キリスト教/東方正教会/アンティオキア総主教ヨウハンナ10世聖下とセルビア総主教イリネイ聖下らの共同礼拝(2018年10月)

 2018年10月14日、セルビア共和国を訪問中のキリスト教/東方正教会/アンティオキア・東方全土総主教ヨウハンナ10世聖下(His Beatitude Patriarch John X of Antioch and All the East)は、キリスト教/東方正教会/セルビア正教会の首座/セルビア総主教イリネイ聖下(ペーチ大主教 : ベオグラード・カルロヴツィ府主教 : His Holiness Irinej, Serbian Patriarch, Archbishop of Peć, Metropolitan of Belgrade and Karlovci)らと聖サワ大聖堂【聖サヴァ大聖堂】にて共同礼拝をおこないました。

 イリネイ聖下からヨウハンナ10世聖下に、セルビア正教会の最高位勲章「聖サワ勲章第一等」が贈られた模様。

 

 (英語:セルビア正教会総主教庁公式サイト)Conciliar Patriarchal Liturgy in Saint Sava Cathedral | Serbian Orthodox Church [Official web site]

 

Телевизија Храм:
Саборна света Литургија служена у крипти Храма Светог Саве – YouTube

 

Телевизија Храм:
Служена саборна света Литургија и упућена молитва за Косово и Метохију – YouTube

 

Телевизија Храм:
Беседа Патријарха Иринеја поводом посете Патријарха антиохијског Јована Х – YouTube

 

Телевизија Храм:
Беседа Патријарха антиохијског Јована Х – YouTube

 

共同司式:
 正教オフリド大主教庁の首座/オフリド大主教ヨヴァン6世座下(スコピエ府主教 : His Beatitude Archbishop Jovan VI of Ohrid, Metropolitan of Skopje)、
 ザグレブ=リュブリャナ府主教ポルフィリエ座下(His Eminence Metropolitan Porfirije of Zagreb-Ljubljana)、
 アンティオキア総主教庁のアッカール府主教バシリオス座下(His Eminence, the Most Reverend Metropolitan Basilios of Akkar)、
 アンティオキア総主教庁下の北米アンティオキア正教キリスト者大主教庁首座/ニューヨーク・全北米大主教ジョセフ座下(His Eminence the Most Reverend Metropolitan Joseph of New York and All North America)、
 シュマディヤ主教ヨヴァン座下(His Grace Bishop Jovan of Šumadija)、

参列:
 バチュカ主教イリネイ座下(His Grace Bishop Irinej of Bačka)、
 ヴラニェ主教パホミイェ座下(His Grace Bishop Pahomije of Vranje)、
 ヴァリェヴォ主教ミルティン座下(His Grace Bishop Milutin of Valjevo)、
 正教オフリド大主教庁のストビ主教ダヴィッド座下(His Grace Bishop David of Stobi)、
 モハチ主教イシヒイェ座下(His Grace Bishop Isihije of Mohač, vicar of the diocese of Bačka)、
 セルビア総主教補佐/レメジヤナ主教ステファン座下(His Grace Bishop Stefan of Remesiana, Vicar Bishop of the Serbian Patriarch)、

 

キリスト教/東方正教会/教会法上合法でない“マケドニア正教会-オフリド大主教庁【MOC-OA】”が、国名も教会名も「マケドニア」を維持すべきと主張(2018年10月)

 ギリシャ系正教会メディア「ΡΟΜΦΑΙΑ(Romfea.gr)」が MIA (マケドニアのニュース)の報道を引いて記事にしているところによりますと、キリスト教/東方正教会の教会法上合法でない“マケドニア正教会-オフリド大主教庁【MOC-OA】”(以下、MOC-OA)が、国名も教会名も「マケドニア」を維持すべきと主張しているようです。

※MIAのニュースサイトを見てみましたが、英語版・マケドニア語版とも該当記事は見つかりません。

 

 (ギリシャ語)Σχισματική εκκλησία Σκοπίων: «Το όνομα της εκκλησίας και της χώρας να παραμείνει Μακεδονία»

 

 マケドニア共和国(マケドニア旧ユーゴスラビア共和国 : FYROM)は、ユーゴスラビア崩壊後、隣国ギリシャによって国名への「マケドニア」使用が反対され、欧州連合【EU】や北大西洋条約機構【NATO】への加盟も事実上拒否されてきましたが、現在の両国政権により、「国名を北マケドニア共和国に変える」ことで合意がなされました(どちらも厳しい反対意見があります)。

 そんな中で先月末、マケドニア共和国で国民投票がおこなわれましたが、投票率は事前に決めていた目標を下回りました。また、そもそも投票結果は行政府を束縛するものではありません。議会での賛成が必要でした。
 マケドニアの政権はまったくあきらめておらず、NATOやその拡大を目指すアメリカも支持していますが、一方、ロシアは反対している、という、いつもの状況です。

 それはともかくとして、教会の話ですが、MOC-OAは、仲の良いブルガリア正教会と教会法上合法化に向けた取り組みを開始しています(2017年11月報道よりたびたび話が出ます)。
 マケドニア共和国の領域は、セルビア正教会の管轄で、同教会が正教オフリド大主教庁を設置していますが、MOC-OAと同国政府はこれを弾圧してきました。
 MOC-OAの教会法上合法化はセルビア正教会には容認できるものではなく、またロシア正教会もセルビア正教会に同調しています(とはいえ両教会がすべてのことにおいて共同するわけではないことには注意が必要です)。
 そして、コンスタンティノープルの全地総主教庁も、「マケドニアやその派生語を含む名称」は一切認めないとしており、仮に名称を「北マケドニア正教会」としても、全地総主教庁の承認は得られない状況にあります。これはギリシャ国内のマケドニア地方が全地総主教庁の管轄下にあることが理由なのでしょう(ギリシャ国内の管轄権はギリシャ正教会に預けられているともいわれますが、これまでの状況をみるとギリシャ正教会は無視されているように思えます)。

 唯一の道は、教会名に「マケドニアやその派生語を含む名称」を一切入れないことで全地総主教庁の合意を得ることでしょうが、これもまた今回の声明が本気であれば、選択肢に入っていないようです(とはいえ、これまでもいろいろと報道が出ているので、フェイクニュースかもしれません)。

 MOC-OAのスタンスは興味深いですが、もし彼らが現在の立場を維持するならば、コンスタンティノープルの全地総主教庁とフル・コミュニオンに入ることはありえず、一方でロシア正教会モスクワ総主教庁とフル・コミュニオンに入ることもありえなさそうです。

 

キリスト教/セルビア正教会下の正教オフリド大主教庁が、オフリド大主教庁設立1000周年を祝う(2018年9月)

 2018年9月末、キリスト教/東方正教会/セルビア正教会下で自治的な権限を持つ正教オフリド大主教庁は、オフリド大主教庁の設立1000周年を祝ったようです。

 これは、東ローマ皇帝バシレイオス2世が、第一次ブルガリア帝国のイヴァン・ヴラディスラフに勝利し、第一次ブルガリア帝国が崩壊した年(1018年)を成立年としているようです。

※実際のオフリド大主教庁の設置については翌年【1019年】としていることが多いようです。また、正教オフリド大主教庁自体がこのオフリド大主教庁から続いているというわけではありません。

 式典には、正教オフリド大主教庁首座/オフリド大主教ヨヴァン6世座下(His Beatitude Archbishop Jovan VI of Ohrid)のほか、セルビア正教会を中心に聖職者らが臨席したようです。

 

Телевизија Храм:
Прослављен јубилеј 1000 година од оснивања Православне Охридске Архиепископије – YouTube

 

Телевизија Храм:
Беседа Митрополита Амфилохија поводом јубилеја 1000 година од оснивања Охридске Архиепископије – YouTube

 

Телевизија Храм:
Беседа Архиепископа Јована поводом прославе 1000 година од оснивања Охридске Архиепископије – YouTube

 

※見出しが「100th」となっていますが、1000周年を祝っています。
 (英語:セルビア正教会公式サイト)100th Anniversary of the founding of the Ohrid Archdiocese | Serbian Orthodox Church [Official web site]

 (マケドニア語:正教オフリド大主教庁公式サイト)Православна Охридска Архиепископија » Вести | Православната Охридска Архиепископија го прослави јубилејот: 1000 години од основањето на Охридската Архиепископија

 (セルビア語:モンテネグロ・プリモルスカ府主教庁公式サイト)Православна Охридска Архиепископија » Вести | Православната Охридска Архиепископија го прослави јубилејот: 1000 години од основањето на Охридската Архиепископија
 (セルビア語:モンテネグロ・プリモルスカ府主教庁公式サイト)У Битољу литургијски прослављен јубилеј 1000 година Архиепископије охридске (видео) | Православна Митрополија црногорско-приморска (Званични сајт)

 

 ヨヴァン6世座下のほかの臨席者/

 正教オフリド大主教庁:
 ポロク・クマノヴォ主教ヨアキム座下(His Grace Bishop Joakim of Polog and Kumanovo)、
 ブレガニツァ主教マルコ座下(Hig Grace Bishop Marko of Bregalnica)、
 ストビ主教ダヴィッド座下(His Grace Bishop David of Stobi)、

 セルビア正教会:
 モンテネグロ・プリモルスカ府主教アンフィロヒイェ座下(His Eminence Metropolitan Amfilohije of Montenegro and the Littoral)、
 ヴラニェ主教パホミイェ座下(His Grace Bishop Pahomije of Vranje)、
 モハチ主教イシヒイェ座下(His Grace Bishop Isihije of Mohač, vicar of the diocese of Bačka)、
 ドゥクリャ主教メトディイェ座下(His Grace Vicar Bishop Metodije of Dioclea)、
 ラシュカ・プリズレン主教テオドシイェ座下(His Grace Bishop Teodosije of Raška and Prizren)、
 クルシェヴァツ主教ダヴィド座下(His Grace Bishop David of Kruševac)、

 ポーランド正教会:
 ルブリン・ヘウム大主教アベル座下(His Eminence Archbishop Abel of Lublin and Chełm)、

 チェコ・スロバキア正教会:
 シュムペルク主教イザヤシュ座下(His Grace Bishop IsaiaIzaiáš】 of Šumperk)、

 そして、代理の人物がアルバニア正教会の首座/ティラナ・ドゥラス大主教アナスタシオス座下(His Beatitude Archbishop Anastasios of Tirana and Durres, Primate of Albania)から送られてきたようです。

 

キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教バルソロメオス聖下と、セルビア総主教イリネイ聖下が共同礼拝(2018年9月)

 すでに会談の件だけお伝えしましたが、2018年9月28日~9月30日の日程で、キリスト教/東方正教会/セルビア正教会の首座/セルビア総主教イリネイ聖下(ペーチ大主教 : ベオグラード・カルロヴツィ府主教 : His Holiness Irinej, Serbian Patriarch, Archbishop of Peć, Metropolitan of Belgrade and Karlovci)が、ギリシャ共和国マケドニア地方のテッサロニキを訪問しています。
 同教会のザグレブ=リュブリャナ府主教ポルフィリイェ座下(His Eminence Metropolitan Porfirije of Zagreb-Ljubljana)が同行。
 ネアポリス・スタウロポリス府主教バルナバス座下(His Eminence Metropolitan Barnabas of Neapolis and Stavroupolis)が出迎え。

 キリスト教/東方正教会首席/コンスタンティノープル=新ローマ大主教・全地総主教バルソロメオス聖下(バーソロミュー1世世界総主教バルトロマイ1世ヴァルソロメオス1世 : His All-Holiness Bartholomew, Archbishop of Constantinople-New Rome and Ecumenical Patriarch)と各地を訪問したほか、会談、第一次世界大戦戦死者の慰霊、共同礼拝などがおこなわれました。

 

Телевизија Храм:
Патријарх Иринеј: "Врло је важно да сачувамо јединство нас православних народа" – YouTube

 

Телевизија Храм:
Активности Патријарха Иринеја и Патријарха Вартоломеја у Солуну – YouTube

 

Телевизија Храм:
Патријарх Вартоломеј и Патријарх Иринеј на Зејтинлику посадили дрво маслине као симбол мира – YouTube

 

 (英語:セルビア正教会総主教庁公式サイト)A Centenary Anniversary of the End of the First World War Marked | Serbian Orthodox Church [Official web site]
 (英語:セルビア正教会総主教庁公式サイト)Patriarchal Liturgy in honor of the hundredth anniversary of the breakthrough of the Thessalonica front | Serbian Orthodox Church [Official web site]

 (セルビア語:セルビア正教会モンテネグロ・プリモルスカ府主教庁公式サイト)Патријарх Иринеј и Патријарх Вартоломеј у Солуну служили Свету архијерејску литургију | Православна Митрополија црногорско-приморска (Званични сајт)

 (英語:ルーマニア正教会通信)Ecumenical Patriarch Bartholomew, Serbian Patriarch Irinej plant olive tree in Thessaloniki to send message of peace – Basilica.ro

 

シスマ2018:キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教バルソロメオス聖下が、セルビア総主教イリネイ聖下と会談(2018年9月)共同礼拝も予定の模様

【シスマ2018~】 ウクライナへの独立正教会設置を巡るコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立とそれに端を発した出来事の記事一覧

 

 2018年9月29日、キリスト教/東方正教会首席/コンスタンティノープル=新ローマ大主教・全地総主教バルソロメオス聖下(バーソロミュー1世世界総主教バルトロマイ1世ヴァルソロメオス1世 : His All-Holiness Bartholomew, Archbishop of Constantinople-New Rome and Ecumenical Patriarch)は、キリスト教/東方正教会/セルビア正教会の首座/セルビア総主教イリネイ聖下(ペーチ大主教 : ベオグラード・カルロヴツィ府主教 : His Holiness Irinej, Serbian Patriarch, Archbishop of Peć, Metropolitan of Belgrade and Karlovci)と会談したようです。

 

 (英語:コンスタンティノープル全地総主教庁 世界教会協議会代表部 公式サイト)Meeting of the Ecumenical Patriarch with the Patriarch of Serbia – Ecumenical Patriarchate Permanent Delegation to the World Council of Churches

 

 上記サイトによりますと、バルソロメオス聖下は、第一次世界大戦終了100周年式典のため、ギリシャ共和国を訪問しているようです。よって、同地をイリネイ聖下も同目的で訪問しているのでしょう。
 会談では、東方正教会の問題が話されたようですが、詳細は不明。
 ネアポリス・スタウロポリス府主教バルナバス座下(His Eminence Metropolitan Barnabas of Neapolis and Stavroupolis)が同席したようです。

 翌9月30日には共同礼拝も予定されている模様。

 

 現在の東方正教会の問題(シスマ)がどこまで波及するか不明ですが……。

 マケドニア共和国(マケドニア旧ユーゴスラビア共和国 : FYROM)はセルビア共和国の管轄権内であり、正教オフリド大主教庁が設置されています。国家当局が支持するマケドニア正教会-オフリド大主教庁【MOC-OA】はそれと対立し、正教オフリド大主教庁へは国家による弾圧がおこなわれました。マケドニア正教会-オフリド大主教庁は、現在ブルガリア正教会の協力を得て、教会法上合法な地位を目指しています。
 一方、バルソロメオス聖下「マケドニアやその派生の名称を含む教会名は一切認めない」としています。
 9月30日には、マケドニア共和国で「マケドニア政府とギリシャ政府の合意に基づいて欧州連合【EU】・北大西洋条約機構【NATO】加盟を支持するか?」という内容の国名変更(北マケドニア共和国?)を問う国民投票が実施されます。
 この時期に、バルソロメオス聖下がマケドニア地方を訪問するというのは、教会政治的な意味合いが感じられます。
 仮に国名が変更され、欧州連合や北大西洋条約機構への加盟がかないそうな状況でも、聖下が「教会名にマケドニアを含むことは認められない」と発言すれば、ギリシャ(の政権側)、マケドニア、ブルガリアの政治家らの反発は避けられないかと思われます。西側諸国からも批判が出るでしょう。
 一方、独立正教会設置を認めれば、セルビア正教会はロシア正教会と同じ対応をとるでしょう。東方正教会の分裂が進むことは避けられません。
 しかも、ウクライナでの一連の経緯を受けて、この件は名称だけの問題となっており、仮にマケドニアで誰かがマケドニアという名称と関係がないが信徒や政治家たちが納得する名称を思いついてしまえば独立正教会設置を承認するしかないということになるでしょう。

 

 なお、今回同席したネアポリス・スタウロポリス府主教バルナバス座下ですが、同教区は全地総主教庁の管轄権にありながらギリシャ正教会に管理が預けられているいうややこしい扱いをされているもののひとつです(結構あります)。
 バルソロメオス聖下は、これらの教区の長たちを、キリスト教/東方正教会/ギリシャ正教会首座/アテネ・全ギリシャ大主教イエロニモス2世座下(His Beatitude Hieronymos II, Archbishop of Athens and All Greece and Primate of the Autocephalous Orthodox Church of Greece)へはなんの承認も得ずに招集したりしたことで、同座下より批判を受けたことがあり、全地総主教庁とギリシャ正教会で認識に差があることが指摘されています。
 ここもまたシスマが波及する可能性がある場所です。

 

追記:
 それにしても、今回9月末にやや唐突に(と思える)バルソロメオス聖下とイリネイ聖下の会談は、8月末のモスクワ総主教キリル聖下とバルソロメオス聖下の会談後、コンスタンティノープルとロシアの関係は断絶するしかない方向へ向かったことを思い出させます。

 

関連:
 キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教バルソロメオス聖下と、セルビア総主教イリネイ聖下が共同礼拝(2018年9月)