ギリシャの正教会系メディア「ΒΗΜΑ ΟΡΘΟΔΟΞΙΑΣ」が、キリスト教/ギリシャ正教会がコンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】を承認する見込みと報道(2019年5月~6月)

 ギリシャの正教会系メディア「ΒΗΜΑ ΟΡΘΟΔΟΞΙΑΣ」によりますと、キリスト教/東方正教会/ギリシャ正教会の聖シノドに属する委員会(コンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】を承認するかどうかを検討)が、高位聖職者らに承認するよう提案すると決めたと報じています。
 もちろん、これは承認することが決まったことを示しているわけではありませんが、最近のキリスト教/東方正教会首席/コンスタンティノープル=新ローマ大主教・全地総主教バルソロメオス聖下(バーソロミュー1世世界総主教バルトロマイ1世ヴァルソロメオス1世 : His All-Holiness Bartholomew, Archbishop of Constantinople-New Rome and Ecumenical Patriarch)とキリスト教/東方正教会/ギリシャ正教会首座/アテネ・全ギリシャ大主教イエロニモス2世座下(His Beatitude Hieronymos II, Archbishop of Athens and All Greece and Primate of the Autocephalous Orthodox Church of Greece)の会談で承認することが同意されたという報道や、委員会では承認に否定的なキリスト教/東方正教会/アルバニア正教会の首座/ティラナ・ドゥラス大主教アナスタシオス座下(His Beatitude Archbishop Anastasios of Tirana and Durres, Primate of Albania)の文書がスルーされたり、その他ギリシャ正教会がコンスタンティノープルの奴隷にすぎない説が聖職者らから出されたり(ギリシャの憲法上コンスタンティノープルに逆らえないそうです)、他教会は中立を守るべきだとしていたキリスト教/東方正教会/キプロス正教会の首座/ノヴァ・ユスティニアナと全キプロスの大主教クリソストモス2世座下(His Beatitude Archbishop Chrysostomos II of Nova Justiniana and all Cyprus)はもはやなにも行動せず(ロシア正教会のイラリオン府主教との会談予定はどうなったのか……)、全般的にみると、ギリシャ人系各教会はコンスタンティノープルに従って動くことになるという当初からの各方面の見立て通りに落ち着きそうです。
 もっとも、ロシアと絶縁するとすさまじく政治的な問題が発生するアレクサンドリア総主教庁(エジプト大統領からどんな冷遇が起こるか)とエルサレム総主教庁(イスラエル政府が対ロシア政策の一環として利用しまくることはいうまでもない)がどうするかはまだわかりませんが……。アラブ化しているアンティオキア総主教庁は、親ロシアであり動かないでしょう。

 しかし、この21世紀、いよいよ「『ギリシャ正教』と『ロシア正教』は違うもの」ということになってきたように思えます。

 

 (ギリシャ語)Ουκρανικό – "Φωτιές" άναψε η απόφαση στην Ελλαδική Εκκλησία – ΒΗΜΑ ΟΡΘΟΔΟΞΙΑΣ

 

 なお、ギリシャ正教会が OCU を承認した場合、その後の展開として、ロシア正教会側からコミュニオンの解除を検討する聖シノドの開催があるでしょうが、ギリシャ正教会内部から離脱者が出てくる可能性もあります。

 

キリスト教/ロシア正教会の「西欧における総主教代理」が交代(2019年5月)昨年末【2018年12月】に再設置

 2019年5月30日、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会の聖シノドは、同教会のウィーン・ブダペスト大主教アントニー座下(His Eminence Archbishop Anthony【Antoniy】 of Vienna and Budapest)を新たな「西欧における総主教代理」に、昨年末【2018年12月】の再設置より「西欧における総主教代理」を務めていたイオアン府主教座下をウィーン・ブダペスト府主教にするという、交代人事を決定しました。
 翌5月31日に、アントニー座下は府主教に昇叙されています。

 

 (英語)New Exarch of Western Europe of the Patriarchate of Moscow – Romfea News

Romfea.newsさんのツイート: "New Exarch of Western Europe of the @mospat_ru #romfeanews https://t.co/gTHgG3Ve8e"

 

 昨年末にロシア正教会は、対コンスタンティノープルの意思表示として、「西欧における総主教代理区」と「東南アジアにおける総主教代理区」を設置しました。
 このうち、「西欧における総主教代理」に叙任されたイオアン座下は、主教から(大主教を経ずして)府主教に昇叙されるという、例外的な事態となっていました。

 今回、ギリシャの正教会系メディア Romfea 英語版は、この短期間での交代を「予想されていなかったもの」としています。
 しかし、上記のように、イオアン座下を総主教代理とした昨年の人事が例外的なものだったことを考えると、いずれイオアン座下は“本来の昇格路線”に戻し、別の人物が総主教代理となる予定だったとみるべきでしょう。

 アントニー座下のほうは、今回の総主教代理叙任とともに、府主教に昇叙されました。
 また、アントニー座下は、以前より(モスクワ総主教庁のロシア連邦外の教会に関する役職に就いているため)コンスタンティノープル管轄権下にある西欧ロシア正教会大主教区のロシア正教会“移籍”に関して、ロシア正教会側の窓口となっています。
 今回、アントニー座下を「西欧における総主教代理」に移したのは、大主教区の件と関係があるかどうかはわかりませんが、仮に交渉が破綻した場合、ロシア正教会側は個別に切り崩して「西欧における総主教代理区」に入れるように行動するでしょう。アントニー座下はこれから大主教区メンバーとの接触もますます増えるだろうことを考えると、切り崩しの前準備のようにも思えますが……。

 

キリスト教/ロシア正教会モスクワ総主教キリル聖下が、韓国の例の国会議長(文喜相:ムン・ヒサン)と会見(2019年5月)

 2019年5月29日、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会の首座/モスクワ・全ロシア【全ルーシ】総主教キリル聖下(キリール総主教 : His Holiness Kirill, Patriarch of Moscow and all Russia【Rus’】)は、ロシア連邦を訪問した例の韓国の国会議長(文喜相ムン・ヒサンMoon Hee-sang)と会見しました。

 ロシア正教会側から、
 東南アジアにおける総主教代理/シンガポール・東南アジア府主教セルギイ座下(His Eminence Metropolitan Sergiy of Singapore and South-East Asia, Patriarchal Exarch in South-East Asia)、
 同総主教代理区の朝鮮大主教フェオファン座下(His Eminence Archbishop TheophanFeofan】 of Korea)、
 が同席。

 ウクライナに続く、コンスタンティノープルとモスクワの管轄権争いの場になっている朝鮮半島ですが、北朝鮮にはコンスタンティノープルの影響はないので、なにか起こるなら韓国でしょう(すでにモスクワ側が主教区設置と大主教叙任をしていますが)。
 韓国の現政権は、モスクワとコンスタンティノープルの争いにうといらしいということを昨年さらけ出しましたが、今回の議長によるモスクワ総主教訪問はロシア側への謝罪行脚かもしれません。

 

russianchurch(ロシア正教会モスクワ総主教庁公式チャンネル):
Святейший Патриарх Кирилл встретился с Председателем Национального собрания Республики Корея – YouTube

 

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Patriarch Kirill meets with Speaker of the National Assembly of the Republic of Korea | The Russian Orthodox Church

 

キリスト教/コンスタンティノープル管轄権下で一方的に総主教代理区の地位を廃止(2018年11月)された西欧ロシア正教会大主教区。ロシア正教会に“移籍”した場合に関するモスクワ側の提案はこれ以上譲歩の可能性はなさそうな内容だが快諾はない模様(2019年5月)「なにもしない」ことになるのでは

 キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルの管轄権下にあったものの2018年11月にコンスタンティノープルから一方的に総主教代理区としては廃止され、大主教区という集団としても解体されそうな、西欧ロシア正教会大主教区ですが、ロシア正教会に“移籍”した場合に関するモスクワ総主教庁側の回答内容や、聖職者らのコメントなどが散見されます。

 モスクワ総主教庁側の回答内容で目立つのは、“移籍”が成立すれば、同大主教区に(補佐的な職務をおこなう)主教を二名叙聖する用意があるという項目です。
 ジャン大主教座下は、自らが高齢なのにコンスタンティノープルが後継候補の主教を叙聖しようとしないことについて、主教不在による大主教区の消滅を狙ったものだとコメントしていました。
 二名の主教が追加されることにより、(ジャン大主教座下に万が一のことがあっても二名の主教が残っているので)東方の教会の伝統(新たな主教はすでに主教となっているもの二名によって叙聖される)を守ることが可能になります。
※余談ですが、この「自然消滅を狙って新規の主教叙聖をおこなわない」というのは、キリスト教/英国正教会【イギリス正教会】がキリスト教/オリエント正教会/コプト正教会より離脱(2015年10月)したときにも観測(コプト正教会は英国正教会の自然消滅)としてあったものです。素性の違う連中が寄り集まっている自治的な集団を解消しようという発想はどこにでもあるということでしょうか。

 また、大主教区そのものについては、ロシア正教会の西欧における総主教代理区に属するものではないとも明言された模様。
 自治的な内容については、詳細ははっきりしませんが……。

 これらの内容からすれば、ロシア正教会側の提案は、これ以上の譲歩の可能性はほぼない(詳細がはっきりしない自治的な内容に関してはともかく)ものですが、大主教区側はこの内容について積極的に受け入れようとする空気は、そこまで広がっていないようにみえます。
 この原因ですが、いろいろ理屈はいってますが、結局のところ、彼らのいう「教会法上合法」というのが、コンスタンティノープルまたはコンスタンティノープルとフル・コミュニオンの状態にある教会に属することであるため、コンスタンティノープルの指示に逆らって行動を起こすということがおかしいということにあるのでないかと思います。
 ロシア正教会側は、この大主教区を受け入れる(自らに戻す)ことは悲願で、達成したいはずですが、一方、現在出している条件ではいつまたコンスタンティノープル側に裏切るかわからない連中が裏切るのを止める方法がないわけで、ここまで出したならここが限界でしょう。本音を言えば、教会財産をすべてモスクワに戻して、大主教区をつぶしたいはずです。
 また、大主教区側には、21世紀に入ってから“裏切った”人々が含まれており、彼らの教会財産や聖職者の地位に対しては、どれだけ保証されるかはわかりません。というか、たぶん財産をすべてモスクワが接収して、聖職者は僻地の修道院かどこかに押し込めると思います(こうなるかはわかりませんが、報復処置がおこなわれそうなほのめかしはあるようです)。

 いずれにせよ、この条件で受け入れられないならば、可能性はもうないわけで、9月7日に臨時総会としたのも、その頃までになにか奇跡が起こってすべてうまくいくといいねみたいななげやりな日程設定だったのでしょう。

 それにしても、あきれるのは、「コンスタンティノープルとモスクワの争いの被害者にはなりたくない!」という発言で、まるで彼らが両者の争いに無関係であるかのような責任感のなさ。
 21世紀にもなって、モスクワから離脱した人々を受け入れた大主教区の連中がなにをいうか、とあぜんとしました。
 あなた方の存在そのものがコンスタンティノープルとモスクワの争いであり、ウクライナ問題の前哨戦です。

 

キリスト教/ロシア正教会モスクワ総主教キリル聖下が、ロシア外務省での復活大祭の式典に臨席(2019年5月)各教会の聖職者やロシア外相セルゲイ・ラヴロフ閣下が参列

 2019年5月20日、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会の首座/モスクワ・全ロシア【全ルーシ】総主教キリル聖下(キリール総主教 : His Holiness Kirill, Patriarch of Moscow and all Russia【Rus’】)は、ロシア連邦外務省でおこなわれた復活大祭の式典に臨席しました。

 ロシア正教会より、
 モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下(ヒラリオン府主教 : His Eminence Metropolitan Hilarion of Volokolamsk, chairman of the Moscow Patriarchate’s Department for External Church Relations (DECR))、
 総主教補佐筆頭イストラ府主教アルセニー座下(His Eminence Metropolitan Arseniy of Istra, first vicar of the Patriarch of Moscow and All Russia)、
 東南アジアにおける総主教代理/シンガポール・東南アジア府主教セルギイ座下(His Eminence Metropolitan Sergiy of Singapore and South-East Asia, Patriarchal Exarch in South-East Asia)、
 クリン主教ステファン座下(His Grace Bishop Stefan of Klin)、
 ヴォスクレセンスク主教ディオニシー座下(His Grace Bishop Dionisiy of Voskresensk)、
 ゼレノグラード主教サッヴァ座下(His Grace Bishop Savva of Zelenograd : ※下記記事でズヴェニゴロド主教表記になってます)、

 アレクサンドリア総主教庁よりキュレネ府主教アサナシオス座下(His Eminence Athanasios, Metropolitan of Kyrini【Cyrene】)、
 アンティオキア総主教庁の駐モスクワ・メトヒオン【ポドヴォリエ】ニフォン府主教座下(His Eminence, the Most Reverend Niphon, Metropolitan of Philippople?【Chehba?】)、
 セルビア正教会よりモラヴィツァ主教アントニイェ座下(His Grace vicar Bishop AnthonyAntonije】 of Moravica)、
 
 そのほか、エルサレム総主教庁、ブルガリア正教会、チェコ・スロバキア正教会、アメリカ正教会【OCA】、ジョージア正教会【グルジア正教会】より聖職者、ローマ・カトリック教会及びオリエント正教会の各教会の聖職者、イスラム教法学者、ロシア連邦外務大臣セルゲイ・ヴィクトロヴィチ・ラヴロフ閣下(ラブロフ外相:His Excellency Mr Sergey Viktorovich Lavrov)らも参列。

 

russianchurch(ロシア正教会モスクワ総主教庁公式チャンネル):
Святейший Патриарх Кирилл принял участие в Пасхальном приеме в Министерстве иностранных дел – YouTube

 

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Primate of the Russian Orthodox Church attends Paschal reception at the Ministry of Foreign Affairs | The Russian Orthodox Church

 (英語:ロシア連邦外務省公式サイト)Foreign Minister Sergey Lavrov’s speech at a gala reception for Orthodox Easter, Moscow, May 20, 2019 – News – The Ministry of Foreign Affairs of the Russian Federation

 

MFA Russia 🇷🇺さんのツイート: "FM Sergey #Lavrov: 💬#Russia will continue promoting an international agenda that takes into account the identity of nations and builds trust between representatives of different religions, civilisations and cultures ⬇️⬇️⬇️ https://t.co/iZtum8Z4Ti… https://t.co/tjMZFcYY1u"

 

МИД России / Russia's MFAさん(@mid.rus) • Instagram写真と動画