訃報(2022年2月9日):キリスト教/エリトリア正教会首座/エリトリア総主教アントニオス聖下が永眠(1927~2022)

 2022年2月9日、キリスト教/オリエント正教会/エリトリア総主教“アブネ”・アントニオス聖下(His Holiness Abune Antonios, Patriarch of the Eritrean Orthodox Tewahedo Church)が永眠したようです。
 1927年7月12日生まれの94歳。

 

 (英語:エリトリア正教会 アントニオス聖下を支持してきたほうの北米教区 公式サイト)H.H. Abune Antonios, the Third Patriarch of the Eritrean Orthodox Church is Reposed (Press Release)

 (英語)Patriarch of the Eritrean Orthodox Church Abune Anotnios passes away – Radio Erena
 (英語)The Martyr of Dictatorship – Patriarch Abune Antonios of Eritrea Enters Eternal Rest – Orthodoxy Cognate PAGE

 

 聖下は、2007年にエリトリア国政府の意向によって廃位され軟禁され続けていました。

 政府側の聖職者(と言い切っていいかどうかわかりませんが)は、その間に総主教を二人選出しています。

関連:
 訃報(2015年12月21日):キリスト教/(地位について議論のある)エリトリア総主教ディオスコロス聖下が永眠との報道(1935~2015)
 キリスト教/エリトリア正教会が新たな首座・総主教を選出(2021年6月)他のオリエント正教会の独立教会は承認せず。世界教会協議会【WCC】は祝福

キリスト教/エリトリア正教会が新たな首座・総主教を選出(2021年6月)他のオリエント正教会の独立教会は承認せず。世界教会協議会【WCC】は祝福

 キリスト教/オリエント正教会/エリトリア正教会は、エリトリア総主教“アブネ”・ディオスコロス聖下(His Holiness Abune Dioskoros, Patriarch of the Eritrean Orthodox Tewahedo Church)の永眠後に不在となっていた首座・総主教に、アディ・ケイ大主教ケルロス座下を選出しました。
 世界教会協議会などでは歴代数が振られているので、エリトリア総主教ケルロス1世聖下(His Holiness Abune KerlosQerlos】 I, Patriarch of Eritrea)となっています。

※なお、他のオリエント正教会の各独立教会は、政府によって“廃位”されたエリトリア総主教“アブネ”・アントニオス聖下(His Holiness Abune Antonios, Patriarch of the Eritrean Orthodox Tewahedo Church)を正統としており、ケルロス聖下および永眠したディオスコロス聖下を総主教と認めていません。

 

 (英語:エリトリア正教会 公式サイト)H.G. Abune Kerlos (Cyril) elected as 5th Patriarch of the Eritrean Orthodox Tewahdo Church

 (英語)Eritrea: Official Consecration of His Reverend Abune Qerlos, 5th Patriarch of Eritrea – allAfrica.com

 (英語:世界教会協議会【WCC】公式サイト)WCC congratulates His Holiness Abune Kerlos I, Patriarch of Eritrea | World Council of Churches
 (英語:世界教会協議会【WCC】公式サイト)Message to His Holiness Abune Kerlos I, Patriarch of Eritrea | World Council of Churches

キリスト教/オリエント正教会系のメディア OCP が、オリエン正教会の各教会と東方正教会/ロシア正教会の関係は悪化しているわけではないとわざわざ記事を出す(2019年12月)

 キリスト教/オリエント正教会系のメディア OCP(Orthodoxy Cognate PAGE) が、オリエン正教会の各教会とキリスト教/東方正教会/ロシア正教会の関係は悪化しているわけではないとわざわざ記事を出しています。

 

 (英語)Russian Orthodox Church – Oriental Orthodox Relations – OCP Statement | News | Orthodoxy Cognate PAGE

OCP® TweetsさんはTwitterを使っています: 「https://t.co/cb0OcgRHYr」 / Twitter

 

※オリエント正教会の主流のコミュニオンに属するのは、コプト正教会(アレクサンドリア総主教庁)、アルメニア使徒教会【アルメニア教会】、シリア正教会(アンティオキア総主教庁)、エチオピア正教会(エチオピア正教合性論教会)、エリトリア正教会(エリトリア正教合性論教会)、マランカラ正教シリア教会【インド正教会】の六つ。
 このうち、シリア正教会とインドのマランカラ正教シリア教会はコミュニオンが成立しておらず、エリトリアでは政府が教会を主導していることにより他の教会とは正常な関係にありません。また、エチオピアでは人種対立の教会分裂への影響が取り沙汰されています。

 

 ウクライナから発した、ロシア正教会とコンスタンティノープル・ギリシャ正教会・アレクサンドリア総主教庁との関係悪化という、宗教の枠内で見れば東方正教会内部の問題は、オリエント正教会の各教会に強い影響を与えているわけではない状況です(そういう状況だと思います)。
 もともと、正教会(Orthodox Church)という称を、オリエント正教会・東方正教会の両者とも多用するため混同が起きやすいわけですが。

 オリエント正教会ではアレクサンドリアといえばコプト正教会であるため、ロシア正教会が(東方正教会の)アレクサンドリア総主教とのコミュニオンを解除したことによる誤解(?)のようなものも一部に発生しているのかもしれません。

 

 それにしても、 OCP のような、東方正教会とオリエント正教会の間のコミュニオン回復とそれによるカトリックへの対抗を目指す立場というのは、今回の東方正教会大分裂とコンスタンティノープル原理主義の満開で望みは潰えていると思えるのですが、まだ頑張るのでしょうか。

 

関連:
 東方正教会大分裂:キリスト教/ロシア正教会の聖シノド会合がアレクサンドリア総主教とのコミュニオン解除を決定(2019年12月)
 キリスト教/シリア正教会アンティオキア総主教イグナティウス・アフレム2世聖下が、“ウクライナのシリア化”を懸念する書簡をロシア正教会モスクワ総主教キリル聖下に(2019年2月)

 

キリスト教/エリトリア正教会が、2007年に政府の意向で強制廃位されたエリトリア総主教アントニオス聖下を追放(破門?)したとのこと(2019年7月)

 BBC Africa の報道によりますと、キリスト教/オリエント正教会/エリトリア正教会の主教らが、2007年にエリトリア国政府の意向によって廃位され軟禁され続けているエリトリア総主教“アブネ”・アントニオス聖下(His Holiness Abune Antonios, Patriarch of the Eritrean Orthodox Tewahedo Church)を異端【heresy】のために追放したとのことです。

※同記事では「expel」の表現のみで「excommunicate」や「anathematise / anathematize」などの単語は使用されていません。
 そもそも同教会は、2015年に(政府側が主導して擁立し、オリエント正教会の各教会が認めるのを拒否した)エリトリア総主教“アブネ”・ディオスコロス聖下(His Holiness Abune Dioskoros, Patriarch of the Eritrean Orthodox Tewahedo Church)の永眠後、首座が不在ゆえに組織上どうなっているのかもわかりません。破門が宣告できる状況にないのかもしれません。

 

 (英語)Eritrea Orthodox Church ex-leader expelled for heresy – BBC News

BBC News Africaさんのツイート: "Eritrea Orthodox Church ex-leader expelled for heresy https://t.co/7ky6b2w0Rf… "

 

 なお、教会の一員ではなくなったアントニオス聖下ですが、そのまま軟禁されている教会の建物に住み続ける(軟禁され続ける)そうです。

 

 アメリカ合衆国副大統領マイケル・R・ペンス閣下(The Honorable Michael R. Penceマイク・ペンスMike Pence)が総主教に言及したニュースが出たばかりの後の処分です。

 Pence calls on Saudi Arabia to release critic of Islam – Reuters

Pence also cited the detention of a 90-year-old Orthodox Church patriarch by Eritrea;

 教会から追放したうえに軟禁し続けてやるぞ、というエリトリア国政府の意思表示とみていいのではないでしょうか。

 

追記:
 主教ら6人のうち(もう少し主教がいたと思いましたが……)、一名だけ署名に参加していないそうです。
 その一名はアケレ・グザイ=アディ・ケイ主教キリロス座下(Bishop Kirillos of Akele Guzay–Adi Keyih)だということですが、理由は不明です。

 

動画:キリスト教/エリトリア総主教ディオスコロス聖下の伝記と葬儀(2015年12月)

 2015年12月21日に永眠した、キリスト教/オリエント正教会/エリトリア正教会の首座/エリトリア総主教“アブネ”・ディオスコロス聖下(His Holiness Abune Dioskoros, Patriarch of the Eritrean Orthodox Tewahedo Church)の伝記と葬儀に関する映像がアップロードされていたので貼り付けておきます。

 

ERi-TV:
Eritrean Patriarch Dioskoros, Life History and Funeral | ERi-TV – YouTube

 

 エリトリア国政府は、2007年にエリトリア正教会のエリトリア総主教“アブネ”・アントニオス聖下(His Holiness Abune Antonios, Patriarch of the Eritrean Orthodox Tewahedo Church)を強制的に解任に追い込み、その後軟禁を続けています。
 かわって、総主教となっていたディオスコロス聖下ですが、他のオリエント正教会の各教会からは認められていませんでした。