“モンテネグロ正教会”の首座“ミハイロ府主教”ら三人の主教が、新たな首座に選出されたと主張する“ボリス主教”の聖職者としての地位を剥奪と発表(2023年9月)

 キリスト教/東方正教会系統の、主流の教会からはどこからも教会法上合法と認められていない、モンテネグロ正教会(MOC)の、首座である“ミハイロ府主教”(ツェティニェ大主教・モンテネグロ府主教ミハイロ座下 : His Beatitude Mihailo, Archbishop of Cetinje and Montenegrin Metropolitan)ら三人の主教は、同教会の新たな首座に選出されたと一方的に発表した“ボリス主教”の聖職者としての地位を、2023年9月13日に剥奪した旨を発表しています。

 

 (モンテネグロ語:モンテネグロ正教会 公式サイト)Donešen Sinodalni akt | Crnogorska Pravoslavna Crkva

 (英語)CPC: Synodal act passed, Bishop Boris deposed

 

関連:
 “モンテネグロ正教会”で新たな首座が選出されたとの報道。これまでの首座“ミハイロ府主教”はこの動きを否定(2023年9月)
 “モンテネグロ正教会”で新たな首座に選出されたと主張する“ボリス府主教”らが扉を破壊して聖堂に侵入したとして、“ミハイロ府主教”側が告訴をおこなったと発表。またそれに対する反論が“ボリス府主教”よりおこなわれた模様(2023年9月)

“モンテネグロ正教会”で新たな首座に選出されたと主張する“ボリス府主教”らが扉を破壊して聖堂に侵入したとして、“ミハイロ府主教”側が告訴をおこなったと発表。またそれに対する反論が“ボリス府主教”よりおこなわれた模様(2023年9月)

 キリスト教/東方正教会系統の、主流の教会からはどこからも教会法上合法と認められていない、モンテネグロ正教会(MOC)でボリス府主教”なる人物が新たな首座に選出されたという主張をしていることをお伝えしましたが、モンテネグロ正教会 公式サイトでは、この人物(補佐の主教であるとまだ記述しています)と他の人物が、扉を破壊して聖堂に侵入したと発表。また“ミハイロ府主教”(ツェティニェ大主教・モンテネグロ府主教ミハイロ座下 : His Beatitude Mihailo, Archbishop of Cetinje and Montenegrin Metropolitan)が彼らを告訴した旨も記されています。

 

 (モンテネグロ語:モンテネグロ正教会 公式サイト)Obijena crkva CPC na Cetinju | Crnogorska Pravoslavna Crkva

 

 この件と、“ボリス府主教”側の反論の記事を英語で出しているサイトがありましたのでリンクしておきます。

 (英語)Mihailo: The church in Lovćenska street was painted at the urging of Boris and Stefan
 (英語)Boris: It is incorrect that the church in Cetinje was destroyed, Mihailo to influence his friend to return the old lock

 

続報:
 “モンテネグロ正教会”の首座“ミハイロ府主教”ら三人の主教が、新たな首座に選出されたと主張する“ボリス主教”の聖職者としての地位を剥奪と発表(2023年9月)

“モンテネグロ正教会”で新たな首座が選出されたとの報道。これまでの首座“ミハイロ府主教”はこの動きを否定(2023年9月)

 2023年9月3日に、キリスト教/東方正教会系統の、主流の教会からはどこからも教会法上合法と認められていない、モンテネグロ正教会(MOC)の協議会が開かれ、新たな首座が選出されたと報道されました。

 

 (モンテネグロ語)Opštecrnogorski zbor: Episkop Boris je novi mitropolit CPC

 

 この記事によれば、ボリス主教が新たな首座である府主教に選出され、これまで教会を率いていた“ミハイロ府主教”(ツェティニェ大主教・モンテネグロ府主教ミハイロ座下 : His Beatitude Mihailo, Archbishop of Cetinje and Montenegrin Metropolitan)は「引退」とされています。

 

 しかし、 MOC の公式サイトはこの動きを完全に否定。

 

 (モンテネグロ語:モンテネグロ正教会 公式サイト)Propali politički miting | Crnogorska Pravoslavna Crkva
 (モンテネグロ語:モンテネグロ正教会 公式サイト)Privremena zabrana činodjejstvovanja | Crnogorska Pravoslavna Crkva

 

 また、同教会の“シメオン大主教”という人物もこの動きを批判している記事が出、自身と同教区は賛同していないとしています。

 (モンテネグロ語:モンテネグロ正教会 公式サイト)Obraćanje Arhiepiskopa Simeona povodom skupa 03. 09. 2023. godine | Crnogorska Pravoslavna Crkva

 

 詳細は不明ですが、 MOC は2018年にも一部メンバーが離脱して新組織を結成しており、今回の件もそのようなもの(として落ち着く)かもしれません。

 

追記:
 モンテネグロを管轄する、主流の教会から教会法上合法な教会と見なされているのは、セルビア正教会です。
 上記の、新たにモンテネグロ正教会の府主教に選出されたと主張するボリス主教は、セルビア正教会の、ブエノスアイレス・中南米主教キリロ座下(His Grace Bishop Kirilo of Buenos Aires and South-Central America)の いとこ だそうです。

 

追記2:
 英語の記事を出しているところがあったのでリンクしておきます。

 At the gathering in Cetinje, Boris was elected as the metropolitan; Mihailo: A political group that has no legitimacy

 

続報:
 “モンテネグロ正教会”で新たな首座に選出されたと主張する“ボリス府主教”らが扉を破壊して聖堂に侵入したとして、“ミハイロ府主教”側が告訴をおこなったと発表。またそれに対する反論が“ボリス府主教”よりおこなわれた模様(2023年9月)
 “モンテネグロ正教会”の首座“ミハイロ府主教”ら三人の主教が、新たな首座に選出されたと主張する“ボリス主教”の聖職者としての地位を剥奪と発表(2023年9月)

東方正教会シスマ2020:モンテネグロ議会選挙でジュカノヴィッチ大統領与党敗北(2020年8月)野党連合の代表の一人は、キリスト教/セルビア正教会の重鎮モンテネグロ府主教アンフィロヒイェ座下に報告

 モンテネグロ議会選挙は野党連合の勝利に終わりましたが、ジュカノヴィッチ大統領はまだまだゴネており余談を許さない状況ではあります。
 ここでは、東方正教会の方面から事態を見ていきます。

 

 もともとモンテネグロは、キリスト教/東方正教会/セルビア正教会の管轄権下にあります。
 一方、同国には、教会法上合法でない勢力が結成したモンテネグロ正教会が存在します。
 ジュカノヴィッチ大統領はこの集団を利用し、コンスタンティノープルから独立正教会として認めるトモスを得て政治に役立てようとしましたが(いわゆるウクライナモデル)、この集団の首座“ミハイロ府主教”がコンスタンティノープルの不興を買っている人物であったこともあり、こちらの計画は進んでいませんでした(ミハイロ府主教は承認に自信を見せたりしていましたが……)。

 一方、ジュカノヴィッチ大統領は、同国のセルビア正教会モンテネグロ府主教庁【モンテネグロおよび沿海の府主教庁】の教会財産を強制接収する法案を通しました。
 これに対する抗議行動は、他の多数の抗議行動と結ぶ付き、今回の選挙結果につながっています。

 選挙後、野党連合の代表の一人ズドラヴコ・クリヴォカピッチ氏(Zdravko Krivokapić)は、モンテネグロおよび沿海の府主教アンフィロヒイェ座下(His Eminence Metropolitan Amfilohije of Montenegro and the Littoral)を選挙後訪問、祝福を求めたようです。

 

Susret Amfilohija i Krivokapića posle izbornog trijumfa opozicije – YouTube

 

 同府主教庁の公式サイトでは、「キリスト復活! モンテネグロ復活!【ハリストス復活! ツルナ・ゴーラ復活!】」などの文字が踊り、ジュカノヴィッチ政権の弾圧終了に向けた選挙結果を祝っていました。
 ただし、組閣は10月予定であり、ジュカノヴィッチ大統領がおとなしくしているとも思われていません。
 まだまだ予断を許さない状況の中、(あとで記事にしますが)北マケドニア共和国の大統領がコンスタンティノープルに対し自国の教会法上合法でない集団を独立正教会として認めるよう要請したというニュースが出てきました。
 どちらもセルビア正教会の管轄権下にある領域である以上、片方の状況がもう片方に強く影響することは言うまでもありません。
 「シスマはシスマは呼ぶ」とは有名な言葉ですが、モンテネグロが落ち着くかどうかはまったく見通せません。

 

関連:
 東方正教会シスマ2020:北マケドニア大統領ペンダロフスキ閣下が、キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教バルソロメオス聖下に対し、同国の教会法上合法でない“マケドニア正教会-オフリド大主教庁”を独立正教会として認めるよう要請したと報道(2020年9月)

 訃報(2020年10月30日):キリスト教/セルビア正教会の重鎮/モンテネグロおよび沿海の府主教アンフィロヒイェ座下が永眠(1938~2020)新型コロナウイルス感染症【COVID-19】の治療で入院との既報

 

キリスト教/“モンテネグロ正教会”の“ミハイロ府主教”が、コンスタンティノープルからの独立正教会としての承認に自信をみせたとの報道(2020年1月)

 キリスト教/東方正教会の教会法上合法な教会に属さない(または主流のグループに属さない)“モンテネグロ正教会(MOC)”首座の“ミハイロ府主教”(ツェティニェ大主教・モンテネグロ府主教ミハイロ座下 : His Beatitude Mihailo, Archbishop of Cetinje and Montenegrin Metropolitan)は、コンスタンティノープルの全地総主教庁から独立正教会として認めるトモスを取得することに自信をみせたとの報道。
 コンスタンティノープル側は、モンテネグロはセルビア正教会の管轄権下にあるとしてたびたび否定していますが、彼ら自身のいうことはまったくあてにならないので渡すかもしれませんとしか……。

※ミハイロ府主教は、ついでに「マケドニア正教会-オフリド大主教庁【MOC-OA】もトモスをもらえるだろう」というように受け取れるように発言しているように書かれていますが、マケドニア正教会のほうは本当に交渉しています

 

 (英語)Mass media: Head of “Montenegrin church” says his structure would get Tomos – UOJ – the Union of Orthodox Journalists

 

関連:
 モンテネグロ議会が野党議員を18人ほど拘束してキリスト教/セルビア正教会の教会財産を大量に接収するための新法を成立(2019年12月)