キリスト教/アレクサンドリア総主教セオドロス2世聖下が、キプロス大主教クリソストモス2世座下を訪問(2018年9月)

 2018年9月6日、キリスト教/東方正教会/アレクサンドリア・全アフリカ総主教セオドロス2世聖下(His Beatitude Theodoros II, Pope and Patriarch of Alexandria and All Africa)は、キリスト教/東方正教会/キプロス正教会の首座/ノヴァ・ユスティニアナと全キプロスの大主教クリソストモス2世座下(His Beatitude Archbishop Chrysostomos II of Nova Justiniana and all Cyprus)を訪問したようです。

 

 (ギリシャ語:東方正教会アレクサンドリア総主教庁公式サイト)— [ Greek Orthodox ] — | ΓΟΝΙΜΕΣ ΣΥΝΑΝΤΗΣΕΙΣ ΤΟΥ ΑΛΕΞΑΝΔΡΙΝΟΥ ΠΡΟΚΑΘΗΜΕΝΟΥ ΣΤΗ ΜΕΓΑΛΟΝΗΣΟ
 (ギリシャ語:キプロス大主教庁公式サイト)Συνάντηση Πατριάρχη Αλεξάνδρειας με Αρχιεπίσκοπο Κύπρου – Εκκλησία της Κύπρου

 

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【シスマ2018 – The Schism of 2018】<東方正教会大分裂>: ウクライナへの独立正教会設置から始まったコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立とそれに端を発した出来事及びその他のシスマ的な出来事の記事一覧など<東方正教会内戦、大分裂、そして崩壊?>

 新約聖書/マタイによる福音書/10章/34節 より:

わたしが地上に平和をもたらすために来たと考えるな。平和ではなく剣をもたらすために来たのだ。

 

※NHKなどによる雑な報道「ウクライナ正教会がロシア正教会から一方的に独立」などで、混乱している方も多いのですが、2018年10月12日時点で次のような状況です。
追記(2018年10月16日):
 10月15日にロシア正教会はコンスタンティノープルの全地総主教庁との関係を解除しました

  • 東方正教会の教会法上合法な教会はロシア正教会モスクワ総主教庁管轄権下で高度な自治的権限を持つウクライナ正教会で、同教会はコンスタンティノープルの全地総主教庁に独立の承認を要求していませんでしたし、今もしていません。なお同教会は、ロシア正教会系であるがゆえに、クリミア半島での活動がロシア側との衝突なしに可能です。
  • 独立正教会としての承認を要求していたのは、ウクライナ国内の教会法上合法でない教会(ウクライナの総主教と報道されているのはこっち)「ウクライナ正教会キエフ総主教庁」と「ウクライナ独立正教会」であり、コンスタンティノープルの全地総主教庁は、これらの教会に対して(今まではロシア正教会系のウクライナ正教会を認めていたのに)態度を変えて承認する方向に動いています。これに関してコンスタンティノープルの全地総主教庁は、ウクライナの管轄権を今まで手放したことはない(ので独立正教会を設置することに問題はない)、と主張しています。ロシア側は悪意のある歴史の書き換えだと主張。
  • 全地総主教庁の動きの原因にはウクライナのポロシェンコ政権や議会による訴えがありました(これについてはウクライナ憲法の政教分離原則に抵触しているという訴訟が提起されています)。またポロシェンコ大統領は「外国の宗教団体に自国の宗教団体が影響されることがあってはならない」という主旨のことを述べていますが、コンスタンティノープルの全地総主教庁はトルコ共和国の宗教団体です。いつからトルコはウクライナ領になったのですか?いやまあこれは意地悪ですので消しておきます。また、彼らのいう「ウクライナの管轄権」にはクリミア半島が含まれるため、新しく設置される教会の聖職者らが「当然の権利」としてクリミアで活動を始めようとするでしょうが、ロシア当局が認める可能性は低く(入国を認めるかどうかすらわかりません)、政治問題化するでしょう。
  • アメリカのバイデン前副大統領などがウクライナの政権と独立正教会設置を支援しており、宗教の問題を装った西側諸国の政治的・侵略的活動の一環だとロシア政府はみています。したがってロシア政府はそのような行動に対する対応をとる可能性があります。なお、バイデン前副大統領の生きているほうの子息が、ウクライナの企業の幹部(取締役?)の席についたという報道が数年前にありました。
  • 10月11日のコンスタンティノープル側の声明は、主にロシア正教会によって Anathema (簡単にいえば破門の重いほう)を受けていた教会法上合法でない人物(二つの教会の首座)への Anathema を撤回するということであり、独立承認に向けた継続する意思は示しているものの独立を承認したなどとは明言してはおらず「あなたたち要はなにをいってるの?」レベルの不鮮明さが含まれています。二人のうちキエフ総主教を称するフィラレート聖下のほうはロシア正教会に Anathema を受ける前は同教会の府主教だったので全地総主教庁による Anathema 撤回を有効とみれば府主教であり、主教以上に可能な神品機密をおこなうことは教会法上合法だと思われます。が、ウクライナ独立正教会の首座マカリー府主教座下はロシア正教会下で主教になっていないため、 Anathema を撤回してもそれだけでは主教ではなく、主教以上に可能な神品機密をおこなうことは教会法上合法ではないと思われます。二人の「キエフにおける総主教代理」がマカリー座下を主教に叙聖している可能性もありますが、そういった発表はなく、もし叙聖していないとすれば、ウクライナ独立正教会には教会法上合法な主教がいない可能性が高く、そうなれば新たに誰かを神品(=聖職者)として叙聖することはできません。となれば、ウクライナ独立正教会には教会法上合法な神品が存在しないため、通常の活動すら(教会法上合法な範囲では)できません。が、当然のことながら活動しているでしょう。もしそうなら全地総主教庁が教会法上合法ではない行為を容認しているわけで、もうムチャクチャな事態です(ウクライナ独立正教会は信徒数の割には今回の騒動では「脇役」扱いされているため(主役はキエフ総主教庁)、このあたりの正確な状況はわかりませんが、この程度のことはもはやどうでもよくなっているのかもしれません)。
  • 今後、ウクライナ政府は、ロシア正教会系のウクライナ正教会の教会財産の接収に動くことになります。すでに同教会へ攻撃を加えている、ナショナリスト、過激派らの行動がさらに過激さを増す可能性も極めて高い状況です。もはやウクライナはシリアより危険な場所になる可能性が出てきています
    • ウクライナへの渡航は自己責任で
    • ウクライナに関わらず、東方正教会関連の聖堂・修道院・歴史的な遺跡などに観光するのも自己責任で
  • なお、主にエストニアに不穏な状況が波及する可能性があります。エストニアでは1990年代に、今回のものより小規模ですが同様の争いがありました。2018年10月9日にロシア正教会系のエストニア正教会のトップがエストニア首相を訪問しています

 いくつかその後(10月12日以降)のことに追記しておきますと:

  • モルドバに問題が波及する可能性が出てきました。
    キリスト教/ロシア正教会モスクワ総主教キリル聖下のモルドバ訪問日程が4日→2日に短縮(2018年10月)ルーマニア正教会がコンスタンティノープルの全地総主教庁に同調しモルドバの管轄権を両者で分割するとも
    この話が本当だとすると、東方正教会信徒数第一のロシア正教会と第二のルーマニア正教会の断絶を意味します。
  • ギリシャ共和国とトルコ共和国間の、「エーゲ海の領海・領空問題」ですが、ギリシャ政府側が同国が主張する国際法に基づいた十二海里を要求するための強硬姿勢を打ち出しています(トルコ側は該当区域は国際法の例外としており、今回の動きはこれまでと同じ“ポピュリズム”であると批判……批判というか「どうせなにもできまい」とバカにしているというか)。また、トルコのエルドアン政権は以前より、ローザンヌ条約の改定を要求しており、どちらも事態が進めばコンスタンティノープルの全地総主教庁のトルコにおける立場をマイナスにするでしょう。
  • キエフ総主教フィラレート聖下は、今後の方針に関する協議を求めるウクライナ独立正教会の首座マカリー座下に対して、「協議の必要はない。こちらに合流せよ」という主旨の発言をした模様で(もともとの立場からするとフィラレート聖下からみればマカリー座下は下っ端もいいところ)、ウクライナ独立正教会側がどう対応するのかは不透明です(ウクライナ政府主導のため逆らうのは極めて難しいでしょうが、もともとなかなか合同できなかった二団体なので、短気な人たちが離脱して新教会を設立する可能性もあります)。キエフ総主教庁では、独立正教会となったときの首座の称号を使い分ける(国内では総主教、国外の独立正教会に対しては府主教または大主教)という議論を(ウクライナ独立正教会を無視して)しているようです(いきなり総主教ではどこも承認しないという判断でしょう)。他にすることはないのかと思うのですが、ないのでしょう
  • ギリシャ共和国の急進左翼連合【SYRIZA】ツィプラス政権は、教会と国家の分離を進めようとしています(憲法の改定が必要?)。いまいち内容の全貌がわかりませんが、その一部として、聖職者(ざっくりいうと司祭クラス)という名の公務員の人数が多すぎるのを減らそうとしているようです。ちなみに、この辺りに類似する話として、ローマ・カトリック教会では司祭の少数精鋭化が必要との意見が出ています。ともあれ、聖職者の数はともかくとして、ギリシャ共和国でギリシャ正教会の“特権”が失われることは、ギリシャ正教会のみならずコンスタンティノープルの全地総主教庁にとってもマイナスとなるでしょう。

 なお、そもそもの問題、「教会法上合法な教会」ですが、これは狭義では、「コンスタンティノープルの全地総主教庁及び、全地総主教庁に認められている13の独立正教会(それぞれの傘下の自治的権限を持つ教会を含む)」のことを指します。
 これだけ見ると、コンスタンティノープルの全地総主教庁がすべてを判断する場所のように思えますが、一方で、この地位は儀礼的なものであり、各独立正教会は同格、ともいわれます。
 問題が起きなければ別にどちらでもいいことなのですが、起きてみると、この二つは明らかに矛盾しています。

 また、「教会法上合法な教会」のみならず、それ以外の東方正教会系の「教会法上合法でない教会」を含めても、ロシア正教会の信徒が圧倒的に多いという現実があります(宗教人口の計測は難しいものですが、教会法上合法でない教会を含めても信徒数の半分以上がロシア国内のロシア正教会の信徒という結論が出せる調査もあります)。
 コンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会の間が完全に断絶した場合、コンスタンティノープルを正統とみると、信徒数が半分以下に減ります。それも、残りの全員がついている前提で、悪くすると、オリエント正教会系のエチオピア正教会単独より信徒数が少なくなる可能性もあります。
 そもそもトルコ当局はもとより「なにが『全地』だ! おまえは『イスタンブール総主教』だ!」と全地総主教の称号を認めていませんが、「全地」は無論のこと、コンスタンティノープルという名称自体を使用すること自体が敬意の表明でもあるので、今後のさらなる関係悪化にともない、ロシア正教会などが「イスタンブール総主教」「イスタンブール教会」などと呼称し始める可能性があります(トルコ当局の意見を尊重しただけですね)。

 

 そして、そもそもウクライナの人々は独立正教会など望んでおらず、独立正教会がどういう意味かもほとんど知らないというのが(ロシア側の調査だけでなく)オランダ外務省が出資する団体の調査でも明らかになっています。
 
 要するに今回の事態は、

・“キエフ総主教フィラレート聖下”は、教会法上合法な教会の地位を得たかった。ついでにいうと、ロシアをへこましたかった。
・ウクライナのポロシェンコ大統領が、次の選挙で負けそうなため「秘策」が欲しかった。ついでにいうと、ロシアをへこましたかった。
・そのため、(対ロシアのためと)うまくアメリカの政治家たちを丸め込んで、コンスタンティノープルの全地総主教庁に対してウクライナに独立正教会を設置するよう「説得」した。
・ただし、ウクライナの人々は独立正教会がどんなものかもわかっておらず、「政治的だ」などという批判以前に、純粋に無意味な可能性もある。
・キエフ総主教庁やその支持者は現在「ロシアざまぁ(笑)」と盛り上がっているという状況ですが、ヤヌコーヴィチ大統領が引きずりおろされた後、ロシアを中心に世界の混乱が深まったことを思い出させてくれます。世の中は優しい人が多いですが、これ以上の世界の混乱がまたもウクライナ発で起こることでウクライナ人になんの得があるのかさっぱりわかりません。
・ギリシャの正教会系メディアは、ウクライナの状況がほとんどわかっておらず、最近になってわかって慌てているようです。ウクライナの世論調査結果を見る限りバルソロメオス総主教の「ウクライナの人々が望んだ」は戯言であり、全地総主教庁下のカナダ・ウクライナ正教会の首座がポロシェンコ大統領を「聖ウラジーミル大公」「ヤロスラフ賢公」と並べて称える状況も彼らには理解不能でしょう。こんなバカバカしいことで東方正教会が分裂し、ギリシャ国内の信徒もアホらしくなって離れ、彼らが所属する組織の収入も減り、失業する可能性も上がる、ふざけるな、と肝も冷えているかもしれません。彼らが失業したら棄教するでしょう

 ……シスマではなく、質の低いコントを見せられている気もします。

 

 さて、ウクライナ・エストニアのほか、東方正教会内の「教会法上合法な教会」の間で以下のような管轄などに関する争いがあります。

 全地総主教庁とギリシャ正教会:
 ギリシャ国内にはコンスタンティノープルの全地総主教庁が管轄権を維持している地域が多数あり、それらはギリシャ正教会に「預けられている」ともいわれますが、実態としてコンスタンティノープルはギリシャ正教会側を尊重して動いておらず、ギリシャ正教会側の不満は高まっていることが報道からうかがわれます。
 しかし、おそらくギリシャ正教会は全地総主教庁に逆らえないでしょう

 エルサレム総主教庁とアンティオキア総主教庁:
 エルサレム側が一方的にカタールに大主教庁を設置したことにより、関係が断絶しています(当時、アンティオキアがエルサレムを“破門”と報道されました)。
 本来このような場合に調停をおこなうべき、コンスタンティノープルの全地総主教庁は、なにもできていません。
 そろそろ回復は無理だと判断され、シスマと呼ばれてもいいころ合いですが(もはや関係復帰がないと判断されるのがシスマ)、両教会ともロシア正教会との関係を重視しているためか、そうは呼ばれないことがほとんどです。とはいうものの、ロシア正教会にも調停は不可能でしょう。
 よって今回の分裂に伴い、完全に分断する可能性もあります。

 ロシア正教会とルーマニア正教会:
 モルドバ共和国に関する管轄権について、根本的には解決していないものの、当面のところ深刻な問題にはなっていません。
 今回の問題が飛び火する可能性も今のところないと思われます。
 キリスト教/ロシア正教会モスクワ総主教キリル聖下のモルドバ訪問日程が4日→2日に短縮(2018年10月)ルーマニア正教会がコンスタンティノープルの全地総主教庁に同調しモルドバの管轄権を両者で分割するとも
 情報が本当であれば一気にロシア正教会とルーマニア正教会のフル・コミュニオン解除となるでしょう。

 アメリカ正教会【OCA】:
 ロシア正教会が独立正教会として認め、他の数教会が追随していますが、コンスタンティノープルの全地総主教庁は独立正教会として承認していません。
 一方、同教会の聖職者に関しては「教会法上合法」であるという前提で対応しているため、細かく位置付けるのは難しいですが、全地総主教庁にとっては独立正教会ではないが独立して意思決定をおこなっている合法集団とでもいうべきものになっています(ロシア正教会は、自らの組織に所属したことがある聖職者についてはロシア正教会の一員とすることもありますが、最初からアメリカ正教会のみ所属している、あるいはほかの教会からアメリカ正教会に合流した聖職者については、ロシア正教会とは【同じ一つの教えを報じているものの】直接関係ないという立場にみえます。したがってアメリカ正教会をロシア正教会の一部としてみるのは現在では困難です)。
 コンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会の間が断絶になると、この教会の位置付けは微妙になりますが、一方、全地総主教庁系のフィンランド正教会とアメリカ正教会の交流は親密である、というよくわからない状況もあります。

 全地総主教庁管轄権下の自治正教会・フィンランド正教会:
 隣接しているため、問題が波及する可能性が上昇しているように思えます(コンスタンティノープルの全地総主教庁管轄権下の自治正教会フィンランド正教会が「ロシア正教会との対話の準備がある」。一方「全地総主教庁のやったことは正しく、ロシア正教会のやったことは一方的で悲しいことだ」(2018年10月)……対話する気はゼロ)。

 アトス山:
 教会とは分類しませんが、一般的に全地総主教庁下の管轄権にあるとされており、ロシア正教会が全地総主教庁とのフル・コミュニオンを解除した現在、ロシア正教会の信徒は同地で領聖を受けることができないと(ロシア正教会は)発表しています。
 一方、アトス山側では、そもそも全地総主教庁の管轄権にあるというのは儀礼的なものであるという主張や、アトス山は独立正教会というものとは違う分類に存在する場所という主張もなされています。どちらもロシア正教会の信徒が同地で領聖可能とするものです。しかし全地総主教庁の管轄権下にない、あるいは独立正教会という分類にあてはまらないというのは、要はどういうことなのか、いまいち要領を得ないところです。

 

 その他、コミュニオンの関係により、「教会法上合法な教会」になりうる団体。

 マケドニア共和国(マケドニア旧ユーゴスラビア共和国 : FYROM):
 「教会法上合法でない教会」である「マケドニア正教会-オフリド大主教庁」が存在し、セルビア正教会下にある(「教会法上合法な教会」である)「正教オフリド大主教庁」と対立しています。
 一方、ブルガリア正教会は、「マケドニア正教会-オフリド大主教庁」を「教会法上合法な教会」と位置付けようとしています。
 コンスタンティノープルの全地総主教庁は、「マケドニア」に関連する名称を一切認めないが、これを使わなければ受け入れる(=セルビア正教会との関係の断絶も辞さない)意思を示しているため、「名前を変える」「いや変えない」「今までの立場を捨ててセルビア正教会系に合流」とフェイクニュース(?)が相次いでいますが、最新の報道によれば名称を維持するつもりのようです。であれば、コンスタンティノープルの全地総主教庁の承認による「教会法上合法な教会」となることは難しいです(追記:2018年10月17日:全地総主教は「名前を変えてもダメ」と回答したようです)。
 ブルガリア正教会が単独で独立正教会として承認したり、自らの管轄権下の自治正教会と認めることはできますが、その場合、コンスタンティノープルの全地総主教庁だけでなくセルビア正教会やロシア正教会を敵に回すことになり、マイナスが大きすぎるため、東方正教会の完全分裂が確定的にならない限り、そうはしないでしょう。

 モンテネグロ正教会:
 セルビア正教会から「独立」しましたが、セルビア正教会が承認しないのみならず、現在のトップであるモンテネグロ府主教ミハイロ座下がコンスタンティノープルの全地総主教庁から破門されているため、動きはほぼないでしょう。
 とはいえ、今回コンスタンティノープルの全地総主教庁が Anathema を解除したフィラレート聖下率いる「教会法上合法でない(とはもはや完全にはいえませんが)教会」キエフ総主教庁とモンテネグロ正教会はフル・コミュニオンの状態にあります(これがどうなるのかまだ不明)。全地総主教庁はセルビア正教会と争うことをためらうつもりはなさそうなため、一夜で手のひら返しがあるかもしれません。
 また、モンテネグロ(国家)の西側接近により、ミハイロ座下が(教皇就任前の)ローマ教皇フランシスコ聖下と一回あったことがあるだけしか根拠はありませんが(根拠というほどでもないですが)、東方正教会を完全に見限り、ローマ教皇とフル・コミュニオンの関係に入る可能性も超ほんの少しだけあるのではないかと思います。

 アブハジア正教会:
 ジョージア【グルジア】がアブハジア自治共和国の実行統治を失ったため、“アブハジア共和国”内で独自に活動している正教会です。ジョージア正教会【グルジア正教会】はもちろん認めていません。
 ロシア正教会とジョージア正教会の関係が断絶した場合、ロシア正教会下で地位を認められる可能性があります。

 トルコ正教会:
 キリスト教/トルコ正教会がコンスタンティノープルの全地総主教庁を提訴。ロシアとウクライナの戦争を誘発するような行動はローザンヌ条約違反=トルコの刑法に違反とのこと(2018年10月)まだ存在していたことに驚きましたが……
 ※この教会は変なところ(ずいぶんと前から一家族を中心に運営がおこなわれている)なので、他教会とコミュニオン状態に入ることはないでしょうが、トルコ大統領エルドアン閣下の気分次第で全地総主教庁から聖堂などを奪えるかもしれません。

 ベラルーシ独立正教会:
 正直あまり情報がありません。ベラルーシ国内でどの程度認知されているかもわかりません(主にアメリカで活動??)。
 今回、教会法上合法な地位を得そうなウクライナ独立正教会とフル・コミュニオンの関係にある、場合によってはウクライナ独立正教会によって設立されたとまでいわれる教会です。
 彼ら自身は自らも教会法上合法な立場となる、あるいは独立正教会となるだろうと主張しています。(コンスタンティノープルの全地総主教庁は彼らについてなにひとつ言及していませんが)
 ベラルーシ共和国にはロシア正教会系のベラルーシ正教会(全ベラルーシ総主教代理区)が設置されておりそちらが完全に主流です。ルカシェンコ政権とも近しいため、政権転覆でもない限り、変化が起こる可能性は低いと思われます。

 

 以上、いろいろ述べましたが、コンスタンティノープルの全地総主教庁の今回のおこない自体が「教会法上合法でない」と述べる各教会関係者もおり、「教会法上合法」「教会法上合法でない」というのは、もはや実効性が伴わない限りなんの意味もない屁理屈であるのが現実です。

 


 

 コンスタンティノープルの全地総主教庁が、ウクライナの管轄権を手放したことはないと発言したことにより、ロシア正教会モスクワ総主教庁との対立は引き返せないところまで来ました。

 西暦2018年、東方正教会は首位性を持っていたコンスタンティノープルの全地総主教庁と信徒数最大のロシア正教会の関係が破壊され、教会大分裂がおこりました

 いくつかの独立正教会が求めている問題解決のための汎・東方正教会の会合を、「全地総主教庁はその予定はない」と教会法上合法でない教会の主教が回答するという有様です。東方正教会とは……、「一つの教えを奉じている」とは……、教会法とは……なんだったのか
 もはや教会法上合法な教会など存在せず、政治的な派閥が存在するだけなのでしょう。

 この後、どのような経緯をたどって、「東方正教会は分裂した」という事実が認識されていくのかはわかりませんが、東西教会大分裂の経緯が参考になるでしょう。
 「自分たちが絶対なのだ」と主張し始めた勢力には、絶対的に従う離れるしかありません。

 

 

Spillover:

 

キリスト教/数年前のチェコ・スロバキア正教会の“騒動”時にプラハ大主教からひきずりおろされた同教会のベロウン大主教ヤヒム座下が、ウクライナ府主教オヌフリー座下を支持する(超短い)メッセージ(2018年9月)

2018年~ ウクライナへの独立正教会設置を巡るコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立関連の記事一覧

 

 キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教庁が、ウクライナの独立正教会設置に向けてキエフにおける総主教代理を二名任命し、ロシア正教会系のウクライナ正教会は激しく反発した件について、チェコ・スロバキア正教会のプラハ大主教に着座しながらも、主に全地総主教庁やチェコ共和国の役所などによってその地位を覆され、現在はベロウン大主教となっているヤヒム座下(His Grace Archbishop Jachým of Beroun)が、ウクライナ正教会の首座/キエフ・全ウクライナ府主教オヌフリー座下(His Beatitude Metropolitan Onufriy of Kiev and All Ukraine)を支持する超短いメッセージを Facebook に投稿しています。

 

Укрепи, Боже, во всех испытаниях… – Arcibiskup Jáchym | Facebook

 

 なお、ベロウン大主教というのは教区を持たない名義だけのもので、(彼の後任というか正統に選出された)プラハ大主教の手伝いをやるという扱いです(実際にやっているのかはわかりません)。

 数年前のチェコ・スロバキア正教会の騒動については、結局こちらではよくわからないことも多いので、詳細な説明はできませんが……。
 簡単にいいますと、まずチェコ・スロバキア正教会首座のクリシュトフ座下に女性関係のスキャンダルが複数発生し辞任(本人は疑惑は否定し、教会の団結を守るための辞任と主張。今も存命)。
 ブルノ・オロモウツ主教シメオン大主教座下(Archbishop Simeon of Brno and Olomouc : 少なくともこの時点では大主教は個人称号)が首座代行になります。
 ロシア正教会のバックアップを受けた一派が、シメオン首座代行を解任し、ヤヒム座下のプラハ大主教への選出と、教会全体の首座にチェコ・スロバキア府主教ラスティスラフ座下(プレショフ大主教 : His Beatitude Metropolitan Rastislav, Archbishop of Prešov, Primate of the Orthodox Church of the Czech Lands and Slovakia)を選出します。
 一方、シメオン座下は自身の解任を無効と宣言、コンスタンティノープルの全地総主教庁がこれをバックアップし、コンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会によるお決まりの対決パターンに入ります。
 また、シメオン座下は、相手陣営の聖職者による教会財産の横領疑惑を主張し泥沼化。
 このあたりで、ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下(ヒラリオン府主教 : His Eminence Metropolitan Hilarion of Volokolamsk, chairman of the Moscow Patriarchate’s Department for External Church Relations (DECR))が、ラスティスラフ座下の選出は有効とし、「そもそもほかに人がいない」、という論陣をはっていました。
 他の独立正教会では、アンティオキア総主教庁がラスティスラフ座下を支持(状況がよくわからないままロシア正教会からの要請に従ったものとみられています)、ポーランド正教会も支持、ルーマニア正教会が事実上支持、他の教会はお茶を濁しますが、ヤヒム座下やラスティスラフ座下を避けるような動きはありました。
 そして結局、ラスティスラフ座下は全地総主教庁に地位を認められ(なんでかはわかりません)、ローマ教皇フランシスコ聖下と会見したりと今となれば順風満帆
 全地総主教庁に首座代行と認められ、ヤヒム座下やラスティスラフ座下と対立していたシメオン大主教座下は、ラスティスラフ座下が承認されたことに対して失意の日々ではあるでしょうが、今もまだ教区の長ではある、と思います(最新の情報をどこで確認すればいいのかわからないのがチェコ・スロバキア正教会の恐ろしいところ)。

 要するにヤヒム座下だけひきずりおろされた、そういうことなのですが、今もまだ親ロシア派のようです。
 年齢的なことからすれば、待っていればやがては地位がまた来るかもしれませんが……。

 

キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教庁がウクライナへの独立正教会設置のために総主教代理を任命したことについて、ロシア正教会聖シノドは「(バルソロメオス総主教は)事実上は一度も持ったことのない指揮権があると勝手な解釈をしている」「このような『反・教会法的行為』の全責任は彼個人とその支持者たちにある」と宣言(2018年9月)

2018年~ ウクライナへの独立正教会設置を巡るコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立関連の記事一覧

 

 キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教庁が、ウクライナの独立正教会設置に向けてキエフにおける総主教代理を二名任命。ロシア正教会系のウクライナ正教会は激しく反発(2018年9月)という状況でしたが、2018年9月8日、ロシア正教会の聖シノドは緊急ともいえる早さでメッセージを出しています。

※聖シノドが全員出席したのかどうかわかりませんが、自治的権限を持つウクライナ、モルドバ、それより弱い権限を持つベラルーシ、そして中央アジアの府主教らをメンバーに含みます(あとで下のほうに追記しておきます)。

 

 (ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Заявление Священного Синода Русской Православной Церкви от 8 сентября 2018 года / Официальные документы / Патриархия.ru
 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Russian Orthodox Church Holy Synod Statement as of September 8, 2018 | The Russian Orthodox Church

 

 すでに今までに出ている内容なのですが、簡単に並べていくと、

  • 他の教会の管轄権への侵害は教会法違反
  • キエフ府主教オヌフリー座下をウクライナの第一の聖職者(全地総主教庁側とロシア正教会側で言葉が違いますが)と認めていたのはなんだったのか
  • 事実上は一度も持ったことのない指揮権があると勝手な解釈をしている
  • コンスタンティープルとロシアの関係の“行きどまり”は東方正教会全体の結束に大いなる脅威となる
  • ロシア正教会聖シノドは、このような『反・教会法的行為』の全責任はバルソロメオス総主教個人と、コンスタンティノープルの教会内のその支持者たちにある

 なお、モスクワ総主教庁のメッセージもこれとは別に準備されているようです。

 

 率直にいって、予想通りの展開ですが……。

 モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下が両・総主教会談後のインタビューで「教会としての正式決定はそれぞれの聖シノドで決めること」などと答えていることを考えると、こうなることはすでに会談時にお互い了承済みだったのではないかとすら思えます(キリル総主教聖下は会談後笑顔でインタビューに答えていましたけど)。

 

 なお、ロシア正教会聖シノドのメンバーは、

  • ロシア正教会の首座/モスクワ・全ロシア【ルーシ】総主教キリル聖下(キリール総主教 : His Holiness Kirill, Patriarch of Moscow and all Russia【Rus’】)

 のほか、

  • ウクライナ正教会の首座/キエフ・全ウクライナ府主教オヌフリー座下(His Beatitude Metropolitan Onufriy of Kiev and All Ukraine)
  • クルチツィ・コロムナ府主教ユヴェナリー座下(His Eminence Metropolitan Juvenaly of Krutitsy and Kolomna)
  • モルドバ正教会の首座/キシナウ・全モルドバ府主教ヴラジミール座下(His Eminence Metropolitan Vladimir of Chişinău and All Moldova)
  • アスタナ・カザフスタン府主教アレクサンドル座下(His Eminence Metropolitan Alexander of Astana and Kazakhstan)
  • タシケント・ウズベキスタン府主教ヴィケンティー座下(His Eminence Metropolitan Vikentiy of Tashkent and Uzbekistan)
  • サンクトペテルブルク・ラドガ府主教ヴァルソノフィー座下(His Eminence Metropolitan Varsonofy of St. Petersburg and Ladoga)
  • ベラルーシにおける総主教代理【ベラルーシ正教会首座】/ミンスク・ザスラーヴリ府主教パーヴェル座下(His Eminence Metropolitan PaulPavel】of Minsk and Zaslavl, The Patriarchal Exarch of All Belarus)
  • モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下(ヒラリオン府主教 : His Eminence Metropolitan Hilarion of Volokolamsk, chairman of the Moscow Patriarchate’s Department for External Church Relations (DECR))

※さらに五名、半年ごとに交代するメンバーが新しく九月から入ることになっていますが……。

 

キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教庁が、ウクライナの独立正教会設置に向けてキエフにおける総主教代理を二名任命。ロシア正教会系のウクライナ正教会は激しく反発(2018年9月)

2018年~ ウクライナへの独立正教会設置を巡るコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立関連の記事一覧

 

 2018年9月7日、キリスト教/東方正教会/全地総主教庁は、ウクライナに独立正教会を設置する準備として、キエフにおける総主教代理(Exarchs in Kiev)として二名を叙任したと発表しました。

 

 (英語:全地総主教庁公式サイト)Ecumenical Patriarchate | Announcement of the Ecumenical Patriarchate (7th Sep. 2018)
 (英語:コンスタンティノープル全地総主教庁 世界教会協議会代表部 公式サイト)Ecumenical Patriarchate sends Legates to Ukraine – Ecumenical Patriarchate Permanent Delegation to the World Council of Churches

 (ウクライナ語:ウクライナ正教会公式サイト)Заява ВЗЦЗ УПЦ у зв’язку з призначенням Константинопольським Патріархатом екзархів у Київ – Українська Православна Церква
 (ウクライナ語:ウクライナ正教会公式サイト)Призначення екзархів поки що не означає створення в Україні нової церковної структури — коментар прот. Миколая Данилевича – Українська Православна Церква

 

Announcement Within the framework of… – Ecumenical Patriarchate | Facebook

 

 キエフにおける総主教代理に叙任されたのは、いずれも全地総主教庁下の、
 アメリカ合衆国ウクライナ正教会(Ukrainian Orthodox Church of the USA)のパンフィロン大主教ダニエル座下(His Eminence Archbishop Daniel, Archbishop of Pamphilon)、
 カナダ・ウクライナ正教会(Ukrainian Orthodox Church of Canada)のエドモントン・西部教区主教イラリオン座下(His Grace, the Right Reverend Bishop Ilarion, Bishop of Edmonton and the Western Eparchy)、
 です。

 これに対し、ロシア正教会モスクワ総主教庁下で自治的な権限を持つウクライナ正教会は激しく反発しています。

 

 ロシア正教会モスクワ総主教庁からの正式な(聖シノドや総主教による)発表はありませんが、すでに批判的なコメントが掲載されています。
 少し前のロシア正教会モスクワ総主教キリル聖下と全地総主教バルソロメオス聖下の主にウクライナの問題についての会談はいったいなんだったのかと思ってしまいますが、「話したけどダメでした」という、言い訳づくりのようなものだったのでしょうか。

 

 ここからの展開ですが、まず確認しておかなければならないのは、仮に全地総主教庁によるウクライナへの独立正教会設置がおこなわれたとして、それがほかの分野にどんな影響があるのかということがあります。
 ドンバスの「親ロシア派」が降伏したりはしないでしょうし、ロシアがクリミアを「返還」することもないでしょう。
 そして、モスクワ総主教庁系のウクライナ正教会は、すでにウクライナ国内でロシアの手先として“攻撃”を受けている状況です。
 ポロシェンコ大統領の人気が回復するということも、(彼自身がどう信じているかはともかく)望み薄です。
 状況として、何かが変わるのかというと、何も変わらないのかもしれません。

 その上で一つずつ。

 まず、独立正教会として設置されるのは何か、ということが挙げられます。
 「独立」が念頭に置かれているのは、一般的に「キエフ総主教庁」と「ウクライナ独立正教会」(どちらも全地総主教庁から教会法上合法な教会と認められていない)ですが、そもそもこの二つが合同できるのかという問題があります。
 また、モスクワ総主教庁系のウクライナ正教会も合流しなければ意味がないとする考えがあります。
 とはいうものの、この三団体の合流は不可能であり、中には「三つの独立正教会を設置すればいい。問題は各教会をどのような序列にするかだが……」といった現実性のかけらも見られない考えを表明する方もいます。とはいえ前向きな方でも、単一の独立正教会設置は不可能と思っているともいえます。
追記:
 ギリシャ系の正教会メディア(および一般報道)は、「モスクワ総主教庁系のウクライナ正教会が全地総主教庁に独立の承認を要請したので全地総主教庁が応じた」という“フェイクニュース”を出しています(当のウクライナ正教会は、今回の全地総主教庁の行動について「この先どのような悪いことが起こってもそれはすべてコンスタンティノープル全地総主教庁の責任だ」としています)。ギリシャ系メディアは、もしやウクライナ国内の正教会の状況を根本的に理解していなかったのでは……。この数ヶ月、彼らはいったい何を騒いでいたのか……。

 次に今回叙任された二人、といいますか、それぞれが属する全地総主教庁下の「アメリカ合衆国ウクライナ正教会」と「カナダ・ウクライナ正教会」ですが、「キエフ総主教庁」と過去に問題を抱えた教会もあります。
 またこの二教会は独立正教会がウクライナに設置された場合どうなるのか(新しい独立正教会が「うちの傘下によこせ」と言い出すかもしれない)という問題が浮上する可能性もあり、そもそも独立正教会設置へ向けてこの人選が良いものなのかもわかりません。

 そしてロシア正教会のほうですが、教会レベルでできることはあまりなく(批判をしたり正論を述べたりするくらい)、全地総主教庁が強行すれば止められないでしょう(他の各教会も)。
 しかし、それは教会レベルでの話であり、この問題はロシアのプーチン大統領とトルコのエルドアン大統領の間の政治的駆け引きに浮上してくる可能性があります。
 エルドアン大統領は、というかトルコ共和国は、全地総主教庁のことは名乗りすら認めていない(「全地」ではなく「イスタンブールの総主教」)はずですが、ロシア側からなにか譲歩を引き出すために、この問題を利用できるだけ利用してくるかもしれません。

 最後にクリミアの管轄権があります。
 現在のモスクワ総主教庁系のウクライナ正教会は、ロシア正教会の一部であるために、従来に引き続いてクリミアで活動をおこなうことに問題がありません。
 しかし、全地総主教庁によってウクライナに独立正教会が設置されたとして、彼らが(彼らは当然クリミアはウクライナの一部であり自身の管轄権の一部であると主張し)クリミアで活動しようとしても、ロシア連邦政府及び連邦構成主体クリミア共和国がその聖職者をクリミアへ入れるかどうか、また入れたとしても帰ってこれるかどうかは、わかりません。
 しかし間違いなく、新しい独立正教会はクリミアへ聖職者を派遣するでしょう。
 “国境”で追い返されれば問題になりませんが、中で捕縛されれば新たな国際的な問題へ飛び火していく可能性もあります。

 

続報:
 キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教庁がウクライナへの独立正教会設置のために総主教代理を任命したことについて、ロシア正教会聖シノドは「(バルソロメオス総主教は)事実上は一度も持ったことのない指揮権があると勝手な解釈をしている」「このような『反・教会法的行為』の全責任は彼個人とその支持者たちにある」と宣言(2018年9月)