ロシア側の発表なのと、規模がいまいちはっきりしませんが、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープル/アメリカ東方正教会のテキサスの小教区から離脱して、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会下で自治的な権限を保有する在外ロシア正教会【ROCOR】に移動した信徒たちがいるようです。
在外ロシア正教会は今回の一連の事態に対し、なぜかモスクワ総主教庁よりも憤っているようなところがありますが、それがなにに起因するのか、部外者にはよくわからないところです。
ロシア側の発表なのと、規模がいまいちはっきりしませんが、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープル/アメリカ東方正教会のテキサスの小教区から離脱して、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会下で自治的な権限を保有する在外ロシア正教会【ROCOR】に移動した信徒たちがいるようです。
在外ロシア正教会は今回の一連の事態に対し、なぜかモスクワ総主教庁よりも憤っているようなところがありますが、それがなにに起因するのか、部外者にはよくわからないところです。
2019年3月4日、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルに独立正教会として認められたほうの「ウクライナ正教会(AOCU : OCU)」の聖シノドは、キリスト教/東方典礼カトリック教会/ウクライナ東方典礼カトリック教会の首座/キエフ=ハリチ首位大司教スヴャトスラフ・シェウチューク大司教座下(His Beatitude Archbishop Sviatoslav Shevchuk, Major Archbishop of Kiev-Galicia : キエフ大司教 : Archbishop of Kiev)より要請されていた、聖ソフィア大聖堂の礼拝使用を断ることを決定したようです。
Recent statements of the Synod of the Autocephalous Church of Ukraine which convened today#romfeanewshttps://t.co/uaLZU7yLqE
— Orthodox Times (@orthodox_times) March 4, 2019
上記、 Romfea 英語版の記事では、ウクライナの国内問題に深刻な影響を与えるという聖シノド側の見解が掲載されています。
これより前に、シェウチューク大司教座下からの要請に対し、事実上この「ウクライナ正教会」を率いている“フィラレート名誉総主教”は、「東方正教会全体の問題となる」「ローマで東方正教会の首座が礼拝をおこなうようなもの」「プーチンが攻撃してくるかも」となぜか急にヘタレになったようなコメントをしたという情報もありました。東方正教会圏内以外には弱気なのか、とりあえず独立正教会設置にこぎつけて気合が抜けてしまったのか。この間まで世界で最も言論の自由を謳歌する一人だったのにガッカリです(「かわりにワシにバチカンの聖ペトロ大聖堂で礼拝させろ」くらい言ってみたらどうでしょうか)。
一方、シェウチューク大司教座下は、この聖シノド会合よりも前の話ですが、フィラレート名誉総主教との直接対話で説得できる自信を示していました。会談がおこなわれたのか、これからおこなわれるのかおこなわれないのか、その辺りは不明です。
シェウチューク大司教座下は、コンスタンティノープルからこの「ウクライナ正教会」に独立正教会として認めるトモスが渡されたことを受けて、ウクライナ東方典礼カトリック教会と合同してウクライナ総主教庁【ウクライナ総大司教庁】を結成し、ローマ及びコンスタンティノープルとのデュアル・コミュニオンに入ることを提案するという、なんとも誰も賛成しそうにない案を披露したりしていますが、この案自体も遡ればコンスタンティノープル側がかつて別の形で示したものが原型となっています。
ロシア連邦の Interfax (ロシア語版)によりますと、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会の首座/モスクワ・全ロシア【全ルーシ】総主教キリル聖下(キリール総主教 : His Holiness Kirill, Patriarch of Moscow and all Russia【Rus’】)の朝鮮民主主義人民共和国【北朝鮮】訪問が計画されているようです。
総主教の広報が明らかにしたとのこと。
3月3日(日曜日)に、タイ王国のバンコクにて、東南アジアにおける総主教代理/シンガポール・東南アジア府主教セルギイ座下(His Eminence Metropolitan Sergiy of Singapore and South-East Asia, Patriarchal Exarch in South-East Asia)が、朝鮮民主主義人民共和国国務委員会委員長金正恩閣下(キム・ジョンウン : His Excellency Mr Kim Jong Un)の招待によりキリル総主教が訪問するだろうと述べたことに関してのようです。
(ロシア語)Интерфакс-Религия: Патриарх Кирилл посетит КНДР
(英語)Interfax-Religion: Patriarch Kirill to visit North Korea
ロシア正教会が設置した東南アジアにおける総主教代理区には、朝鮮教区が設置され、北朝鮮と韓国はともにこの教区に含まれます。
今回の訪問はまだ詳細が決定していないようですが、金正恩閣下とアメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプ閣下(The Honorable Donald J. Trump)のベトナム・ハノイでの会談が実に成果の無い状態で終わった後だけに、北朝鮮側がロシアとの連携を見せる狙いがあるのかもしれませんが……元からの予定であってなにも関係ないかもしれません。
コンスタンティノープルとモスクワの間が事実上決裂した昨年末に、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープル=新ローマ大主教・全地総主教バルソロメオス聖下(バーソロミュー1世 : 世界総主教バルトロマイ1世 : ヴァルソロメオス1世 : His All-Holiness Bartholomew, Archbishop of Constantinople-New Rome and Ecumenical Patriarch)が大韓民国を訪問し、大韓民国大統領文在寅閣下(ムン・ジェイン : His Excellency Mr Moon Jae-in)と会談しましたが、その際大統領はバルソロメオス総主教に対し非核化への協力を要請していました。
一方、コンスタンティノープルの管轄権下に属する韓国正教会【正教朝鮮府主教庁】は、北朝鮮の平壌にロシアが建てた聖堂を自らの小教区と記したカレンダーを配布し、朝鮮民主主義人民共和国駐箚のロシア連邦特命全権大使が激怒のコメントを出すということがありました。非核化への協力(笑)。
大統領の発言が少々間抜けであっても国会議長のひどさに比べればたいしたことはないわけですが、それにして北朝鮮と融和したいのにロシアに唾を吐くというのは、正直なにがしたいのかよくわからなかったわけですが……トランプ・金正恩が成果なく終わり(ハノイ・ショックとか)動揺しているらしいので、単純になにひとつ現実を見ていないのではないかという気もします。
また、ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下(ヒラリオン府主教 : His Eminence Metropolitan Hilarion of Volokolamsk, chairman of the Moscow Patriarchate’s Department for External Church Relations (DECR))は、「無神論の国家である北朝鮮に我々の聖堂と小教区があるのに対し、韓国にはないというのはおかしいこと」と韓国への小教区設置に前向き、というかコンスタンティノープルとの対立の結果必然的な結論を述べていました。これがどうなったのかわかりません……まだ設置されていないと思うのですが……。
現在の韓国の大統領らの動静を見ると、キリル総主教が金正恩国務委員長同志と会談した後だと、速やかにロシア正教会の小教区設置に協力するのではないかと思われます。
しかし、それは、コンスタンティノープル(とその管轄権下に属する韓国正教会【正教朝鮮府主教庁】)の不満(なのかもっと大きな怒りなのかわかりませんが)を買うことにもなるでしょう。とはいえ、彼らの不満程度を気にするくらいなら、他に気にすることはもっとあるだろうということはさすがに大統領にもわかると思うので、つつがなく進行していくのではないでしょうか。
そういうわけで、今回の訪問計画については、金正恩と仲の良いところを見せて韓国での聖堂や小教区設置を有利に運ぶのが目的ではないか、と思っています(繰り返しますが、もう設置しているかもしれません)。
キリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁の公式サイトによりますと、キリスト教/オリエント正教会/シリア正教会の首座/アンティオキア・東方全土総主教“モラン”・“モル”・“イグナティウス”・アフレム2世聖下(His Holiness Moran Mor Ignatius Aphrem II, the Patriarch of Antioch and All the East, the Supreme Head of the Universal Syriac Orthodox Church)からロシア正教会の首座/モスクワ・全ロシア【全ルーシ】総主教キリル聖下(キリール総主教 : His Holiness Kirill, Patriarch of Moscow and all Russia【Rus’】)に対し、「ウクライナは、“宗教の皮をかぶった政治”が国内を無茶苦茶にしたシリアと同じ道をたどる」と懸念する書簡を送ったそうです。
※書簡についての発表はロシア正教会側からのみです。
(英語:ロシア正教会モスクワ総主教公式サイト)Primate of the Syriac Orthodox Church has great concerns about large-scale of violence against believers of the canonical Church in Ukraine / News / Patriarchate.ru
(ロシア語:ロシア正教会モスクワ総主教庁公式サイト)Предстоятель Сирийской Ортодоксальной Церкви глубоко обеспокоен масштабами насилия, которому подвергаются верующие канонической Церкви на Украине / Новости / Патриархия.ru
(英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Primate of the Syriac Orthodox Church has great concerns about large-scale of violence against believers of the canonical Church in Ukraine | The Russian Orthodox Church
シリアでの問題というか戦争というか内戦というか紛争というかについて、シリア正教会の立場は、アメリカや西側諸国とIS【イスラム国】含むイスラム過激派によって起こされた騒乱が国内を無茶苦茶にし、それらがキリスト教信者を弾圧したという立場であり、シリアのアサド政権及び同政権を支援しているロシアのプーチン政権はキリスト教の保護者という位置付けになると思います。
「宗教の皮をかぶった政治」が、IS【イスラム国】含むイスラム過激派であり、またウクライナでそれに相当するものが、ポロシェンコ政権とコンスタンティノープルにトモスを与えられた独立正教会であるということになるでしょう。
要するに、ウクライナのポロシェンコ政権はイスラム国【IS】のようなものと遠回しに述べているようにも取れますし、そうだとするとシリアと同じくプーチン政権による軍事介入が必要という帰結になるとも取れます。
が、はっきりとそう書いてあるわけでは、無論ありません。
2019年2月23日に臨時総会【EGA】がおこなわれ、事実上、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープルからの離脱を決定した西欧ロシア正教会大主教区。
この大主教区は、もともとロシア帝国崩壊後のソ連での弾圧から逃れた人々らにより結成され、その後ロシア正教会モスクワ総主教庁を完全に離れてコンスタンティノープルの管轄権下に入っていたものです(ものすごく簡単にいいましたが)。
1999年には、コンスタンティノープルより総主教代理区として認めるトモスを与えられましたが、2018年11月27日にコンスタンティノープルより突如として一方的に廃止を宣告されました。また、これは大主教区自体の廃止を要求するものでした。
一方、大主教区側は、これに対し、総主教代理区として認めるかどうかはコンスタンティノープルが決めるものだが、大主教区の将来を決めるのは大主教区自体の総会【GA : General Assembly】であるとし、2019年2月23日、臨時総会【EGA : Extraordinary General Assembly】を開催、コンスタンティノープルからの要求を拒否することを投票で決定しています。
関連:
キリスト教/コンスタンティノープル管轄下で一方的に総主教代理区としては廃止された西欧ロシア正教会大主教区の臨時総会が開催、集団としての解体を認めないと決定(2019年2月)
また、これから大主教区が、コンスタンティノープルではないどこの教会法上合法な教会に属するかですが、ロシア正教会モスクワ総主教庁、(ロシア正教会の管轄権下で自治的な権限を保有する)在外ロシア正教会、ルーマニア正教会、アメリカ正教会【OCA】の名前が挙がっていました。
Orthodoxie.com によりますと、投票でコンスタンティノープルの要求の拒否が決まった後、同大主教区のジャン大主教座下(イオアン大主教 : ハリオポリス大主教)は、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会のウィーン・ブダペスト大主教アントニー座下(His Eminence Archbishop Anthony【Antoniy】 of Vienna and Budapest)からの書簡を読み上げ、すでにロシア正教会モスクワ総主教庁との間の対話が進んでいることをあきらかにしています。
関連:
キリスト教/コンスタンティノープル管轄下で一方的に総主教代理区としては廃止され、事実上の離脱を決定した西欧ロシア正教会大主教区は、すでにロシア正教会モスクワ総主教庁との話を進めている模様(2019年2月)
今回、さらに別のメディアがジャン座下へのインタビューをおこなっています。
(ロシア語)Парижский архиепископ о перспективе перехода к РПЦ: «Идеальных церквей нет» – РОССИЯ – RFI
今までの状況の確認ですが、興味深いものになっています。
新しく属する教会として連絡を取った先として(ロシア正教会以外)、在外ロシア正教会とルーマニア正教会へも連絡を取ったことがあきらかにされていますが、在外ロシア正教会では大主教区側の要求が通りにくそうなこと、ルーマニア正教会ははっきりしないようです。アメリカ正教会【OCA】については言及がありません。
※なお、ルーマニア正教会が前向きに検討しているとする報道もありますが……。
また、現在の政治情勢のもとで、ロシア正教会の管轄権下に入ることについては、「政治とは距離を置くこと」という状況によっては厳しいもののよくある聖職者的なコメントに加え、ロシアの聖堂や修道院が復興していることに心動かされている様子がうかがわれます。
加えて、離脱者が出る可能性についても認めています。西欧は自由な国々なので立ち去るのも自由ということですが……これは東方正教会の聖職者として果たして良いのかとも思われます。
しかし、次のようなコメントも面白いところです。
「スキャンダルなどの問題はすべて教会にある。ローマ・カトリック教会の現状を見よ(このインタビューより時間としては後ですが、本日、オーストラリアの枢機卿が複数の児童への性的虐待で有罪宣告)」
「私はいつも楽園はここにはないと言っている。修道院も楽園ではない。地上には天国はない」
「もし我々がもっとも理想的な教会を求めてもそんなものはない。無人島で一人で過ごすしかない」
インタビューの中で質問されていながらはっきりと答えられていないように思うのは、大主教区が教会法上合法な教会の中にあるべきなのか(つまり「完全に独立した宗教組織になってはいけないの?」)ということと、現在の状況で東方正教会の教会法上合法な教会とはなにか(モスクワがコンスタンティノープルとのフル・コミュニオンを解除している現状で、コンスタンティノープルがモスクワとのフル・コミュニオンを解除する可能性はあるわけですが、そうなってもモスクワは教会法上合法な教会なのか)というあたりでしょうか。