 

キリスト教/カメルレンゴにケヴィン・ジョセフ・ファレル枢機卿座下が叙任される(2019年2月)

 キリスト教/ローマ・カトリック教会の首座/ローマ教皇聖座およびバチカン市国の絶対君主/ローマ教皇フランシスコ聖下(His Holiness Pope Francis)は、ローマ教皇庁信徒・家庭・いのちの部署長官ケヴィン・ジョセフ・ファレル枢機卿座下(His Eminence Kevin Joseph Cardinal Farrell, Prefect of the Dicastery for the Laity, Family and Life)を新たなカメルレンゴに叙任したようです。

 カメルレンゴはローマ教皇の帰天時などの使徒座空位期間に教皇代理としていくつかの権限を持ちます。

 

 (英語:ローマ教皇聖座公式サイト)Resignations and Appointments, 14.02.2019

Appointment of Camerlengo of the Holy Roman Church

The Pope has appointed as Camerlengo of the Holy Roman Church His Eminence Cardinal Kevin Joseph Farrell, prefect of the Dicastery for the Laity, Family and Life.

 

 (英語)Card. Farrell on being named Camerlengo: I accept, if the pope speaks at my funeral | ROME REPORTS

ROME REPORTS in English:
Card. Farrell on being named Camerlengo: I accept, if the pope speaks at my funeral – YouTube

 

キリスト教/メンフィス司教の解任理由に諸説飛び交う。バチカン「教区管理の問題」、本人「有力枢機卿の野望を妨害したことの報復」、その他「虐待関連(バチカンも本人も否定)」「黒人だから」「無断で悪魔祓いをおこなった司祭を重用」(2018年10月)

 2018年10月24日に、キリスト教/ローマ・カトリック教会/アメリカ合衆国のマーティン・デイヴィッド・ホリー司教座下(Bishop Martin David Holley)がメンフィス司教を解任されました。

 この理由について、虐待関連の話が報道された枢機卿との関連の話が出ましたが、バチカン、本人ともに否定。

 本人は、 Catholic News Agency の取材に対し、2012年に当時のローマ教皇ベネディクト16世聖下(His Holiness Pope Benedict XVI)から当時のワシントン大司教ドナルド・ウィリアム・ワール枢機卿座下(His Eminence Donald William Cardinal Wuerl)の国務省長官への適性に関する質問を受けて(当時ホリー座下は同教区の補佐司教)、「職務への適性が心配」との回答をしたために、同枢機卿は国務省長官になれず、今回その報復を受けた、と回答しています。
※本当にベネディクト16世とホリー司教の間でそのようなやりとりがあったのか、またあったとしてベネディクト16世がホリー司教の回答を重要視したのかは不明。

 一方で、バチカンは教区管理の問題としており、こちらでは起こった出来事については見解の相違はないようです。
 ホリー司教座下は、教区の組織構成を大幅に変えようとしたり、側近となる司祭を呼び寄せてすぐに重要な地位に昇格させたり、ということをした模様。
 これについて座下は、組織が体をなしていなかったことと、呼び寄せた司祭はよく知っている人物なのでなんの問題もないとしています。また、黒人なので差別があったとそういうコメントもしているようです。
 これらに関して、大幅な組織構成の変更は通常あり得ないほどということと、司祭の重要役職への昇格に関しては同地への赴任から五年くらいかかるとの指摘もあります。また、この司祭が、過去に司教の許可を得ずに悪魔祓い(エクソシズム)をおこなったとの話もあります。

 真偽は不明なものの、正直なところ大物というわけではなさそうですし、支持者が多数集まっているわけでもなさそうなので、さほど興味はわきません。
 本人はスピリチュアル・バトルの始まりといっているようですが、具体的になにをやるのかはまったく見えてきません。
 ただ、もしベネディクト16世聖下が本当にホリー司教座下に適性を尋ねその回答を重要視したとするなら、聖下から評価を受けている可能性もあり、その方面で失地回復を図っていくかもしれません。

 

 (英語:ローマ教皇聖座公式サイト)Resignations and Appointments, 24.10.2018
 (英語:バチカンニュース)Pope removes Bishop of Memphis from pastoral care of his diocese – Vatican News
 (英語:Catholic News Agency)Bishop Martin Holley says Cardinal Wuerl influenced his removal from Memphis
 (英語)The mysterious removal of Bishop Holley | CatholicHerald.co.uk