シスマ2018:キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教バルソロメオス聖下が、セルビア総主教イリネイ聖下と会談(2018年9月)共同礼拝も予定の模様

【シスマ2018~】 ウクライナへの独立正教会設置を巡るコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立とそれに端を発した出来事の記事一覧

 

 2018年9月29日、キリスト教/東方正教会首席/コンスタンティノープル=新ローマ大主教・全地総主教バルソロメオス聖下(バーソロミュー1世世界総主教バルトロマイ1世ヴァルソロメオス1世 : His All-Holiness Bartholomew, Archbishop of Constantinople-New Rome and Ecumenical Patriarch)は、キリスト教/東方正教会/セルビア正教会の首座/セルビア総主教イリネイ聖下(ペーチ大主教 : ベオグラード・カルロヴツィ府主教 : His Holiness Irinej, Serbian Patriarch, Archbishop of Peć, Metropolitan of Belgrade and Karlovci)と会談したようです。

 

 (英語:コンスタンティノープル全地総主教庁 世界教会協議会代表部 公式サイト)Meeting of the Ecumenical Patriarch with the Patriarch of Serbia – Ecumenical Patriarchate Permanent Delegation to the World Council of Churches

 

 上記サイトによりますと、バルソロメオス聖下は、第一次世界大戦終了100周年式典のため、ギリシャ共和国を訪問しているようです。よって、同地をイリネイ聖下も同目的で訪問しているのでしょう。
 会談では、東方正教会の問題が話されたようですが、詳細は不明。
 ネアポリス・スタウロポリス府主教バルナバス座下(His Eminence Metropolitan Barnabas of Neapolis and Stavroupolis)が同席したようです。

 翌9月30日には共同礼拝も予定されている模様。

 

 現在の東方正教会の問題(シスマ)がどこまで波及するか不明ですが……。

 マケドニア共和国(マケドニア旧ユーゴスラビア共和国 : FYROM)はセルビア共和国の管轄権内であり、正教オフリド大主教庁が設置されています。国家当局が支持するマケドニア正教会-オフリド大主教庁【MOC-OA】はそれと対立し、正教オフリド大主教庁へは国家による弾圧がおこなわれました。マケドニア正教会-オフリド大主教庁は、現在ブルガリア正教会の協力を得て、教会法上合法な地位を目指しています。
 一方、バルソロメオス聖下「マケドニアやその派生の名称を含む教会名は一切認めない」としています。
 9月30日には、マケドニア共和国で「マケドニア政府とギリシャ政府の合意に基づいて欧州連合【EU】・北大西洋条約機構【NATO】加盟を支持するか?」という内容の国名変更(北マケドニア共和国?)を問う国民投票が実施されます。
 この時期に、バルソロメオス聖下がマケドニア地方を訪問するというのは、教会政治的な意味合いが感じられます。
 仮に国名が変更され、欧州連合や北大西洋条約機構への加盟がかないそうな状況でも、聖下が「教会名にマケドニアを含むことは認められない」と発言すれば、ギリシャ(の政権側)、マケドニア、ブルガリアの政治家らの反発は避けられないかと思われます。西側諸国からも批判が出るでしょう。
 一方、独立正教会設置を認めれば、セルビア正教会はロシア正教会と同じ対応をとるでしょう。東方正教会の分裂が進むことは避けられません。
 しかも、ウクライナでの一連の経緯を受けて、この件は名称だけの問題となっており、仮にマケドニアで誰かがマケドニアという名称と関係がないが信徒や政治家たちが納得する名称を思いついてしまえば独立正教会設置を承認するしかないということになるでしょう。

 

 なお、今回同席したネアポリス・スタウロポリス府主教バルナバス座下ですが、同教区は全地総主教庁の管轄権にありながらギリシャ正教会に管理が預けられているいうややこしい扱いをされているもののひとつです(結構あります)。
 バルソロメオス聖下は、これらの教区の長たちを、キリスト教/東方正教会/ギリシャ正教会首座/アテネ・全ギリシャ大主教イエロニモス2世座下(His Beatitude Hieronymos II, Archbishop of Athens and All Greece and Primate of the Autocephalous Orthodox Church of Greece)へはなんの承認も得ずに招集したりしたことで、同座下より批判を受けたことがあり、全地総主教庁とギリシャ正教会で認識に差があることが指摘されています。
 ここもまたシスマが波及する可能性がある場所です。

 

追記:
 それにしても、今回9月末にやや唐突に(と思える)バルソロメオス聖下とイリネイ聖下の会談は、8月末のモスクワ総主教キリル聖下とバルソロメオス聖下の会談後、コンスタンティノープルとロシアの関係は断絶するしかない方向へ向かったことを思い出させます。

 

関連:
 キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教バルソロメオス聖下と、セルビア総主教イリネイ聖下が共同礼拝(2018年9月)

 

キリスト教/ロシア正教会ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下がセルビア正教会を訪問(2018年9月)ベオグラード大学から名誉博士号を受ける

 キリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下(ヒラリオン府主教 : His Eminence Metropolitan Hilarion of Volokolamsk, chairman of the Moscow Patriarchate’s Department for External Church Relations (DECR))は、セルビア共和国を訪問しました。

 ベオグラード・ニコラ・テスラ空港では、セルビア正教会より、
 ザグレブ=リュブリャナ府主教ポルフィリエ座下(His Eminence Metropolitan Porfirije of Zagreb-Ljubljana)、
 バチュカ主教イリネイ座下(His Grace Bishop Irinej of Bačka)、
 らが出迎えたようです。

 セルビア総主教庁では、上記の二人に加え、
 セルビア正教会の首座/セルビア総主教イリネイ聖下(ペーチ大主教 : ベオグラード・カルロヴツィ府主教 : His Holiness Irinej, Serbian Patriarch, Archbishop of Peć, Metropolitan of Belgrade and Karlovci)、
 をはじめ、
 シュマディヤ主教ヨヴァン座下(His Grace Bishop Jovan of Šumadija)、
 ヴァリェヴォ主教ミルティン座下(His Grace Bishop Milutin of Valjevo)、
 スレム主教ヴァシリイェ座下(His Grace Bishop Vasilije of Srem)、
 ヴラニェ主教パホミイェ座下(His Grace Bishop Pahomije of Vranje)、
 モラヴィツァ主教アントニイェ座下(His Grace vicar Bishop AnthonyAntonije】 of Moraviča)、
 モハチ主教イシヒイェ座下(His Grace Bishop Isihije of Mohač, vicar of the diocese of Bačka)、
 セルビア総主教補佐/レメジヤナ主教ステファン座下(His Grace Bishop Stefan of Remesiana, Vicar Bishop of the Serbian Patriarch)、
 らと会見しました。

 また、ベオグラード大学から、名誉博士号を受けたようです。

 

Телевизија Храм:
Митрополиту волоколамском Илариону уручен почасни докторат Универзитета у Београду – YouTube

 

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Metropolitan Hilarion awarded honorary doctorate by State University of Belgrade | The Russian Orthodox Church
 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Metropolitan Hilarion meets with the Primate and members of the Holy Synod of the Serbian Orthodox Church | The Russian Orthodox Church

 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Митрополит Волоколамский Иларион встретился с Предстоятелем и членами Священного Синода Сербской Православной Церкви | Русская Православная Церковь
 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Митрополиту Волоколамскому Илариону присвоена степень почётного доктора Белградского государственного университета | Русская Православная Церковь

 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Митрополит Волоколамский Иларион встретился с Предстоятелем и членами Священного Синода Сербской Православной Церкви / Новости / Патриархия.ru
 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Митрополиту Волоколамскому Илариону присвоена степень почетного доктора Белградского государственного университета / Новости / Патриархия.ru

 (セルビア語:セルビア正教会モンテネグロ=プリモルスカ府主教庁公式サイト)Митрополит волоколамски др Иларион стигао у Београд | Православна Митрополија црногорско-приморска (Званични сајт)
 (セルビア語:セルビア正教会モンテネグロ=プリモルスカ府主教庁公式サイト)Митрополит волоколамски Иларион у Београду: Ако нападну светиње у Украјини, бранићемо их! | Православна Митрополија црногорско-приморска (Званични сајт)
 (セルビア語:セルビア正教会モンテネグロ=プリモルスカ府主教庁公式サイト)Митрополит др Иларион (Алфејев) почасни доктор Универзитета у Београду | Православна Митрополија црногорско-приморска (Званични сајт)

 

キリスト教/セルビア正教会のザフムリェ・ヘルツェゴビナ・プリモルスカ主教【ボスニア・ヘルツェゴヴィナ、クロアチア、モンテネグロのそれぞれ一部を管轄】に選出されたディミトリイェ掌院が主教叙聖・着座(2018年9月)

 2018年5月に、キリスト教/セルビア正教会のザフムリェ・ヘルツェゴビナ・プリモルスカ主教に選出されたディミトリイェ掌院(Bishop-elect Dimitrije of Zahumlje-Herzegovina and the Littoral)の叙聖・着座がおこなわれたようです。ディミトリイェ座下はモンテネグロ出身。

 同主教区は、ボスニア・ヘルツェゴヴィナ(のおそらくスルプスカ共和国【セルビア人共和国】を中心とした地域)とクロアチアとモンテネグロの一部を管轄しているようです。
 主教を務めていたグリゴリイェ座下は、デュッセルドルフ・全ドイツ主教に着座しており、その後任となります。

 キリスト教/東方正教会/セルビア正教会の首座/セルビア総主教イリネイ聖下(ペーチ大主教 : ベオグラード・カルロヴツィ府主教 : His Holiness Irinej, Serbian Patriarch, Archbishop of Peć, Metropolitan of Belgrade and Karlovci)、
 キリスト教/セルビア正教会/モンテネグロ・プリモルスカ府主教庁公式サイトに、セルビア共和国の「Политика(Politika)」によるモンテネグロ・プリモルスカ府主教アンフィロヒイェ座下(His Eminence Metropolitan Amfilohije of Montenegro and the Littoral)、
 らが臨席。

 

※一部違う動画がまじっているかもしれません。

Телевизија Храм:
Хиротонисан и устоличен нови Епископ захумско херцеговачки г дин Димитрије – YouTube

 

Телевизија Храм:
Увођење у трон и приступна беседа Владике захумско херцеговачког Димитрија – YouTube

 

Телевизија Храм:
Беседа Патријарха Иринеја на устоличењу Владике захумско херцеговачког Димитрија – YouTube

 

Телевизија Храм:
Обраћање Владике Григорија на дан устоличења новоизабраног Епископа захумско-херцеговачког Димитрија – YouTube

 

Телевизија Храм:
Хиротонија и устоличење Епископа захумско-херцеговачког и приморског г-дина Димитрија – YouTube

 

 (英語:セルビア正教会公式サイト)Proclamation of the Bishop-elect Dimitrije of Zahumlje-Herzegovina and the Littoral | Serbian Orthodox Church [Official web site]

 (セルビア語:セルビア正教会ザフムリェ・ヘルツェゴビナ・プリモルスカ主教区公式サイト)Наречење изабраног Епископа ЗХиП Господина Димитрија | Епархија ЗХиП
 (セルビア語:セルビア正教会ザフムリェ・ヘルツェゴビナ・プリモルスカ主教区公式サイト)Хиротонија и устоличење Епископа Захумско-херцеговачког и приморског Господина Димитрија | Епархија ЗХиП

 (セルビア語:セルビア正教会モンテネグロ・プリモルスカ府主教庁公式サイト)Наречење изабраног Епископа захумско-херцеговачког и приморског г. Димитрија | Православна Митрополија црногорско-приморска (Званични сајт)
 (セルビア語:セルビア正教会モンテネグロ・プリモルスカ府主教庁公式サイト)Хиротонија и устоличење Епископа Захумско-херцеговачког и приморског Господина Димитрија | Православна Митрополија црногорско-приморска (Званични сајт)
 (セルビア語:セルビア正教会モンテネグロ・プリモルスカ府主教庁公式サイト)Приступна беседа Епископа захумско-херцеговачког и приморског г. Димитрија | Православна Митрополија црногорско-приморска (Званични сајт)

 

88歳(2018年8月28日):キリスト教/セルビア総主教イリネイ聖下が88歳を迎える

 2018年8月28日、キリスト教/東方正教会/セルビア正教会の首座/セルビア総主教イリネイ聖下(ペーチ大主教 : ベオグラード・カルロヴツィ府主教 : His Holiness Irinej, Serbian Patriarch, Archbishop of Peć, Metropolitan of Belgrade and Karlovci)は、88歳を迎えたようです。

 

 (英語:ルーマニア正教会通信)Patriarch Irinej of Serbia celebrates his 88th birthday – Basilica.ro

Basilica.ro (EN)さんのツイート: "Patriarch Irinej of Serbia celebrates his 88th birthday https://t.co/xmhl6uHbd3… "

 

キリスト教/セルビア総主教イリネイ聖下が、総主教庁でセルビア大統領ブチッチ閣下と会見(2018年8月)

 2018年8月4日、キリスト教/東方正教会/セルビア正教会の首座/セルビア総主教イリネイ聖下(ペーチ大主教 : ベオグラード・カルロヴツィ府主教 : His Holiness Irinej, Serbian Patriarch, Archbishop of Peć, Metropolitan of Belgrade and Karlovci)は、セルビア総主教庁にて、セルビア共和国大統領アレクサンダル・ブチッチ閣下(ヴチッチ大統領 : His Excellency Mr Aleksandar Vučić)と会見しました。

 会見では、現在の極めて重要な問題である、セルビア共和国外及び実行統治が及んでいない地域(コソボ・メトヒヤ、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロ、クロアチア)に居住しているセルビア人に関する会談が行われたようです。

※近年セルビアでは、国家、セルビア正教会、また現在セルビア王室を称する旧ユーゴスラビア王室などを含めあらゆる方面から近隣地域のセルビア人の保護と影響力拡大が図られているように思えます。
 これはロシア人が旧ソ連圏各国などに移住していることによるロシア連邦の政策及びロシア正教会の活動を縮小したような状況でしょうか。

 会談には、セルビア総主教庁から、セルビア総主教補佐/レメジヤナ主教ステファン座下(His Grace Bishop Stefan of Remesiana, Vicar Bishop of the Serbian Patriarch)が同席した模様。
※ステファン主教座下は、割と最近に総主教補佐に起用されたので、これから名前を見る機会が増えるかと思います。

 

 (英語:セルビア正教会総主教庁公式サイト)President Vucic talked with the Serbian Patriarch | Serbian Orthodox Church [Official web site]

 

 (セルビア語キリル文字:セルビア大統領府公式サイト)Председник Вучић и Његова светост патријарх српски г. Иринеј | Председник Републике Србије

 

 (ルーマニア語:ルーマニア正教会通信)Patriarhul Irineu s-a întâlnit cu Preşedintele Serbiei – Basilica.ro
 (英語:ルーマニア正教会通信)Patriarch Irinej receives the visit of Serbian President – Basilica.ro
※先に掲載されたルーマニア語版では、会談の話題は「セルビア人」でしたが、後の英語版では「現在の極めて重要な問題」となっています(ブログ記事作成時点)。英語版は単なるルーマニア語版からの翻訳かと思っていたのですが、違うのでしょうか……。

Basilica.roさんのツイート: "În cadrul întrevederii au fost discutate aspecte contemporane care vizează poporul sârb. https://t.co/EFfpZQUgYV"