キリスト教/東方正教会/エルサレム総主教庁が、解任された前エルサレム総主教のイリネオス修道士の(修道士への)降格を撤回(2019年7月)また、ギリシャの正教会系メディア Romfea に対して抗議声明を発表

 2019年7月25日、キリスト教/東方正教会/エルサレム総主教庁の聖シノドは、解任された前エルサレム総主教のイリネオス修道士(IrenaiosEirinaios)への、修道士への降格の撤回を決議したようです。

 以降、「元エルサレム総主教(Former Patriarch of Jerusalem)」と称されると思われますが、敬称を含めて、どのように表記されるかはまだよくわからないところです。

 

 (英語:エルサレム総主教庁公式サイト)LIFTING OF THE DEGRADATION OF MONK EIRINAIOS (FORMER PATRIARCH OF JERUSALEM)

 

 また、入退院が報じられたそのイリネオス元エルサレム総主教に関して、ギリシャの正教会系メディア Romfea.gr が無責任な報道をおこなったとし、抗議声明を発表しています。

 

 (英語:エルサレム総主教庁公式サイト)REFUTATION AGAINST THE NEWS PUBLISHED BY ROMFEA.GR NEWS AGENCY

 

 Romfea は、イリネオス元総主教の健康状態や入退院を報じており、英語版の最新記事は以下のものになります(今回の降格撤回を報じる記事)。

 (英語)Irenaios gets the title “Former Patriarch” by the Holy Synod of the Patriarchate of Jerusalem – Romfea News

修正:
 ギリシャ正教会側は、アテネの新しい医療施設は、元総主教の受け入れの準備が出来ているとしているようです。
 エルサレム総主教庁側の抗議内容からすれば、元総主教はエルサレム総主教庁側の組織に属するどこかで治療を受けていると受け取れますが……。 Romfea 記事は、元総主教が劣悪な環境下に置かれていると示唆というか、はっきり書いているものがあるので、それに対する反駁なのかもしれません。
 なお、今後のことについては言及されていません。

 

追記:
 ロシアの正教会系メディア ORTHODOX CHRISTIANITY(OrthoChristian.Com) は、 Romfea の記事に依りつつ、今回のエルサレム総主教庁の決定により、“イリネオス総主教”とサインしたパスポートが有効になり、治療のためのギリシャ渡航が可能になったとしています。

 Ailing Irenaios (Skopelitis) officially recognized as “former patriarch” by Jerusalem Patriarchate / OrthoChristian.Com

 正直、ほんまかいなと思いますが……。

 Romfea の記事などによりますと、パスポートはエルサレム総主教庁が保管していたとされます。
 確かに元総主教は事実上の軟禁状態にあるといわれていたため、パスポートの更新すらできていなかったというのはありえますが、解任から10年以上たっているのにそのパスポートが使用可能なのか。
 また、パスポートの問題だとすれば、新しく発給すればそれで済む話ではないかとも思えます。まさか本人が「格を戻せ」とゴネたわけでもあるまいし。

 

※なお、パスポートに「総主教」と書けるのかという初歩的な疑問を持ってしまった方のために説明いたしますと、称号などが法源を持つ場合(王政・貴族制度が現存したり国教があったり)から大統領などがなにかを強引に通した場合などまで、称号などがパスポートに用いられる例は多々あります。
 エルサレムの総主教でいいますと、教会のほか、イスラエル、パレスチナ、ヨルダンの当局が地位を承認するものなので、これらの各国の法律文書で有効かと思われます。また、ギリシャ共和国は憲法でギリシャ正教会及びコンスタンティノープル総主教庁(及びそれらと一つの教えを奉じている各教会)とのつながりを規定しており、エルサレム総主教庁の称号もまた公的なものとされるでしょう。
 今回のパスポートに関して、どこが発給したものなのかいまいちはっきりしませんが、いずれにせよ、その発給元のパスポートを受け入れる各国で「イリネオス総主教」と署名したパスポートは有効だったはずです。

 

キリスト教/ギリシャ正教会首座アテネ大主教イエロニモス2世座下の前で、ギリシャ共和国の新たな首相キリアコス・ミツォタキス閣下が就任宣誓(2019年7月)

 2019年7月8日、キリスト教/東方正教会/ギリシャ正教会首座/アテネ・全ギリシャ大主教イエロニモス2世座下(His Beatitude Hieronymos II, Archbishop of Athens and All Greece and Primate of the Autocephalous Orthodox Church of Greece)の前で、総選挙で勝利したキリアコス・ミツォタキス閣下(Kyriakos Mitsotakis)がギリシャ共和国首相への就任宣誓をおこないました。
 ギリシャ共和国大統領プロコピス・パヴロプロス閣下(His Excellency Dr Prokopios V. Pavlopoulos)が臨席。

 SYRIZA/ツィプラス政権が終わり、国家と教会の関係もこれまでよりは良好化するものと思われますが、しかし予断を許さない状況ではあります。

 

Ο Πρωθυπουργός(ギリシャ首相府公式チャンネル):
H oρκωμοσία του Κυριάκου Μητσοτάκη ως Πρωθυπουργού – YouTube

 

 (英語)Archbishop Ieronymos to the new Prime Minister: I wish you strength and patience – Romfea News

Romfea.newsさんのツイート: "The inauguration of the new #Greek #Prime #Minister, @kmitsotakis, was carried out by Archbishop #Ieronymos of Athens and All Greece #romfeanews @pressIAA https://t.co/PexUiyMD90"

 

キリスト教/ギリシャ正教会首座アテネ大主教イエロニモス2世座下が、ロシア正教会ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下と会見(2019年6月)

 2019年6月26日、ギリシャ共和国を訪問しているキリスト教/東方正教会/ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局長ヴォロコラムスク府主教イラリオン座下(ヒラリオン府主教 : His Eminence Metropolitan Hilarion of Volokolamsk, chairman of the Moscow Patriarchate’s Department for External Church Relations (DECR))は、キリスト教/東方正教会/ギリシャ正教会首座/アテネ・全ギリシャ大主教イエロニモス2世座下(His Beatitude Hieronymos II, Archbishop of Athens and All Greece and Primate of the Autocephalous Orthodox Church of Greece)らと会談しました。メソギア・ラヴレオティキ府主教ニコラオス座下(His Eminence Metropolitan Nikolaos of Messogaia and Lavreotiki)およびグレベナ府主教ダヴィード座下(His Eminence Metropolitan David of Grevena)らが同席。
 ウクライナ問題について話し合われたようです。
 またギリシャ正教会聖シノドのメンバーへの挨拶があったようです。

 なお、ギリシャ正教会聖シノドでは、コンスタンティノープル系ウクライナ正教会の承認が検討されると予想されており、もし承認された場合、ロシア正教会側がギリシャ正教会との関係をどうするかが注目されます。

 今回のイラリオン府主教座下との会見は、ロシア正教会との関係を維持するというギリシャ正教会側の意思表示なのか、それとも最後の挨拶なのか。

 

 (英語:ロシア正教会モスクワ総主教庁渉外局公式サイト)Metropolitan Hilarion meets with Primate of Greek Orthodox Church | The Russian Orthodox Church

 (英語)Metropolitan Hilarion met Archbishop Ieronymos – Romfea News

Romfea.newsさんのツイート: "Archbishop Ieronymos and the members of the Standing @Ecclesia_gr warmly welcomed Metropolitan Hilarion of Volokolamsk #romfeanews @mospat_ru https://t.co/1JgVbAtYVX"

 

キリスト教/ギリシャ正教会首座アテネ大主教イエロニモス2世座下が、イスタンブールでコンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】首座と会見(2019年6月)共同礼拝の予定はないとなっていますが……

 キリスト教/東方正教会/ギリシャ正教会首座/アテネ・全ギリシャ大主教イエロニモス2世座下(His Beatitude Hieronymos II, Archbishop of Athens and All Greece and Primate of the Autocephalous Orthodox Church of Greece)は、キリスト教/東方正教会首席/コンスタンティノープル=新ローマ大主教・全地総主教バルソロメオス聖下(バーソロミュー1世世界総主教バルトロマイ1世ヴァルソロメオス1世 : His All-Holiness Bartholomew, Archbishop of Constantinople-New Rome and Ecumenical Patriarch)の聖名日を祝うためにトルコ共和国イスタンブールを訪問しました。
 コンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】首座“エピファニー府主教”と会見し、晩課をともにした模様。

 翌日の礼拝を共同でおこなう予定はないようですが……。
 ギリシャ正教会の司祭が OCU の主教に叙されましたが、ギリシャの府主教(公式サイトに該当する名前が載ってない人)が会見したという報道が、ギリシャ・ロシア双方のメディアから出ています(ただしロシア側メディアの情報はギリシャのメディアの内容を踏まえたもの)。
 また、ギリシャの正教会系メディア「ΒΗΜΑ ΟΡΘΟΔΟΞΙΑΣ」が、キリスト教/ギリシャ正教会がコンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】を承認する見込みと報道するなど、そろそろという状況が整いつつあります。
 コンスタンティノープルが強く押せばあっさり共同で礼拝をおこなうのではないかとも思われます。ギリシャ正教会は OCU を承認していないため、現段階で共同で礼拝をおこなえば教会法もヘッタクレもないですが、そんなものよりもコンスタンティノープルの意思のほうが上だというのが東方正教会だということになったようなので、やるかもしれません。

 

 (英語)Archbishop of Greece meets Ukrainian schismatic primate in Istanbul / OrthoChristian.Com
 (英語)The Vespers of the Ecumenical Patriarch’s name day with the Archbishop of Athens and the Metropolitan of Kiev – Romfea News

 

ギリシャの正教会系メディア「ΒΗΜΑ ΟΡΘΟΔΟΞΙΑΣ」が、キリスト教/ギリシャ正教会がコンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】を承認する見込みと報道(2019年5月~6月)

 ギリシャの正教会系メディア「ΒΗΜΑ ΟΡΘΟΔΟΞΙΑΣ」によりますと、キリスト教/東方正教会/ギリシャ正教会の聖シノドに属する委員会(コンスタンティノープル系ウクライナ正教会【OCU】を承認するかどうかを検討)が、高位聖職者らに承認するよう提案すると決めたと報じています。
 もちろん、これは承認することが決まったことを示しているわけではありませんが、最近のキリスト教/東方正教会首席/コンスタンティノープル=新ローマ大主教・全地総主教バルソロメオス聖下(バーソロミュー1世世界総主教バルトロマイ1世ヴァルソロメオス1世 : His All-Holiness Bartholomew, Archbishop of Constantinople-New Rome and Ecumenical Patriarch)とキリスト教/東方正教会/ギリシャ正教会首座/アテネ・全ギリシャ大主教イエロニモス2世座下(His Beatitude Hieronymos II, Archbishop of Athens and All Greece and Primate of the Autocephalous Orthodox Church of Greece)の会談で承認することが同意されたという報道や、委員会では承認に否定的なキリスト教/東方正教会/アルバニア正教会の首座/ティラナ・ドゥラス大主教アナスタシオス座下(His Beatitude Archbishop Anastasios of Tirana and Durres, Primate of Albania)の文書がスルーされたり、その他ギリシャ正教会がコンスタンティノープルの奴隷にすぎない説が聖職者らから出されたり(ギリシャの憲法上コンスタンティノープルに逆らえないそうです)、他教会は中立を守るべきだとしていたキリスト教/東方正教会/キプロス正教会の首座/ノヴァ・ユスティニアナと全キプロスの大主教クリソストモス2世座下(His Beatitude Archbishop Chrysostomos II of Nova Justiniana and all Cyprus)はもはやなにも行動せず(ロシア正教会のイラリオン府主教との会談予定はどうなったのか……)、全般的にみると、ギリシャ人系各教会はコンスタンティノープルに従って動くことになるという当初からの各方面の見立て通りに落ち着きそうです。
 もっとも、ロシアと絶縁するとすさまじく政治的な問題が発生するアレクサンドリア総主教庁(エジプト大統領からどんな冷遇が起こるか)とエルサレム総主教庁(イスラエル政府が対ロシア政策の一環として利用しまくることはいうまでもない)がどうするかはまだわかりませんが……。アラブ化しているアンティオキア総主教庁は、親ロシアであり動かないでしょう。

 しかし、この21世紀、いよいよ「『ギリシャ正教』と『ロシア正教』は違うもの」ということになってきたように思えます。

 

 (ギリシャ語)Ουκρανικό – "Φωτιές" άναψε η απόφαση στην Ελλαδική Εκκλησία – ΒΗΜΑ ΟΡΘΟΔΟΞΙΑΣ

 

 なお、ギリシャ正教会が OCU を承認した場合、その後の展開として、ロシア正教会側からコミュニオンの解除を検討する聖シノドの開催があるでしょうが、ギリシャ正教会内部から離脱者が出てくる可能性もあります。