キリスト教/ロシア正教会モスクワ総主教キリル聖下の北朝鮮訪問が計画されているとのこと(2019年3月)

 ロシア連邦の Interfax (ロシア語版)によりますと、キリスト教/東方正教会/ロシア正教会の首座/モスクワ・全ロシア【全ルーシ】総主教キリル聖下(キリール総主教 : His Holiness Kirill, Patriarch of Moscow and all Russia【Rus’】)の朝鮮民主主義人民共和国【北朝鮮】訪問が計画されているようです。
 総主教の広報が明らかにしたとのこと。

 3月3日(日曜日)に、タイ王国のバンコクにて、東南アジアにおける総主教代理/シンガポール・東南アジア府主教セルギイ座下(His Eminence Metropolitan Sergiy of Singapore and South-East Asia, Patriarchal Exarch in South-East Asia)が、朝鮮民主主義人民共和国国務委員会委員長金正恩閣下(キム・ジョンウン : His Excellency Mr Kim Jong Un)の招待によりキリル総主教が訪問するだろうと述べたことに関してのようです。

 

 (ロシア語)Интерфакс-Религия: Патриарх Кирилл посетит КНДР
 (英語)Interfax-Religion: Patriarch Kirill to visit North Korea

 

 ロシア正教会が設置した東南アジアにおける総主教代理区には、朝鮮教区が設置され、北朝鮮と韓国はともにこの教区に含まれます。

 今回の訪問はまだ詳細が決定していないようですが、金正恩閣下とアメリカ合衆国大統領ドナルド・トランプ閣下(The Honorable Donald J. Trump)のベトナム・ハノイでの会談が実に成果の無い状態で終わった後だけに、北朝鮮側がロシアとの連携を見せる狙いがあるのかもしれませんが……元からの予定であってなにも関係ないかもしれません

 

 コンスタンティノープルとモスクワの間が事実上決裂した昨年末に、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープル=新ローマ大主教・全地総主教バルソロメオス聖下(バーソロミュー1世世界総主教バルトロマイ1世ヴァルソロメオス1世 : His All-Holiness Bartholomew, Archbishop of Constantinople-New Rome and Ecumenical Patriarch)が大韓民国を訪問し、大韓民国大統領文在寅閣下(ムン・ジェイン : His Excellency Mr Moon Jae-in)と会談しましたが、その際大統領はバルソロメオス総主教に対し非核化への協力を要請していました。
 一方、コンスタンティノープルの管轄権下に属する韓国正教会【正教朝鮮府主教庁】は、北朝鮮の平壌にロシアが建てた聖堂を自らの小教区と記したカレンダーを配布し、朝鮮民主主義人民共和国駐箚のロシア連邦特命全権大使が激怒のコメントを出すということがありました。非核化への協力(笑)
 大統領の発言が少々間抜けであっても国会議長のひどさに比べればたいしたことはないわけですが、それにして北朝鮮と融和したいのにロシアに唾を吐くというのは、正直なにがしたいのかよくわからなかったわけですが……トランプ・金正恩が成果なく終わり(ハノイ・ショックとか)動揺しているらしいので、単純になにひとつ現実を見ていないのではないかという気もします。

 また、ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下(ヒラリオン府主教 : His Eminence Metropolitan Hilarion of Volokolamsk, chairman of the Moscow Patriarchate’s Department for External Church Relations (DECR))は、「無神論の国家である北朝鮮に我々の聖堂と小教区があるのに対し、韓国にはないというのはおかしいこと」と韓国への小教区設置に前向き、というかコンスタンティノープルとの対立の結果必然的な結論を述べていました。これがどうなったのかわかりません……まだ設置されていないと思うのですが……。
 現在の韓国の大統領らの動静を見ると、キリル総主教が金正恩国務委員長同志と会談した後だと、速やかにロシア正教会の小教区設置に協力するのではないかと思われます。
 しかし、それは、コンスタンティノープル(とその管轄権下に属する韓国正教会【正教朝鮮府主教庁】)の不満(なのかもっと大きな怒りなのかわかりませんが)を買うことにもなるでしょう。とはいえ、彼らの不満程度を気にするくらいなら、他に気にすることはもっとあるだろうということはさすがに大統領にもわかると思うので、つつがなく進行していくのではないでしょうか。

 

 そういうわけで、今回の訪問計画については、金正恩と仲の良いところを見せて韓国での聖堂や小教区設置を有利に運ぶのが目的ではないか、と思っています(繰り返しますが、もう設置しているかもしれません)。

 

キリスト教/ローマ教皇フランシスコ聖下が、ギリシャ正教会の「アポストリキ・ディアコニア」代表団のファナリオン主教アガサンゲロス座下らと会見(2019年2月)

 2019年2月25日、キリスト教/ローマ・カトリック教会の首座/ローマ教皇聖座およびバチカン市国の絶対君主/ローマ教皇フランシスコ聖下(His Holiness Pope Francis)は、キリスト教/東方正教会/ギリシャ正教会に聖シノドに属する「アポストリキ・ディアコニア(Apostolikì Diakonìa : Αποστολική Διακονία)」の訪問を受け、ファナリオン主教アガサンゲロス座下(His Grace Bishop Agathanghelos of Phanarion)らと会見しました。

 フランシスコ教皇聖下は、「フル・コミュニオンへの道にそびえる困難を克服」することを呼びかけることなどを含む挨拶をしたようです。

 

Vatican News – Italiano:
Papa Francesco: i discepoli di Cristo non siano prigionieri delle differenze – YouTube

 

 (英語)Pope Francis meets Orthodox Church of Greece delegation | ROME REPORTS

ROME REPORTS in English:
Pope Francis meets Orthodox Church of Greece delegation – YouTube

 

 (英語:ローマ教皇聖座公式サイト)Audience with a delegation of the “Apostolikì Diakonìa” of the Church of Greece, 25.02.2019
 (英語:バチカンニュース)Pope to Greek Orthodox: ‘we have more in common than what keeps us apart' – Vatican News

 

キリスト教/ギリシャ正教会の聖シノドの定例会合が11月5日~11月7日の日程で開催予定。議題の中心はツィプラス政権による国家と教会の分離を進める憲法の改定案について(2018年11月)ウクライナの問題はスルーかもしれません

 キリスト教/東方正教会/ギリシャ正教会の聖シノドの定例会合が2018年11月5日~11月7日の日程で開催予定です。
 議題の中心はツィプラス政権による国家と教会の分離を進める憲法の改定案についてとみられており、重要性の低いほかの問題が取り扱われるかどうかはわかりません。

 

 (ギリシャ語:ギリシャ正教会公式サイト)H ΕΚΚΛΗΣΙΑ ΤΗΣ ΕΛΛΑΔΟΣ : Ιερά Σύνοδος Εκκλησίας Ελλάδος – Δελτία Τύπου της Ιεράς Συνόδου

 (ギリシャ語)Τη Δευτέρα συνεδριάζει η Ιερά Σύνοδος – ΒΗΜΑ ΟΡΘΟΔΟΞΙΑΣ
 (ギリシャ語)Ιερά Σύνοδος: ''Θα τοποθετηθούμε αρμοδίως τον Νοέμβριο''

 

シスマ2018:インタビュー記事(BBCロシア語):キリスト教/コンスタンティノープルの全地総主教庁/テルメッソス大主教ヨブ座下(ウクライナ系の人物)(2018年11月)ロシアの正教会系サイトは座下の発言について「全地総主教庁は独立を認めるのみならず、独立を剥奪することもできる」

 BBCロシア語が、キリスト教/東方正教会/コンスタンティノープル全地総主教庁のテルメッソス大主教ヨブ座下(Archbishop Job of Telmessos)へのインタビューの記事を掲載しています。

 

 (ロシア語)"Надеемся, Москва обратится к разуму". Константинопольский епископ об украинской автокефалии – BBC News Русская служба

 

 ざーっと見てみましたが、とにかく長いうえに、大半がこちらには判定できない内容なので、詳細は読まないとは思います。

 この記事について、ロシアの正教会系サイト「OrthoChristian.Com」は、

 (英語)Not only can we give, but we can also take away autocephaly—Abp. Job (Getcha) / OrthoChristian.Com
 (英語)“The Moscow Patriarchate no longer exists in Ukraine today”—Abp. Job (Getcha) / OrthoChristian.Com

 「我々は独立を与えるだけでなく、剥奪することをもできる」と見出しにつけて紹介しています。
 当方はざーっと読んだだけなので、BBCロシア語の記事において、直接この部分にあたる箇所を見つけていません。
 とはいえ、全地総主教庁がそう考えているのはほぼ間違いないでしょう。
 近代において、彼らは、ギリシャ正教会の独立を認めた後に剥奪しています。
 そうなると、独立正教会というのは、「そもそも独立しているのか」というのが疑問になってきます。Autocephaly な 教会を「独立正教会」または「独立教会」としたのは、誤訳の類で、実際は「いつでも権限を剥奪される可能性のある自治的な教会」のことでしょう(全地総主教庁の見解が正しいとすれば)。もちろんこれでは Autonomous な教会との差がわかりませんが、「いつでも権限を剥奪される可能性のある第一級自治正教会」と「いつでも権限を剥奪される可能性のある第二級自治正教会」とでもすればよろしい。
 それにしても独立正教会が実は「独立していない正教会」のことだったとは……。

 また、座下は、1054年の東西教会分裂(教会大シスマ)のときと今では状況が違うことを述べています(1054年についてはめんどくさい話にもなりますので、とりあえず象徴的な年だとして先へ話を進めましょう)。
 要するに、東西教会分裂は神学上の違いなどがあったのに対し、今回はそんなものはない、シスマなどといっている連中は人々を脅しているのだ、ということです(当方のサイトもシスマといっているので、大主教からお叱りを受けてしまったことになるのでしょう!)。
 しかし、座下の発言全体をざっくり要約すれば、「我々が正しい。ロシアは従わないなら教会法違反。異論は認めない」といっているだけ
 ウクライナ系の人物が話し合いをする気がない意思をロシアに対して示しているのは、なるほどシスマではなく、ただの世俗的ケンカにすぎないともいえるでしょう。
 ですが、2016年の聖大シノド(The Great and Holy Synod)の件をみても明らかなように、教えに関しても分裂の兆しははっきりとあります。
 あるいは教会法についてまともな統一的見解も出てきていない状況を見れば、「一つの教えを奉じている」などというのが大嘘か大間違いで、「一つの教えを奉じている詐欺」か、「一つの教えを奉じているつもりだったがそんなことはなかったぜ!」というオチすら見えてきています(これについては本気で疑っており、検証すべきことだと考えています)。
 いずれにせよ、座下の定義するシスマにあてはまるかそうでないかはともかく、東方正教会は分裂するので(話し合うつもりがないんですから)、これからもシスマと書きます。

 そのほか、(ロシアのみならずオランダ系の機関による)世論調査で全地総主教庁の見解(ウクライナの人々が望んでいる)とは明らかに反する結果が出たのを意識したのか、「議会の多数の賛成があれば多数の人々が望んでいるということなのだ」という理屈をおっしゃっています。
 ジャン=ジャック・ルソー以降、思想家は、民意(民意に相当する言葉)をベースに、民主主義と現在いわれているよくわからない考えの集積について頭をひねってきましたが、結局のところ、民意というものがとらえどころがない=なんとでもいえるという現実を克服することはできず、「でも豊かで平和だしこれからも世の中はよくなるだろう」というにまどろんで仕事をサボっているうちに、アメリカや西欧は(他の地域も)とんでもない状況を迎えています。
 そんな時期に、「議会の多数の賛成があれば多数の人々が望んでいるということなのだ」。……こんなものは今どき意見のうちにも入りません
 世俗化(=聖職者はバカなので宗教に金や時間をつぎこむのはムダ)が進むわけだと納得してしまいました。いやまあ……もとから知ってました……けど。

 

 ともあれ今回のインタビュー、読みこむ気がまるでしませんが、キリスト教、東方正教会のダメっぷりをあらわす記念碑的なものになっているのではないか、と強引に歴史的評価をして感想を終わりたいと思います。

 新約聖書/マタイによる福音書/10章/34節 より:

わたしが地上に平和をもたらすために来たと考えるな。平和ではなく剣をもたらすために来たのだ。

 

 【シスマ2018 – The Schism of 2018】<東方正教会大分裂>: ウクライナへの独立正教会設置から始まったコンスタンティノープルの全地総主教庁とロシア正教会モスクワ総主教庁の対立とそれに端を発した出来事及びその他のシスマ的な出来事の記事一覧など<東方正教会内戦、大分裂、そして崩壊?>

 

信頼性は?ですが、欧州で10万人中のキリスト教の司祭(Priest)数はギリシャが一番多いとのこと(2018年10月)最下位はブルガリア……え?

 欧州で10万人中のキリスト教の司祭数はギリシャが一番多い約88人だということです。

※抜けている国もあります。

 

 (英語)Number of priests per 100,000 people • Jo Di

Jo Di 🏳️‍🌈さんのツイート: "Παράγουμε περισσότερους παπάδες από όσους μπορούμε να καταναλώσουμε! https://t.co/4qOOKlUTNI"

 

 参照データが、Catholic-Hierarchy、Wikipedia(ウィキペディア)、OrthodoxWiki、スウェーデン国教会の公式サイト、となっているので、これらのサイトのデータをつぎはぎしたものだと思われます(ざっと見た限り、結構こういうせこいことをやっているニュース?サイトのようです)。

 

※なお、プロテスタントには司祭は存在しないという話を読んだ方も多いかと思いますが、欧州のルター派の多くの教会には司祭(Priest)が存在します(この Priest は司祭なのかという疑問がわいた方は、泥沼にはまってしまうので他のことを考えましょう)。

 

 それにしても、欧州で一番「無宗教」が多いとされるチェコ(18.9人)よりも、国民の四分の三がブルガリア正教会を含む東方正教会の信徒とされるブルガリア(12人)のほうが司祭が少ないというのは、そんなバカな……。これで教会が運営できるなら、ギリシャは司祭を七分の一に削減可能だということになりますが……。