ギリシャの東方正教会系メディアΡΟΜΦΑΙΑ(Romfea.gr)が、宗教的な場所を目的としたロシア人巡礼観光客のキャンセルが通常より増加しているという記事を出しています。
(ギリシャ語)''Βουτιά'' στον θρησκευτικό τουρισμό μετά τη διαμάχη Φαναρίου – Μόσχας
本当だとすれば、到着したとたんに相互破門になったりしたら塩をまかれるかもしれないという後ろ向きの考えでキャンセルする人が出ているのでしょう(もっとも今が最後のチャンスになるという前向き?な考えもありえますが)。
記事によれば、キャンセルされている予定地として、アトス山(コンスタンティノープルの全地総主教庁の管轄権下)だけではなく、メテオラ修道院群なども含まれるようです。
メテオラ修道院群は、全地総主教庁の管轄権下ではなく、ギリシャ正教会アテネ大主教庁の管轄権下だと思います(もしかしたら違うかもしれません)。もっとも一般のロシア人は、ギリシャ正教会がコンスタンティノープルの全地総主教庁から独立した存在だということを知らないかもしれませんが(そして独立しているとは到底いえない状況になってきていますが)。
いずれにせよ、観光客の長期的な減少は経済にマイナスとなり、責任問題に発展する可能性もあります。
もちろん、喉元過ぎれば熱さを忘れるということもありえます。しかし関係改善が見込めないどころか、相互破門 → 「彼らは教会から自発的に出ていった」論、というまだ二段階の悪化が残っている状況です。
この記事ではありませんが、アトス山については、ロシア正教会の見解(ロシア正教会の信徒はアトス山では領聖を受けられない)に対する反論も出たのですが、内容が「アトス山が全地総主教庁の管轄権下にあるというのは儀礼的なものだ」という最近どこかで無視されたような理屈だったのでロシア側からはスルーされた模様です。
ところで。
実は数日前(10月19日付)に、ΡΟΜΦΑΙΑには観光に関する別の記事が出ています。
(ギリシャ語)Ομιλία Μητροπολίτη Δωδώνης για τον Τουρισμό Ελλάδας-Ρωσίας στη Βουλή
見出しからは、ギリシャ正教会のドドニ府主教クリソストモス座下(His Eminence Metropolitan Chryssostomos of Dodoni)が、「議会でロシア人のギリシャ観光についてスピーチ」と取れるので、これはもしやコミュニオン解除が原因でおおげさなことになっているのではと思ったら、実際は上院の建物でロシアとギリシャの観光関係に携わる政治家らが集まって(ざっくりいうと)「ここ数年のロシア人観光客増加はめでたいので、さらなる発展に向けてがんばりましょう」というようなことを話し合ったという内容で、コミュニオン解除にはまったく触れていません(ずっこけました)。
予定があったから集まったのでしょうが、こう、なんというか、現場の空気が非常に気になる会合ではあります。
追記:
なお、このクリソストモス座下ですが、今回のシスマでは完全に全地総主教庁支持者で、会合にこの人を呼んでいる時点で、なんだかひどい茶番臭がします。
関連:
2018年~ ウクライナへの独立正教会設置を巡るコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立関連の記事一覧