キリスト教/マケドニア正教会で、元・オフリド大主教ヨヴァン座下が、クルシェボとデミール・ヒサールの府主教となる(2023年9月)

 2023年9月3日、キリスト教/東方正教会の、セルビア正教会の管轄権下で自治権を行使していた、元の正教オフリド大主教庁の首座/オフリド大主教ヨヴァン6世座下(His Beatitude Archbishop Jovan VI of Ohrid)が、あらためてマケドニア正教会-オフリド大主教庁のクルシェボとデミール・ヒサールの府主教(Metropolitan of Krushevo-Demir Hisar)となり、着座したようです。

 北マケドニア共和国の東方正教会の教会は、教会法上合法であったセルビア正教会の管轄権下で自治権を行使していた正教オフリド大主教庁と、教会法上合法でなかったマケドニア正教会-オフリド大主教庁がありましたが、急転直下でセルビア正教会が後者を承認し、前者の立ち位置が微妙になっていました。

 いろいろありましたが、統合となった、と理解しておきます。

参列者:
 マケドニア正教会/
 プレスパ=ペラゴニア府主教ペタル座下(His Eminence Metropolitan Petar of Prespa-Pelagonia)
 クマノヴォ=オソグ府主教グリゴリー座下(His Eminence Metropolitan Grigorij of Kumanovo-Osog)
 ヘラクレス主教クリメント座下(His Grace Bishop Kliment of Herakles)

 マケドニア正教会(元・正教オフリド大主教庁)/
 デリャドロヴチ=イリンデン主教ヨアキム座下(His Grace Bishop Joachim of Deljadro-Ilinden)
 デルチェヴォとマケドンスカ・カメニツァの主教マルコ座下(His Grace Bishop Marko of Delchevsko-Kamenichki)
 ストビ主教ダヴィッド座下(His Grace Bishop David of Stobi 現在:Bishop of Dremvica)

 セルビア正教会/
 モンテネグロ・沿海府主教ヨアニキイェ座下(His Eminence Metropolitan Joanikije of Montenegro and the Littoral)
 ヴラニェ主教パホミイェ座下(His Grace Bishop Pahomije of Vranje)

 北マケドニア共和国駐箚セルビア共和国特命全権大使ネヴェナ・ヨヴァノヴィッチ閣下(Her Excellency Nevena Jovanović

 

 (英語)Metropolitan Jovan Enthroned as Metropolitan of Krushevo-Demir Hisar – Orthodoxy Cognate PAGE

 

関連:
 キリスト教/ブルガリア正教会が、マケドニア正教会-オフリド大主教庁を独立正教会として承認(2022年12月)教会名は「北マケドニア共和国正教会」首座は「北マケドニア大主教ステファン座下」

ルイ・マヌエル・ソウザ・ヴァレリオ司教座下がリスボン総大司教ルイ1世に(2023年8月~9月)

 2023年8月10日、キリスト教/ローマ教皇フランシスコ聖下(His Holiness Pope Francis)は、リスボン総大司教マヌエル・ジョゼ・マカリオ・ド・ナシメント・クレメンテ枢機卿座下(His Eminence Manuel José Cardinal Macário do Nascimento Clemente, Patriarch of Lisbon【Lisboa】 : 総大司教マヌエル3世 : Patriarch Manuel III)の総大司教座からの引退を許可、ポルトガル従軍司教ルイ・マヌエル・ソウザ・ヴァレリオ座下(Bishop Rui Manuel Sousa Valério)を新たな総大司教に叙任しました。
 9月2日、新たな総大司教ルイ1世Rui I)の着座がおこなわれました。

 

 (英語:ローマ教皇聖座 公式サイト)Resignations and Appointments, 10.08.2023
 (英語:バチカンニュース)Pope Francis names Montfort Missionary as new Patriarch of Lisbon – Vatican News
 (ポルトガル語)Novo Patriarca de Lisboa saúda vítimas ″de todo o tipo de abusos″

 

Patriarcado de Lisboa(リスボン総大司教庁 公式チャンネル):
Celebração da Tomada de Posse do Patriarca de Lisboa D. Rui Valério – YouTube

 

Patriarcado de Lisboa(リスボン総大司教庁 公式チャンネル):
Entrada solene do Patriarca de Lisboa D. Rui Valério – YouTube

訃報(2023年9月2日):ルーマニア旧式正教会の前の首座、“ヴラシエ府主教”が永眠(1941~2023)

 2023年9月2日、キリスト教/東方正教会/ルーマニア正教会から暦の変更などを理由に離脱した、ルーマニア旧式正教会の前の首座、“ヴラシエ府主教”(Metropolitan Vlasie)が永眠したという記事が出ています。

 

 (英語)Repose of Metropolitan Vlasie (Mogârzan) of Romania – NFTU

XユーザーのNFTU True Orthodox News and Apologetics ❌さん: 「https://t.co/7HTG10iSZy」 / X

インタビュー記事(セルビア語):キリスト教/ロシア正教会/アフリカにおける総主教代理/クリン府主教レオニード座下へのインタビュー「バルソロメオス総主教はルビコン川を渡った」(2023年9月)

 セルビア語による、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会/アフリカにおける総主教代理/クリン府主教レオニード座下(His Eminence Metropolitan Leonid of Klin, Patriarchal Exarch of Africa)へのインタビュー記事が掲載されています。

 大意ですが、ファナル(コンスタンティノープル)がルールを破ったこと、アレクサンドリア総主教が OCU を認めたためにアフリカに正しい教えが広められなくなったこと、など、ロシア正教会の立場とアフリカにおける総主教代理区の設置に関する話です。

 また、セルビア正教会に向けた連帯の期待のような発言もあります。

 

 (セルビア語)Патријарх Вартоломеј је прешао Рубикон – Печат – Лист слободне Србије

 

 アフリカにおける総主教代理区の公式ウェブサイトに、一部英訳(アレクサンドリア総主教に関することなど)があります。

 (英語:アフリカにおける総主教代理区 公式ウェブサイト)Interview of Metropolitan Leonid of Klin to the Serbian edition "Pechat" – Exarchate of Africa

キリスト教/ローマ教皇フランシスコ聖下の、ロシアの若者へのメッセージにウクライナ政府などが反発。バチカンはウクライナ政府側の見解を拒否(2023年8月)

 2023年8月25日、キリスト教/ローマ教皇フランシスコ聖下(His Holiness Pope Francis)は、ロシア青年の日に、サンクトペテルブルクに集まった若者たちへメッセージを送りました。

 このメッセージの末尾、

 (ロシア語:)«Вы собрались, чтобы быть единой Церковью». Телемост российской молодёжи с Папой Франциском – Римско-католическая Архиепархия Божией Матери в Москве

Перед благословением Святейший Отец завершил встречу следующими словами: «Никогда не забывайте о наследии. Вы наследники великой России: великой России святых, правителей, большой России Петра I, Екатерины II, той империи – великой, просвещенной, [страны] большой культуры и большой человечности. Никогда не отказывайтесь от этого наследства, вы наследники великой Матушки России, идите вперёд с этим. И спасибо вам. Спасибо за ваш способ быть, за ваш способ быть россиянами».

(Google翻訳に一部手入れ)
「あなたたちは偉大なロシアの相続人です。聖人・統治者たちの偉大なロシア、ピョートル1世・エカチェリーナ2世の偉大なロシア、偉大で啓蒙された、偉大な文化と偉大な人間性を備えた帝国の子孫です。 この遺産を決して手放さないでください。あなた方は偉大で母なるロシアの相続人です。これを進めてください。そしてありがとう。あなたの生き方、ロシア人のあり方に感謝します」

 

 この部分にウクライナ政府などが激怒。

 ローマ教皇、ロシア皇帝に好意的言及 ウクライナが批判|ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト
 ウクライナ、ローマ教皇の演説に反発 「帝国主義的プロパガンダ」 – CNN.co.jp

 しかし、ローマ教皇聖座側はこのような見解を拒絶しました。

 (英語:バチカンニュース)Holy See Press Office: Pope did not exalt imperialist logic in remarks about Russia – Vatican News

 

 今回のメッセージは、お偉方にありがちな、さしたる理由も意味もないリップサービスかもしれません。

 しかし、現今の世界状況の中(そうでなければ別に流しても良いようなものですが)で、ローマ教皇によって、ロシア正教会ではなく(あるいはのみならず)ロシアのキリスト教文化そのものとそれを牽引した皇帝たちが称揚されたことは注目すべきことでしょう。

 東西教会(カトリック教会と東方正教会)の融和というのは、名目上(ローマとコンスタンティノープル)と実質上(ローマとモスクワ)の二つがわかれているのがこれまで度々問題となってきましたが、1453年以降の状況を考えれば、コンスタンティノープルなどオスマン帝国下で見苦しい行動をしていたにすぎないというのが大半の状況であり、それにくらべて、「正教の中心はモスクワに移った」と言われたのがロシア
 今回のフランシスコ教皇の発言、そのロシアの実質は「決して東方正教会というくくり」におさまるものではないというのが含意されている発言である、と理解してもよさそうです。
 つまり、ウクライナどうこうの反応は教皇にとってもウクライナ政府自身にとっても直接はどうでもよく、これはコンスタンティノープルにとって(長い目で見れば)衝撃となるものでしょう。もう500年以上、あなたたちコンスタンティノープルに実質の価値はないんですよ。

 

 さて、ウクライナ政府はカトリックの活動を国内で禁止するでしょうか? するべきだと思いますね。トップがロシアを支持したのですから。でも、すると西側諸国の支援は削られますね。できませんね。国内で「ロシアにつながりがある」とウクライナ正教会(UOCのほう)に色々やってきましたが、西側諸国に見捨てられるのは怖いでしょう。だからカトリックには何もしないでしょう。なんて信教の自由がある平等で民主的な国家なんでしょう。

 あと、コンスタンティノープルが認めた方のウクライナ正教会(OCU)に異論が多数存在しているという事実を言っただけで、他人をモスクワの手先扱いする方々がネットには満ちていますが、そういう方々には「ローマ教皇はモスクワの手先だ! ウクライナでカトリックを禁止しろ!!」とぜひ言っていただきたいものです。言う人が増えるほどウクライナ政府が困るだけですけどね。